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名探偵ギャル宣教師スルーズ ~消えたデリシャスケーキ~ ─黎明編─

挿絵(By みてみん)

「さて、皆様にお集まり頂いたのは、他でもありません。ミーち……、こちらのミーナ嬢のケーキが行方不明になったからです」

「ハイパーグレートスペシャルデラックス桃デリシャスケーキね」

「そう。その……、ハイパースーパーなんとかケーキが行方不明になったからです」


 そう重々しく口にした後で、スルーズは後ろ手を組むとうろうろと歩き回る。キング亭のロビーには、彼女を含めてバレナ、リューカ、ウィズ、俺、そしてキング亭の女将であるミュラの計六人が集められていた。


「……あれ、レオンは?」

「勇者サマは出掛けちゃったんよ」

「ダメじゃん!?」


 早くもぐだぐだな予感である。レオンが犯人だったらどーすんだ。


「まあまあ。大丈夫っしょ。というわけで、この事件、あーしこと――この名探偵ギャル宣教師スルーズちゃんがむにゅっと解決して見せましょう!」


 なんか嫌な音だな……。そこはズバッといけよズバッと……。



名探偵ギャル宣教師スルーズ ~消えたデリシャスケーキ~ ─黎明編─



「さてさて、推理を始めるにあたって最初に聞いておかないといけないことがあります。そうですね。女将さん」

「はいはい。なんでもどうぞ」


 スルーズに呼ばれ、ため息混じりに苦笑するミュラ。若い娘の遊びに付き合ってあげようかね。という仕方なさをひしひしと感じ、俺は恥ずかしさに顔が赤くなった。


すいませんすいません!くだらないことに巻き込んでホントすいません……!


「ええと、事件当時──つまり今日なんですが、あーしら以外の客の出入りはありましたか……?」

「いや、ないよ。客はアンタらだけだし、他には入れてないからね」

「ふむ。なるほど。ちなみに女将さん、ケーキを見た覚えは?」

「いんや。昨日でかい箱をえっこら運んでるのは見たけどね。なるほどケーキだったのかい」


 話し終えてふう、と一息つくと、ミュラは「これでいいかい?」と口にした。


「あ、はい。どもです。ありがとうございました」


 仕事があるから。と退散する彼女の背中を目で追って、本当にすみませんでした。と俺は心の中で土下座した。


「と、いう訳で。女将さんの証言により、一つの決定的な事実が浮かび上がりました。────犯人は、この中にいる……!」


 言いながら、ずびしっ!とスルーズは俺に指を突き付けた。

 いやよりによって俺かよ。俺だけは絶対に違うだろなんだこの女。


「いやいや甘いよミーくん。被害者と思われていた人物が犯人だった。そういうパターンも往々にしてアルアルなのさ」

「やかましいわ。誰がミーくんだ誰が」

「ミナミくん?」

「バっ、やめろっ!」

「あだっ!?んっん……。と、とにかく、犯人はこの中にいる!」


 思わずド突いてしまったが、まあ今のは仕方ないだろう。

 多少のダメージなど気にもせず、今度はバレナへと指を突き付けるスルーズ。

 その指、一回へし折られた方が本人の為なのではないだろうか?


