第八十話
初滑りも無事終えた事だし、あと二、三回滑ってから中級者向けか上級者向けに行ってみるか。それまでは美穂と一緒に遊ぶことにしようと決めてプールから上がると俺の方に小走りで向かってくる凛と友香の姿が目に入る。こちらまで来たところで声を掛けた。
「二人ともプールサイドで走ったら危ないから駄目だよ」
「「ごめんなさい。でもお父さんに言いたいことがあって」」
「そうなんだ。聞かせてもらえるかな」
「うん。えっとね、美穂ちゃんがお父さんと一緒に滑っていたのを見たんだけどズルいと思うの。私と友香ちゃんは一人で遊んだのに……。これって不公平っていうんだよ」
「おお、凛は難しい言葉を知っているんだな。偉いな」
「えへへ~!お父さんに褒められちゃった」
「コホン。別に凛と友香を除け者にしていたわけじゃなくてな。偶々美穂と一緒になって、一人だと怖くて滑れないって言うから二人で遊ぶことにしたんだ」
「そうなんだ。じゃあ私と友香ちゃんとも遊んでくれる?お父さんに抱っこされて滑りたいの」
「了解。それじゃあ最初は凛でその次は友香でいいかな?」
「うん!」
話が纏まったので全員で階段を上った後、凛から順番にウォータースライダーで遊んでいく。最初の話で二人と一緒に滑って終わりという感じだったがなんやかんやで一人一人と五回くらいは遊んでしまった。三人ともすごく喜んでいたし、楽しんでいたので俺も大満足です。
――結構遊んだしここらで少し休憩しようかとも思ったが、一度腰を落ち着けてしまったらそのままダラダラとしてしまいそうだったのでそのまま中・上級者用のウォータースライダーで遊ぶことにした。
「うぉ、結構高いし水の流れも速いな。さっきまで美穂達と遊んでいたのとは全然違う。これは気合を入れないとヤバいな」
独り言が漏れてしまうくらいハードな感じだ。果たして俺は無事生還できるのだろうか?と一抹の不安を抱きながら一歩を踏み出す。
……えー、滑り終えた感想ですが怖かったです。グルングルン回転するわ、コーナーが多いわで目が回りそうになったし、車酔いや船酔いしやすい人だったら気分が悪くなったり吐いたりするかもしれない。これで中級者向けなんだから恐ろしい。上級者向けは肉体・精神共に強靭なタフガイじゃなければ無理なんじゃ?と不安になるがここまできたら逃げるという選択肢は無い。覚悟を決めて逝こうじゃないか。
「高すぎだろ。というかこの高さから滑るならかなりの距離になるし、水の流れも濁流みたいになっているぞ。ここまで速いと摩擦でケツの部分が破れるんじゃないだろうか。古い水着だしその可能性はゼロではないからな。……止めておこうかな」
先ほどまでの覚悟はどこにいった!と怒られそうだが俺だって怖いものは怖いのだ。人間諦めが肝心というしさっさと退散しようと踵を返したところで階段を上ってきた桜と会う。会ってしまった。
「あれ?拓真さんも今から滑るんですか?」
「そのつもりだったんですが、ちょっと俺には無理そうなので帰ろうとしていたところです」
「そうなんですか?見た感じは流れも速いですし怖いと感じるかもしれませんが実際に滑ってみると大したことはありませんよ。それにすごく楽しいです」
「その感じだともう桜は滑ったんだね」
「はい。もしお一人では難しいのでしたら私と一緒に滑りませんか?」
「それは助かります。二人ならなんとか耐えられそうです」
「分かりました。それじゃあ私が拓真さんを後ろから抱きしめる形にしましょうか。その方が安心感もあるでしょうし」
少女三人組と遊んだ時とは逆の形になったが、絵面としてはどうなんだろうか?あまり格好良くは無いしなんとなく情けないが一人では無理だし受け入れるしかないか。
「それじゃあ失礼します」
桜が後ろから抱き着いてきた瞬間背中に大きくて柔らかい感触が押し付けられる。出会ったときは手の平に収まるサイズだったのに、今では両手でも収まりきらないビッグサイズになっているのだから成長期とは恐ろしいものだな。大きい方が沢山楽しめるし俺としては断然有りだ。
