12 王都での盗み見
ヤシロと王都での生活用品などを買い物していると、シンに持たせていた『偽眼』が反応した。
念のために持たせていたが、今まで反応が薄かったから、城の中では使えないと思っていたがどうやら大丈夫のようだ。
(ヤシロは買い物に夢中か!)
女子てのは買い物が好きな上長いからなぁ
まあ、シンを少し盗み見る間くらいはほっといても大丈夫だろ!
なにやら値引きしている彼女を見ながら『偽眼』ほうに意識を集中させる。
するとそこは、広い部屋に立派なテーブル、椅子や照明まで全てが一級品だと分かる物ばかりだ。
そこで、5人の人間がテーブルに向かい合ってた。
おそらくは城の一室でこれは王子と王女かな?
それにしても、異母兄弟だからとは言え、みんな似てないな!
「それで、シン、テメェー今までどこほっつき歩いてたんだよ?」
「ルーク、前にも言ったがアイリースに滞在していたんだ」
前にシンから話を少し聞いたが、これが他の王子か!
全員が異母兄弟らしく、王が7人の王妃からそれぞれ一人の子を授かったらしい、
それなれば、王位争いが酷いことになると分かりそうなのに…
「知るかよ!!テメェーが遊んで間もこっちは王位継承の儀式とやら話し合いが大変だったんだよ!」
いま叫んでるのが第四王子のルーク・ラル・エルスーン。
シンの一つ下の弟で、ずいぶんと苛立っている。
ずいぶんと短気な性格でしかも好戦的らしい、魔法は強力だが他の兄弟と比べと劣るらしい、体は中肉中背であまり運動をしてるようには見えない金髪の少年だ。
「別にいいんじゃない?シンが居てもどうせ変わらないわよ!魔法も使えない人に発言する資格すらないんだから」
今の生意気なことを言ったのは第二王女のアンリ・アーク・エルスーン。
シンの二つ下の妹だ。
生意気な性格で、人を小馬鹿にしているが実際にかなり頭のいい才女で天才と呼ばれてるらしい、小柄で華奢な体にシンと同じ長い白銀の長髪で人形のような美少女だ。
その赤い目は笑いながらも冷酷そうな雰囲気でシンを見下していた。
「あらあら、そんなこというもんじゃないわよ!2人とも!」
そう言ったのは第一王女……ではなく第二王子のシャル・メル・エルスーン。
シンの三つ上の兄だ。
聞いての通りオネェ系の人らしい、長身で細いながらも鍛え抜かれた体は迫力があり、その中性的な化粧をした顔と癖のある朱色の髪も合わさり近寄りがたい雰囲気がある青年だ。
微笑しながら2人に釘を刺す。その迫力に2人の王子、王女も軽く引く。
「シャル、それくらいしなさい。シンもいつまでも遊んでないで学園で王族としての役割を全うしなさい」
優しく嗜めるような口調で話すのは第一王女のエリス・ノア・エルスーン。
シンの四つ上の姉だ。
政治にも口を出す才色兼備の女性で、モデルのようなすらっとした体に女優のような顔立ち、藍色の長い髪を後ろで束ねて何とも魅力的な大人の女性だ。
「王を決める儀式もあと1年後まで迫っています。
みんな王族としての役目を自覚して行動しなさい。」
「言ってもエリス姉、シンは魔法が使えない愚図だぜ?
どうやって役目を果たせって言うんだよ?
せいぜい、邪魔にならないように王になるのを辞退して引っ込んでくれる以外にやることはないぜ!」
「ルーク、それは父上のご意志に反するわよ?
シンにだって儀式を受ける資格くらいはあるわよ」
「シャルの言うことはもっともだけど、魔法も使えないのに儀式って参加できるの?」
「ええ、できますよ!シンは魔力そのものはありますから!」
「どのみち、魔法も使えない奴が選ばれるわけねぇーよ!!」
「ルークは何をそんなに焦ってるの?あ!ふーん、自分の魔力に自信がないからか!そうだよね、魔力だけならシンより少ない物ね♪」
「アンリ!テメェー殺すぞ!!!」
ルークの背後から砂の狼が現れる。魔法によるそれは人よりも何倍も大きな!!
