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第八話

 お次に向かったのはカクテル作りに必要な道具を取り扱っている専門店。こちらでも下にも置かない対応をされてしまった。当然相手をしてくれたのは代表取締役社長である。取引内容は酒販卸売会社と似たり寄ったりでかなりこちらに有利な形で契約締結出来ました。

 これで開店に向けて最も重要な事は終わり。後は細々した買い物や、備品の購入先の検討等々があるがそれは対して時間も掛からないし急いでやる必要は無い。ざっと頭の中でやる事リストを確認していると菫さんから声を掛けられる。

「これで全ての商談は終わりですね。お疲れ様でした」

「お疲れ様でした。お二人には長い間付き合ってもらってすみません」

「いえいえ、こちらこそ拓真さんと一緒の時間を過ごせて楽しかったです」

 朗らかに笑う菫さんを見ていると思わずほっこりしてしまう。てか、『一緒の時間を過ごせて楽しかったです』ってデート帰りみたいでちょっとドキッとしちゃうな。女性とデートに行った事なんて無いけど……。

「お二人はこの後予定とかありますか?」

「私はありません。雪音は?」

「私も無いです」

「じゃあ、もしよかったらご飯でも食べていきませんか?一日お付き合いして頂いたお礼として奢りますよ」

「「えっ!?」」

 二人して驚いている。これはあれか?価値観の相違からくる例のあれだな。

「男性に奢ってもらうなんてそんな事出来ません。私が出します」

「もしこの事をお母さんに知られたら勘当されてしまいます」

 雪音さんが自分がお金を出すと言い出し、菫さんは親に勘当されると涙目で訴えてくる。ここで頑なにいやいや、俺が出しますから!なんて言える訳がない。となれば折衷案として割り勘が妥当だろうか。一応雪音さんに聞いてみよう。もし駄目だったら申し訳ないが奢ってもらうしかないな。

「じゃあ、割り勘でどうですか?流石にお二人に奢ってもらうのは心苦しいので」

「ですが……、分かりました。割り勘でOKです。ですが、また食事をする機会がありましたらその時は私達が出しますので」

「はい、それでお願いします。――お二人は何か食べたい物とかありますか?」

「うーん、パスタでしょうか」

「私はお肉が食べたいです」

「雪音さんがパスタで、菫さんがお肉か。両方を提供できるお店となると割と限られるな。この近くに良い感じのお店があればいいんですけど知っていますか?」

「この辺りに男性も入れるような飲食店はあったかしら?菫は知ってる?」

「……調べてみたけど無いわね。ファミレスならあるんだけど流石にね」

 んん?ファミレスじゃ駄目なのか?男性が入るには余りにも庶民過ぎる!とか格式が~、料理の質が~とか男性が飲食店に行くには越えなければいけないハードルが幾つもあるのかな?でも、そんな条件を満たした堅苦しいお店でご飯を食べるのはちょっとな。

「菫さん。俺はファミレスでも構いませんよ。色々な物を食べられるし、お財布にも優しいですから」

「本当に良いんですか?丁度夕飯時ですしお客さんも沢山いると思いますけど」

「問題ありません。ささっ、二人とも行きましょう」

 お腹も減っているし遠くのお店に行く気力も無いので、二人の手を引いて移動を促す。いきなり手を握られたからかポッと頬を染める菫さんと雪音さんを横目に歩き出す。


 二十分程歩いた先にファミレスが見えてきた。お店の感じとしてはデニーズっぽいかな。可もなく不可もなくといった極々一般的なお店だ。時間も時間なので並んでいるのかなと入り口を見てみると待機列は無し。なのでそのまま、入口を通り店内へ。店に入ると店員さんから元気よく声を掛けられる。