おっぱいの感触を楽しんでいると、桜の足が俺の腰に回りがっちりとホールドしてくる。普通だと足は横に広げるだけなんだけど……。これじゃあだいしゅきホールドの亜種ではないか。座位でやられたのは初めてだがお腹や腰に巻きつく感じが違って良い感じだ。
「万が一にも離れたりしないようにこのような形にしてみました。苦しくは無いですか?」
「大丈夫です。桜の体温や感触が伝わって凄く安心します」
「それはよかったです。――それじゃあ出発しましょうか」
滑り終えた感想だが桜の体に意識がいってしまい気が付いたら終わっていたという感じだ。恐怖とか不安とかそんなものは微塵も感じなかったのである意味ではよかったのだろうが、物足りなさもある。という事で二回目のライディングに行ってみよう。
二回目も桜から後ろから抱きしめてもらう形で遊んだが、体の感触に意識を奪われることも無く十二分に楽しむことが出来た。これなら三回目は一人でも大丈夫そうだな。そんな感じで数回一人で滑った所でそろそろお昼にしましょうという話になったので施設内にあるレストランへと移動する。
「さてと。何を食べようかな?あまり重いものだと午後から遊ぶのが辛くなりそうだし軽めの方が良いだろうか?」
「結構身体を動かしたのでカロリーは摂った方が良いですね。消化が良くてカロリーが高い料理となるとパスタやナッツをふんだんに使ったサラダ、あとはお蕎麦やうどんなどもお勧めです」
「なるほど。じゃあパスタとサラダにしようかな。あっ、大根おろしとツナの和風パスタが美味しそうだな。よし、俺はこれにします」
「それじゃあ私も同じ料理にしようかしら。拓真さんは二つだけで足りますか?」
「うーん、物足りないと思うけどあまり食べすぎると動けなくなりそうだしこれだけにしておきます」
「分かりました」
小百合と話しつつ注文が決まったが、他の人達はまだ悩んでいる最中なので決まるまで待つ事に。少しして全員何を食べるか決まったので店員さんを呼び注文する。
談笑しながら一時間ほどかけて食事をした後はすぐに泳ぐのではなく食休みだ。休憩用のプールサイドベッドで横になりながらゆったりとした時間を過ごす。椅子の場合だとぐだぁ~と身体を伸ばすことが出来ないがベッド形式なので寝ころべるのが最高だ。
「はぁ~、幸せ」
「本当にそうですね。最近こうしてゆっくりと過ごす時間が取れなかったのでとても嬉しいです」
「ご多忙だったんですね。お疲れ様です」
「有難うございます」
独り言に返事があったので無意識で話をしていたが相手は誰だろう?声の感じからして彼女ではないし、子供でもない。……もしかしてやらかしてしまったかという思いを抱きつつゆっくりと顔を横に動かすと千歳の母親である裕子さんの姿があった。
「気の抜けた返事をしてしまいすみませんでした。まさか裕子さんだったとは思っていなくて……」
「あら、気にすることはありませんよ。私としてはリラックスした拓真さんの姿を見れてとても嬉しいですから。それにとても可愛らしかったですよ」
「うぅ、恥ずかしい。出来るならもっと格好良いところを見て欲しかったです」
「普段から素敵ですし、格好良いので大丈夫ですよ。寧ろこういう何気ない一面を見せてくれた方がドキッとするので今のままで居て下さい」
「善処してみます。――改めての感想になりますが裕子さんの水着とても似合っていて綺麗です」
「まあ、お褒め頂き有難うございます。年甲斐もなくビキニを着て恥ずかしかったのですが、拓真さんにそう言って貰えてよかったわ」
本人は年甲斐もなくと謙遜しているがモデルも裸足で逃げ出すスタイルをしているのだからもっと自信を持っていいのではないだろうか。娘――生物学上は息子だが――を産んだとは思えないほど均整がとれた身体をしている。胸はスイカと見紛うほど大きく、また張りもあり一切垂れることなく前を向いている。腰回りも子供を出産しているとは思えないほど細く、くびれていて見惚れてしまうほどだ。さらに脚も長くて綺麗だしとてもじゃないが四十代には見えない。
