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フィーブ 『新たなる冒険の幕開け』

挿絵(By みてみん)

「……で。どういうことか説明してもらおうか」


 時間も場面も移り変わってマーブル亭にて。仁王立ちするバレナの前で、人の姿に戻ったリューカが正座させられ小さくなっていた。

 バレナの周りにはウィズやスルーズにレオンと俺。パーティメンバー全員が集まっている。


「あの、わたくしにも訳が分からなくて……」


 困ったように笑うリューカに、なるほど。とバレナも笑みを浮かべる。


「そっかそっか。分かんねえならしょうがねえよなぁ?」

「そうそう。そうなんですの仕方なく」

「っざけてんじゃねえぞごるぁ!!!」

「ひいぃぃぃぃぃぃっっ!!?」


 一瞬のうちに般若の形相と化したバレナに詰め寄られ、ホールドアップして悲鳴を上げるリューカ。


「てめぇ今の状況分かってんのか!?なあおいデカ女よぉ!?」

「じょ、状況?」

「お前がこんなぽんぽん竜になっても許されてるのは、曲がりなりにもお前が竜の姿でこの町を守った実績があるからだ。もしこれをセタンタなんかでやってみろ。即王国軍に囲まれてアタシら全員縛り首だろッッ!!!分かってんのかこらあぁぁぁぁッッ!!!!」

「ひいぃぃぃぃぃ殺されるうぅぅっっ!!!!」


 王国軍と言わず今すぐ殺されそうな勢いにリューカの悲鳴が上がる。怒り心頭のバレナに、スルーズもそうだそうだと同意した。


「そういえば有耶無耶になったけど、リューさんあーしの店も壊しちゃったじゃん」

「貴女のじゃないでしょ」

「それはともかく」


 そんなやり取りに横から口を挟んだのはレオンであった。頭を掻きながら口を開くレオン。


「助け船を出してやりたい気持ちはあるんだが、……悪い。俺もバレナに同意なんだ。流石にいきなり竜になられちまうのは困ると言うか……」

「ふぐう……」


 レオンに言われると流石のリューカも堪えたのか押し黙る。

皆からの視線が集まり悲痛な沈黙が流れた後で、リューカはぽつり、と漏らした。


「何とかする方法は、一つだけ、ありますの……。でも……」

「どんな方法?」

「……その、えと……」

「てめぇよぉ……」

「待ってバレナちゃん。……ねえ?リューカちゃん。今はどんな小さな可能性にでも賭けるべきだと思うの。……話して貰える?」


 歯切れの悪いリューカに業を煮やして詰め寄らんとするバレナであったが、それを制したのはウィズであった。優しく言葉を掛けられて、リューカは恐る恐る口を開く。


「わ、わたくしの故郷に行ければ、何とかなるかもしれませんの。変身は竜族の秘奥技と聞きますし、お母様やお婆様なら、何か知っている筈ですわ」

「あん?」


 手っ取り早く具体的な解決策が飛び出して、バレナは面食らったような声を上げていた。


「何だよあんじゃねえか策が。だったら今すぐ実家に帰って来い」

「そ、それが……」

「あんだよ」

「実家の場所、…………分かりませんの」


「「「「は?」」」」


 レオン、バレナ、ウィズ、スルーズ。四人の声が重なった。俺は分かっていることなので、押し黙ったまま流れを見守っている。

 周囲のリアクションを見渡した後で、小さくなったままリューカが続ける。


「わたくしの故郷は海に浮かぶ島ですの。小さい頃に人間の船に乗って、そのままうっかり寝てしまってこちらの大陸に来たものですから、その、帰り道が分からなくて……」

「んだよ~」

「そうなの……」


 落胆したような声を出す周囲。そう。この会話こそが竜の里編の突入フラグなのである。この後でレオンが、とにかく情報を集めよう。と言い出してフィーブで聞き込みを続けると、トールが伝承で聞いたという竜の里のヒントを教えてくれ、それを頼りに向かうこととなる。

 ちなみに竜の里編はリューカ単独イベントとなっており、リューカとレオンの二人だけで進行するものだ。故に俺は他の皆同様お留守番役なのだが──。

 リューカ、他のみんなも、ごめんな……!