「いらっしゃいま…………」

 掛けられたんだが言葉が途中で止まってしまった。しかも俺の事を凝視しながら固まっている。まるで時間が停止したかのように微動だにしない。時間停止物のAVは九十九%偽物だと言われているが、一%は本物という事だし時間停止能力者が居ると証明だ。そして俺にはその能力があるらしい。ここで固まっている女性店員さんにエッチな悪戯でもしようかしらとピンク色の妄想を展開しいるとビクッと身体を震わせて店員さんが再起動した。どうやら停止できる時間は僅からしい。非常に残念だが、ここでそれを顔に出す訳にもいかず店員さんが喋りだすのを待つ。

「あ、あの……三名様でよろしいでしょうか?」

「はい。あの、出来れば目立たない席に案内して欲しいのですが出来ますか?」

「あぁ~、初めて男性の声を聞いたし、お姿を拝見できたぁ!一生分の幸運を使い果たしたし、私もうすぐ死ぬのかな?」

 自分の世界に入って全くこちらの話を聞いていない。このまま天に召されても困るのでちょっと強めの語気で再び声を掛ける。

「すみません。席に案内して貰っても良いですか?」

「はっ、すみません。すぐにご案内致します」

 再び現世に戻ってきた店員さんに案内されつつ通路を歩いているが、まあ色んな人に凝視されています。仕事帰りと思わしき女性たちがチラリとこちらに視線を向けて固まったり、友達と喋っていた学生が近くを通った際にピタリと無言になりこちらをずっと見ていたり、家族連れのお客さんがご飯を口元に運ぶところで停止していたりと様々な反応を見せてくれている。このような状況は一度スーパーに買い物に行った際経験しているので少しは耐性があるが、なんとなく見世物になったようで余り良い気分ではない。そんな中店員さんが案内してくれたのは通路の奥まった所にある席だった。ここなら他のお客さんからの視線も遮れるし、なにより回りに客席が無いのが良い。この店員さん中々やるな。最初は天に召されそうだったのに……。

「こちらのお席になります。メニューはテーブルの上にありますので、ご注文がお決まりになりましたらそちらのボタンを押して下さい。それでは失礼致します」

 簡単な説明を受けてから各々席に着く。俺が手前側で雪音さんと菫さんは反対側に腰を下ろした。さて、何を食べようかなとメニューをパラパラと捲ってみる。今日は色々とあって疲れたし元気が出る肉料理だろうか?でも、重い物を食べると胃もたれしそうだしなぁ~と割と悩んだ末に選んだのはチキンステーキセットと温野菜サラダだ。一応栄養バランスも考えてサラダなんかも付けている。健康維持は大事だからね。という感じで選び終えたので二人の方を見ると微笑ましい表情でこちらを見ていた。

「んっ?どうかしましたか?」

「いえ、メニューを見ながら悩んでいる姿が可愛らしいなぁと思いまして」

「ねっ。どれにしよう~ってあれこれページを見ている姿……尊いです」

「うぐっ、これは恥ずかし所をお見せしました」

 ううっ、いい歳した大人が子供みたいな行動を取っていたとかマジで恥ずかしいんだけど。菫さんに至っては尊いとか言い出すしもう俺のライフはゼロよ。軽い絶望に打ちひしがれていると雪音さんが声を掛けてくる。

「お決まりの様ですしボタンを押しますね」

「お願いします」

 雪音さんがボタンを押して暫くすると店員さんが来たので、各々注文をした後待つ事に。

「そういえばこうしてファミレスに来たのなんて随分と久し振りだな」

「そうなんですか?前の世界ではあまり行かなかったんですか?」

「そうですね。仕事柄夕飯を食べるのが深夜~明け方になるので一緒に行く相手もいないし、店長はまっすぐ帰宅するので中々機会が無くて」

「へぇ~。でも、休日とかに彼女さんとデートした帰りとかに寄ったりとかありそうですけども」

「菫さん。残念ながらその話題は俺にクリティカルヒットします」

「あっ…………。もしかしてフリーだったんでしょうか?」

「はい。彼女いない歴=年齢です」

 男らしく言い訳は一切しない。例えいい歳して童貞とか天然記念物かよ!とかその年で彼女が居た事ないとか人間としてどこか欠陥があるんじゃないの?とか思われても構いやしない。だって一度もモテた事が無いんだから。悲哀に満ち満ちた表情を見せない様に俯いていると何やら囁き声が聞こえてきた。

