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第七三話

 じっくりと見て回ったのでかなり時間がかかってしまったが、総じて大満足だ。どの作品も画力が高いし、ギミックも凝っていて飽きる事は無かった。しかも驚いたことに似たような仕掛けや絵が一つもなかったのだ。普通であればある程度は被ってしまうものだが、それが無いという事は事前に生徒達が打ち合わせをしているのだろう。見る者を飽きさせない工夫が凄いし、そこまで配慮してくれているのが単純に嬉しい。しかし疑問に思う事もあるので、隣にいる小百合にそれとなく聞いてみることにした。

「ここまでレベルが高いのに俺たち以外誰もいないというのは不思議ですね」

「屋台やアトラクション系、あとは演劇等のほうが集客率が良いですし友達とも楽しめますから皆さんそちらに行っているのではないでしょうか?こう言ってはなんですが、アート展は地味ですし興味が無い人も多いですから」

「だとしてもこれを見ないのは勿体ないです。俺が宣伝して回りたいくらいですよ」

「拓真さんのお墨付きがあれば学院中の生徒や来場者が殺到してしまいますね。それはそれでこのクラスの生徒にとっては嬉しい悲鳴なのでしょうが、色々と問題も起きそうなので宣伝するのは難しいかと」

「それじゃあこっそりと教室のドアに『佐藤拓真のお勧めです!是非ご覧下さい』みたいな感じで張り紙をするのはどうでしょうか?何かあればすぐに剝がせますし」

「それくらいなら大丈夫そうですが、一応先生に聞いてみた方が良いと思います」

「ちょっと探してきま――」

 探してくると言おうとしたタイミングでちょうど桜川さんが廊下の奥からこちらに向かってきたのでこれ幸いと張り紙の件を相談したらOKを貰えたので早速準備することにした。

「あまり目立ちすぎても駄目だからここら辺に貼ろうか」

「あっ、今更ですけど拓真さんの直筆なので盗難や奪い合い対策をしておかないと駄目ですね」

「こんなA4の紙にサインペンで書いただけのものを欲しがるとは思えないのですが。それに俺が書いている所を見ていたわけでもないので本当に本人の直筆か分からないですし」

「拓真さんの事を知っている人は結構いますし、筆跡で男性が書いたのか女性が書いたのかが大体分かりますので用心に越したことはないです」

「えっ……、筆跡で性別が分かるって本当ですか?」

「はい。ですがある程度分かるといった感じなのでそれほど正確ではありませんが」

 マジか……。小百合がこんな事で冗談を言ったり、揶揄ったりするタイプでは無いのは知っているので事実なのだろう。この世界の女性は筆跡鑑定能力がデフォルトで備わっているのかもしれない。しかも書いた人の性別を見分けることに特化した能力が。

 この世界に来て結構経っているが初めて知る事実に少し背筋が寒くなると同時に人間って凄いなぁというぼんやりした感想が浮かんでくる。まあ、俺が書いたと知られた所で別に何かあるわけでもないし大丈夫だろうと楽観的に考えた所で対策を終えたのか再び小百合が声を掛けてくる。

「対策が終わりました。これで大丈夫です」

「お手数をおかけしてすみません」

「いえ、全然手間ではありませんでしたのでお気になさらないで下さい。――この後ですが少し早いですがお昼ご飯にしませんか?」

「なんだかんだでお腹が減っていたので賛成です。屋台に行きますか?それとも教室でご飯を出している所もあるみたいなのでそちらに行ってみますか?」

「屋台の方が色々な物を食べられますし、私は屋台に一票です」

 小百合は屋台か。雪音達にもどちらがいいか聞いてみた結果満場一致で屋台となったのでグラウンドへと向かう。一応校舎内にもいくつかあるみたいだが、今回はパスすることになった。

 そんなこんなでグラウンドにやってきたが、かなりの数の屋台があるな。中規模のお祭りくらいと言えば分かりやすいだろうか。なんだかんだで飲食関係は学園祭で一番人気があるし、どこのクラスもやりたがるからこの数も納得だ。

「いっぱいお店があるので見て回りながら気になった物を買う形にしませんか?」

「その方が良さそうですね。一回全部見て回ってからだと大変ですし」

「ですね。それじゃあ行きましょうか」

 全員揃ってあれこれ話しながら見ていくが、もうすぐお昼時とあって人が多い。今の所問題なく歩けているが、もう少ししたらごった返して前に進むのも大変になるだろう。そうなる前になんとか買うものを買ってゆっくりしたいところだ。

