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竜の里 『魔王軍強襲(前)』

挿絵(By みてみん)

 リューランド、リューミリア、リューメイ、リューカ、メソ、レオン、俺、それから騒ぎを聞きつけた十数人のドラゴンたちが家の外に集まっている。

 その視線の先──空の上には黒髪に黒い翼を生やし、全身を黒く染めた一人の男が浮かんでいた。鳥の頭を模した仮面を付けたその男こそ、魔王軍幹部が一人。知将シュバルツだ。


「ふん。随分と手間取らせてくれるものだ」


 皆を見下ろして、シュバルツが呟く。簡単に空にかき消えてしまいそうなその声は、何故かハッキリと俺の耳に届いていた。


 シュバルツ。四人の魔王軍幹部の中では最も真面目で勤勉な存在である。気まぐれなアシュレインなどとは違って命令はちゃんと遂行するし、成果も上げるので魔王からの信頼も厚い。……しかし、この邂逅はいくらなんでも早すぎる。

 クエハーでのシュバルツは、確かに序盤から出番はあるがそれは魔王城での会合など敵側サイドでの話。レオンたち勇者パーティの前に姿を現すのは、ゲームも中盤を過ぎた頃──魔王軍支配地域での話だった筈だ。少なくとも竜の里をシュバルツが襲撃するなんてイベント、俺は知らないし聞いたこともない。今まで一度も目にも耳にもしていないのだから、本来そんなものはないと考えた方がいいだろう。

 集った俺たちをぐるりと見渡すと、シュバルツはフン、と鼻を鳴らした。


「ようやく集まったか」

「あいつは……」


 レオンやリューカにとっては初対面の相手だ。困惑する空気を破るように、シュバルツは口を開いた。


「この場の誰とも初顔であろう故、もう一度名乗らせて貰おうか。──我が名はシュバルツ。魔王軍幹部が一人にして、人間どもに仇なすものである」


 大層な名乗りを上げて、シュバルツはこちらを睨めつけた。

そうだな。この中で彼を一方的に知っているのは、恐らく俺だけだろう。しかしそんな俺でも、シュバルツが急に竜の里に現れた理由までは分からない。気まぐれか、それともずっと俺たちを付けていたとでも言うのだろうか。

 ──まさか。

 ふと、ここを訪れる最中にあったエンペラーコンドル戦を思い出した。ガルム山脈に暮らす筈のエンペラーコンドルたちが、コンドルリーダーの指揮の元何故か自分達よりも明確に強いと分かるドラゴンに挑んできたという一件だ。

 あれも不可解だったが、シュバルツの意思が介在していたとすれば納得出来る。……しかし、どうして。


「改めて言おう。竜ども。勇者たちと、魔王軍──魔王様に仇なした竜の娘を差し出せ。さもなくば貴様らも魔王軍に反抗の意思を示したとして敵として認定し、攻撃させて貰う」


 ……魔王、様……?

