7 嵐の夜に
建て付けの悪いシャッターがガタガタ煩いのは、台風が近付いているからだ。
夕方から雨が強くなってお客さんはほぼゼロの時間が更新されている。もう閉店した方が電気代も人件費も浮いて一石二鳥の気がするけど、本部の指示が無いとどうにも出来ない。
社員と言えども決定権の無いのはアルバイトと一緒だ。
風の音だけが店内に響く。本日の相棒はサッカー少年でいつも以上にやる気の無い彼はボーっと店内を見つめている。
マイペースだな、と思う。一応こちらは社員なわけで、嘘でもやる気を見せるのが筋じゃないのか。
---もしかして、舐められてる? その確立は極めて高い。
「暇っすね」
急に声を掛けられてびっくりする。
「まあこんな天気だからね」
「あの……。ちょっと聞いてもらって良いスか」
「あ、うん」
そう答えたものの内心ドキドキしていた。帰らしてくれって言われたらどうしよう。
非常に困る。
駄目だと言って聞いてくれるだろうか。逆切れされたら怖いし、この場合どう返事をするべきか悩む。こんなのが責任者なんか任されているんだから、社員の人手不足は大問題だ。
「俺の知らない間にアドレス知られて勝手に連絡してくる子がいるんです。
その、ここのバイトの子っぽいんですけど」
言ってる意味が分らずぽかんとする。
「内容が今日の服装とか、こんな客いたよねとか、どうも本屋限定の話なんですよ。並木さん、心当たりないですか?」
「あー……」
有るような、無いような。これも個人情報になるのだろうか。けれど困っているのは間違いないだろう。
「俺、今は彼女作る気ないんで、興味無いって言うか、迷惑してるって言うか……。どっちにしてもこんなことする奴、好きになんないし」
「そうだよね。分るよ」
けれど、今時の子はそんな犯罪紛いの事をあっさりやれちゃうんだろうか。
ちょっと怖い気がする。
昔本屋のパートさんが仕事中に同僚と修羅場を展開して、目撃したまっちゃんが後で興奮気味に話してくれたけど、その場にいなくて本当に良かったと心から思った。
理性を失った姿は痛々しい。
「並木さんは俺の連絡先知ってるんですよね」
もちろん知っている。
採用の際書いてもらった書類を見ればもう何もかも---って、オイ!
「私、疑われてる?」
「冗談っす。すみません」
はにかんだように笑うバイト君の表情を見ると、なるほどやっぱりモテる子は何か違うんだなと関心してしまう。
こんなに長く話したのも今日が初めてだ。
「並木さんいつもテンぱって必死に働いてるから声掛け難かったんですけど、なんか面白いキャラしてますね」
そうだろうか。自分では分らないけど人にはそう見えるのかな。
「私から店長には報告しておくけど、もし酷くなるようならまた教えてくれる?」
「はい。お願いします。それにしても店開けてる意味あるんですかね」
それに関しては同意見だ。
風と雨の音を聞きながら私たちはまたポツポツとくだらない話しを始めた。