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保護者同伴”異世界トリップ”  作者: 九重


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平定 22

周囲はブラッドの言葉に驚いた。


「病気じゃない?!」


バーミリオンが問い詰める。


「当たり前だろう。魔法が効かないんなら、その魔法の対象じゃないに決まっている。」


バカじゃないのか?という風にブラッドに言われて腹が立つが、言われている内容はそれどころじゃなかった。


「病気でないとしたら何だと言うんだ!?」


「お前!・・・何で俺に怒鳴るんだ!俺がやっているわけじゃないぞ!」


ブラッドは気を損ねたように言い返す。

濡れ衣を着せられるなんてとんでもなかった。


「・・・お前がやっている(・・・・・)?」


バーミリオンは愕然とする。


ブラッドの言い方は、まるで誰かが意図して王を病気の状態にしているかのようだった。


「俺じゃないと言っているだろう!俺は治癒魔法しか使えないんだ!”状態異常の魔法”なんか使えないんだよ!!」


真っ赤になって怒鳴り返したブラッドの言葉は、その場に大きく響いた。


「・・・状態異常。」


呆けたようにバーミリオンが呟く。


「どうやらそのようですね。」


落ち着いた言葉がかけられて全員がそちらを向く。


灰色の魔法使いが、いつの間にかその場に来ていた。

魔法使いの後ろには茶色の剣士が立っている。


「はじめまして。コチニール王太子ネープルス様。正妃ローシェンナ様。私はセルリアン王の魔法使いアッシュと申します。・・・お話をお伺いしましたが、コチニール国王陛下は誰かに魔法をかけられておいでのようですね。よろしければ私がその魔法をお解きいたしましょうか?」


この上なく優しく丁重にアッシュは提案する。




正妃は・・・身を小さく震わせると、首を横に振った。


「義母上!?」


「お申し出に感謝します。・・・しかしこれは我が国の問題。状態異常の魔法の疑いがあるのであれば我が国の魔法使いが対処いたします。貴方方は客人。どうぞごゆっくりおくつろぎください。」


「義母上!!」


バーミリオンは声を荒げる。


確かにコチニールにも魔法使いは居るが、セルリアン王直属の魔法使いであるアッシュに比べればその実力は雲泥の差だ。

アッシュの申し出を断るなど正気の沙汰ではなかった。


グレン(・・・)!」


正妃は初めてバーミリオンの名を呼んだ。


バーミリオンがビクッと体を震わす。


「国を出奔した貴方は既にこの国の王族ではありません!此度の事で招きはしましたが、あくまで貴方は客人。部外者です。余計な口出しは許しません!」


ピシリ!と言われてしまえば、バーミリオンに反論する言葉は続かない。


「母上!そんな!」


不服そうに王太子が声を上げるが、母の視線に口をつぐんだ。


「思わぬ長話をしてしまいました。どうぞ王宮内にお入りになってください。“運命の姫君”様。ごゆっくりされて、お話はまた後ほど。」


言われた美咲はどうして良いかわからない。


バーミリオンの心情を考えれば何とかアッシュにバーミリオンのお父さんを見て上げて欲しいけれど、美咲の立場で何をどう言ってよいのか見当もつかなかった。


迷う美咲から視線を逸らし、正妃の視線が未だ竜王の背にいた母の方へ向けられる。


「どうぞ、そちらのお方も。」


正妃は、先ほどから黙って自分たちを見ていた母が気にかかっていた。

あれ程に大きな竜に乗っている女性。

“運命の姫君”は2人いるのだと聞いている。

では、彼女も“運命の姫君”なのか?

