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第12話 ゴミ令嬢に忍び寄る影

 リーフダムでの生活が始まってから、あっという間に、一か月が経過した。

 その間、わたしは身の回りの装備品を少しずつそろえていった。


 旅人用の丈夫なコート。

 長い距離を歩くためのブーツ。

 ゴミ拾いの時に手を傷つけない為の革グローブ。

 護身用のダガーナイフ。

 それにアイテム収納用のマジックバッグ、などなど。


 中でも超便利なのがマジックバッグ。

 その名のとおり、魔法の力が付加(エンチャント)された魔道具(アーティファクト)だ。


 見た目は普通のバッグだけれど、中は亜空間に繋がっていて、そこに大量の物を保管できる。

 入れた物の重さは無視されるし、バッグの中では時間経過の概念がないから鮮度を保ったままという便利効果を持つ、魔法のバッグだ。

 

 容量上限はあるものの、大量のアイテムを手軽に持ち運ぶことができるため、毎日沢山のゴミを拾うわたしにとって心強い味方。


 このマジックバッグはゴッズさんのお店で売られていた中古品だ。

 なんでもゴッズさんが現役時代に使っていたモノらしい。

 かなり年季は入っているけどまだまだ使えるし、ゴッズさん曰くモノとしての性能はかなり高いとのこと。


 値段は精一杯の価格交渉をしてみて金貨3枚。

 今のわたしにとってはかなり手痛い出費だったけど、新品で買った場合、値段はこの十倍はくだらない。

 グズグズしていると売り切れてしまうおそれもある。

 先行投資と考えて、わたしはこのマジックバッグを購入することにした。


 その帰り道、店先のショーウィンドウに反射する自分の姿を確認してみる。


 腰まで届きそうな髪の毛は、今はポニーテールみたいに後ろで一つに束ねている。

 長くお手入れにしてなかったせいでボサボサになってしまったせいだ。

 思い切ってバッサリとショートヘアーにしちゃうのもアリかもしれない。


 鏡の前でクルッと一回転。

 ポニーテールがふわっと揺れた。

 

「うん、なかなかサマになってるねっ」


 ガラスに映る自分の姿を見てニシシと笑う。


 そこにゴミ令嬢と蔑まれていたフレデリカ・ミュルグレスはいなかった。

 夢と希望に満ちた冒険者の少女――ミユルの姿があった。

 

(えへへ、なんちゃって……)

 

 装備を整えつつも、貯金も順調に貯まっていた。

 もうちょっとお金が溜まったら、自分で部屋を借りてもいいかもしれない。

 

 高架下でのホームレス生活からの卒業。

 自分だけの家。

 自分だけの部屋。


 想像しただけでワクワクしてくるよ。

 その日に向けて、今日も元気にゴミ拾いだ。

 

 がんばるぞッ! えいえいおー!


 ***


 そんな、リーフダムでの生活も板についてきた、ある日の早朝。


「え、ウソ……!?」


 いつものようにゴミ捨て場を訪れたわたしの目に飛び込んできたのは、()()()()()()()()だった。


「ヤダ……そんなことって……」


 わたしはもつれて転びそうになりながら、ヨタヨタとゴミ箱に近づく。

 そして思わず叫んでしまった。


「ゴミ箱にカギがついてる~~~~~!!?」


 ゴミ捨て場に設置されている大きなフタ付きゴミ箱。

 そのフタの部分にでっかい南京錠が取り付けられていた。


 わたしはすぐに次のゴミ捨て場へ移動することにした。


 大丈夫……大丈夫……!

 きっとここだけだよね!?


 そう自分に言い聞かせながら、次のゴミ捨て場へ急ぐ。

 だけど、その次のゴミ箱も、そのまた次も……

 

「なんでなのよ~~!?!?」

 

 状況は全部一緒だった。

 リーフダムの街中のゴミ捨て場にカギがかけられていたのだ!


 ふとゴミ捨て場の脇に設置された掲示板を見ると、一枚のチラシが張り出されていた。


 そこに書かれていたのは……


『近隣住民の皆様へ。最近、毎日ゴミをあさっている不審者がいるとの情報提供が複数寄せられたため、安全のためにゴミ捨て場にカギを設置しました。 ~あなたのそばのリーフダム生活ギルド〜』



「これが人間のやることかよおおおおおおお!!」



 わたしは頭を抱えながら、その場に崩れ落ちてしまった。




――――――――――――

 ステータス

――――――――――――

ミユル(本名:フレデリカ・ミュルグレイス)

性別/女

称号/ゴミ令嬢、ソロ討伐者、ホームレス、不審者←new

好き/クー、食べもの全般、お風呂

嫌い/虫

スキル/《ゴミ》

効果:ゴミをリサイクルする能力

――――――――――――

――――――――――――




作品を読んでいただき、ありがとうございます!


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