「あの……」


 気付けば俺は、その場で声を漏らしていた。当然の如く皆の視線を集めると、息を飲み、そして俺はそれを口にする。


「私、知ってますよ。竜の里の場所」


 二人だけのイベントを邪魔するのは本当に忍びないし申し訳ないと分かってはいるのだ。いるのだが、どうしても抗えなかった……!

 だって竜の里とか超見たいじゃん!行きたいじゃん!

 ドラゴンいっぱい竜の里!イベントも隠しアイテムも目白押し!クエハー世界に来てるのにこれを見過ごすとか、申し訳ないけど俺には無理なんだよ!


「何処にあるか、知ってます」

「え」「は?」「はい?」「な?」「なんで?」


 俺の言葉を受けて、皆の訝しむような視線が一斉に俺を刺す。まあそうなるのは当然だろう。その目が理由を求めているのだと理解して、俺は口を開いた。


「ええとですね、子供の頃、父の書いた地図を見せて貰ったことがあって、そこに載っていたんです。父も世界学者ですから、多分間違っていないと思いますが」

「なんだそういうことか。良かった良かった」

「そんなら安心だな」


 世界学者、と聞いて安堵した様子を見せる面々。最近ちょっと世界学者を便利に使いすぎた気がしないでもないが、信じてもらえているのなら問題はないだろう。安堵している俺に、「ちょっといいか?」と問いを投げ掛けてきたのはレオンである。


「……成る程竜の里に行けばいいってことは分かった。ミーナが道案内してくれることも了解だ。……けど、そこまではどうやって行けばいいんだ?リューカは船に乗ってきたんだよな?」

「え、ええと……」

「それがですね」


 その問いには、狼狽えるリューカに代わって、俺が答えた。


「確かに里の近くを通る船もあるんです。あるんですけど、それは一年に一本しか出てないんです。そしてそれは当然ながら今じゃありません」

「……となると、どうやって向かうんだ?」


 船がなければどうやって行くのか分からない。そう言うレオンに、俺はあっけらかんと言葉を返す。


「それは勿論、リューカさんに乗って行くに決まってるじゃないですか」

「え」「は?」「はい?」「な?」「なんて?」

(デジャヴかな?)


 先程と殆ど変わらないリアクションが繰り広げられる愉快な光景を眺めると、俺は再度口を開いた。


「リューカさん、立派な翼があるんですから飛べますよ。それで海の上もびゅーん!です」

「いえあのその!飛んだことなんて一回もありませんし!」


 確かにデルニロ戦含めて彼女が飛行能力を使っていないのは確かだが、一度もないというのは嘘である。


「じゃあリューカさん、里からその船とやらまではどうやって移動したんですか?」

「あっ」


 ほら。ちゃんと飛べるのだ彼女は。


「で、でも子供の頃の話ですし、今は出来るかどうか……」


 確かにルード大陸に来た当初の彼女と、今の彼女の体長はまったくもって変わっている。子亀と象くらいは差があるだろう。しかしその分翼も立派に成長しているし、何より飛行は竜の本分なのだ。少し慣れれば問題ない筈である。


「で、でも……」


 それでも渋る彼女を何とか言い含め、リューカ・ライドの許可が降りたのはそれから三十分後のことだった。


「百歩譲って乗せることは良いと致しましょう。宜しくはありませんが」

「はぁ」

「けど!そもそもわたくし、自分の意思で竜になれませんのよ?それにもしなれたとして、海の上で元に戻ってしまったら大変じゃありませんの!?」


 確かにそれは尤もだ。リューカはその変身のコントロールを学びに行きたいという話なんだから、今自在に変身出来るならそもそも行く意味がないのだ。……しかし、これについてはキチンと考えてある。


