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11.目黒駐屯地(1)

半壊したコンビニの前で、二人は食事をしていた。


「ねえ、あれはどういうこと。早く教えて」

マリがアキラに尋ねた。


「あれは、魔力で全身を強化したんだ。身体強化ってやつ」

アキラが嬉しそうに答える。


「マリは、何か感じなかった?お臍のあたりとか」

「そう言えば、お腹の中が温かくなって、力が湧いてくるような感じがしたわ」



アキラは身体強化の説明をした。


それから、今夜の寝床を探しながら、マリは身体強化をやってみた。


結果、マリは常に軽い身体強化状態だった。しかし自分では、さらなる強化はできなかった。魔法のときと同じで、光のイメージができず、魔力操作ができないからだった。アキラが魔力操作で補助したらスーパーマンみたいになった。だからアキラは残念でならなかった。



その夜、ホテルの一室。


アキラは、ウォーターとファイアを使ってお風呂の準備をしていた。

明治神宮のダンジョンの中でウォーターの魔法陣を見つけたのだ。


それを眺めながら、マリは

「いいなー、私も魔法が使いたい」

と、つぶやいていた。


「光のイメージトレーニングをしたら、できるようになるよ」

アキラは、平然と答えた。


「はー、できる気がしないわ」

マリは、ため息交じりに返事をした。


「お腹の中の温かい感じが分かったんだ、練習すれば、いつかできるよ」


マリは、さらにため息をついた。


お風呂に入り、食事をしたあと、二人は寝た。

ベッドが一つしかなかったから、窮屈だったけど仕方がないと諦めた。


まだ暗いうちに、寝苦しくなって、アキラは目を覚ました。


男の顔が目の前にあり、生温かい鼻息が顔に当たった。


思わずビックリして、ベッドから飛び上がった。それは、見慣れた自分の顔だった。自分で自分の顔に驚いて、正直しょげた。明日からは、ベッドは別々にしようと、アキラは思い、再びベッドに横たわって寝たのだった。



翌朝、二人は渋谷駅に向かって歩いていた。

どこもかしこも瓦礫に覆われ、死の世界だった。もはや驚かなくなっていた。そして渋谷のスクランブル交差点に来ていた。


「目黒に自衛隊の基地があるけど、行ってみる?」

「うーん」


二人とも決めかねていた。新宿の件があったから正直怖かった。しかし近くを通ることになるから、それならいっそ、こちらから友好的に出向くのも有りかもしれないと考えていた。時間だけ虚しくすぎていった。


「君たちどこから来たんだね?」

後ろから声が聞こえた。


ギクッとして振り返った。

自衛隊服の男が一人現れた。真っ黒に日焼したオジサンだった。黒々とした顔から、目と歯が異様に白く見えた。アキラは思わず銃を構えた。


「銃を降ろして両手を上げろ」


後から別の声がした。しまった、前後から挟まれていた。さらに左から2名、右から2名現れた。気づかないうちに包囲されていた。アキラは、そーっと銃を降ろして両手を上げた。


地黒オジサンが笑顔で言った。


「おいおい、相手は子供だぞ」

「しかし隊長、銃を持ってるんですよ」


「全員銃を降ろせ。いいか、絶対に発砲するな」

「隊長!」


「これは命令だ」


地黒オジサンは銃を地面に置いて、両手を上げて笑顔で近づいてきた。安心感を出すているつもりだろうけど、目と歯が異様に白く浮き上がっていて、その恐さがすべてを上書きしている。マリも同様に感じているのか、ガチガチに震えていた。


「私は目黒駐屯地の目黒(まこと)陸曹長だ。何もしないから」


何と地黒の目黒の目黒さんとは!思わず吹き出しそうになったが、必死に堪えた。おかげで緊張が吹っ飛んだ。


目黒は二人に近づき、アキラとマリの肩をやさしく叩いた。

「いままで二人で頑張ってきたのか?大変だったな」


その瞬間、この人なら大丈夫かもしれないと感じた。


「話がしたいから、ついてきてくれるかな?」

「分かりました」「はい」


アキラとマリが返事をして目黒の後ろを歩いて行った。



やがて目黒駐屯地に到着した。


自衛隊の基地といっても被害は大きかったようだ。女性や子供もいたので、ここは安心できそうだと、アキラとマリは思った。


軽い身体検査と持ち物検査を受けて、別々の部屋に案内された。

分かれるときマリが抱きついてきた。


「マリ、質問されたら正直に答えるんだ。心配ない」

小さな声で囁いた。


「うん、わかった」

マリも小さく頷いた。


アキラが通された部屋には、男の自衛隊員一人と女の自衛隊員一人がテーブルに並んで座っていた。


「何か食べる?今日は特別にカレーライスあるのよ、どうかな?」

女性自衛隊員が優しく微笑む。


「ぜひ、お願いします」

アキラは、かわいい声で答えた。


しばらくしてカレーライスが出てきた。美味しそうな匂いに涎が出そうになった。イケない、イケない。なんてはしたない。ここはお嬢様ぶって優雅にいただこう。


しかし一口食べたら、もう止まらなかった。あっという間に平らげてしまった。しまったと思ったが後の祭りだ。マリ、すまん。心の中で謝った。


「あらあら、そんなにお腹が空いていたのね。お替りはいかがかしら?」


心が揺れた。しかしカレーには何物も勝てないのだ。


「よかったら、お願いします」

恥ずかしそうに上目使いで、さっきより小さな声で答えた。

どうよ、完璧じゃね?と心の中でガッツポーズをしたアキラだった。


その後いろいろ質問され、全部正直に話した。


魔法とか身体強化とか、どうせ最初は信じないだろう。でも駐屯地の様子を見たところ、水が不足していることは、なんとなく察せられた。必ず水魔法に食いついてくる。それを交渉材料にできると、アキラは考えたのだ。


最後に女性自衛隊員が

「部屋はいっしょがいい?それとも別々?」

と聞いてきた。


さてどうしたものか。しばらく考えてから。


「同じ部屋をお願いします。ベッドは別々で」

恥ずかしそうに、小さな声で答えた。よし!完璧!心の中でガッツポーズをしたアキラだった。



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