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歌にもならない  作者: zaizai
本編
1/24

1 恋のおわり

「だからさー実はまだ続いてたんだよ。あのふたり」


「うわっ。最悪ー」


 昼休みの休憩をアルバイトの子たちと一緒に取っていると聞こえる賑やかな話し声。

私の弁当箱はほぼ空になると言うのに、彼女達は一向に箸が進まず半分も残ったままだ。時間内に食べきれるかどうか心配になる。


 そもそも私は食事中無駄話をしない。ひたすら食べることに集中する。これは中学校の時からの癖で当時担任になった先生の教えが原因だ。その先生はとても厳しい人で、食事中の一切の私語を禁止した。

 色々と名言を残された先生の言葉の中でも特に印象深い言葉がある。

「給食は授業だ」

 初めてその言葉を聞いたときの衝撃は、ビックバーン並みだった。

 隣のクラスから聞こえてくる楽しそうな話し声をバックミュージックに、食事をする私たち。これから始まる中学校生活に一抹の不安を抱いたのは言うまでも無い。

 

 彼女たちの話の内容にさほど重要性はなく、いわゆる恋話という物を根掘り葉掘り話しているだけ。これが毎日繰り返されるわけで、彼女達の恋愛に関する関心の高さに驚かされる。


 私の恋愛話しなど3分もあれば終わるようなお粗末さだというのに次から次に繰り出されるエピソードは何処まで本当なのか疑いたくなるような物も含めてバラエティー豊だ。

自分の経験は語らないくせに他人の恋愛には大いに興味があるらしい。


恋愛とはそんなにも人生において重要な出来事なのだろうか。貴重な休み時間を割いてまで語り、昼ごはんを食べ損ねてお客さんの前で腹の虫が鳴くかも知れない危険を冒すほどに愉快なのだろうか。

 向き不向きがあるとすれば私は後者だ。

 高校時代から付き合っていた彼氏と1年前に別れてからすっかり恋愛ごとから遠ざかっている。それを寂しいとも思わなし、新しい彼氏が欲しいとも思わない。今はただ与えられた仕事をこなし、食べて寝るだけ。それで充分だった。


 苦い恋だった。分不相応の彼氏と不釣合いな私のいびつな恋は終わったのだ。

 いつか私に変わる女性が現れて彼の隣に並ぶだろうと考えていたから、それが現実になってもやっぱり--、そう思う事はあっても彼氏を恨んだり相手の人を憎むことはなかった。

 悲しい思いはしたけれど傷はやがて癒えていく。


 それがわたしの一生に一度の恋の結末。

 



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