「ねっ、雪音。拓真さん彼女いないんだって」

「これは大チャンスね。どう考えても今後の人生で拓真さん以上の男性に出会えるはずが無いし、なんとしても妻の座を勝ち取らなきゃ」

「でも、拓真さんを狙う人は物凄く多いと思うよ。幾ら一夫多妻制とはいえ何十人ものお嫁さんを娶る事は無理と思うし。私も何とかして拓真さんの奥さんになりたいんだけど」

「菫。弱気になっては駄目よ。進取果敢という言葉の通り積極的に、かつ大胆に突き進んでいかなきゃ今の関係で終わる事になるわよ」

「今でも来世の分の幸運まで使い果たしていると思うけど、更に先の関係に進むにはもっと頑張らないといけない訳ね。雪音、一緒に幸せを掴みましょうね」

「勿論よ。ただし抜け駆けは無し、選ばれなかったとしても醜い嫉妬はしないって言う事で」

「了解」

 うーん、これは予想していなかった反応だ。まさかのいい方向で取られるとは。――いや、まてよ。この男女比が狂った世界では童貞は宝なのではないだろうか?さらに、今まで誰とも付き合った事が無いというのも貴重性が高いのかも。処女性なんてクソ喰らえで吐いて捨てる程いるんだから価値は零に近く、逆に童貞は大金を払おうが、どれだけ権力を振りかざそうが手に入れられないのかも。

 となれば俺にもワンチャン――いや、ハーレム王になれるかもしれないのか。これは凄い気付きかも知れないと自画自賛した所で、店員さんが料理を運んできた。取り合えずハーレム王云々は置いておいてまずは飯だ!という事でテーブルの上に並べられた料理を食べますか。

「じゃあ、いただきます」

「「いただきます」」

 手を合わせていたたきますをした所で料理に改めて目を向ける。……なんか量少なくね?一般的な一人前の量の半分くらいしか無いんだけど。ミニサイズを間違って頼んでしまったのか?思わず首を傾げていると雪音さんが心配そうな表情で訊ねてきた。

「どうかされましたか?」

「料理の量が少なくて間違えてミニサイズを頼んでしまったのかなと思って」

「……レシートを確認しましたが通常サイズですね」

「という事はこれが一人前なのか」

 成人男性であれば全く量が足りないし、中高生とかだと腹の足しにもならんだろう。二人前で丁度良いか少し物足りない感じになるのかな?これは流石に予想出来なかったわ。まさかの展開に戸惑っていると雪音さんが『あっ』と言いながら何かに気付いたのか慌てて説明をしてくる。

「申し訳ありません。病院での事を失念していました。基本的に飲食店に男性が来ることは滅多に無いので、ご飯の量に関しては全て女性向けとなっているんです。なので男性が摂る食事としては全然足りませんよね?」

「はい。今だったら三人前くらいは食べれます。というかいくら女性向けでも余りに少なくないですか?これっぽっちでお腹一杯にはならないと思うんですが」

「うーん、私としては十分な量だと思います。菫はどう思う?」

「私も同じかな。でもいっぱい運動した後とかだと物足りないかも」

「そうなんですね。うーん、申し訳ないんですがこれを食べ終わった後に追加注文しても良いですか?」

「はい、構いませんよ」

 よし、取り敢えずあと二人前は絶対に頼むぜ。それでお腹一杯って感じだから今後外食する際は気を付けなきゃいけないな。――てか、この世界の女性ってみんな小食過ぎないか?別にダイエットしているわけじゃないし、拒食症という訳でも無い。均整の取れたスタイルで、おっぱいは大きく腰は括れているしお尻も程よい大きさだから不健康に痩せている訳でも無い。年々男性が減少していくという歴史の中で異性に魅力をアピールする為に徐々に遺伝子が組み変わったのかもしれない。たぶん、きっと、おそらく。