「あら?やる気!!」
アンリの後ろにも光の鳥が出現する。全身を発光させた神々しいそれはアンリを守るようにルークと狼を睨む。
一触即発の空気にシンは何もしない、慌てするしないところを見るとこれは日常的な風景なのかも、
「2人とも!そこまでよ♪」
直後、風の蛇により2人の魔法が飲み込まれる。
「シャル?」「シャル兄!?」
2人の間に優雅に立つ第二王子、
「くだらないお遊びはそこまでにして、話に戻りましょう。」
「はーい!」「待ってよ、俺はまだ!」
「黙りなさい!それ以上くだらないお喋りをするなら、今度はあなたを飲み込むわよ!」
鋭い眼光に怯えルークは大人しく引き下がる。
アンリはそんな彼に舌を出してべーっと挑発していた。
エリスがため息を吐きながら、
「それで1年後までに儀式の準備を終わらせる件ですが」
「そうね、儀式に参加する為に貴族数名の許可と四つの島国の王から一人許可を得ないといけないなんて面倒よね」
「そもそも、なんで他国の王に許可を得ないといけないんだよ!」
「同盟国との親密な付き合いを持続させるためって習ったでしょ?ルークは本当にダメダメね」
また、ルークとアンリが喧嘩になりそうだったが、エリスが一睨みして終わった。
「まあ、なんにせよ1年後までに各々が準備を進めて置いて下さい。いいですね!」
「ええ、お姉様、私は大丈夫よ!」
「俺もだ!」
「私は、もう許可もとってるし、後は学園でのんびりしてるは」
「シン、魔法が使えなくても王族として、恥じぬように学園を過ごしなさい。いいですね!」
「はい、姉上、分かっています」
ほとんど、喋らなかったシンが話して会議は終わる。
「ところで、アレス兄とサイファーはどうしたんだ?」
「兄上は確か火の国に出向いているわよ!何でも火の国の近くの国がちょっかい出してきたからその始末をつけるって」
「サイファーはまだ12歳だから、会議にでるのは13になってからよ!それまでは代理で義母が出るけど、今日は仕事で欠席よ!」
「2人のことよりも、ルークとシンは学園でしっかりと学びなさい。
特にシン、あなたは王族として自覚が足りないわ!余計なことを考えずにあなたは国の為にも努力しなさい!」
「はい…姉上」
「まあ、無駄な努力だと思うがな!!アハハッ!!」
「ルークの意見はともかく私も何でシンが魔法が使えないか気になるよのね、シャルはどう思う?」
「アンリ!あなたは、私のことはお兄様と呼びなさいっていってるでしょ!
まあ、役に立たないならせめて恥を晒すような真似は避けてくれればどうでもいいわ!」
「みんな冷たいな-!私はシンを実験してでも調べたいと思ったのに!」
好き勝手言われてるのに反論しようしないシン、これは慣れているのかも、
(他の4人の王子王女もやっぱりなかなかだな、それでもあの一番上よりはマシか……一番下の弟はどんな奴なんだ?…仕方ない『偽眼』で奥まで調べてみるか!)
シンに持たせた『偽眼』をいくつか使い城の奥に侵入させる。
目玉が浮いていても『偽態』で風景に溶け込んでるので、気付かれないで進めた。
(外の守りは堅いけど中そうでもないのか?)
やがて、現在の女王がいる場所、そこに自分の子供でもある第五王子と一緒にいるみたいだ。
少し緊張するも中に『偽眼』を忍び込ませる。
(ッッ!?!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!)
そこには衝撃的な風景が広がっていた!!
おそらく、自分の母親であろう王女を糸のようなもので操り王座に座っている12、13歳の子供がいた。
サイファー・ゼロ・エルスーン
シンの四つ下の弟で第五王子だ。
金色の柔らかな髪をして子供らしい体型と無垢な笑顔で、王女や周りの家臣を糸で操っていた。
(なんだ!!これは!?どうなっている!!!)
あまりにも異常な光景に絶句していると、
「さて、シン来てみんなも揃ったしそろそろ殺し合いを始めようか!!」
(はぁああー?何を言ってるだ?)
「ええ、サイファーあなたの望む通りになさい………」
「うん、母上!!」
操り人形の母上にまるでおままごとのように返事をする少年、
その光景は異常で、異様で、狂っていた!!
「みんな、戦争を始めるよ♪アレス兄にはにげられたけど、他のみんなはいるし、逃げ場なんでないし!!」
まるで無邪気な子供のように残酷な宣言する。
「宣戦布告だ!!四つの島国もこの大陸に存在する全ての国家をまとめて滅ぼして♪」
(何!?なんでいや本気か!!)
その狂気的な光景を生み出した存在がこちらを見た。
その黄金色の瞳は歪んで見えた。
そして、俺の『偽眼』は破壊された。
元の景色に戻っても、あまりにの衝撃に驚いていると、
ヤシロの姿が見つからない。
(うん?どこに行ったんだ?)
周りを見回すが見あたらない、さっきまでいた店の人に聞いて見ると、
「ああ、あの子なら迷子を連れてあっちの方に行ったよ!」
「そう、ありがとう!」
まさか、少し目を離したら迷子になるとは、
ミイラ取りがミイラに、ではないが迷子を連れてどこかに行ってしまったらしい。
(はぁー、なんか疲れる、いよいよやばいことになってきたのに!)
とりあえずヤシロと合流しょうと街を歩く、
すると、人目の付かない路地裏で悲鳴と轟音が聞こえた!
「ヤシロ?」
急いで駆けつけると、がらの悪い3人組にヤシロは囲まれていた。
彼女はボロボロになって倒れていた!!!