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第七六話

 雪音の実家に遊びに行ってから二ヶ月ほど経った本日いよいよ俺の教師生活がスタートする。この二ヶ月間は忙しくも充実した日々だった。俺が居た世界の感覚であれば手続きをして、行政から許可が下りればすぐに教師になれると思っていたがそれは余りにも甘すぎる考えだったと今なら言える。

 本当にあの時の俺は甘かった……。――時間を少し遡って思い出してみよう。

 まず特別非常勤講師を引き受けるという話を雪音の実家に行った次の日に甲崎さんに伝えたんだよな。内容が内容なので学院に行き話した時は物凄く喜んでくれたし、全力で俺を迎え入れる準備を進めると言ってくれたので安心出来たし心強かったな。

 ただ準備と言っても雇用契約を結んだり書類を作成、提出するだけでなく男性用のトイレ、更衣室、休憩室その他諸々を用意しなければいけないし、他にも警備や医療体制などの見直し、再構築といった事も必要になるらしく話を聞く限りかなり大変だし金銭的負担もかなりのものになるはずだ。しかも既存の空き部屋を利用するとしても工事しなければいけないし、場合によっては新たに作る必要があるので相当時間がかかるだろうと予想していたんだけど全然違った。なんでもこの規模であれば設計・施工合わせて一月もあれば工事が完了するらしい。実際の工期は多少前後するが大体これくらいの期間で出来るというのだから驚きだ。驚きと言えば俺が教師になる件は国のプロジェクトとして動いている。まず男性教師という存在が今後現れる事は無いのでデータを取りたいというのが一つ。思春期の女子が男性と接することでどのような変化が現れるのかを確認するというのが二つ目。日本王国に居る男性に男の人も社会進出していますよというアピールをするのが三つ目。最後は日本王国の女性に対して俺みたいな特異な男もいるということを知ってもらう為だ。特に重要な事はこの四つだが、当然他にも思惑はあるだろう。

 国が介入するという事は軍警察も絡んでくるのは必然で、打ち合わせの場で重鎮が勢揃いしているらしく、胃が痛くて薬が手放せません……と甲崎さんが青い顔をして言っていたなぁ。申し訳なさ過ぎて手作りのお菓子をプレゼントしたら狂喜乱舞して鬼のように仕事を熟していたがそれはそれで心配だったな。

 ――そんな感じで俺の予想を遥かに超えた規模で動いていたし、学院でも教師たちが忙しくしていたり、色々な所で工事をしていたりしたので学生たちが何があるんだ?と邪推していると桜から聞いたな。桜は内情を知っているが正式な発表があるまで箝口令が敷かれているのでどれだけ友人から聞かれようが答えられないので大分苦しい立場だったと思う。

 その反動かいつも以上に甘えてきて、夜の方もハッスルしまくりで体力的に少しキツイ日もあったが可愛かったので良し。……少し話が逸れてしまったが、関係者各位の尽力のおかげで僅か二ヶ月ですべての準備が終わり本日学院で就任式が行われる。ちなみに隠してもすぐに周知の事実になってしまうので、それなら最初から大々的に知らせた方が良いとの判断のもとマスコミも来ることになっている。生中継だとトラブルが起きた際に対応出来ないので、録画した映像を夜のニュースで流すという話だ。多くの人に見られるのは緊張するが、今更止めにして下さいとは言えないので腹を括るしかないだろう。

 とまあこんな感じで今日を迎えたわけだ。報道されるし、沢山の人の前で挨拶するので鏡の前で何度も身嗜みをチェックしているが本当にこれで大丈夫だろうかという不安は消えない。うぅ……、緊張で胃が痛くなる前に薬を飲んでおいた方が良いか。あっ、トイレにも行っておこう。

