こんな恋の始まりもあるはず 3
俺の彼女はツンギレ系だと思う。
「あーちゃん俺の事どう思ってる?」
「一度死んだ方がいいと思ってる」
今も雑誌を読みながら、こっちを向きもしないで言い放つ俺の彼女で恋人で将来を共にすると誓った同棲相手。土屋 茜。
俺たちは無事高校を卒業して、俺は国立大、あーちゃんは本当に女子大に通ってしまっている。
が、ちゃんと同棲は出来た。そこは両方の親を味方に付けた事が結構関係しているのだが。
あーちゃんは『ルームシェアだ!!』と頑なに拒んでいるが、同じ屋根の下というのには変わりない。
大学生活一年目。本格的に夏が始まろうとしているからか、最近暑くなってきたせいで、
あーちゃんの装備が半袖短パンになってきている。
ソファに座りつつ体育座りをしているせいで、あーちゃんの綺麗な生足が俺の眼前にさらけ出されている件について。
1、押し倒す
2、舐め上げる
3、さり気なく触る
どれがいいだろうかと考えている間にもうその手は伸びていて、太ももの裏側を際どい所まで一気になで上げていた。
「っ!! へんったい死ね!!」
真っ赤になったあーちゃんの蹴りが腹にめり込んだ。だが、あーちゃんは小柄でそこまで力がある方でも無いのでちょっとウッ、となるだけだ。
それもあーちゃんなりの愛の形だと受け止める。
俺とあーちゃんは、幼なじみだ。
昔はよく虐められて泣く俺を、日曜日に流れる戦隊物に憧れていたあーちゃんは毎回俺を庇ってくれていた。
あーちゃんは昔から口喧嘩は強い。小さな頃は、体格差や力の差が少ないからか、喧嘩だって右に出る奴はいなかった。
例え男子に『や~い、おとこおんな~』と馬鹿にされても、
「男女の私に負けるお前らはゴミ虫以下だ!! 敦を虐める事しか出来ないゴミ虫が!! 地面に跪いて詫びろゴミ虫!!」
と返り討ちにしていた姿を今でも覚えている。
そんなあーちゃんへの憧れはいつしか恋に変わっていた。
次第に虐めはなくなり、中学に上がってからはあーちゃんが俺の為に戦う事は無くなった。
俺の身長が伸びる度、自分は何故伸びないのかと悔しがるあーちゃんが、可愛くてしょうがなかった。
そんな中、俺はあーちゃんに聞いた事がある。
『あーちゃん、俺の事好き?』
と。
あーちゃんはぱっと顔を真っ赤にして、逃げてしまったけれど。きっと『私も好き』って言うのが恥ずかしかったんだと思う。
あーちゃんは恋愛事が苦手だ。
テレビでそれっぽい雰囲気になると、クッションで視界を隠すクセに真っ赤な顔でちらちらとテレビを盗み見る姿が何とも堪らない。
ずっと側にいたから、俺には分かる。
朝になると、低血圧の俺をわざわざ起こしに来てくれるあーちゃん。
「敦、大学遅れるよ」
「あーちゃんがキスしてくれたら起きる」
「じゃあ寝てろ」
「それじゃあ単位落としちゃうよ。俺が大学留年してもいいの? ほら早くキスを、ね?」
「留年してしまえ!!」
そう言って顔を赤くして俺を怒鳴るもの、ただの照れ隠しだという事を。
ちょっと酷い事を言うのは、必死に甘い空気から逃れようとしている事も。
それを見て、ああ、可愛いなぁと想いを馳せる俺は、あーちゃんの腕を引っ張って無理やりキスをした。
だがヤンデレストーカー。
爽やか気味に書いてあっても敦がヤンデレストーカーな変態である事に変わりは無いです。
いや、今は同棲してるから…、ストーカーは無しか?
この作品は、ツンギレな彼女とただの変態な彼氏でお送りしました。
それっぽく書けていたらいいな~と思います。
そうしていつも絆されてしまう茜はキスの時から妙に敦を意識してしまい…、みたいになって最終的にプロポーズする敦に初めてデレると良いんじゃないかなと思います。
あ、因みに敦が好きかどうか聞いた時は敦の事など全く好きではありませんでした。激しい勘違いです。