もしこんな美人に誘惑されたら一発で落ちるのは間違いない。勿論彼女がいない場合の話だけどね。
「あの~、そんなにじっと見られると恥ずかしいです……」
「すみませんでした。裕子さんがあまりにも綺麗なので見惚れてしまいました」
「もう、お上手なんですから。そんな事を言われたら本気になってしまいますよ」
「千歳に怒られそうなので以後気を付けます」
「あの子はそんなことで怒ったりしませんよ。寧ろ歓迎するのではないかしら」
「……裕子さんにお聞きしたいのですがこの世界では一人の男が母娘と付き合うというのは認められているのでしょうか?主に倫理的に」
「法律では特に禁止されていません。社会的、倫理的な観点からも何も問題はありません。実際息子と性行為をしている家庭もありますから」
以前にも考えたことがあるが俺が居た世界では近親相姦は禁忌であり、殆どの国で禁止されている。理由は幾つかあるが最大の理由は血が濃くなることだろう。極めて近しい遺伝子を持った者同士が子を成すと高確率で先天性の病気を持って生まれたり、奇形児だったり障害を持っている場合が多い。だからこそ法律上では禁止されていないが、人々から忌避され禁忌とされているのだろう。
では、赤の他人である男が母娘と付き合ったり、結婚するのはどうだろうか?
結婚に関しては多くの国で重婚は認められていないので事実婚という扱いになるだろう。付き合うのであれば世間体を気にしなければ問題は無いと思う。ただ周囲から軽蔑され、冷めた目で見られながら生活しなければいけないのでそれに耐えられるだけの精神力があればという前提が付く。ただまあ、近親相姦と比べればリスクは相当低いので当人たちさえ問題無ければ良いのではないだろうか。
「ちなみに裕子さんはどういう考えをお持ちなのでしょうか?」
「私は母娘で一人の男性とお付き合いするのは何の問題も無いと考えています。結婚もお互いがしたいと思っているならするべきですし。――拓真さんはこういう考え方に抵抗がありますか?」
「俺が居た世界の常識で考えれば抵抗はあります。ですがこの世界の常識で考えれば至極当然の事だとも思います。圧倒的に男性が少ないので、母娘だから駄目という意味の無い制限を掛けるべきではないですし。それに正直な話裕子さんみたいな美人に迫られたら断れる自信はあまりありません」
「自信はあまりないのですね。という事は私にもまだチャンスがあるという事ですね。ふふっ、娘共々拓真さんのお世話になる日が来るかもしれないということね」
「あはは……。可能性はゼロではないです。はい」
今の関係のままかもしれないし、大きく変わるかもしれないがどちらにせよ後悔しない選択をしなければいけない。後になってああしていれば、こうしていればと悔いる事だけは絶対にしてはいけない。それは俺だけではなく相手にとっても失礼だからな。
――少し食休みするつもりだったが結構長い間話し込んでしまった。裕子さんはもう少しゆっくり過ごす感じだし、俺もそろそろ遊ぶに行くか。
「お腹もいい感じに落ち着いたのでそろそろ遊びに行こうと思います」
「分かりました。怪我には気を付けて下さいね。あとはご飯を食べた後なのであまり激しく体を動かさないようにして下さい。もし体調が悪くなったらすぐに周りの人に声をけるようにしてね」
「はい。それでは行ってきます」
「いってらっしゃい」
裕子さんからお母さんみたいな事を言われた後プールの方へと向かう。水上アスレチック、ゴムボートに乗って滑走するスライダー、大波を乗り越える激流プール、海のように波が押し寄せるプール等々沢山あるが食後という事もあるし比較的穏やかなゴムボートに乗って滑走するスライダーに行ってみるか。