 あれこれと準備しているうちに時間が近づいてきたので、自宅を出てタクシーに乗り学院へと向かう。

 車内で考え事をしているうちに到着したので職員用通用口へと行くと以前と同じく甲崎さんと桜川さんが出迎えてくれたので挨拶をした後職員室へと移動する。

「ここが職員室です。どうぞお入りください」

「失礼します」

 中へ入ると職員室に居た全員の視線が俺へと集まる。これはいつもの事だし、事前に教師の皆さんとは顔合わせをしているので特に緊張することも無い。もしこれが初対面だったら滅茶苦茶テンパっていただろうなと思っていると甲崎さんから声を掛けられた。

「佐藤さんの席ですがこちらになります」

「えっ、入り口のすぐ近くなんですね。出入りも楽で便利ですし、こんな良い席を頂いてよろしいのでしょうか?」

「勿論です。奥の席だと有事の際に移動する時間がかかりますし、入り口から近い方が他の教師の目も行き届きやすいですから」

「色々と配慮して下さり有難うございます」

「これくらいは当然の事なのでお気になさずに。それと桜川さんの席が隣なので困った事があれば彼女に声を掛けて下さい」

「分かりました。最初のうちは分からないことだらけなので色々と聞くと思いますが桜川さん、よろしくお願いします」

「こちらこそよろしくお願いします。私が全力でサポートするので何でも質問して下さいね」

「それは心強いです」

 面識がある人が隣の席というのは本当に助かる。他の人とは少し話したことがあるだけなので、何かと聞き辛い所があるからな。多分甲崎さんが席の配置を考えてくれたと思うが感謝しかない。内心で土下座をしていると甲崎さんから追加の説明があるとの事なので耳を傾ける。

「あとは学院からの支給品のお話をしないといけませんね。タブレットと端末が支給されます。タブレットには全学生の名簿や個人情報が入っているので取り扱いには注意して下さい。基本的には授業で使用するのですが、佐藤さんの場合はあまり使う機会が無いかもしれませんが一応常に携帯するようにしてください。端末に関しては購買や学食、自動販売機等で買い物をする時の支払いをしたりトイレやロッカー、更衣室を使用する際の認証キーにもなっているのでこちらも忘れずに持っているようにして下さい」

「端末での支払いについてですが、口座引き落としでしょうか?それとも事前にチャージしておくタイプでしょうか?」

「佐藤さんの場合は全て学院側で持つのでそういったことは必要ありません。限度額も決まっていないのでお好きなだけ使って構いませんよ」

「そこまでして頂けるとは。なんだかすみません」

「いえいえ、これくらいは当然の事ですので」

「あの、もう一つ質問してもよろしいでしょうか?」

「はい。なんでもお聞きください」

「トイレやロッカー、更衣室を使用する時は端末の認証キーが必要とのことですが、万が一端末を置き忘れてしまった場合は入れないのでしょうか?」

「そういった場合は入り口の横にある生体認証デバイスで認証すれば入ることが出来ます」

「それならもしもの際に入れないという事は避けられますね。――素朴な疑問なのですが、ここまで厳重なセキュリティを施す必要はあるのでしょうか?男が使っているトイレや更衣室なんて女性からしてみれば絶対に入りたくないと思いますし」

 普通に考えれば掃除する以外で入りたくはないだろう。汚い・臭い・散らかっているの三拍子揃っているある意味で魔境ともいえる場所だからな。この学院では男は俺一人しかないとはいえ、先に挙げた条件は満たしているしさ。これが女子トイレや更衣室なら話は別だ。清潔・フローラルな香り・整理整頓されていると三拍子揃っているので断然そちらの方が魅力的だし、突撃したくなるものだろう。

 そんなごく当たり前の感想を抱いていると、甲崎さんから衝撃の事実を告げられる。

「もし一切のセキュリティが無い状態ですと盗撮・盗聴は当たり前ですし、着替えが盗まれたり佐藤さんの私物が大量に無くなります。そうなった場合犯人の特定は困難ですし、同じような事がずっと繰り返されてしまいます。なので強固なセキュリティは必須なんですよ」