「……アタシに言ってんのか?あ?」


 指し示されたバレナが、口角をひくつかせてそう口にした。そりゃそう。誰だってそんな反応にもなるよな。


「……そうだよ。あーし、分かっちゃってるんよ。……犯人は、バレっち!あんただ!!」

「アタシがあんなでけぇケーキをどうにかしたってのか?面白れえ。説明してもらおうか」


 鼻で笑うバレナに、「おや?」と何かに気付いたようにスルーズが声を出した。


「おかしいですねぇバレナさん。あーしはケーキとしか言っていないのに、何故デカイと分かったんです?」

「昨日みんなで買いに行ったからだろうがッッ!」

「あ、うん。そーでした。失敬失敬」


 てへっ。と舌を出すスルーズ。控え目に言って殴りたい。


「冗談はさておき、さてミーちん。最後にケーキを見たのはいつ?」

「そりゃ、ロビーに来る前だから、一時間前くらいだな。確かにケーキは箱に入ってオレの部屋にあったのに……。楽しみに、してたのに……」


 声を上擦らせると同時に、ぽろ、と涙が溢れた。


「がんばっだ、ごほうびだっで……」

「わ、わ。ミーちん落ち着いて……」

「だ、大丈夫よ。すぐに見つかるから」


 スルーズやウィズが、慌てたように慰めの言葉を掛けてくる。

 ──ちなみに今のは演技である。元演劇部の本領発揮である。食べれないのは悲しいが、泣くほどではないからな。この中に犯人がいるなら、精々罪悪感に苦しむがいい。


「と、とにかく推理を続けるよ。まずバレっちが犯人だったところからね」

「誰が犯人だ。先に推理をしろよ迷探偵」

「ふっふっ。残念だったね……!既に推理は終わっているのだよバレっちくん」

「かー……!殴りてー……!!」


 イラッとしている様子のバレナを余所に、スルーズはおかしなキャラのまま眼鏡をくいっ、と持ち上げるようなモーションをしてみせた。


「バレっちは今から一時間前の間に、ミーちんの部屋に入った覚えはありますか?」

「へ?そりゃまあ、入ったことは入ったけど……。呼びに行ったからな」

「ほう?ではその時にケーキを食べることが出来たのではありませんか?」

「ぐむ……」


 部屋に入れるタイミングがあったのなら、必然そういうことになってくる。押されるバレナであったが、待て待て。と反論した。


「なんでアタシがミーナのケーキ食うんだよ!?動機がないだろ動機が」


 そう憤慨するバレナの側に寄ると、スルーズは彼女の肩にぽん。と手を置き、


「──お腹、空いてたんだよね?」

「」



「なにも殴ることなくなぁい?」

「るせえ!真面目にやれ!」

「……しょうがないなあ。じゃあ真面目に考えるとして……」


やっぱり今のはふざけてたんだ?


 そうして若干の思案の後で、スルーズは小さく頷くと口を開いた。


「バレっちにその気がなかったとして、“事故だった”ってのはどうかな?」

「事故、だった?」

「そ。状況を言うならこーよ。バレっちがミーちんの部屋に来たとして。乱暴者だから勢いよくドアを開けるでしょ?その振動で部屋が揺れ、ケーキが倒れてしまった。焦ったバレっちはその場で残さずケーキを食べて事なきを得たのであった」

「いや待て待て待て。一人で食えるかあんなもん」


 バレナから入ったツッコミに、スルーズは「確かに」と納得した。


「じゃあ違うかー」


 ええ……。何だったんだ今の……。ただひたすらバレナがディスられただけで終わったんだが……?


「じゃあ犯人はリューさん!貴女だ!」

「──ええ!?」


 バレナは違うと思った途端、スルーズのターゲットはリューカへと移行した。じゃあとかいう探偵がいてたまるか。……まーじでなんも考えてないんじゃないのかアイツ。

 そうしてスルーズはリューカの肩にぽん、と手を置くと、


「……お腹、空いてたんだよね?」

「いや雑!!」


 耐えかねてついツッコんでしまった。コントやってる訳じゃないよね?これ。俺のケーキの一大事なのよね?


「さっきと同じじゃん!もうちょいあるだろ!?こうさぁ!?」


「うるさいミーはさておき、リューさん。白状したほうがいいと思うな。あーし」


 いやミーて。騒がしい俺を本当にさて置いて、スルーズはリューカへの自白を促す。対するリューカはあくまでも真面目に「ち、違いますわ!」と慌てていた。


「わたくしお腹は一杯ですの。ケー……、ごはんを沢山頂きましたから」


────ん?