しかしどう見ても自分より年若い女性ではあっても少女という年齢には思えない。

外見ではなくその雰囲気で正妃はそう確信していた。

セルリアンの王は18歳だ。その伴侶となる者ならば目の前の少女のような存在であるはずだった。



・・・母はふわりと笑った。



「そこを退きなさい。」



それは、絶対者の命令だった。


優しい小さな女性の声。

なのに、聞いた正妃が・・・王太子や他のコチニール貴族が思わず従ってしまう。



ぽっかり空いたスペースに、一瞬の間に人型に変じた竜王に抱えられて母が降り立った。


正妃を見詰めるその瞳。


正妃は・・・自身の伴侶である国王にも感じたことのないようなプレッシャーを感じた。


「はじめまして。コチニールの正妃様。お招きいただき、ありがとうございます。」


母は、ごく当たり前の挨拶をした。



美咲はホッと安心する。

内心とっても心配していたのだ。

異世界トリップ初日の母の様子を思い出す。

母には異世界の王族に対する尊敬の念などどこにもなさそうに思えたものだった。

そう思うと母が王さまを好きだなんてやっぱり自分の思い過ごしなんじゃないかと思えて来るほどだ。



母の姿に安堵していた美咲は気がつかない。


美咲以外の全員が・・・竜王でさえも母の放つ気配に僅かに気圧されていることに。


正妃を初めとするコチニール側は身動き一つすることができず母に目を奪われている。

一体この女性は何なのだという疑問が心の中に沸き上がっていた。


台風の目にいるような状態ではあってもその母のプレッシャーを感じない美咲は、ある意味最強なのかも知れなかった。




「私は、“ママ”。もう慣れたからそう呼んでもらってかまわないわぁ。・・・彼は、たっちゃん。竜王よ。」



しかし、やっぱり美咲の安堵は長く続かない。あっという間にいつもの調子になった母に美咲はがっかりする。


「もう!ママったら!」


思わず上がった美咲の文句に、母は不満そうに言葉を返してくる。


「だってぇ美咲がみんなを紹介しないからでしょう。ほら、カイトも人型にさせなさい。」


母に言われて、それもそうかと思った美咲はカイトに側に来てと手を伸ばす。


カイトは何故か少し躊躇して・・・しかし覚悟を決めたように人型となって美咲の隣に立った。


カイトを母が紹介する。


「彼はカイト。竜王子よぉ。・・・ぴーちゃん、ポポ。」


母に呼ばれてぴーちゃんとポポが姿を見せる。


美咲の足元に現れた白帝にコチニール人は息をのむ。

自国の守護獣である白帝を従える少女に目を奪われた。


「見てのとおり、神獣よぉ。まあ、ぴーちゃんは信じられないかもしれないけれどぉ。」


ムリに信じなくてもかまわないわぁと母は笑う。


竜王、竜王子、神獣・・・と王太子が信じられないように呟く。無意識に兄を見て、何ともいえぬ諦めと哀れみのこもった目で見返されて・・・それらがきっと本物なのだと思った。


「美咲、精霊王たちを呼びなさい。」


母に言われて美咲は自分の精霊たちを呼ぶ。


4大精霊王たちは、大きな姿で顕現した。

空に浮かぶ4人の精霊王は力をキラキラと纏い圧倒的な力を誇示する。


「4大精霊王よ。」


レアなんだからよく見なさいと母に言われ、素直に王太子が目を見開く。


どこの世界も子供はレアアイテムに弱いわよねぇと母は笑った。


サラたちをレアアイテム扱いはないでしょう!と美咲は怒る。


ごめんなさいと謝りながら母は続ける。


「光輝、虚空。」


母の声に従って・・・最後に光と闇の精霊王が現れた。


静かに母と竜王の両脇に立つ。


その存在が何かと教えられなくてもわかる恐ろしい力に、正妃も他の者も声が出せなかった。




「貴方たちはぁ、自分たちが“何”を招いたのかしっかりと自覚した方が良いわぁ。うっかり私たちの不興を買わないようにねぇ。・・・この国が大切なのなら気をつけるのよぉ。」




あからさまな脅しに、正妃たちの顔が強ばる。


母の言葉に呼応するかのようにその場にいた力ある者たちが母と美咲、バーミリオンを残して跪く。

カイトもアッシュとタンも、ブラッドまでもが立ち尽くす美咲とバーミリオン・・・そして母に向かって跪いた。



「“主”の気に入らぬ全ての“モノ”を滅ぼすと約束しよう。」



全てを統べて上げられた竜王の言葉は・・・それが真実なのだと残酷なまでに人々の心に告げる。



「貴方たちの約束を受け入れるわ。そのための”力”を振るう許しをあげる。・・・思う存分”力”を振るいなさい。」



その途端、世界が震えた。


王都に集った全ての魔獣と竜、精霊、神獣が咆哮を上げる。


圧倒的な力の前に震える人間の前で、母は美しく微笑む。



美咲とバーミリオンは、母と同じようにその力を捧げられながら・・・呆然として立ち尽くしていた。

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