 随分な言い種だが、その言葉を受けて尚、里長であるリューランドを筆頭にドラゴンたちは冷静であった。


『さて、何の話やら?リューミリア、何か知っとるか?』

『さあ?何だろうねえ?リューメイはどうだい?』

『さっぱり分かりませんね』

「──貴様ら」


「勇者様」

「ああ。分かってる」


 そこから少し離れた暗がりに、俺たち三人はいた。小さく呟くようなリューカの言葉を受けて、レオンが頷く。こうなってしまった場合についても想定の内ではあったのだ。

 風呂にて、リューカは俺に語っていた。自身は招かれざる客なのだと。


「彼らに里を危機に晒してまでわたくしたちを庇い立てする理由はありませんわ」


 その言葉通り、中立である彼らが勇者たちを売り渡そうがどうしようが自由なのである。まあ、そんなこと絶対にしないだろうとは思うけど。

 それよりも俺の疑念は最初からずっとシュバルツへと向けられていた。彼の口にした言葉の中に、不可解なものがあったのだ。


「そして同時に、わたくしたちが隠れる必要もありません。懸念事項は、この地が戦場になってしまうことだけ。それだけは何としても避けませんと」

「ああ。だから姿を見せてすぐ、ここを離れる必要があるな。リューカ、タイミングを合わせて変身出来るか?」

「問題ありませんわ」

「なら大丈夫だ。合図で変身したリューカに乗って、大至急ここを離れる。連中も俺たちを無視して中立の竜たちを怒らせるような真似はしないだろ」

「そのくらい、賢明であってほしいですわね。さ、ミーナ、いきますわよ。……ミーナ?」

「あ、は、はい!」


 考え事の最中に声を掛けられ、慌てて返事をする。シュバルツのことは気になるが、今はこの局面を切り抜けることが優先なのは間違いない。なにしろ原作にないイベントなのだ。今まで以上に慎重に臨まなければならない。


「分かりまして?ロープはないので、合図と同時にわたくしにしっかりしがみついて下さいね」

「了解です!」


 俺の返事を受けて小さく頷くと、リューカとレオンはシュバルツへと視線を戻した。相変わらず戦略というか戦術というか、勇者パーティだけあってその辺の知恵が二人ともずば抜けているな。と改めて思い知らされる。

 俺だったらわたわたしているだけで何も浮かばずにタイムリミットになってしまいそうだ。


 そうして俺たちは歩き出す。しかしその時、リューランドの声が聞こえてきた。


『ほぉ~。そんなことがあったとは知らんかったのー』

「ふん。どうだかな」

『まあ、それはさておき、じゃ。それで、その竜の娘とやら、名はなんというのかの?』


 のらりくらりとシュバルツの言葉をかわすリューランド。リューカの作戦通りなら、彼がリューカの存在を否定した時こそが戦闘開始の合図、とのことだったが……。


「狸爺め……。リューカ、名はリューカだ。……どうだ?心当たりでも──」

『リューカちゃんを差し出せじゃとおぉぉぉォォォォッッ!!!?』

「ぬぁ!?」


 突然の豹変に、シュバルツだけでなくこちらまで仰天してしまった。今までの柔和で飄々とした態度は何だったのかと言わんばかりに、リューランドはキレ散らかしている。


『魔族がなんぼのもんじゃい!やったろうやないけ!!』

「お祖父様!?」

『のう皆の衆!!今こそワシらの力を見せてやろうぞ!』

『『オオー!!』』

「お祖父様ァ!!?」


 遠巻きにリューカが突っ込むのも無理はないだろう。最早飄々とした態度云々じゃない。中立とは何だったのかレベルでリューランドは荒れている。なんか周りのドラゴンたちも同調しているし、このまま全面戦争が始まってしまいそうな勢いだ。


「ちょっとお祖父様!皆様も……」

『諦めな。リューカ』


 困惑するリューカに遥か頭上から声を掛けたのはリューミリアである。


『あの人は孫馬鹿だからね。ああなるのは自明の理さ』

「……ですけれど、竜族は……」

『勘違いするんじゃないよ。みんながアンタの為に戦おうってんじゃない。元よりあたしらが中立なのは、人と魔族、どちらにも興味も関心もなかったからさ。けど私やアンタが人間を好きになって、そして魔族が舐めた態度を取ってきた。どちらに肩入れするかなんて、考える必要もなかろうに』