少し歩いて乗り場に着くと学院の理事長である甲崎さんと、桜のクラス担任の桜川さん、そして菫の上司である氷川さんが居たので一番近くに居た桜川さんに声を掛ける。
「あれ?珍しい組み合わせですね。皆さんもこのアトラクションで遊ぶんですか?」
「あら、佐藤さん。そのつもりだったのですがボートが四人乗りで一人足りないのでどうしようかと話していたところだったんです」
「ちょうど三人ですものね。もしよかったら俺もご一緒させてもらっても良いですか?」
「勿論大歓迎ですが私達と一緒でも大丈夫でしょうか?その……ボートはあまり大きくないので多少身体が触れ合う事になってしまうので……」
「それは全く問題ありません。寧ろ皆さんの方こそ嫌じゃありませんか?」
「「「そんな事はありません!むしろご褒美です!」」」
「あっ、はい」
三人揃って嬉々とした表情で言われてしまったらこう返事をするしかないだろう。しかもご褒美とか言われると俺も悪い気はしないし、ちょっとエッチなハプニングが起きても許してくれそうだ。流石にTo LOVEる -とらぶるのリトさん並みにエロエロなラッキースケベは望めないが、それでも一縷の望みにかけてみたくなるのは男の性といえよう。水着が脱げて丸見えになったりしないかなと淡い希望を抱きつつ乗り場に用意されていたボートに乗り込む。
「おっと。見た目よりも狭いですね。もう少し余裕があると思っていたのですが」
「そうですね。これだとしっかりと取っ手を握っていないと振り落とされてしまいそうです」
「片側にしかついていないので片手が空いてしまいますね。――氷川さんに提案なのですがお互いに手を繋ぐのはどうでしょうか?これだと安定感も増しますし、万が一にも落ちる事は無いはずなので」
「さ、佐藤さんと手を繋ぐなんてそんな事をして本当によろしいのでしょうか?後で倉敷達に怒られたりしませんか?」
「はははっ。菫もこれくらいでは怒らないので大丈夫ですよ。もし何か言われたら俺から説明します。あっ、氷川さんがお嫌でしたら言って下さい」
「嫌なんてとんでもないです。是非お願い致します」
「分かりました。それじゃあお手を拝借しますね」
「はわぁ~、佐藤さんの手が……、手が……」
耳まで真っ赤にして太ももを擦り合わせながらモジモジしている氷川さんを見て思う事は一つ。可愛い。普段はバリバリのキャリアウーマン然としていて歴戦の猛者を思わせる雰囲気を醸し出しているが、今は可愛らしさで溢れている。こういう初心な反応をされると普段とのギャップが凄まじいな。
しかもモジモジと動くたびにぽよんっ、ぽよんっとおっぱいが揺れるし太ももを擦り合せているせいで水着が少しずれてちょっと危ない感じになっている。これぞ可愛いとエロの両立だな!と拍手を送りたくなる気持ちをグッと堪える。だって後ろに座っている甲崎さんと桜川さんから恨みがましい視線が飛んできているからな。ここでブラボーと称賛を送れば地獄のような雰囲気になってしまうのでそれは避けなければならない。
「よし、準備も出来ましたし出発しましょうか」
「はい」
正直身一つで滑り落ちるウォータースライダーと比べれば穏やかだろうと思っていました。最大四人まで一緒に滑れるし、ゴムボートに乗っているので安心感もあるからマッタリ楽しめるという幻想は滑り始めて早々に打ち砕かれた。滅茶苦茶スピードが速いし、コースも緩急が激しい上に複雑に入り組んでいるのでとにかく怖い。スリル満点とかいうレベルではなく純粋に恐怖を感じる。気の弱い人が乗ったら気絶してしまうのでは?というくらい凄い。顔を真っ青にしている俺とは対照的に女性たちはキャッキャッと楽しそうにしているんだけど……。この人達はスーパーサイヤ人なのか?と疑いたくなるのも無理はないだろう。というかこのままでは俺の精神が持たないので少しでも気を紛らわせる何かがあればいいのだが。
「私がいるから大丈夫ですよ」
「氷川さん」