「定番の焼きそばとたこ焼きは絶対買うとして、あとは何にしようかな」

「拓真さん。あそこにはしまきが売っていますよ」

「透香。はしまきってなんですか?初めて聞いたんですが」

「はしまきは薄く焼いたお好み焼きを割り箸に巻いた食べ物で、九州・中国地方ではお祭りの定番食べ物として有名なんですよ」

「ちょっと待って下さい。お好み焼きを割り箸に巻く……ですか?全く想像できません」

「東日本では殆ど見る機会がありませんし、仕方ないかと。私も舞台の公演で九州に行った際に一度食べたきりですし」

「そんなレアな食べ物を学園祭で売るって中々勇気があるクラスだな。初見の人がほとんどだろうし、あまり売れなさそうな気がしますけど。まあ、せっかくの機会ですし買ってみましょうか」

「そうですね。私も久しぶりに食べてみたくなりました」

 という事で早速買ってみたが、見た目は固焼き卵にソースとマヨネーズをかけただけって感じだ。お好み焼きみたいに生地が厚くてフワフワしている訳じゃないし、箸にクルクル巻き付けているので先の方を見るとロールケーキみたいになっている。好きな人には申し訳ないがあまり美味しそうには見えない。

 実際に食べてみたら滅茶苦茶美味しいという可能性もゼロではないので、最終的な評価は食べてから下した方が良いだろうな。

「見ていて思ったんですが、ガッツリとした食べ物って殆ど無いんですね。クレープ、りんご飴、チョコバナナなんかの甘い食べ物が多いので少し驚きました」

「学生も来場者も女性ばかりなのでどうしても甘い物を出すお店が多くなってしまうんです。逆にご飯物やサンドウィッチ等のお腹に溜まる食べ物は人気がない上に、食品の取り扱いや衛生管理が厳しくなるので避けられがちですね」

「そっか。売上その他諸々を考えると確かに桜の言う通り割に合わないな。――取り合えずデザート系は食後に食べる事にしてなるべくメインとして食べれるものを買うか」

「はい。それがよろしいかと」

 方針が決定したところで目ぼしい物を買っていく。さすがに全部見て回るのは時間的にも無理なので六割くらい見た所で飲食スペースへと移動することになった。

「よし、到着っと。おぉ、結構混んでいるけど座れる場所はありそうですね」

「全員で座るとなるとあの辺りがちょうど良さそうですよ」

「分かりました。行きましょうか」

 ふぃ~、ようやく一息つける。屋台を見て回っている間お腹がグーグーずっと鳴っていたし空腹も限界の中歩いていたので座った瞬間身体から力が抜けてしまった。だが、今からは待ちに待ったご飯タイムだ。沢山買ったし目一杯食べてやるぜ!

「いただきます。まずは焼きそばから。――んっ、美味しい。屋台だから味は期待していなかったけどかなり美味しいです」

「本当ですね。てっきり格安の食材を使っていると思っていましたが違いますね。お肉やお野菜も沢山入っていますし、麺も市販されている中で一番いい物を使っているんじゃないでしょうか」

「一口食べただけでそこまで分かるとは。菫は食通ですね」

「そんな事はありませんよ。普段から料理をする人であれば誰でも分かる事ですので」

「全然分からなかった俺はまだまだ修行不足だな。もっと精進せねば」

「拓真さんの料理の腕は以前よりも上がっていますし、もっと自信を持って下さい」

「有難う。菫にそう言ってもらえて嬉しいよ」

 こういう風にさり気なく持ち上げてくれる気遣いが凄い嬉しい。さすが俺の彼女だぜ。内心でニヤニヤしているのが顔に出ていたのか、菫たちが微笑みを浮かべながら優しい眼差しを俺に向けてくる。小恥ずかしいが彼女たちの聖母のような表情を見れて満足です。

 心が満たされたから次は食欲を満たそうという事で途中で箸が止まっていた焼きそばを食べていく。何度も言うがこの世界は料理の量が非常に少ないのであっという間に食べ終わっちゃうんだよな。たこ焼きも六個あるが大きさは親指の第一関節くらいしかないのでかなり小さい。小さい子のお菓子としてなら十分だろうが、大人が食べるなら物足りないだろう。

 もう少し大きければなぁ~と思いながら気が付けば食べ終えていたので、次は牛串を食べる事にしよう。香ばしい匂いが胃袋を刺激して思わず涎が出てきそうだ。それではいただきます。

「うっ……まぁ~い!えっ、ちょっと待って。なにこれ滅茶苦茶美味しいんだけど。肉は噛まなくても舌の上でとろけて消えるし、タレも濃厚だけどしつこくなくて幾らでも食べられるわ」