「お祖母様……」

『あんな鳥ども、晩飯の足しにしてやるさね!』


 そうしてリューミリアもまた、敵軍に向かうべく羽ばたき始める。竜たちはいよいよシュバルツたちに向かおうと動き出し、そしてシュバルツは口の端をつり上げた。


「────ぁ」


 呆けた様子でそれを見送っていた俺だったが、ハッと我に返って声を上げた。


「っ、あ、だ、ダメ!みんな、待って!」


 大声を出すも、竜たちの咆哮にかき消されて全く届かない。けれど、この一瞬に皆の命が掛かっている。そのまま黙って見ている訳にはいかなかった。


「ッ、リューカさんっ!!」

「──分かりましたわ!」


 そんな俺の様子を隣で見ていたリューカは、自身が何を求められているのか理解したのだろう。大きく息を吸い込むと、


「お待ちなさいッッッッッ!!!!」


 と、大気が震える程のとんでもない大声を上げたのである。


『リュ、リューカちゃん?』

『うるっさい子だね……』


 その声の破壊力は凄まじく、竜たちもカラスたちも皆一様にリューカへと目を向けていた。それにしても凄まじい声量である。咄嗟に耳を塞いでもキンキンしているくらいだ。俺はまだ大丈夫だったが、不意を打たれたレオンは耳に大ダメージを受けて悶絶している。……ごめんね!


「リューカ、おま……」

「緊急事態でしたの。ごめんなさい勇者様。……ミーナ、これでよろしくて?」

「っ、はい!ありがとうございます!」


 皆がこちらを注目している今このタイミングしかチャンスはない。俺はリューカからバトンタッチすると、自分でも出したことのない大声で皆に呼び掛けた。しかしそれも無理からぬことだろう。


「聞いてください!あの鳥はっ!体に呪いを持っていて、口から生き物を殺すガスを吐き出しますっ!決して触れてはダメですっっ!!」


 なのである。シュバルツが連れたカラス──もとい、デスクロウはクエハー終盤に登場する鳥型モンスターである。同時期に登場する他の魔物に比べれば体力や防御力こそ普通なのだが、そんな連中に肩を並べられる程には、一芸に秀でた存在と言えるだろう。

 それが、今俺が口にした即死ブレスだ。デスクロウは特殊技の【デス・ブレス】を持っており、これは当たれば相手を即死させるというとんでもないものなのである。ウィズやレオンに速度上昇の装備を付けて先手を取って全滅させるくらいしか対抗手段がなく、下手すればあっという間に全滅させられかねないトラウマモンスターなのだ。


『なんじゃと!?』

「なにッ!?」


 俺の言葉を受けて、リューランドたちと、何故かシュバルツも驚愕の表情を見せている。しかしその後の行動は早く、間髪入れずリューランドは軽快な声で仲間たちへと呼び掛けていた。


『そいつはいいことを聞いたわ。良いか皆の衆!あの鳥は食ってはならん!遠方より焼き殺すのじゃ!』

「ゴオォォォォォォッッッッッ!!!!」


 今度こそ竜たちの叫びが里中に轟くと、皆翼を広げて一斉に飛び立った。敵が動き出したことを察知して死の息を吐き始めるデスクロウたちであったが、


『第一陣!放てぇい!』


 リューランドの指揮の元、横並びになった竜たちが口を開くと、真っ赤に燃え盛る口内から火球が一斉に放たれ、大爆発に飲み込まれていった。


「……ち。八割は殺せると踏んでいたのだがな……」


 初見殺しの強敵を揃えて勝ちを確信していたのだろう。当てが外れたことを苦々しく吐き捨てると、シュバルツは後方へと舞い上がった。


「っ、逃がすか!リューカ!飛べるか!?」

「ええ!勿論!練習の成果を見せて差し上げますわ!」


 レオンの言葉を待っていたかのように意気込むと、リューカは静かに息を吐き出して目を閉じる。彼女の体が光を放つと、次の瞬間には周囲の皆と似通ったグリーンドラゴンの姿がそこにあった。

 どんなハードな訓練だったのかは分からないが、本当に彼女は変身を己のモノにしているようだ。


「頼もしいな!──よっと」


 身を低くしたリューカの背に飛び乗ると、レオンはちらりとこちらへ目を向ける。


「ミーナ。アイツについて何か知ってることはないか?」

「っ」


 レオンの言うアイツとは、シュバルツのことだろう。勿論彼についても、俺は皆が知らない情報を知ってはいる。だが、それを話してしまっても良いものなのだろうか?ギルディアの障壁への言及とは違い、流石に魔王軍幹部の情報を知っているとなると、世界学者だから、では通らないのではないだろうか。


