2.装備マン、装備をつくりまくる
暫くはしゃいでいたが、1つの疑問が浮かび冷静になる。
「幾つまで重複して着けられるんだ?」
気になったので早速革の鎧を着ようとして止める。
鎧だと嵩張って沢山着る事が出来ないのだ。
そこで有り余っている在庫の中でも、特に余っている装備品が目に入った。
それは魔石で作られたイヤリングだ。
装備品は付与が無くとも素の状態でステータスを上げる事が出来る、というか大半の装備には付与が無い。
例えば付与の無い剣であろうと、素手で殴るより圧倒的な攻撃力が出るのが分かるだろう。
付与はあくまでもそれに上乗せする形だ。
だから素で何の効果も発揮しないイヤリングは、付与がされていても上がる能力値が低いので、わざわざ限られた装備の枠の1つを埋めてまで付ける価値が無い。
俺はダンジョン内でもおしゃれしたい人が沢山いるのでは!?という天才的なアイディアにより普通は扱わないイヤリングを発注していた・・・のだが、思った以上に人気が無くて今まで1つも売れていない。
「………………」
まあそれによって、俺の求めている理想の装備が大量に手に入った。一時期は俺の頭を疑ったりもしたがやはり天才であったようだ。疑ってすまんかった。
という訳で早速イヤリングを両耳に3つずつ、鼻の穴に1つずつ、上唇に1つ、下唇に1つの計10個を付けてステータスの装備の部分に注目する。
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装備:魔石のイヤリング×5
魔石のイヤリング×2
魔石のイヤリング×2
魔石のイヤリング×1
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しっかりと全てが装備判定になっている。
纏まっていたり纏まっていなかったりするのは付与している能力が違うからだと思われる。
付与出来る能力には大きく分けて2種類ある。
1つ目は、能力値の上乗せだ。
攻撃力+5や、防御力+5みたいな奴だ。
先ほど着ていた革の鎧もこれに当たる。
というより付与能力の99%以上はこれに当たる。
2つ目は、スキルや魔法の付与だ。
着るだけで特定の魔法が使えるようになったり、特定のスキルが使えるようになるといった物で、1つ目と比べても圧倒的に強力な装備と言える。
この装備品が少ない理由はたった1つ、付与スキルでの付与が不可能なのだ。
付与スキルのレベルがmaxの人でも不可能で、入手方法は今の所宝箱や攻略報酬から出る事を祈るしか無い。
但し、宝箱は滅多にお目にかかれる物では無いし、中身から付与された装備が出る確証は無い。
各ダンジョンのボスを初めて討伐した時に貰える攻略報酬は、報酬で装備が貰えるダンジョンで低確率でその装備に付与されている事がある。
しかしその付与も能力値が上乗せされた効果の場合が多く、スキルや魔法の付与装備は中々手に入らない。
とまあ、長々と2つ目について解説したが、今回のイヤリングはそれとは全く関係無く単純に上から防御・攻撃・速度・魔力の+3を付与していて、上昇する能力が違うから分けられていたのだ。
「10個ならいけるのか」
上限はまだ来ない。
もしかしたら無いのかもしれない。
取り敢えずもっと沢山付けてみよう!
俺は追加で、両耳に2つ、上唇に3つ、下唇に3つ付けた。
喋りにくいな…。
そんな事を考えながらステータスの装備の項目を見たが、まだ装備判定だった。
これは一旦上限無しと見ても良いのではないだろうか。
(ならばまだ付与していないイヤリング全部に付与していくぞー!!!)
気合いを入れる為に口に出したかったが喋れなかったので心の中で叫んでおいた。
俺のスキルレベルだとイヤリングには+3の効果が限界だ。
付与にもMPが必要で、今回の場合は1つに付与するのに3MP消費される。
その為、最初はMP増強のイヤリングを作り効率を上げる。
ちなみに革の鎧が防御力+5だったのは防具補正と言われる物で、防具だと防御力に、武器だと攻撃力に、靴だと速度に付与の効果に補正が乗る事が多い。
MP回復の為の休憩を適度に挟み、1時間半程で10個のMP+3効果のあるイヤリングが完成した。
これを装備し、次はダンジョン攻略に最も大切だと考えている攻撃力を上げるイヤリングを作っていく。
MP増強イヤリングのお陰で、1時間程で10個の攻撃力+3イヤリングが完成した。
次は速度を上げていく。
付与にも慣れてきて、50分程で10個作ることが出来た。
これで綺麗に在庫が無くなったのだが、1つ問題がある。
「こんな数のイヤリング付けれるのか?」
・・・そう、何も考えずに作っていたがさっき付けた18個ですら厳しいと言わざるを得なかった。
なのに追加で30個も作ってしまった。
MPのイヤリングは魔法や戦闘で使えるスキルを持っていない為、置いていっても良いが他はどうしようか…。
そこで俺は閃く。
何も顔だけに付けまくる必要は無く、鎧とかに付けても効果が発揮されるはずだ。
試しにズボンのポケットや革の鎧の裾にイヤリングを付けてステータスを見たが、しっかりと反映されていた。
よし、明日からダンジョンに潜ろう!
俺は明日に備えるため、夕飯を沢山食べて高鳴る胸を抑えながら早めに布団に横になった。