 真相は闇の中だが、健康に害が出るとか無理をしているとかでは無いし特に気にする事でも無いのかも。ご飯も冷めちゃうしまずは飯を食うか。

 早速チキンステーキを一口食べてみたが、割と美味しい。ファミレスって良くも悪くも万人受けする味でどの料理も平均点と言った感じだが、これは当たりかも。特に大根おろしソースが良い役割を果たしている。鶏皮の部分が少し脂っぽいんだけどそれを上手く中和して、サッパリと頂ける。モクモクと食べていると、微笑みを浮かべながら菫さんが話しかけてきた。

「お口に合いましたか?」

「はい。思ったよりも美味しくて箸が進みます」

「ふふっ、それはよかったです。そういえばこうして一緒に食事をするのは、病院の光庭でお弁当を食べた時以来ですね」

「そうですね。もっとこういう機会があればいいんですが、お二人ともお仕事が忙しいだろうしつい誘うのを躊躇ってしまって。ははは」

「拓真さんのお誘いなら何を置いてもお受けします。ですから何時でも良いので是非誘って下さい」

「そう言う事でしたら私も是非にお願いします。お仕事の方は何とでもなりますので」

 おおぅ、二人の喰いつき具合が凄い。俺からお誘いしても問題無いと言うのであれば、近いうちにお誘いしようかな。とはいえだ、菫さんは軍警察勤務で雪音さんは医師だから多忙なのは間違いない。平日は何かと忙しいだろうから誘うとすれば休日だろうか。ネットでお勧めのお店でも探しておくかな。

 取り合えず二人の予定でも聞いてみようか。話はそれからだ。

「有難うございます。あっ、因みになんですが来週末か再来週末って何か予定が入っていますか?」

「両方とも特に何かする予定はありませんね」

「私も同じくです」

「そうですか。来週末に街で買い物しようと思っていたんですが、よかったら一緒にどうですか?繁華街であれば美味しい飲食店もあるだろうし、ついでに食事でも」

「行きます!絶対に行きます!何があろうとも予定は入れないので安心して下さい」

「私も行きます。丁度欲しい物があったのでお付き合いさせてもらえればと」

「じゃあ、来週末という事で。待ち合わせ時間とかは後日決めましょう」

 まさか二人と買い物に行ける事になるとは思わなかった。ていうか女性とどこかに出かける機会なんてトンと無かったが、こうして美人さん二人とデート……いやそれは言い過ぎか。ショッピングに行けるなんてこの世界に転移して良かったぜ。これは気合を入れてタンスに仕舞ってある一張羅を引っ張り出すしかないな。あとは今話題のスポットととかも調べておいた方が良いかな。男の買い物なんてすぐに終わってしまうしそこで『はい、解散』とか寂しすぎる。時間はあるしじっくり調べよう。

 などと考え事をしつつ、食事を進めていると気が付けば料理を平らげていた。腹の具合は五分くらいなので追加で注文すべくメニューを開いて品定めをしていく。肉は食べたばかりだし、ご飯物か麺あたりかな。うーん……おっ、唐辛子たっぷり辛口豚骨味噌ラーメンなるものを発見。名前からしていかにも辛いですと主張しているが、大衆向けの味を提供しているファミレスで食べられない程激辛というのはないだろう。という事でこれに決定。一応保険としてミルクティーも頼んでおこう。さて、店員さんを呼ぼうかなと思ったタイミングで菫さんが声を掛けてきた。

「お決まりですか?」

「はい。ラーメンとミルクティーにしました」

「珍しい組み合わせですね。ラーメンならお茶を頼む人が多い印象ですが」

「実は唐辛子たっぷり辛口豚骨味噌ラーメンっていう結構辛いのを頼もうと思ってまして、もしヤバイ感じだった時の為の保険として選びました」

「そうだったんですね。あっと、店員さんを呼びますね」

 ついつい話が逸れてしまったが、気付いた菫さんが呼び出しボタンを押す。待つことなく店員さんが来たので注文した後雑談をしながら待つ事に。

 そうしてお喋りしている内に注文の品が到着。…………真っ赤だよ。唐辛子山盛りじゃんか。スープがドロッドロで軽く麺を持ち上げてみるとネバつくようにスープが絡みついている。これ、人間が食べられるんだろうか?食べたが最後、翌日はトイレに引きこもる羽目になるとか勘弁して欲しいが手を付けずにごちそうさまでしたとはいかない。雪音さんと菫さんが引き攣った表情でこちらを見ているが、勇気を出して一口行ってみよう。