「彼は、シュバルツは──」


 分からない。としらを切ることは簡単だ。そしてそれが一番妥当であることも分かる。

 ──けど、デルニロではそれで失敗した。

 そうだ。出し惜しんで仲間を危険にさらすくらいなら、俺が疑われた方がずっとマシなんだ。


「シュバルツは、氷の魔法を使う幹部です。遠距離なら氷の矢を放ち、近距離では氷の剣で相手に切り付ける、厄介な奴です」

「そうか……」


 面倒なギミックを持たず、魔王軍幹部の中では比較的与し易い相手であるシュバルツ。しかし彼とて魔王軍幹部の一人であり、相応の実力者であることを忘れてはならない。ゲームでも正しい準備をして挑まなければ簡単に負けてしまう程には、彼は真っ当な強敵であった。


「魔王軍幹部というだけあって、普通に強敵です。気を付けて……」

「──分かった。ありがとな。当初の予定とは変わっちまったな。ミーナは安全な場所に隠れててくれ!行くぞ!」

「ぎゃう!」


 俺の話を聞き終えて。レオンは剣を構えると、リューカと共に大空へと飛び出した。


「…………」


 そんなレオンを眺めていた俺だったが、彼の言葉とは裏腹に戦っている竜たちの元へと走り出していた。といっても、考えなしという訳ではない。思うところがあっての行動なのだ。

 争っている竜たち一人ずつに目を送り、灰色の体を探していく。果たしてそれを見付けると、俺は激戦が繰り広げられるそこに駆け寄った。


「メソさぁん!!」

『おお!?アンタか!どうしたんだ。ここは危ないぞ!?』

「すみません!お願いしたいことが!」

『むっ?』


 そこにいたのは先程ぶりであるメソであった。地上からデスクロウたちに火球を浴びせている彼であったが、こちらの言葉を受けとると頭を寄せてきた。


『話を聞こう』

「あの、実は──」


 俺の願いを聞き終えると、メソは『むむむ』と唸ったまま首を上げた。


『…………よし、分かった。確かに引き受けよう』


 そうして彼は翼を広げると、その場から飛び上がり、戦場とは別の方角へと飛び去ったのであった。



「うおおぉぉぉッッッッ!!」

「チィッ!」


 雄叫びと共に迫るレオンの姿を認めると、シュバルツは後方へと離れた。勇者と近接戦闘するのは得策ではないと判断したのだろう。彼の指揮でデスクロウたちが肉壁の如くレオンとの間に割って入って来る。


「邪魔だ!」


 デス・ブレスを吐かせる暇も与えない。間髪入れず剣を振るうレオンであったが、その剣でカラスたちを斬ることは叶わなかった。何故って、単純な話だ。ドロドロに溶けた剣身では、刃としての機能を発揮出来ないから。


「だぁッッッッ!!」


 レオンも最初の一撃でその事に気が付いたらしく、早々に相手を切り裂くことを諦め、鈍器としてデスクロウたちを叩き伏せる戦法に切り替えていた。勢いよく脳天を叩き潰されたカラスたちは、あるものはそのまま絶命し、またあるものはフラフラと飛行している折りをリューカの炎で焼き尽くされた。こういう戦闘中においての機転は流石勇者、ずば抜けていると言えるだろう。

────と。


「ぎゃあぁん!」


 突如リューカが声を上げたかと思いきや、その場から急ぎ移動した。


「うわっ!?リューカ、なん──」


 慣性の法則により転び掛けるレオン。苦言を呈そうとする彼だったが、次の瞬間これまでいた位置に氷の矢が降り注ぐのを目の当たりにすると、自身の頬をぴしゃりと叩いた。


「すまんリューカ!油断した!」


 敵はデスクロウたちだけではない。その奥からこちらを狙うシュバルツもまた、最大限の警戒をしなければならない相手なのだ。


「リューカ、アイツに出来るだけ近付けるか?」

「────ぎゃうっ」


 短いいななきを肯定と判断して、レオンは体勢を立て直すと再度剣を構えた。


「よし、頼む!」


 シュバルツの命令によりデスクロウたちが迫る中、リューカは強く羽ばたくと大群の中に突っ込んでいく。即死の呪いを持つ相手にまるで自殺行為にも見える行動である。


(……自棄でも起こしたか……?)


