女として
「『女』として』
私は独りで生きていく事を決意した。風俗嬢。私には他に生きる術を持たない。AV女優になったら恥と言う考え方ない。20になったら、AV女優になろうと思った。
施設はもう帰るつもりはない。お世話になった所である。だから、お別れしたかった。
「皆さん、お世話になりました」
そう言って、感謝の意を込めて言った。もうここには来れないから。
最初で最後の恋は見事に散る。
六年余り、絆を確かめた。だから、もう恋はしないだろうと思った。今でもその彼氏の写真を持っている。私の中で一番の宝物だ。
「私、水商売しようと思うんだ」
「君らしいな。合理的で金を稼ぐ手段に出る」
「恥じらいと言う言葉がないんでね」
「俺は結婚してもいいんだぜ。パートで働けるだろうし。君も」
「独りの方がいいみたい。ただやるだけで金が稼げる。理想的だと思う」
「まあ、俺も君の意思が分かって良かった。もう逢えないから。最後に、キスでもしようか」
「頬っぺたにね」
そして、夜が明けるまで、二人は広場に地をつけて話した。
「別れたら。もう一度逢えるといいな」
「私は大切な過去を学んだよ。好きだったよ」
「ありがとう」
そうして、「キス」の交換は終わり、そして、二人は別れた。出遭う事が無い事を知って。
「じゃあ」
そうして、彼氏が別れを告げて、行ってしまった。私は風俗嬢にならなくっちゃ。そう思った。ここに未練があるから、近くの風俗店で働いた。
独り暮らしはきっと、私は、淋しさから、よく散歩をした。煙草も酒も呑まない。時々、あの彼氏を思い出す。冷たい愛情が涙をそそる。やはり、まだ幼いのかもしれない。
もういない彼氏を想っている。客としている時、淋しさが紛れる。マットプレイとベッド。どちらも綺麗にこなす。きつくて辞めたくなる。上京してAVに出るつもりだ。
顔をネットで残す。永遠に消えない。でも、金は入るし、ただ映像に残る。大勢ひしめく中、名前が残ればいいなと想った。とにかく金の欲望しかもうないから。
そして、20になった。上京した。AVの面接を受けて、すぐに採用になった。明日、撮影を行うそうだ。私は明日になれば裏の有名人。大手のAV会社だ。新戦力になり、売れればいいなと思った。
住処は、金がどのくらい入るのか確かめて置くため、家具家電つきの部屋を借りる事にした。そして、撮影場所に行く事にした。電車で「通勤」した。
そして明るい照明に、迎えられた。説明を受けて、撮影に臨んだ。きっと、売れてマンション買って、独りで生きて生きたい。両親を恨む事もありつつ、今の自分になれた。彼氏は観ているだろうか。
人気が出た。サイトでは売り上げが上々で、いろんなAVを撮った。きっとこれで良かったのだろう。引退するまで、稼ごうと思った。それから、独りで時間を潰す。
正統派裏アイドルになったようだ。
彼氏は会えない方がいいかもしれない。もう恋心は失せた。
そして、またあの店に戻ってもいいかもねと思った。そんなに遠い距離じゃない。今はもう少し働いて、駅に近いマンションを買おうと思った。