「そっかぁ。それじゃあ違うかぁ」

「いや待て今ケーキって言い掛けなかった?なあケーキって」

「じゃあ次ねー」

「いや聞けよ」


 明らかな犯人の失言のようなものを指摘する俺の声はスルーされ、迷探偵の推理は次へと移る。……流石に俺もこれには違和感を拭えなかった。スルーズの横暴をそのままにしているバレナ。自白し掛けたリューカを受け流すスルーズ。


う~ん……。なんか、不自然だなこれ。


「うぃうぃは──、うん。そういうことする筈もないからなしね」

「えっ!?いえ、こう、あるでしょう?私にも動機とか」

「ないない」

「テメェ、さてはいつもエール冷やさせてるからって、悪し様に言えねーんだろ」

「ちがっ、そんなんじゃないしー!」


 わいわいもりあがっている面々を、しらーっと冷めた目で眺める俺。……はぁ。と嘆息した後で、俺は皆に向けて口を開いた。


「──あのさ。みんななんか時間稼ぎしてない?」

「は、はぁー!?なぁにそれぇ!?」

「おいミーナ何言ってんだ。アタシらは純粋にケーキの在処を探してだな」

「そうそうそうですわよ」


 食い気味に反論してくるスルーズ、バレナ、リューカの三人と、何も言わず顔を被っているウィズ。その対比だけでも、何となく事情が飲み込めてきた気がする。

 スルーズのやりたい放題を誰もが放置してる時点でおかしいとは思ったんだよな。


「あのさー。ウィズ姉以外の三人、なんかやらかした?」

「んまっ!失礼ですわね。わたくしは頼まれたことをしただけで」

「あっ、馬鹿やめろ」

「ら~ら~!歌いたくなっちゃったなー!」

「~~~いい加減に……!」


 このまま詰問していても埒が明かない。流石にちょっと怒ってやろうかなと俺が動いたその時である。


「おーい。買ってきたけど、これどこに置けばいいんだっけ?」


自身と同じくらいの大きさの箱をえっこらと運びながら、レオンが入り口から顔を覗かせたのだ。


「────」

「ちょ!?勇者サマ!?」

「ばっ……!馬鹿やろ!ミーナの部屋だって言っただろ!こっち持ってくんじゃねえよ!」

「なんだよ人が頑張って買ってきたのに。これで二回目だぞ?」


 もっと褒めてくれたっていいだろ。とプリプリ憤慨しながらレオンは俺が泊まっている奥の部屋へと進んでいった。


 後に残された俺たちの間には、何とも言えぬ気まずい空気が流れ、そして──。


「嫌な、事件だったな……」

「……どうやらこの事件は迷宮入りみたいだね……。名探偵ギャル宣教師スルーズちゃん、完……。」

「おいちょっと待てお前ら」


 対ミセリア時よりもドスの効いた声が出て、スルーズに、バレナさえ身をすくめた。


「な、なにかなぁ?」

「……説明しろ」

「み、ミーちんこわぁい……」

「せ つ め い し ろ」

「は、はい……」


 真摯に問い掛けると、理解してもらえたようでスルーズは改めて口を開いた。


「あれは、つい先程のことだった……」



名探偵ギャル宣教師スルーズ ~消えたデリシャスケーキ~ ─真相編─ 



◇◇◇◇◇


「……おーい、ミーナ」


 ミーナがレオンたちの元を離れて少しして、彼女の部屋の前にバレナの姿があった。


「さっきのことなんだけどよー、お前無理とかしてないか?」


 レオンに頼まれれば、嫌とは言えず引き受けてしまう。これまでの彼女の性格を見知っているだけに、バレナの発言はミーナを心配してのものであった。

 しかし、部屋からの反応はない。


「……なあ、ミーナ。……オイ、聞こえてんのか?」


 反応はない。


「ミーナッ!!」


 ばんっ!と勢いよくドアを開けると、中はもぬけの殻であった。そしてあまりにも強い勢いにより部屋に衝撃が伝わり、壁沿いに置いてあった巨大な箱が揺れてぐらり、と──、


「あっ、やば……うわーッッ!!?」