繋いでいた手をキュッと強く握りながら優しく声を掛けてくれた。たったそれだけの事なのに心が軽くなるのを感じる。本当に有難うございます。心の中で感謝の言葉を呟きながら恐怖と戦うのだった。
「想像の斜め上を行く怖さでした。こんな危険な乗り物が年齢制限無しとかどうなっているんだ?」
「佐藤さん物凄く怖がっていましたものね」
「これは相当恐怖耐性があって、精神的にも強靭じゃないと耐えられないと思います。三人とも楽しそうにしていたので凄いです」
「このくらいならまだまだ大丈夫ですね。逆にお化け屋敷とかホラー映画などの方が私は怖いです」
「あっ、分かります。じわじわとくる恐ろしさや、全く予期していない所から驚かされる方が怖いですよね」
「俺の場合はそっち系はあまり驚いたり怖がることは無いですね。――こればっかりは人それぞれという感じでしょうか」
甲崎さんと話しながらなんとなくそういう結論に行きついたが、男女の違いもあるのだろうか?甲崎さんと桜川さんはお化け屋敷とかホラー映画が苦手みたいだが、そんなものよりもこのアトラクションの方がよっぽど怖いんだけどな。
とにかくこれにはもう乗らないようにしよう。心臓がいくつあっても足りないし、あのスリルをもう一度味わいたくは無いからね。あっ、ちなみに乗る前に秘かに期待していたラッキースケベはありませんでした。お疲れ様です。――残りの時間は子供でも楽しめるような安心安全なアトラクションで遊ぶかな。スリル満点系はお腹一杯だし、これ以上は俺の精神が持たないというのもある。
方針を決めた所で選んだのは何の変哲もない二十五メートルプールだ。泳ぎはあまり得意ではないが短水路であれば泳ぎ切る事は出来る。五十メートルプールだと途中で休憩を挟まないと厳しいけど、これなら問題ない。よし、それじゃあ行きますか。
「ふぅ、久しぶりに泳いだけど感覚はあまり鈍っていないな。これが身体が覚えているっていうやつなんだろうか?」
一度覚えた自転車の乗り方を忘れる事が無いのと同じで、身体に染みついた動きは数年程度では無くならないんだな。しかしずっとアトラクション系で遊んでいたから、ただ泳ぐだけというのは新鮮な感じがする。無心で身体を動かしているとまるでこの世界に自分だけしかいないという変な錯覚を覚えてしまうがこれは俺だけなのだろうか?所謂ゾーンとも違うだろうし、本当に何なのだろうな。
ただ、この状態に入ったらデメリットがあるわけではないしあまり気にしない方が良いのかもしれない。休憩中にそんな事を考えつつひたすらに泳ぎ続ける。最終的には一時間半くらいかけて三kmほど泳いだところで力尽きて止めた。
タイミングが良い事に泳ぎ終わった所で帰る時間まであと少しだったので少し休んでからみんなで集まって帰る準備を始める。来た時と違って今回はシャワーを浴びている時や、着替え中に乱入されることも無く平和に終えることが出来た。
「各自忘れ物が無いか今一度チェックをお願いします。――はい、大丈夫そうですね。それでは帰りましょうか」
施設の出入り口に向かって全員で歩き始める。子供たちは眠そうにしながらよろよろと歩いていたので相当疲れているんだろうな。大はしゃぎしていたし、長時間遊んでいたからさもありなん。かくいう俺も思わずあくびが漏れてしまうくらいには疲れている。
「ふぁ……あっ……」
「お疲れのようですね。今日のお夕飯は軽めのメニューにしましょうか」
「そうしてもらえると助かりますが、雪音も疲れているでしょうし店屋物でもいいですよ?」
「お気持ちは嬉しいのですが、拓真さんのお口に入るものは出来るだけ私達が作りたいと思っているので大丈夫です」
「そうですか。それじゃあお願いします」
「はい。お任せください」
夫婦みたいな会話を雪音としつつ帰路に着くのだった。ちなみに二日遅れで筋肉痛に襲われて、ロボットみたいなぎこちない動きしかできなくなったのはここだけの話だ。




