第10話 チートスキル……なのか?
スキル《ゴミ》。
わたしが星辰の儀で授かったスキル。
その効果はこうだ。
《ゴミをリサイクルする能力》
その発動には2つの手順を踏む必要がある。
1、対象物がゴミであること。
2、対象物に触れて『ゴミじゃない』と声をかけること。
これらの手順を踏むことでスキルは発動する。
リンゴの芯でスキル発動に成功した後、わたしは他のゴミでも試してみることした。
まず、空になったミルク瓶。
「キミはゴミじゃない!」
わたしがキーフレーズを叫んだ瞬間、ミルク瓶はキラキラと輝きだした。
中身を確認すると美味しそうなミルクが瓶いっぱいに入っている。
成功だ!
次に錆びた包丁。
「キミはゴミじゃない!」
これも成功。
スキルの発動によりボロボロに錆びた包丁は研ぎたてピカピカの状態になった。
調子に乗ったわたしは次々にスキルを発動した。
「キミはゴミじゃない……キミもゴミじゃない……! み〜んなゴミじゃない!!」
スキル発動のたびにゴミだったモノが、わたしにとって価値あるモノに変化していく。
「あっはっはっ〜、たのし〜!」
こうした試行錯誤の末、なんとなくスキル発動の条件も整理されてきた。
まず、ゴミの種類は問わない。
対象が食べ残しの生ゴミだろうが、壊れた道具だろうが、それがゴミであればスキルの対象物になり得る。
また、スキルの行使には、わたしがゴミに触れていることが絶対条件みたいだ。
試しに対象物から離れた状態でスキルの行使を試みたけれど、うんともすんともいわなかった。
更にすべてのゴミがスキルの対象になるわけじゃなくて、一定の条件があるみたい。
これはボロボロの毛布に対してスキルを発動しようとして分かったことだ。
「あれ……スキルが発動しない……?」
ちゃんと毛布に触れて「ゴミじゃない」を口にしているのに、スキルは発動されない。
「一体どういうことだろう……?」
しばらく頭をひねって考えた結果、とりあえずこう結論づけることにした。
このスキルの対象となるためには、そのモノの本来の価値が失われている必要がある。
例えばリンゴの芯は誰かがリンゴを食べた後のゴミだ。
人にとってリンゴの実は食べ物としての価値を持っている。
ということは、食べ終わったリンゴの芯はすでに食べ物としての価値を失った状態だ。
これは錆びた包丁にもいえる。
包丁の役割は食材を切断すること。
けれどボロボロに刃が錆びた状態では、切断するという役割を果たせない。
つまり包丁としての価値を失った状態。
だけど、毛布は人に温もりを与えるためにある。
どれだけ毛布が汚れたりボロボロになったとしても、毛布にくるまってしまえば、温もりを手に入れることはできるのだ。
つまりこのボロボロの毛布は、まだ毛布としての価値を失っていない。
対象物が本来の価値を失っているか?
これがスキルの発動の有無を分ける大事な条件らしい。
更に一度スキルの対象になったゴミは再びスキルの対象にならないことも分かった。
例えばわたしがスキルで再生させたリンゴをペロリと食べちゃったとする。
そうして手元に残ったリンゴの芯にもう一度スキルを使用しても、もうリンゴの芯は再生しない。
これはまあしょうがない。
何回もスキルの対象になるってことだったら、極論パンの食べ残しひとつあれば、一生食べ物に困らないということだ。
……とこんな具合に、色々手順や制限もあるけれど、それを差し引いてもわたしの手に入れたスキル《ゴミ》は、めちゃくちゃ便利で強力なスキルだった。
「ゴミさえあれば……わたしはリーフダムで生きていける……!」
こうしてわたしのゴミ拾いライフが幕を開けたのだった!
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ステータス
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ミユル(本名:フレデリカ・ミュルグレイス)
性別/女
称号/ゴミ令嬢、ソロ討伐、ホームレス
好き/クー、食べもの全般
嫌い/虫
スキル/ゴミ《効果》ゴミをリサイクルする能力
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