1.装備マン、気づいてしまう
俺の名は水無月 平也、18歳だ。
10年程前に地球に突如現れたダンジョンに潜り、そこにいる魔物から得たアイテムを売って稼いでいる冒険者と呼ばれる職業に就いている・・・奴等に装備品を売っている装備屋をしている。
この世界の人間は皆、レベルやステータス、魔法やスキルといったゲームのような物を持っている。
Lvは最初は皆1で、基本的には魔物を倒した時に手に入る経験値によって上がっていく。
ステータスとスキルと魔法は人それぞれ異なっていて、産まれた時にはすでに決まっているらしい。
ちなみに俺のステータスはこれだ
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名前:水無月 平也 Lv3
HP:13/13 MP:15/15
攻撃力:11 防御力:15
魔力:12 速度:12
抵抗力:11
魔法:
スキル:装備マンLv1
装備:
SP:30
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HPはダメージを受けると減り、0になったら死ぬ。
MPは魔法やスキルの発動に必要なエネルギーで、少ない程体調が悪くなり、0になると気絶する。
攻撃力は高ければ高い程、相手に与えるダメージが増える。
防御力は相手から受けるダメージを減らす。
速度は自分の身体がどの位の速さで動けるかを表している。
魔力は魔法版の攻撃力で、抵抗力は主に状態異常への耐性だ。
ステータスはLv1の段階では平均が10と言われていて、Lvが1上がると全ての能力のパラメーターが1上がる。
魔法の欄が空欄なのは、まだ魔法を持っていないからだ。
魔法は産まれた時に配られるか、ダンジョン内で手に入るアイテム『魔法スクロール』を使用することで使えるようになる。
装備は自分の着ている装備が表示される。
ここで言う装備とは、ダンジョンに棲息する魔物の素材で作られた物の事だ。
SPは最初に10持っていてLvが1上がる毎に10貰える。このSPを使えば、スキルのLvを上げる事が出来る。
そしてスキルだが、入手の仕方は魔法と同じで最初に配られるか、『スキルスクロール』から入手するかだ。
俺に配られたスキルである《装備マン》は世界に一つしか存在しないとされるユニークスキルだ。
どうだ?格好いいだろう?羨ましいだろう?
……その能力は装備の制限を緩和するという物だ。
一見良く分からないが、色々試してみた所装備品に特殊な能力を着けることが出来た。
これはスキル《付与》Lv1のスキルと同程度の効果があり、俺はこれを使って装備に能力を付けて売っているという訳だ。
ただ《付与》Lv1なんて、ありふれているとまでは言わないがそこまで珍しくないのも確かで、最初の1ヶ月間は売り上げは赤字だった。
装備品や店を買ったお金も回収したいため、俺は必死に考えて天才的な発想に辿り着く。
それは、このお店を目立たせる事だ!!!
早速店の看板に大きく【装備マンの装備品屋さん】と書いておいた。
その文字は黄→赤→緑の順番で、ピカピカと光輝いて目立つこと必至だった。
なのに何故か売り上げは上がるどころか下がっていて、このままではマズイとネットに売りにだし、何とか食い繋いでいる。
といっても、店を建てる為のお金や装備品を買うお金もあり、開店した時よりかなりお金が減っており決して黒字とは言えない厳しい状況だ。
今は俺を女手一つで育ててくれた母からの仕送りで成り立っている。
母に恩返しする為に高校を卒業してすぐに仕事をすると決意したのにこんなんじゃダメだ。
何か副業を…いや、装備屋を副業として何か別の職を探す必要がある。
普通の仕事を探そうかとも思ったのだが、俺には一つの小さい夢がある。
それは俺のユニークスキル《装備マン》を活かした仕事をしたいという事だ。
まあ、こんな状況でそうも言ってられないのだが。
ただこのスキルを活かした職業はこうやって装備品を売る以外にもある。
それは俺自身が冒険者になることだった。
能力を付与されている装備が無料で手に入るので、他の冒険者よりも有利に進められる事だろう。
そうと決まれば近所にある1番難易度が低いFランクダンジョンに行こう!
~数時間後~
俺は公園のベンチに座り落ち込んでいた。
俺の付与出来る能力はそこまで高くない為、別に無双出来たりもしなかったのだ。
苦戦した訳でも無いんだが、魔物供を倒した時に落とす魔石もFランクの魔物の為、価値が薄く売っても全然稼げない。
「はぁ…これからどうすれば…」
ついため息を吐いてしまう。
と、そこでとある人が目に入ってきた。
顔中にピアスをつけ剣を口に加えて踊りながら笑っているギャルだ。
「それだ!!!!!」
ギャルを見て、俺は光る文字の看板以来の天才的な発想に酔いしれた。
成功する確証など無いし、今までの常識を考えると間違い無く失敗する、そんなアイデアだった。
ただし、俺には成功するという確証があったりなかったり。
「早く帰って試そう!!」
俺は興奮が抑えきれないまま、帰路についた。
そして店の中で、普通の服にしか見えない革の鎧を着て、その上からさらにもう一つ鎧を着た。
俺は祈りながら自分のステータスを見る。
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名前:水無月 平也 Lv3
HP:13/13 MP:15/15
攻撃力:11 防御力:15
魔力:12 速度:12
精神力:11
魔法:
スキル:装備マンLv1
装備:革の鎧
革の鎧
SP:30
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「こ…これはどうなんだ…?」
通常、装備は各部位(頭、胴体、脚、靴そして武器の5つ)に1つずつしか装備出来ない…というより装備をすること事態は出来るが、二つ目以降は効果が発揮されない。
例えば、革の防具の上に鉄で出来たガッチガチの鎧を着ても何故か魔物からの攻撃は革の防具分しか軽減されない。
そして、装備の所にも鉄の鎧は表示されないのだ。
俺は恐る恐るステータスの装備欄をタップする。
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革の鎧:防御力+5
革の鎧:防御力+5
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「キターーーーーーーーーー!!!!!」
成功するという謎の自身はあったがまさか本当に成功するとは・・・!
「これが装備マンの力だ!!!」
こんなに上機嫌になったのはいつぶりだろうか。
俺はテンションが上がりすぎて、この後1時間程踊りながら笑っていた。