「デルニロ戦はさて置き、この二回ともリューカさんの変身の側にいたのは私です。リューカさんの変身の切っ掛けは分かっていますとも」

「なんと!凄いですわミーナ!」


 リューカが一番驚いた素振りを見せる。途端に気恥ずかしくなって赤面する俺。かっこつけた割に締まらないなあ。


「え、ええと、先に竜から人の姿に戻る条件についてですが、これは恐らく、早く戻らなきゃ!というリューカさんの意識が関係していると思います」

「え?」

「この二回とも、本人の想定外に竜の姿になってしまった訳ですし、一刻も早く元に戻らなければ、と考えていたのではありませんか?」

「そ、それは確かに……」


 言われて考え込むリューカであったが、思い当たる節があったらしく、その通りですわ。と深く頷いた。


「確かに、早く小さくならないと迷惑が掛かると慌てていましたから……。すると、そう思わなければ大丈夫ということですの?」

「そうですね」


 問われて俺は強く頷いた。まあ設定資料本に書かれていた受け売りなのだが、この世界における設定資料本の内容の正しさは、他ならぬ俺自身が一番よく知るところである。


「ふむむ。それについては分かりましたわ。後は──」

「どうやって竜になるか。だな」


 リューカの後を受けてレオンが口を開く。他の皆からしてもこれが一番気になるところであろう。それについて、俺はこう口にした。


「それは…………、実際に試してみましょう」


◆◆◆◆◆


 それからしばらくして、リューカは郊外の空き地の真ん中に佇んでいた。

 今回は衣服は事前に脱いでおり、使い捨て用のローブで身体を隠している。どことは言わないけど隠しても物凄い主張をしているどこかのせいで、カーテンみたいになってるけど。


「いいですね。リューカさん。もしドラゴンの姿になったら、空を飛ぶ練習をしてまたここに降りてきて下さい」

「分かりましたわ。それで、わたくしは何をすれば?」


 俺の言葉にリューカが頷く。今は俺と彼女の二人しかこの場にはおらず、他の皆は既に遠くの物陰に避難している。

この為の仕込みも十分だ。振り返ってレオンに目配せすると、俺は頷いて口を開いた。


「あ、えっとリューカさん。なんか勇者様が、山のようなりんごを全部リューカさんにあげたいって言ってましたよ」

「えっ」


 突拍子もない発言だったが、レオンへと向けられたリューカの目が見開かれる。

そこには、布でくるまれた文字通り山のようなりんごを見せるレオンの姿があったからだ。


「はっ、はわっ、はわわわわ……、ぜ、ぜんぶ……!?」

「はい。全部リューカさんのものですって。食べ放題」


 それだけ言うと、俺はリューカを残してその場を離れた。一方のリューカは、はわわわわわわっと頬を押さえて、しかしその目はりんごに釘付けであった。

 あの瑞々しさ、あの甘さ。頭からおしりまで美味しいあの真紅の果実を、好きなだけ食べていいという謳い文句は、それこそリューカにとっての禁断の果実に他ならない。呼吸は乱れ、涎が口の端を伝い、気付けばリューカは自身の為すべきことも何もかもを忘れて、その場で叫んでいた。


「最っっ高ですのぉぉぉぉぉぉ!!!!」


 それと同時に、リューカの体が眩い光を放ち始める。背を向けて小走りに遠ざかった俺が振り返ると、彼女がいた筈の場所には空に向かって咆哮する巨大なグリーンドラゴンの姿があった。


「ぎゃう?」


 自身の視界が変わっていることに気が付いたのか、間の抜けた声を上げるリューカ。遅ればせて自身の体を眺めると、


「ぎゃあぁぁぁん!」


 と慌てて叫ぶのであった。


(──よし。ここまでは順調……)


 その様子を眺めながら、俺は先程のレオンとの会話を思い出していた。


◇◇◇◇◇


「なあなあレオン」

「ん?なんだ?」


 今を遡ること十分前、俺は隙を見てレオンへと話し掛けていた。


「さっきリューカがドラゴンになる前、何を言ったんだ?」

「あー。それな」


言われてレオンは考え込むと、こう口にした。


「あれは確か──、こういう美味いもの、また一緒に食べようなって言ったんだ。そうしたらリューカのやつ、えらいはしゃいでなぁ。気付いたらああなってたというか」

「やっぱり!」


 その言葉を受けて、設定資料集通りだ。と喜ぶ俺。そう。リューカの変身の切っ掛けは、ズバリ、本人の興奮なのだ。

 興奮の度合いが許容範囲を越えた時、うっかり竜の姿になってしまうらしい。リューカにとっては美味しいものを好きに食べれる今の状況は大興奮の連続であり、それ故に変身もしやすい状況だったと言えるだろう。

