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6.装備マン、初めての死闘

 スクロールが俺の気持ちに応えてくれているかの様に、激しく光る。


「お前何してんだ!?」


 ハゲが激しく吠える……ダジャレでは無い。


「大丈夫だよ」


 激しく吠えるハゲを励まし、新しく獲得したスキルを見る。

 ーーーーーーーーーーーーーーーー

 スキル:装備マンLv1

 革命Lv1

 ーーーーーーーーーーーーーーーー


 革命……言葉自体は知っているがスキルとしての《革命》は聞いた事が無いし、もちろん効果は知らない。


 ただ名前から予測するにも、色々な解釈が出来てしまう。

 どうやって発動するかも、この戦いに有効なのかも分からない。



 ハゲの方を見ると今にも襲い掛かってきそうな様子でこちらを見ている。


「これを付けてる時間は無さそうだな」


 俺は鞄の中に念のために入れておいた10個の魔石のイヤリングを見て呟く。


 着ていたパーカーの裾に2個付けた所で殴り掛かってきた。



 咄嗟に横に避け、残った8個を口の中に放り込みハゲと相対する。



「何避けてんだゴラァァァ!!」


「んーーー!(うおおおおお!)」


 互いに雄叫びを上げながら拳を振り上げる。


 俺の拳はハゲ胸に、ハゲの拳は俺の顔に直撃した。



 俺はあまりの衝撃に数m吹っ飛んだ。



 先程よりも強い力が籠ったパンチ。

 だが痛みは先程よりも感じない……恐らく体が、殴られ慣れている頃の記憶を思い出し始めているのだろう。


 痛みよりも、口に含んだイヤリングを落とさない様にする方が大変だった。



 対してハゲは少しよろめきながら胸を抑えているだけで、吹っ飛んだりはしていない。



 幾つかの攻撃力増加の魔石のイヤリングがあっても届かない、圧倒的格上。


 だが、それは攻撃力だけの話。



 脳筋の権化みたいな奴なので、ダメージレースでは勝てない事は分かっていた。


 だがもう1つ、戦闘において重要なステータスパラメーターがある。


 それは速度だ。


 先程の殴り合いで俺の方かやや速かった。


 イヤリングのお陰かハゲが大剣を背負っているからかは分からないが、速度だけは勝っていると踏んでいる。


 というより、速度も負けていたらいよいよ勝ち目が無いのでそれに賭けるしか無い。



「オラァ!!」

「ぐっ」


 しかし、速度の有利も微々たるもので全く避けきれない。


 相手も自分が攻撃力で勝っている事を分かっているのだろう、俺がハゲに攻撃しようとすると、それを避ける素振りすら見せずに攻撃を受け入れながら確実にこちらを殴り飛ばす。



 どれ位の時間が経っただろうか、既に数えきれない程のパンチやキックを受けた。


 イヤリングもとっくに吐き出している。


 しかし、俺は立っている。

 防御力のステータスもHPもそこまで高くはないのにまだ立っている自分に驚きつつも納得する。



 この世界のステータスパラメーターは、あくまで元の身体に上乗せされている物で、自分の能力を表した物では無い。


 速度のステータスが10の人と20の人で100m走をした時に、必ずしもステータスの高い人が勝つ訳では無い。

 低い方が素の実力で10のステータスを引っくり返せば勝てるのだ。



 自分でも気付いていなかったが、俺の皮膚や骨などは物理攻撃への耐性がある様だ。


 これによって相手との圧倒的な差を埋めている。

 だが、それでもやはり1度の殴り合いで受けるダメージはこちらの方が比べ物にならない位多い。



 HPを確認してみる。

 ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 HP:8/14

 ーーーーーーーーーーーーーーーーー


 思っていたよりは減って無いが、半分以下になる事はすなわち大ダメージを負い動きが鈍くなるという事でもあり、このままでは負けてしまうだろう。


 こちらに策がある訳でも無い。


 ほぼ全てにおいてハゲに負けていて、唯一勝っているであろう知能と冷静さも、策が思いつかなければ意味をなさない。




 ……別に逃げてもいいのだ。



 速度は今やほぼ互角だが、隙をついて逃げればそれなりの距離を取れる。



 それか、遠くから静かにこの戦いを見ている奴等を利用するのもアリだ。


 こんな状況になっても誰も止めようとしない時点で助けを求めても無駄な事は分かるが、あの密集している所に突っ込めば紛れる事も出来そうだ。



 そんな事を考えている間にも殴り殴られダメージが蓄積していく。


 複数の箇所から血が出ており、骨も何本か折れていそうだ。


 だけど俺は逃げずに立ち向かう。



 僅かに残った冷静な頭が、何故逃げないのか?と問い掛けてきたが、そんなことは自分でも分からない。


 ここで逃げたら自分の心が壊れてしまうかもしれないという恐怖と、コイツに対する強い憎悪がそうさせているのかもしれない。



「良い加減あきらめろや!!!」


 長い間戦っているのに、まだ威勢が良いハゲを見て俺は口の端を吊り上げる。


「何が可笑しい!?」

「いや何も」


 恐らくもう少しダメージを受ければ俺は動けなくなる。

 つまり負けという事だ。


 そしてハゲの性格上、動けなくなった俺を殺すかもしれない。

 背中の大剣を使ってない事から最低限の理性は保っているようだが、どうなるか分からない。


 それ以前に俺にとってコイツに負けるという事は、死の次に嫌な事と言っても過言ではない。


 ただ1つ、本当にどうでも良い事なのだが……













(使わないならその剣、置いておけば良いのに……)






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