4 素直になれなくて
藤堂くんとのお付き合いは緊張の連続だった。男子からはからかいの目で見られ、必要以上に2人を一緒にしたがって来て、委員会だ実行委員だと色んな役をやらされた。
女子は生暖かい目で見ていて、なんとなく遠巻きに様子を伺っている。
「そのうち別れるでしょ」
それ位な気でいたと思う。
実は私もそう思っていた。
あまりにも予想外な事が起きて思わずOKの返事をしてしまったけれど、私の何処が良くて付き合おうとしたのかさっぱり解らなかった。
唯一応援してくれたのは親友のまっちゃんただひとりだった。
「貴志は見る目がある」
自分のことのように喜び、「堂々としていろ」「背筋を伸ばせ」と小言を言ってくる。誕生日はもちろん時節の行事は欠かさず藤堂くんとふたりきりで過ごす様に言いつけられ、その度に報告させられた。
プレゼント選びが苦手な私はイベントが始る度に頭を抱えた。
ああでもない、こうでもないと考えた挙句に名前も知らないキャラクターのキーホルダーとか、本当にどうでもいいような物を藤堂くんに渡していたと思う。それでも優しい彼はうれしそうに『ありがとう』と言ってくれた。
まっちゃんはすごくシビアだ。
とにかく私は世間知らずだと言う。
世の中には悪意の塊の様な人がいて人を陥れようと弱いものを狙っている。
一見、人が良い様に見せかけて実は---なんて事があるから額面通りに受け取ってはいけないんだそうだ。
子どもだった私はそうかなーとのん気に構えていたが、藤堂くんと付き合う様になってその意味を知った。
女の子の嫉妬がいかに恐ろしい物か思い知らされ、そうした子に容赦なく冷や水を浴びせる藤堂くんを怖いと思うようになった。
藤堂くんが私を選んだと言う事は誰か他の子を選ばなかったと言う事。
選ばれなかったら好きって気持ちはなくなるものなの?
そうじゃない筈。
思いは変わらない。だったらその思いはどうしたらいいの。せめて選ばれなかった事を納得したいだろう。なのに相手が私じゃ納得いかないんだ。
結局私が隣にいる事が原因。
誰が悪い訳でもない。
好きな人に見て欲しいだけ。
振り向いて欲しいだけ。
やさしくしてあげたいだけ。
願いが叶わない気持ちを恋敵にぶつける彼女達の気持ちは分るのに、私を守るために冷たい態度を取る藤堂くんをどんどん遠くに感じて行った。