 今回も、それを利用させて貰った結果、大成功したという訳なのだ。まあ興奮する場面なんて今後いくらでもあるだろうし、これはしっかりとコントロールして貰わないと今後に差し支えることは間違いない。


◇◇◇◇◇


「リューカさ~ん!聞こえますか~!」


 両腕を振りながら大きな声で呼び掛ける俺に、リューカは金色の瞳を向けながら、「ぎゃう」と頷いた。


「空、飛べますか~!」

「ちゃんと出来たらこのりんご食べていいぞー」

「ぎゃっ!?」


 レオンの声に目を見開くと、リューカは背の翼を広げて飛び上がった。まるで今までずっと飛び続けていたかのように、平然と──そして優雅に大空を舞い、旋回する。そんなドラゴンの勇姿を、俺は心から美しいと思った。


「キュワアァァ!」


 一際大きな鳴き声を上げると、リューカが大地に降り立った。ふんす。と鼻を鳴らす彼女に、皆も、特にレオンは大喜びであった。


「……ミーナ!これは……?」


 レオンから、期待に満ち溢れた眼差しが向けられる。答えはもう出ているのだが、わざとらしく目を閉じて腕を組んだ後、俺は目をかっ、と見開いた。


「オッケーです!問題ありません!」

「いよっしゃあぁぁぁ!!!」


 俺の言葉に、なんでかリューカ以上に喜ぶレオン。何故かと問うと、


「だってドラゴンの背中に乗れるんだぞ!?一生に一度だってあるかよそんな体験!」


 とのことだった。成る程それならば納得だ。何故って、俺だって滅茶苦茶テンションが上がっているから。


「だよなぁ!?ドラゴンの背中とかヤバイよな!」

「ヤバイヤバイ!もう嬉しすぎて死にそう」

「ぎゃ、ぎゃう……」


 ハイテンションにはしゃぐ俺たち二人に、リューカがおずおずと首を向けてきた。りんごとこちらに交互に視線を送っており、「ま、まだですか?」とその目が訴えている。


「あっ。すまん。よしよしリューカ!存分に食べていいぞ!」


 布の上に広げられたりんごを示して、レオンが親指を立てる。すると、どしんどしんと地面を踏み鳴らしながら、待ってましたとばかりに目を輝かせてリューカがやって来た。


「ぎゃうん!ぎゅわん!」


 許可を貰ったということもあり、次々とりんごを食べ始めるリューカ。目を細めたり見開いたり、ドラゴンでありながらその姿は実に表情豊かであった。

 あっと言う間に二十個のりんごを食べ尽くし、レオンの背負うナップザックへと目を向けるリューカ。そこにまだ沢山のりんごが入っていることは分かっているのだ。


「あっ。駄目だぞこっちは」


自身の荷物が狙われていると理解して、レオンが口を尖らせる。


「これはお前のご家族への土産なんだから。我慢してくれよな」

「きゅ~……」


 巨大な図体に似合わぬ情けない声を上げるリューカであったが、断腸の思いで納得してくれたらしい。えらい葛藤した後で、彼女はその長い首をぶんぶんと縦に振った。


「よーし!それじゃあ出発するか!ドラゴンの背中に乗って!大空に!ド、ドラゴンライダー……!ギルディアなんか目じゃないな!ライドオン、ドラゴン……はぁ、はぁ……」

「いやレオン流石にキモいから。落ち着け」


「なにしてんだ気持ち悪いな。ほらよ。持って来たぞ」


 レオンが気持ち悪い感じにハッスルするのと同時に、バレナが彼の元へとやって来た。


「町の奴らにも頑張って貰ったからな。後で礼の一つでも言っとけよ?」


 そう口にする彼女が手にしているのは、引きずる程に長いロープである。しかしそれを見ると、レオンは喜ぶでもなく「え~?」と顔をしかめてみせた。


「……やっぱり、つけなきゃ駄目?」

「あったりめえだろうが!てめぇがうっかりバランス崩して落っこちたら、残ったアタシらはどうすりゃいいんだよあ゛あ゛!?」

