表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/8

7.装備マン、革命を起こす

 相手を見据える。


 胸と顎から血が滴っているが軽症で、まだ余裕そうな表情を見せている。



 対してこちらは、顔・胸・お腹・腕から血が出ており途轍もない痛みが襲う。

 肋骨と右腕の骨は折れているかもしれない。


 折れていなくとも右腕は使い物にならないので利き手では無い左腕で殴っている。


 なのにまだ立ち上がり、殴り掛かる。



 ハゲや野次馬供は困惑している様だが、俺も流石に戸惑っている。


 怪我をして動きが制限されているのにも関わらず、変わらない速度で動き続けているのだ。


「いい加減負けを認めろ!しつこいんだよ!!!」

「お前の方こそ負けを認めれば良いんじゃないか?俺は死なねえぞ」




 固まっていた決意をさらにさらに固くする。



 すると驚くべき事に、どんどん力が湧いてくる。


 根性論とかでは無く、文字通り力が湧いてくるのだ。


 動けはするが体力も限界が近く、この力もいつまで持つか分からない。


 あと数発殴られれば、急に動けなくなるかもしれない。



 絶対にこの一発で決める……!



「うおおおおおおおおおお!!!!!!!」



 自分の全てを纏わせ、青白く光輝く拳を相手の顔面に叩き込む。


「何!?まだそんな力が!?」


 ハゲはさすがにまずいと思ったのだろう、今までは自分の体で受け止めて殴り返していたが、今回は両手で俺の拳を受け止めようとする。だが――



「ぐふっ」



 ――だがその程度では受け止められない。

 俺の全身全霊の拳がハゲの両手ごと顔面を叩きつける。



 そして20m近く吹っ飛び、野次馬どもを巻き込みながら壁にぶつかった。


 ハゲは血を1度吐いた後、ピクリともしなくなった。



 やった……!勝ったんだ!!



 それを見た俺は、満面の笑みを浮かべながらその場に倒れこんだ









「ここは……?」


 俺は病室みたいな部屋で、ベッドに横になっていた。


 身体を起こすと、激しい痛みに襲われる。


 そういえばあのハゲは……倒したんだったな。

 それでその後に気絶したのか。


 相討ちみたいになってしまったが、まあ上出来だろう。


 というか冷静になってみると急に力が湧いたのもおかしいし、何より……


「俺の手、光ってたよな?」


 自分の左手に視線を向けるが、包帯で包まれていて確認出来ない。

 というか上半身は包帯でグルグル巻きにされていた。


 何にせよ、あの力は不自然だ。

 俺にそんなスキルや魔法は……


 そこで俺は気づいた



「そうか革命か」


 詳しい効果は分からなかったが、多分《革命》はそういうスキルなんだろう。

 手が使えるようになったらネットで調べてみるか。


 そんな事を考えていると



「起きてたのか」


 扉が開き、声が聞こえてくる。


 その声の主は可愛らしいお姉さん……では無く男だ。


 艶々の黒髪が伸びていて目元が少し隠れているが、かなり整った顔だ。

 多分歳は俺とあまり変わらないだろう。


 中性的な顔で一瞬女性かとも思ったが、先程の声を思い出し胸の高鳴りが収まる。


 まあ男とはいえ可愛らしい顔をしてるし、これで妥協するか……。


 そんなしょうもない事を考えていると、青年が


「本当に申し訳ない」


 と謝ってきた。


「俺貴方に何かされましたっけ?」


 俺に謝る必要があるのはあのハゲしか思い当たらないが……まさかコイツ!?



 俺は天才的な推理で、恐ろしい結論に辿り着いてしまった。



「まさか君は、あのハゲが化けた姿!?いやもしくは化けた後の姿があのハゲか!?」


 青年はその推理を聞いてニヤリと怪しい笑みを浮かべ……というよりは苦笑いか?


「そういう訳じゃ無いんだけど、謝りたい事があるんだ」




 俺は黙って話を聞いていた。

 どうやらこの青年はあの戦いの一部始終を見ていたようだ。



 あのハゲはこの辺りでは最上位に位置するBランクの冒険者で、誰も彼を止められ無かった事、自分はハゲより強いAランク冒険者で本来なら止めるべきだったのだが、人間同士の本気の殴り合いを前に足が竦んでしまった事、その光景に慣れてきて動けるようになってからも、圧倒的格上でどう足掻いても勝てない相手に立ち向かう俺の姿に見とれてスポーツ観戦のような気分で見ていた為止めなかった事を話してくれた。


 人が死ぬかもしれないっていうのに、スポーツ観戦の気分とかサイコパスだろコイツ。

出来る限りお近づきにはなりたくない……なりたくなかった。



 てか待て、俺と歳がそう変わらないように見えるコイツがAランク冒険者!?


 Aランク冒険者といえば、国内でも200人とかしか居ない化け物みたいな実力を持っている奴等だ。


 いや待て、Aランク冒険者っていうのはAランク冒険者の事では無くA5ランクの肉がどうたらこうたらみたいな可能性も……?


 我ながら意味が分からんな。


「まあ理由は分かったけど、全てあのハゲが悪いから大丈夫だ」

「あ、あと最後のパンチもの凄いエネルギーだったけど何のスキル!?どうやったの!?」


 あまりにも落ち込んでるから可哀想に思い励ましたのだが、急にテンションmaxにして尋ねてきた。


 こんな事ならスポーツ観戦の件について叱っても良かったか?


「あれは革命ってスキルだ。俺も詳しい効果は知らないが、君なら分かるんじゃないか?」

「人にそんな簡単に自分のスキル教えちゃダメ!!」


 自分から聞いてきた癖に何言ってだコイツ


「ていうか、革命?ってスキルは聞いた事が無いなぁ」

「天下のAランク冒険者様ともあろう御方が!?」

「ごめん……力になれなくて」

「いや、冗談だって」



 少々やり返したら凹んでしまった。




 罪悪感と優越感で複雑な感情になりながらもおだて術で励ますことにした。






評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