 慌てて支えに行くバレナだが、大分横倒しになってしまったケーキを辛うじて支えている状態となり、元に起こすことも出来ずにっちもさっちも動けなくなってしまった。


「た、助けてくれぇ~!」

「どうしたの!?」


 情けない悲鳴を聞き付けて、次に部屋に来たのはウィズであった。室内には、ミシミシと今にも崩壊しそうな箱を涙目で押さえるバレナの姿がある。


「た、大変っ!……そ、そうね。そこまで傾いちゃってたら、一回下ろしたほうがいいわ」

「お、おう」


 このまま支え続けていては箱のほうがもたない。ウィズの提案でそっと箱を下ろすと、二人の前には完全に横倒しになったケーキの箱があった。


「ど、どうしようアイツ楽しみにしてたのに……」


 八つ裂きにされる……!と怯えるバレナに苦笑しながら、しかしウィズは、「仕方ないわよ」と口にした。


「なってしまったもの、起きてしまったことは仕方ない。悪気があってやった訳じゃないんでしょ?だったらちゃんと謝って事情を説明すれば、分かって貰えるわよ。それに、少しくらい形が崩れちゃっても、味に変わりはないと思うし」

「そ、そっか。そうだよな……」


 そうして頷き合う二人であったが、ふとバレナがこんなことを口にした。


「それはそれとして、コイツ倒したままは不味いよな……。なあウィズ、魔法でどうにかなんねーか……?」

「うーん……。そうね。やってみましょうか」


 思案の末にそう口にすると、ウィズは横倒しになったままのケーキの箱へと手をかざした。


「【ラビド】!」


 魔法球として竜の里へ旅立つミーナに持たせた浮遊の魔法である。これが掛かることで物体の重量は無視され、空気と同等──空気中に浮遊する程に軽くなるのである。


「そのままだと天井まで飛んでいっちゃうから、バレナちゃんは押さえてて!」

「お、おう」


 ふわふわと浮き上がる箱に手を添えるバレナ。巨大な箱が宙に浮かぶ光景は実に異様でともすれば少し楽しいのだが、今はそれどころではない。


「じゃあ、なんとか魔法を制御しているから、ゆっくり起こしてみてくれる?片側を上からそっと押すだけで動くはずよ」

「分かった!」


 ラビドの行使を続けるウィズの言葉に従って、バレナは箱の端にに触れようと手を伸ばし──、


「やっほ~い!二人して何してんのーっ!!」


 スルーズが元気よくそこに飛び込んできた。


「どわっ!?」

「きゃあっ!?」


 こそこそ作業していた二人にとって、それは心臓が止まるほどの衝撃である。特にウィズは驚いたショックでラビドへの集中が途切れ、


っどべしゃぁぁぁ!!


 結果。浮いていた箱が浮力を失って床に叩き付けられ、中身が盛大にその場に飛び散ったのであった。


「…………あの、えっと……、なんかごめん……」

「……………………」


 何やらヤバイことが目の前で起きてしまい、とりあえず謝るスルーズ。間近でケーキ爆発を浴びたクリームまみれのバレナは、目をぱちぱちとさせていたが、ギギギ、とウィズに首を向けると震える口を開いた。


「た……、多少見た目が崩れても──」

「バレナちゃん落ち着いて。多少じゃない。多少じゃないから。これはもう無理」

「わぁぁぁぁどーすんだこれえぇぇ!!」

「え、ええと、あーしお邪魔でしたかね?じゃあこれで……」


 万策尽きたとばかりに慟哭するバレナに、その場を逃げようとしているスルーズ。ウィズは一瞬思い悩んだ後で、がっしとスルーズを取り押さえた。


「……私に考えがあるの。スルーズさんは、リューカちゃんを起こしてきて」

「えっ、でも……」

「お ね が い ね?」

「ひゃ、ひゃい……」


◇◇◇◇◇


「そうしてリューさんを交えた四人で元ケーキを平らげ、外が騒がしいから向かい、その後で一番足の速い勇者サマにケーキの買い出しを頼んだというわけなのさ。ちなみケーキはメチャ美味で、お行儀悪いけど四人で夢中で食べちゃったんだよね。八割はリューさんだけど」