「いただきます」

 おずおずと口に運び味わう事暫し。あれ?見た目は凶悪なのにそんなに辛くない。というか、普通に美味しんだけど。こう、後引く辛さと濃厚な豚骨味噌が絶妙にマッチして箸が進むな。

 そうして黙々と食べていると雪音さんが恐る恐る話しかけてくる。

「あの、大丈夫ですか?無理して食べる必要はありませんし、残しても良いんですよ」

「このラーメン、見た目よりも辛くないですし美味しいですよ」

「えっ、そうなんですか?一口食べたら口から火が出そうな程真っ赤ですけど」

「もしよかったら食べてみますか?」

「いいんですか?」

「どうぞ」

 丼を雪音さんに渡して、様子を見てみる。少量をレンゲに取り神妙な顔で口に運びもくもくと食べ始めたが、その表情にツラさは見受けられない。

「拓真さんの言う通り余り辛くないですし、美味しいです」

「ですよね。見た目で敬遠されがちですけどこれは当たりを引きましたね」

「私も今度来た時に注文しようかな」

 雪音さんも気に入ったみたいだな。その様子を見た菫さんも一口食べたら美味しいって言っていたし皆揃ってこのラーメンに嵌まりそうな勢いだ。

 そんな嬉しい誤算もありつつ楽しい時間は過ぎていき、そろそろ帰ろうかという話に。席を立ちレジへと向かい無意識で財布を出そうとしたら二人に止められてしまった。そうだ、今回は俺が奢るんじゃなくて割り勘という事だったな。合計金額を三人で割ってそれぞれ出すと時間が掛かるし、お会計待ちのお客さんも居るから後で渡そう。そういうわけで今回は雪音さんが一度払う事に。

 お店を出た後で、自分の分を払い終わったらあとは帰るだけだ。

「今日は本当に有難うございました。食事にも付き合ってもらって、楽しい時間を過ごせました」

「こちらこそ、拓真さんと一日一緒に居られてとても楽しかったです」

「また、何かありましたら何時でも誘って下さいね。今回の様な商談でもOKですから」

「雪音さん、菫さんありがとうございます。何かありましたらその時は是非。――お二人は電車で帰るんですか?」

「はい。私と菫は最寄り駅が近いのでそこまでは一緒です」

「そうでしたか。夜に女性が一人で歩いていると危険なのでタクシーでも呼ぼうかなと思っていたんですが、それなら安心ですね」

「あっ、拓真さんが居た世界だとそうなるんですね。この場合危険なのは女性では無く男性の方ですよ。しかも拓真さん程格好良い人なら尚更気を付けないといけません。ここから少し歩いた所にタクシー乗り場があるのでそこまで一緒に行きましょう」

 あー、そうだった。雪音さんの言う通りだわ。夜に男性が独り歩きしていたら襲われても文句は言えないし、そこかしこから女性が近寄って来るだろう。食事のお誘いやホテルに行きませんかなんて言うのは温い方で、痴女が迫って来たり最悪逆レイプされる可能性もある。そういうのに興奮する癖をお持ちの紳士もいるだろうが、俺は至ってノーマルなのでそういうのは勘弁。大人しくタクシーで帰宅します。

 歩いて数分でタクシー乗り場に付き、そこで二人と別れる事に。

「お疲れ様でした。来週末の買い物については数日以内にメールしますね」

「はい、分かりました。それではおやすみなさい」

「お疲れ様でした。ゆっくり休んでくださいね」

 二人から労いの言葉を受けつつその場を後にする。こうしてなんやかんや忙しい一日は幕を下ろした。

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