5.装備マン、決断する
家に帰った俺は、鼻のに穴に手を突っ込みながらスクロールについて真剣に考えていた。
鑑定持ちの人に見てもらって、良さそうなスキルであれば取得して、不要なら売るってのが一番良いかな?
そう結論づけ、明日はここから一番近い神奈川県の冒険者ギルドにスクロールを持っていくことに決めた。
冒険者ギルドとは冒険者を支援する為の施設で、様々な物がある。
アイテム売買所・武器屋・防具屋を始め、パーティメンバーを探したりトレーニングをしたりも出来る。
今回の目的は、鑑定スキルでダンジョン内から取れた物の効果を調べる事が可能なアイテム鑑定所だ。
ちなみに、何故かユニークスキルは鑑定出来ない。
翌日、冒険者ギルドにやって来た。
中はショッピングモールの様になっており、人で賑わっている。
鑑定結果が気になり早足で鑑定所へ向かった為、大剣を担ぎ眼帯をしている筋骨隆々でハゲの、柄の悪そうな男とぶつかってしまった。
「なんだテメェ、俺とやろうってのか!?」
「うわぁ、ザ・ヤクザみたいな台詞じゃん。現実で言うやついたんだ(ご、ごめんなさいよそ見してました)」
いかにもな台詞で怒鳴られてしまったので、取り敢えず謝っておいた。
これで許して貰えたら良いけど……。
すると周りがざわざわし始める。
まあ急に怒鳴り声が聞こえたらそうなるよな。
すると、ハゲは震えながら俺の胸ぐらをつかんできた。
「ふざけんじゃねえ!ぶっ殺すぞ!!!」
「うわ最悪だ。ハゲの唾がかかったんだけど(ひぃぃ、ごめんなさい許してください!あのその眼帯格好良いですね!大剣も似合っています!)」
ふっ、怒らせてしまったようだがまだ慌てるような時間では無い。
俺の第2のスキルおだて術()をもってすればここからでもご機嫌になることだろうさ。
ドヤ顔でハゲを見ていると、顔を真っ赤にしてさらに大きく震えだした。
「相当俺に褒められたのが嬉しかったんだろうが、良い歳したハゲが男に褒められて顔を赤らめてるの面白いな笑(そのスキンヘッドも神々しすぎて輝いて見えますよ!)」
「なんだどゴラァァァ!!!!!」
魔物みたいな雄叫びを上げながら腹を思い切り殴られた。
「うぐっ」
かなりの威力だ。
殴られるのには慣れているのに、かなりのダメージだ。
思わず蹲ってしまう。
ん?殴られ慣れてる……?俺が?殴られた記憶なんて1つも無いんだが。
まあそんな事は一旦置いておき、まずはこのゴリラの魔物と化したハゲをどうするかだ。
取り敢えず適当におだてておく。
「はぁ、ただスクロールの効果調べにきただけなのに何でこんな面倒臭い事に巻き込まれなければいけないんだ…(とても強いパンチでした!あなたは将来最強の冒険者になる事でしょう…)」
「おいゴラァ、ふざk……ん?お前、スクロール持ってるのか?」
そう言って、突然ニヤニヤしだした。
ふっ、俺のおだて術が効いたk……俺がスクロールを持っている事がバレてる!?!?。
コイツ、脳筋タイプだと思ってたけど読心術とか持ってるのか!?
「ほら、寄越せ」
「え……?」
何を?
「早くスクロールを寄越せ。それで今までの分チャラにしてやるよ。ありがたく思えよ?」
「いや……でも」
「あ゛?口ごたえすんじゃねぇ!!」
ハゲは蹲っている俺を蹴り上げる。
というか周りの奴等は何をやってる?
何故誰もハゲを止めようとしないんだ?
その後も何度も何度も蹴られる。
もうスクロールを渡すしか無いだろう。
HPは半分切っててもおかしくないし、このままでは本当に死んでしまうだろう。
「分かりました。渡します」
「チッ、やっとかよ」
命が無ければ金もスクロールも使えないし仕方ないか……。
俺は鞄の中のスクロールを掴んだ所で止まる。
この感情は何だろう。
怒り? 悲しみ? 苦しみ?
長らく感じていなかった感情が心の奥底から沸き上がってきて、懐かしい気分になる。
でも何故長らく感じていなかったんだ……?
ハゲに絡まれてからずっと引っ掛かっていた。
何かを忘れているような、そんな感覚。
それが思い出せる気配は無いが、1つ。
この状況でやるべき事があるだろう。
それはコイツをぶっ飛ばす事だ。
俺は感情を抑えて立ち上がり、ハゲを見据える。
「ほら、早く渡せ!」
「ふふっ」
「何笑ってやがる!!また殴られてぇのか!?」
何から何までアイツらしいな。
……最も、俺の思うアイツが誰だか分からないのだけれど。
そして俺は掴んでいるスクロールを取り出し巻かれている紐をほどき、それを使用した