 そこまで話し終えた後、スルーズは肩を竦めると「ふう」と息を吐き出した。


「まさか真実に辿り着いちまうとは。流石だよミーちん」

「いやお前が勝手に全部白状しただけだからな?」


 間髪入れないツッコミを浴びて、「アウッ」とダメージを受けるスルーズ。今日のコイツはなんなんだろうな、マジで。


「やはは。──なんか、ごめんね?」

「……分かったよ。色々と理解した」


 諦めたように苦笑する俺であったが、真面目組であるバレナとウィズの二人は、心底申し訳ないといった様子で項垂れている。


「ほんっと、悪かった!」

「ごめんなさいね……」


 そこまで責任がないにしても、スルーズもこの半分くらい神妙にしてくれないものか。ちなみにリューカは普段のままだ。


「わたくしは頼まれてケーキを食べただけなんですのよ。美味しかったですけれど、もうお腹いっぱい……」

「やれやれ……」


 さて一通りの真相を聞き終え、俺は嘆息した。呆れたから、とか怒ったから、とかではない。


 なんっだそのシチュ。滅茶苦茶面白そうなんだが??なんで俺は見れないんだ!??


 純粋に羨ましかったからである。そんなトンチキイベント絶対に面白いに決まってんじゃんよ。なんてこった俺がミセリアに絡んでいる間に……。

 とりあえず、皆に言うべきことは言っておかねばなるまい。


「……でも、リューカはさておき。こんな茶番やらずともちゃんと話してくれればそれで問題はなかったんだよ?」


 内心では羨望に歯噛みしつつ、表面上はそう口にした。確かにケーキ食べれなかったら悲しいけど、パーティーのみんなが悪意を持ってそういうことをする人間じゃないことは他ならぬ俺が一番分かってるし。事故を責めるほど狭量じゃないのよ。

 そんな俺の言葉を受けて四人は互いに顔を見合わせると、そっかぁ、と息を吐き出した。


「悪い方向に考えすぎたかしら……」

「ま、これで一応ケーキも戻ったしな。存分に食べれるじゃねえか。良かったな。ミーナ」

「そうそう」


 これでひとまずは問題解決か。と、三人から安堵の笑顔が溢れる。

 ────ん?


「えっと、ケーキなんだけど……」

「もう誰も取ったりしねーから安心しろよ」

「げふっ。ですわ」


 しかし俺は、どうにも彼らの言葉に引っ掛かりを覚えて首を傾げていた。

 うーん。どうやら俺と四人との間に何やら大きな勘違いがあるらしい。何やら一件落着のような空気を醸し出している面々に向かって、俺は眉をひそめながら口を開いた。


「……あのさ。勿論だけど、あのケーキは一人で食べる訳じゃないからね?みんなで食べようと思って買ったんだから」

「えっ」

「えっ」

「えっ」

「えっ!!!!(くそデカボイス)」


 弛んでいた空気が一気に凍り付く。ニコニコと笑顔を浮かべる俺が次に何を言わんとしているのか察知したのだろう。四人はそれぞれ後退を開始した。


「あ、そうだわ。ハーブの調合をしないと!」

「やっべ!アレの調合しねーと!」

「あっえっ!勇者サマの調合しないと」


 調合しすぎだろこいつら。勇者の調合って何だよ。


「あわわお待ちになってぇ……!お腹が重くて逃げられませんのぉ……」

「さ、みんなでケーキ食べようね~!」


 俺が笑顔でそう告げると、みんな一目散に逃げ出したのだった。


「ケーキはもう勘弁して~!!」


 はい。お後がよろしいようで。


 ちゃんちゃん。

そのあとハイパーグレートスペシャルデラックス桃デリシャスケーキはブラウン商会に持ち込まれ、皆でおいしく食べました。

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