「そういう事なんですね……。ちょっと想像の斜め上を行っていて驚きましたが同時に納得しました」

「佐藤さんには不自由を強いる事になりますがご了承願います」

「分かりました。自分の身を守る為にも必要な事ですしね」

 何かあってからでは遅いし、事前に対策をするのは当たり前の事なので多少窮屈な思いをしても受け入れるべきだろう。しかし男の着替えを見て興奮するものなんだろうか?俺の母親なんかはトランクス姿を見ても普通にしていたし、高校時代を振り返っても夏場の体育なんかは上半身裸で授業を受けていた奴もいたが女子は平然としていた。これが男女逆であれば鼻血を出すくらい大興奮したんだろうが……まあ有り得ない話だ。

 男女比が極端に偏っているこの世界では、犯罪行為をするくらい男に飢えているのだろう。これで女性の顔面偏差値が平均であれば怖いので止めてもらっていいですか?となるが、質が悪いことにとびっきりの美少女&美人しかいないというね。可愛い子に着替えを盗まれたとしても、あざ~す!と喜びながら返すだろう。しかも男に飢えている可能性が非常に高いという事は俺の服で興奮してオナニーとかしてるかもしれない。…………最高すぎるし、男冥利に尽きるというものだ。出来れば目の前でオナニーしてくれたら嬉しすぎて気絶するかもな。

 ――下品な妄想を脳内で繰り広げていると桜川さんから声を掛けられたので慌ててピンク色の妄想を振り払う。職員室で考えるべきことではなかったな。反省です。

「そろそろ時間なので体育館に移動しましょう」

「分かりました」

 甲崎さん、桜川さんと一緒に体育館へと移動する。歩きながら改めて流れを確認したり、挨拶の内容を思い出したりしていると着いたので中に入る。

「うわっ、凄い人ですね」

「生徒たちはもう着席していますし、マスコミの方も準備万端のようですね。あとは始まるのを待つだけですが、佐藤さんは順番が来るまで控室でお待ち頂く事になります」

「はい。えっと出番が来る少し前に声を掛けてもらえるのでしたよね?」

「はい、そうです。緊張するなというのは流石に無理だと思いますがあまり気負わずに。相手をカボチャだと思うと多少は楽になりますよ」

「助言ありがとうございます」

「それでは私達もそろそろ移動しますのでこれで失礼します」

 二人が去り、ポツンと一人になってしまった瞬間に一気に寂しさと緊張が押し寄せる。うぅ……、胃がキリキリと痛みだしたが我慢するしかない。というかもう間もなく始まるし胃薬なんて飲んでいる余裕は無いしな。はぁ、覚悟を決めるか。

 そうして始まった就任式だが結果から言えばトラブルが起きることも無く無事終えることが出来た。ただ生徒が無反応だったのが気がかりではある。少しくらい騒めいたり、友達とあれこれ話し合ったりするのかなと思っていたのに終始静まり返っていて、あれ?もしかして全く興味関心が無いのかな?と空しくなったくらいだ。ちょっと先が思いやられるが仕事として引き受けたからには全力で取り組むのみ。たとえ生徒達が無関心だったとしてもだ。

 決意を胸に職員室へと向かう。この後は学院についての説明や、授業の方針についての話し合いがあるのでまだ緊張を緩める事は出来ない。さてと、もうひと頑張りしますか。



 From the teacher/student perspective


 その日起きた出来事を私は一生忘れる事は無いだろう。

 いつものように学院に行き友達と雑談しながら朝のHRまで過ごすいつものルーティン。今日も何も変化がない一日が始まると思っていたが、教室に入ってきた先生がいつもと違う事に気が付いた。髪型やメイクをバッチリと決めて、服も見るからに高級品と分かる物を着ている。そして緊張と興奮が入り混じった表情をしているのが一番印象的だ。先生の普段は見る事が無い恰好に私だけではなくクラス全体が訝しんだが、そんなのどこ吹く風とHRを始めてしまったので理由は謎のままだ。

 モヤモヤしたものを心に抱えつつ先生の話に耳を傾ける。

「今日の五限目は全校集会があるので、十分前には教室に居るようにして下さい。また、六限目は特別授業を行いますので本日の通常授業は四限目までとなります。ここまでで何か質問はありますか?」

