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玄関まで見送りに来た父のいってらっしゃい、痴漢とか危ないんだから気を付けるのよ。を背に学校に向かう。

この世界では男女の立場が逆転しているため、父が母のようなことをしている。家で家事をするのは父で仕事に行くのが母。俺の家はあっちでは母は専業主婦だったからこっちでも共働きではなかった。

それにしても気を付けて、か。前では考えられない言葉だ。というかそもそも玄関まで見送りに来てくれることがあまりなかった。それは何も、親子関係が別に仲が悪かったからというわけではない。年頃の息子に対する母親の態度では普通だと思う。まあこっちでは父親、だが。だからこうやって玄関までわざわざ出てこられたりなんかすると逆にむず痒い感覚に襲われる。

女の子扱いはされたくないな。まあ確かに痴漢にはあったけど、さ。


六時。普段通りの時刻に家を出る。この時刻に家を出ると、学校に着くのは学校の門の鍵が開いて直ぐくらいの時間になる。

俺はいつも学校に行くのが早い。早起きな(たち)でも、早めに学校に行かなくてはならない理由があるわけでもない俺が何故こんな早くに家を出ているかというと、隣の家に住んでいる幼馴染みに出会さないためだ。

幼馴染み、篠崎明日香とは幼稚園からの付き合いだ。昔はそれなりに仲が良かったが、今やそれも見る影もなくなってしまった。まあ男女間の幼馴染みなんてそんなものだ。クラスこそ一緒だが、口を聞くことはまずない。言わなければ誰も幼馴染みとは気付かないだろう。理由は分かっている。俺といると恥ずかしいからだ。篠崎はそこそこ可愛い顔立ちをしていて、スクールカーストは俺は女子の事情にはそんなに明るくないから詳しくは知らないが結構上の方のグループに属していたはずだ。けして絶対という訳ではないが大体男女間での付き合いもグループカーストが同じくらいの人と付き合うことが多い。派手な奴には派手な奴が集まるし、地味な奴は地味同士でくっつくという訳だ。

ともかく、篠崎は幼馴染みだったとはいえ今は俺とは全く関わらないし、そもそも俺を嫌っているようだ。不細工だし、根暗だし、面白い話もできないし、まあ仕方のないことだとは思う。どうやら篠崎は俺の顔も見たくないくらい嫌っているらしく、元々は俺は普通の時間に学校に登校していたのだが向こうも同じ時間に登校していたためかち合うので、行く時間を変えろと凄まれた。女っていうのはステータスのあるやつにしか優しさを見せないものだと俺は痛感させられた。あいつを明るくて可愛いなんて言ったやつ誰だよ…。外面だけみると割りとよく見えるけれどな。篠崎の、あのいつでも笑顔だというのは篠崎の(元々持っているもの)をより一層魅力的に見せるのに最適なものだと思う。顔だけならもっと可愛いのがいるのに篠崎が結構モテるのはそのお蔭でもあるだろう。


そういうわけで俺はいつも朝は出来るだけ早くに行くようにしていた。もう一年以上も続けているからか癖になっているため、気が付いたらいつもと同じ時間に起きていた。

でもここでは恐らく事情が違っている。俺達の関係は一体どうなっているのだろうか。



そんなことを考えていると、隣の家の扉が開く音がした。つい目をそちらに向けると、丁度家から出てきた篠崎と目が合う。


「え」

「あ…」


俺の顔を見た瞬間、篠崎の顔に怯えの色が一瞬浮かぶ。

それを見て、俺は俺達の立場が逆転していることを理解した。




母親を父親に変更しました。すみません

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