 短慮にも見える勇者の行動に呆れるシュバルツであったが、直後彼は細めた目を見張ることとなる。


「ぬ!」


 カラスたちを吹き飛ばし、レオンとリューカは真っ直ぐにシュバルツへと向かって来ていた。速度を上げるリューカの起こす気流によって、吐かれた呪いガスや、デスクロウ本体もまとめて蹴散らされているのだ。正しく攻防一体、というやつだろう。


「厄介だな!勇者というのは!」


 下がりながら氷の矢を射ち放つシュバルツ。しかしそんなものでレオンを止められないということを、彼は重々に理解していた。成る程あれだけ自信に満ち溢れたギルディアとエルローズを退けるだけのことはある。そうレオンを称賛するシュバルツ。


「おおおおおおッッッッ!!」


 最後、リューカの体を蹴って弾丸のように飛び出したレオンは対にシュバルツの懐に入り込んだ。気合いの雄叫びと共にその剣を振りかぶるレオン。


「チッ」


 対するシュバルツは、最後の切り札を発動する。自身の体から、結晶のように尖った氷の塊を生やしたのだ。シュバルツの三倍以上の大きさの氷塊が彼を包み込む。攻撃、というよりは防御に特化したスタイルというべきだろうか。


「そんなもんッッッ!!!」


 瞬時に判断したのだろう。レオンの足元に一瞬魔方陣が浮かんだかと思いきや、その手にした剣が赤く発光を始めた。火魔法を剣に込めているのだろう。そしてレオンはそれを氷塊へと叩き付け────、


 ばぎいぃぃぃぃぃん。


 音を立てて砕けたのは、レオンの剣の方だった。


「っ、あ……?」


 デルニロの時のような故意によるものではない。火魔法の練習によってボロボロになっていたそれが、対に限界を迎えた結果だった。今の彼が使用していた剣は、フィーブで用立ててもらった汎用的なものである故、こうなることは自明の理であった。

 そして当然ながら武器を失って出来た大きな隙を、敵であるシュバルツが見逃す筈はない。


「ふ。狙いも良い。だが勇者よ、運に恵まれなかったな」

「しま──っ」


 次の瞬間射ち出された氷の矢に射抜かれて、レオンはその場から吹き飛ばされていた。


「ぎゃうぅっ!?」

「ぐ、く……」


 咄嗟に背でレオンを受け止めるリューカ。レオンは気絶こそしていないが、片腕や腹などが凍り付いており、満足には動けない様子であった。


「やれやれ。しばらく大人しくしているんだな」


 シュバルツの言葉と共に、そんな二人にデスクロウの大群が迫る。先程までの状況から一転、動けないレオンを抱えてはリューカも逃げ回るしかない。


「レオン!リューカ!」


 下から様子を見守る俺には、もどかしくも声を上げることしか出来なかった。

こんな場面で、いつも俺は無力だ。──くそ、何か、出来ることは──。


 宣言した通りに防戦一方となったレオンたちを眺めると、「ふん」とシュバルツは鼻を鳴らす。そうして彼は何を思ったか、カラスたちの合間を縫って地上へと急降下を始めた。その狙いは────、あれ?こっちに────。


「────え?」

「私が用があるのは貴様だ。娘」


 あちこちで爆発が起き、爆音轟く戦場にて。魔王軍幹部シュバルツが今、俺の目の前に降り立ったのだった。



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