「あの、全校集会ではなにをするのでしょうか?特に学園祭も終わって特にイベントも無いはずですし、学院内で問題が起きたという事も無いので不思議なのですが」

「内容については今お知らせする事は出来ません。ただ、皆さんにとって人生を変える出会いが待っているとだけお伝えしておきます」

「えー、凄く気になるんですけど」

「気持ちは分かりますが、五限目まで待って下さい。あとは、全校集会では何があっても騒いだり、行動したりしないで下さい。もしそのような事があれば厳重注意、内容によっては停学もしくは退学になりますのでくれぐれも軽挙妄動はしないように」

 先生の言葉にクラスの全員がゴクリと息を呑むのが分かった。普通であれば騒いだりしても注意くらいで済むのに、停学もしくは退学になるとなれば通常の全校集会ではないのは間違いない。学院の関係者で大物が来校するのか、はたまた文部科学省総合教育政策局からお偉いさんでも来るのだろうか?どちらにしても異例の対応に今から緊張してきてしまう。はぁ……、こういう話は当日じゃなくて何日か前にして欲しかったと思いつつ一限目の授業の準備を始めるのだった。

 緊張であまり味がしないお昼ご飯を食べ終え、迎えた五限目。クラス全員で体育館へ行くとカメラを持った人や、アナウンサーらしき人達が大勢居て思わず足を止めてしまった。いつもと違う光景に慌てて周囲を見回してみると警備員が至る所に居るし、ステージの近くにはフェンスが置かれている。

 どういうことなの?という疑問は先生の声によってかき消される。

「立ち止まっていないで進んで下さい」

「すみません。すぐに行きます」

 戸惑いながらも用意された席へと移動して開始時間まで座って待つ。果たしてこの先に何が待ち受けているのかと色々と考えている内に全校集会が始まった。最初は理事長の挨拶、次は校長先生の挨拶と続き若干辟易としていたと事で想像もしていなかったことが起こる。

「それでは今日から四季鳴館学院の特別非常勤講師に就任した佐藤拓真さんからご挨拶があります」

「皆さんおはようございます。本日から四季鳴館学院の特別非常勤講師に就任した佐藤拓真です。男性という事で驚かれたと思いますが――」

 なにこれ?なんで男性がここに居るの?というか教師って本当なの?あぁ、これはきっと夢を見ているのね。そうに違いないわ。だって……男性がステージに立って私達に向けて話しているなんて有り得ないもの。白昼夢、もしくは幻でも見ているのだろうが一応自分の頬を思いっきり抓ってみる。

 痛い。物凄く痛い。という事はこれは現実の可能性が高いが、念には念を入れて隣に座る友達に太ももを抓ってもらったが泣きそうになるくらい痛かったので確定だろう。ちなみに私も友達に抓ってと目線で促されたのでやってあげた。たぶん似たような事があちこちで起こっていることだろう。

 ――さて、今は佐藤先生のお話に集中しなければ。就任の挨拶を真剣に聞きつつ改めて思う。初めて男性を見たが物凄く格好良いし、体型もスリムでありながら鍛えているのがハッキリと分かる。お声も女性とは違って低くてほんの少しだけハスキーだがとても魅力的でいつまでも聞いていたいくらいだ。こんなに素敵な男性なのだから既に結婚しているんだろうなと一瞬考えたがそれだと辻褄が合わない点がある。既婚者なら働かなくてもいいはずだし、わざわざ好き好んで女性ばかりいる学院の教師になる必要は無いはずだ。悠々自適に自宅で好きな事をして過ごせるのに、過酷な労働をしようはずもない。というか奥様や周囲の人達から絶対に反対されるだろうし。…………仮に何かしらの理由があって国から圧力を掛けられたとしても、男性であれば突っぱねる事も出来るし馬鹿な真似をした官僚を全員更迭する事だって出来る。となると自分の意思で教師になった……ということかしら。だとしたら今までの男性像を覆す出来事になるわね。これは日本王国だけでなく世界中に大きな衝撃を与えるでしょう。

