失われた愛の話
よろしくお願いします!(´∀`*)
「ミーガン様!レオナルド王子を解放してください!!」
学園の中庭。ピンク頭の平民少女が叫ぶ。
公爵令嬢であるミーガンへ不躾に。
「私あなたに名を許した覚えはなくってよ。
それに殿下のお名前をそのように。無礼だわ」
ピンク娘はわめく。
「そんなことを言ってるのではないんです!!
殿下を解放してあげて!!
火葬にしてあげてと言ってるのです!!!
彼はもう、死んでいるんだから!!!」
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それは学園の卒業パーティーの夜であった。
王子は婚約者であるミーガンに婚約破棄をつきつけた。学園で出会った特待生の平民娘を抱きながら、いじめがどーだこーだとのたまっていた。
そこへゾンビである。
なんか外が騒がしいなと言い合いをする王子たちをよそにパーティー飯を食べていたモブが気づいた時には遅かった。
地方で発生したゾンビは加速度的に仲間を増やし、ついに王都へたどりついたのだ。
ゾンビの群れにおそわれた都は夜間のこともあり、混乱するばかりでただその被害を増やしていった。
そしてふえふえゾンビは王立学園内の大講堂へ襲い掛かったのである。
阿鼻叫喚であった。
剣はあれど魔法のない世界なのだ。銃とて学園には警備のもののもつ少数だけだ。
しかしさすが領地を守る貴族子女の集まる学園であった。
彼らは勇敢にも立ち向かい、入りこんだゾンビを撃ち倒しバリケードを築き篭城した。
その中で傷つき倒れ、ゾンビとなる仲間もいた。
その一人が王子であった。
ミーガンは深く王子を愛していた。
どんなに邪険にされようとも愛していたのだ。例え平民に心を移そうとも。
よって、ミーガンはゾンビ化した王子の両手を切断し歯を抜き、首輪をつけて飼うことにしたのである。
非難するものは釘バットで粉砕した。
悪役令嬢ここにありであった。
ピンク頭は自身のハーレムを築いていたためとりにがしたが——…。
二大勢力により、閉ざされた学園は支配されていたのだ。
しかし夜は明けるものである。
ゾンビ騒動は再編された騎士団により鎮圧された。少年少女は学園をでることができた。
とはいえ住居を失ったものも多く、学園はそのまま避難所として機能することとなった。
令嬢であるミーガンはもちろん無事な家がある。
今日は慰問に訪れただけなのだが——……
「レオナルドを解放してあげてよおおおお!!!!」
泣き喚くピンク。
所詮は捨てられた女の泣き言だわ…と、ミーガンは愛する王子(実際のところすでに王子ではない)をつれて、その場を去った。
♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡
「結婚ですって!?何を馬鹿な!!
私は殿下と添い遂げると誓ったのです!!」
なんということであろう。
ミーガンは父公爵により婚約がすすめられてしまった!
やはりゾンビ被害のあった隣国の王子。
お互い辛いこともあったけど手を取り合ってやってきましょうね〜という政略結婚であった!
「頼む、頼むから正気にかえってくれ。お前はあまりにもレオナルド様一筋だったから。世界は広いんだ。せめて会うだけでも。視野が広がればすこしは」
父母に再三泣きつかれ、使用人一同に土下座で懇願されたミーガンは諦めて見合いの席に出ることにした。
レオナルドを連れて。
片手にレオナルドのお散歩鎖、片手に釘バットをもって顔合わせの席にでたミーガンに、一同青ざめることとなった。
しかしただ一人、その表情をかえなかったものがいる———……
隣国の王子、ショーン。
彼は片手に東洋のカタナ、もう片手には———…
両手を切られ、歯を抜かれた娘ゾンビのお散歩鎖を持っていた。
二人は結婚することとなった。
気が合ったのだ。
お互い真に愛する人がいる。それでも立場上必要とされる振る舞いがある。その苦しみ。
思いを同じくする二人なら——……
愛ではなくとも、やっていける、となったのだ。
二人は共通点が多かった。
ショーンの連れている婚約者だった娘ゾンビ。生前の彼女もまた、一時は自身の護衛騎士によろめいていた。
しかし今は、彼の隣にずっといる。
二人は微笑みあった。
ゾンビとの戦い、篭城の苦労、使用武器の自慢、そしてなにより恋バナ。二人は話すことがたくさんあった。
やがて二人には子供ができた。
真に愛する人は他にいる二人だが、立場上のこともあり、必死の家臣団により盛大に媚薬を盛られたためでもあった。
久しぶりにカタナと釘バットを振り回した二人だが、家臣の気持ちもわかる。二人は成長していた。
なにより子供に罪はなく、産まれてしまえばかわいいばかり。
二人は家族をふやしていった。
———その頃には、二人ともお散歩鎖をもつことはなくなっていた。
愛する人たちの体がもたなくなっていたのだ。
ゾンビはどんどん腐っていく。
防腐措置をしたが限界があり、乾燥させミイラ状態にしたが、出歩くことは難しく、それぞれの自室に寝かせていた。
そして、悲劇が起こった。
ミーガンの居室にしのびこんだお転婆な末娘が、なんだこれ?とレオナルドの腕を掴み、乾いて脆くなっていたその腕が砕けたのだ。
追いかけて入室したミーガンはそれを見て、思わず娘の頬を叩いてしまった。
泣く娘を前に、ミーガンは混乱し、自責した。
娘に手を挙げてしまうなんて——……ああでも、だけど!
かけつけたショーンのとりなしにより、娘は「お母様のだいじなものを壊してしまってごめんなさい」とあやまり、ミーガンもまた、「大好きなあなたを傷つけてしまってごめんなさい」と抱きしめた。
二人は思った。
限界だと。
大事な大事な愛する人は、すでに風が吹くだけでカサカサ粉が落ちている。
かつては元気にだしていたうめき声もすでになく——……
わかっていたのだ。彼らの魂は、すでにない。
失われた愛に、すがっていただけ——……
二人は、彼らを火葬することにした。
そしてその日、王宮の中庭に櫓をくんだ。
ミーガンの故国からも家族や友人、かつても仲間たちを呼んだ。美酒美食に楽団の演奏。皆が大いに喜んだ。
愛した人たちは派手好きだったので、見送るならうんと楽しく——……気の利く長男は櫓の下にイモを仕込んでいた。
火がつけられる。
ぼうぼうと燃え上がる炎のなか、彼らの愛が天へとかえる。
立ち上る煙を見ながら、二人は寄り添いあい、そっと涙を流すのだった——……
櫓の下から掘り出した焼きイモは、塩気がきいていて、とてもとても、おいしかった。
♡おしまい♡
ふざけてかきだしたらしんみりしました!
ありがとうございました!(´∀`*)




