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12.目黒駐屯地(2)

アキラとマリは同じ部屋の別々のベッドに腰をかけていた。


満足そうな顔をしたアキラを見て、マリは不審に思った。

「カレーライスおいしかったね」


アキラは同意し大きくうなずいた。

「うん、最高だった」


「ねえ、アキラ。まさかとは思うけど、お替りはしなかったわよね?」


し、しまった。アキラは冷汗がでてきた。

「し、してないよ。…」


アキラの目が泳いだのを見て、マリが手を挙げた。


「ご、ごめんなさい」

アキラは両手で顔を覆い、謝った。


「アキラのバカ!」

マリがプリっとそっぽを向いた。

うーん、全然イケてない。ガッカリだ、とアキラは思った。


今回、いろいろなことが分かった。


新宿一番ダンジョンの崩壊の同日同時刻、全世界のダンジョンの崩壊が起こった。

世界の人口は激減し、予測では一割以下。

魔物は二週間くらいで、自然消滅した。

横浜もここと同じらしい。

日本は無政府状態。

三か月もたっている。


想像以上のことに、アキラとマリは正直驚いていた。



会議室に主要メンバーが集まって話し合いをしていた。


「この話どこまで本当なんですかね?魔法、身体強化、にわかには信じられせん」


アキラを聴取した女性が発言した。

「女の子には、嘘や誇張は感じませんでした。まさか心が男の子とは最初思いませんでしたが、変な女口調になったり、男口調だったりと不自然だったのも、あとで納得しました。」

どうやらアキラのぶりっこは、意味がなかったようだ。


次にマリを聴取した男性が発言した。

「男の子の方も嘘や誇張はないと感じました。普通に女口調でしたね。わざとらしさもなかったです」


「これだけの情報量、しかも二人の内容もほぼ同じ。作り話だとしたら、とんでもないことです。私は信じていいと考えます。」


「問題は市ヶ谷です。銃は市ヶ谷のものと確認がとれましたから、市ヶ谷と紛争になるかもしれません。」


「いや、魔法の水が重要です。飲料水が底を尽きそうです。このままでは二週間で全滅です。戦いどころの話ではありません」


「本当に魔法で水が出せるんですか?」


目黒が挙手をした。


目黒駐屯所の最高司令官、田所一等陸佐が目黒を見た。

「発言を許可する、目黒陸曹長。」


「アキラ君、女の子の姿をした子ですが、実際に水を出しているところを、この目で見ました。普通に美味しい水でした」


「ほんとかね」「魔法が実在するなんて」「これで助かった」


会議室がざわついた。


「そうなると市ヶ谷か…今度はどんな要求をしてくるのか、困ったものだ」


「市ヶ谷の江田は元ヤクザです。仲間が殺されたとなると、必ず報復してきますよ。」


「市ヶ谷と戦争になるのか?向こうは我々の倍以上の戦力だ。勝てるのか?」」


「市ヶ谷は討伐隊が多くを占めている。しょせん素人だ。勝てる勝算はあると思いますが」


「しかし重火器は圧倒的に向こうが多い。勝てたとしても被害が尋常じゃない」


「市ヶ谷も水不足のはずです。水を使えば、うまく交渉できるではありませんか」

ひとりの男が発言し、みんな頷いた。


田所が目黒に尋ねた。

「目黒陸曹長、実際に接してどうだったかね?」


「素直で良い子たちです。大切に育てていくべきと愚考しております」

と、目黒が答えた。


「目黒陸曹長、明日その子に水を供給してもらえないか頼んでみてくれ」

「はっ、努力いたします」


田所は何かを考えて、

「たしか田中先生が市ヶ谷と繋がりがあったな。交渉の役に立つかもしれん。先生と連絡を取ってみてくれ、至急だ」


「はっ、わかりました」

別の男が答えた。


「市ヶ谷の件は、対応策だけは考えるとしよう。とにかく明日の水次第だ。今日はこれで解散とする。以上」


田所が宣言すると、みなぞろぞろと会議室から出ていった。



マリは先ほどまで身体強化のイメージトレーニングをしていた。


食事をし、風呂に入り、着替えたので気分がすっかり良くなり、トレーニングにも前向きになっていた。光の線はイメージできないけど、意識を集中させると、お腹の中が温かくなる感覚が解ってきた。一歩前進。


「いずれは魔法も使えるようになるよ。」

「早く使いたいな」


しばらくして


「横浜に帰りたいね」

「うん、実際にこの目で見て確認しないと、この先進めないと思うの」


「だよね。明日目黒さんに相談してみよう」

「賛成、じゃあ寝ようか」


アキラはベッドの中で、これからの作戦を考えていた。


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