「レオン。本当は空の旅になんて行かせたくないのだけれど、貴方がどうしても行きたいっていうから、仕方なく許可しているのよ?ロープは最大限の譲歩だと思って」

「勇者サマ一人の問題ならあーしは口挟んだりはしないんだけどね~。まあこればかりは安全措置取って貰えないなら行かせられないかなぁ?」

「うう……」


 口々に苦言を呈され、レオンが小さくなっていく。

 そもそもの話、変身の極意を教わりに行くというのはリューカにとっての個人的な問題なのだから、レオンを挟まず俺とリューカの二人で行けば良いだけの話ではあるのだ。

 しかし我らが勇者様は、竜の背に乗る大願を成就させるために一歩も退かなかった。必死なプレゼンを繰り返し、自分を連れて行ったらどんな良いことがあるかを訴え続けたのである。

 遂には断固反対派であったウィズも折れ、ロープでリューカのしっぽとレオンの体を固定することを条件に同行許可を下ろしたのである。


「分かったよ」


 そう口にすると、レオンは渡されたロープを自身の腰へと結び、もう一方の先端をリューカの尻尾へと結び付けた。


「リューカ、痛くないか?」

「ぎゃう」


 大丈夫、と言った様子で頷くリューカ。結び終わるのを確認すると、ひょい、とレオンを咥え、自身の背に乗せた。


「うっひょ~!なんだこの景色最高!!」

「あっ!ズルいぞレオン!」


 先を越されてしまい、俺も俺もと騒いでいると、ウィズが近付いて何かを手渡してきた。


「ミーナちゃんにはこれね。魔法玉、作っておいたから」

「これは……」


 見た目は、デルニロ戦で使用したマジカルボムのそれと瓜二つである。尋ねると、ウィズはふふ。と微笑んだ。


「ラビドの魔法が入ってるの。この玉を壊して煙を吸えば、数分間ゆっくり飛行出来るようになるから、いざとなったら使ってね」

「ウィ、ウィズ姉……!」


 トゥンクとしている俺もロープでくくられると、リューカに咥え上げられた。視界がぐわっと持ち上がると、高所恐怖症ではない俺でも思わず身がすくむ。

しかし一瞬の後には俺の体は広い鱗の上に乗せられていた。隣にはドヤ顔を浮かべるレオンがいるが、そんなものは何も気にならない程に、その高さから見下ろす街の眺めは絶景であった。


「うっわはあぁぁぁ!」

「すげえだろ?な?な?」

「すっげ~な!」


 気の利いたことを言おうと思ったが、その感動の前には語彙力なぞ簡単に吹き飛ばされてしまう。

そんな俺たちを振り返り、リューカが「ぎゃう」と声を上げた。さあ行きますわよ。と言っているような感じである。


「あ。じゃあ、行ってきまーす!」

「お。じゃあ、多分数日で戻るとは思うけど、その間のことは宜しくな!」


 眼下の三人に挨拶する俺に釣られたのか、レオンも手を振りながら声を出す。


「気を付けてねー!」

「お土産宜しくね~!」

「────けっ」


 三者三様な見送りを受けて笑いながら、レオンはリューカに、


「それじゃあリューカ、頼むな」


 と告げた。「ぎゃあん!」と声を上げると、リューカは翼を広げて走り出した。


「ひゃわっ!?」


 振動に驚き、咄嗟に背骨?背鰭?とにかく背中のボコッとした部分にしがみつく俺。レオンは振動に合わせてぼんぼん跳ねながら楽しそうに笑っている。


「ぎゃあぁぁぁん!!」


そうして一際高い声と共に、リューカはいよいよ飛び立った。


「おー!飛んだぞミーナ!」

「わ、わわわわわ!」


 こうして奇妙な三人による空の旅が、始まりを告げるのであった。



遅くなって申し訳ありません(^^;;

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