 ただまあ、私にとってはそんな事はどうでもいいのよね。初めて見る男性が理想を超越した格好良さで、声も素敵でおそらく女性に対してもある程度耐性があるはずなので、まさに完璧を通り越した神にも等しい存在だわ。そんな人が今後学院で教鞭を振るうなんてもう嬉しすぎて頭がおかしくなりそう。

 佐藤先生を見ながら様々な事を考えている内に挨拶が終わり、舞台袖へと戻って行ってしまった。もっとお姿を見たかったし、お声を聞きたかったのに……。壮絶な喪失感に意識を失いそうになっているといつのまにか全校集会が終わっていたので教室へと戻る。全員が教室に入ったところで、堰を切ったように至る所で会話が繰り広げられる。勿論内容は佐藤先生についてだ。

「朝のHRの時は何事かと思ったけど男性が教師になるなら当然の事だったわね」

「そうね。先生が皆さんにとって人生を変える出会いが待っていると言っていたけれど比喩でもなんでもなく本当に人生を変えられてしまったわ」

「ネットで見た情報とあまりにも違い過ぎてビックリしなかった?」

「した。ネットでは男性は小太りか太っている人ばかりで、傲岸不遜を地でいくような人だと書かれていたけどあれは嘘ね。佐藤先生はスタイル抜群だし、挨拶を聞く限り謙虚で優しい印象を受けたもの」

「確かに。見た目は文句も付けようがないくらい完璧だし、あとは女性に対してどういう反応や対応をするかね。ある意味これが一番重要だし」

「うーん……、こればっかりは実際に接してみないと分からないわね。誰か事前にコンタクトを取っている人が居ればいいのだけど」

 まあいないだろうなと思いつつ教室を見回してみると、近くの席に座っていたクラスメイトがこちらに近づいてきた。たまに話す程度の付き合いしかないので珍しいなと思いつつ彼女の方へ身体を向ける。

「たまたま話が聞こえてきたんだけど、私佐藤先生とお話したことがありますよ」

「えっ⁉そうなんですか?」

「はい。学園祭の時に少しお話したんです」

「詳しくお願い」

「えっと、お昼を食べているときに佐藤先生達が近くの席に座ったんです。それでお食事をされていたのですが、お肉を食べている途中で米も食べたいと仰ったので私のおにぎりをあげたんです。物凄く感謝されましたし、喜んでくれたのを今でも思い出せます」

「質問なのだけどその時の佐藤先生の態度や対応はどうだったの?嫌悪感や忌避感を露わにしたり、暴言を吐くようなことはあった?」

「そういったことは一切無かったよ。とても好意的な態度だったし、おにぎりのお礼に食べかけの牛串を貰ったりしたし。その時も嫌な表情一つせずに、嬉しそうにしていたわ」

「食べかけを貰ったって……嘘よね?」

「いえ、本当ですよ。ただ、嬉しい気持ちと興奮が限界突破してはしたない姿を見せてしまいましたが」

「それは誰でもそうなると思うし仕方ないわ。――というかこれでハッキリしたわね。佐藤先生は女性に対して優しくて、寛大で柔和な性格の持ち主だという事が」

「それは間違いありません。正直そんな男性は創作物の中だけだと思っていたけど現実にもいたんです」

「はぁ~。容姿も性格も完璧となると佐藤先生を全校生徒が狙うんじゃないかしら?あっ、勿論先生達も絶対にお近づきになりたいと思っているだろうしライバルが多すぎる~!」

 学院の女性全てがライバルになると考えると競争率は物凄いことになるわね。……そもそも佐藤先生が私達みたいな小娘を相手にするのかという根本的な問題があるのだけどそれは一旦棚上げね。まずは一生徒として仲良くなることから始めるべきだわ。

 一応考えが纏まった所で先生が教室に入ってきたので会話を切り上げる。

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