「そんなに美味しいのですか?」

「千歳も食べてみてよ。もうね、ほっぺた落ちるから」

「それではお一ついただきます。――拓真さんが絶賛するだけあって凄く美味しいです。これはどの部位のお肉を使っているんでしょうか?肩ロースやモモ肉ではこの食感は有り得ませんし……。ヒレ肉、もしくはシャトーブリアンの可能性が高いですね」

「シャトーブリアンって高級部位だったはずでは?」

「はい。ヒレ肉の中心部分で最高級部位になります。どちらにしても学園祭で売るレベルではありませんし、一本四百円では間違いなく赤字でしょう」

「出血大サービスで売っているのか、伝手があって格安で材料を仕入れられたのか。それとも全く別なのかは分かりませんが、俺にとっては棚から牡丹餅です」

 こんなに美味い肉を食べたのは久し振りだよ。しかも一本四百円なのに肉が五個も串に刺さっているからかなりお得だし、満足感もある。総じて最高と言っていいのだが、一つだけ我儘を言わせてもらうならあれが欲しい。

「こう……、肉を食べているとご飯が欲しくなりますね。おにぎりとか白米を買いに行きたいのですが学院の近くにコンビニってありましたっけ?」

「この近くには無いです。駅前まで行けばスーパーやコンビニがあるのですが結構距離があるので今から行くと戻ってくる頃にはお昼が過ぎているかと」

「うわぁ~、そっか。米を食べたかったけど諦めるしかな――」

 桜から無情な真実を知らされて諦めようとしたとき、隣のテーブルに座っていた女子高生から声を掛けられた。

「あ、あの。もしよろしければおにぎりを食べますか?」

「お気持ちは嬉しいのですが、あなたのお昼ご飯を貰うのは申し訳ないですし」

「まだ沢山ありますし大丈夫です。お口に合うかは分かりませんが食べて頂けたら嬉しいです」

「そういう事でしたら、遠慮なく頂きます」

「はい。どうぞ」

「有難うございます」

 急展開で訳が分からないかもしれないが、米を食べたいと言ったら女子高生からおにぎりを貰ったぜ。しかもコンビニでよく見る包装フィルムタイプではなく、ラップに包まれた手作りだ。いや待てよ。お母さんが作ったという可能性もあるし、女子高生の手作りおにぎりと狂喜乱舞するのは早計か。

「それじゃあいただきます。――具材はおかかと梅かな?」

「はい。もし苦手でしたら違う具材のおにぎりもあるのでそちらにしますか?」

「いえ、おかかも梅も好きなので大丈夫です。お米もふっくらしているし、味付けも丁度良い感じで美味しいです」

「やった!……んんっ。お口に合ったようで何よりです」

「いや、本当に美味しいです。もしかして手作りなんですか?」

「はい。私が作りました」

 はい、きました。美少女女子高生の手作りです。冗談抜きでバブル期だったら一つ数万円、いやこのレベルの美少女ならば十数万でも売れるだろうな。それが今なら無料で頂けます。どうです?お得でしょう?こんなチャンス今しかありませんよ。

 誰に向けて言っているのか自分でも分からないが、なんか言わないといけない気がしてついやってしまいました。反省しています。話が逸れてしまったので本題に戻すがやはり肉とご飯の組み合わせは最強だ。粉ものでは口の中がもっさりしてしまうし、味も濃いので早々に辛くなってしまうがご飯だといくらでもいけてしまうのが不思議だ。ただ俺も二十代半ばなので食べすぎには注意しないといけない。小太りの彼氏とかダサいしな。体型維持は必須だしこれからも頑張っていこうと思いつつおにぎりを食べ終わったので改めてお礼を言うために声を掛ける。

「とても美味しかったです。有難うございました。お礼と言っては何ですが凄く美味しい牛串があるので食べてみませんか?」

「お気持ちは嬉しいのですが佐藤先生が食べる分が無くなってしまいませんか?」

「ある程度の本数を買っているので大丈夫ですよ」

「それではお言葉に甘えさせていただきます」

「それじゃあちょっと待って下さいね。えーと……、あれ?手を付けていないのがあったはずなんだけど無くなっている」

「拓真さんがお食べになっているのが最後の一本ですよ」

「えっ?本当に?」

「はい」

 透香に言われるまで全然気が付かなかった。まだ半分くらいしか食べていないと思っていたがラストだったとは。これはマズいぞ。

「俺の食べかけをあげるわけにもいかないし、新しいのを買ってくるので少しだけ待っていてもらってもいいですか?」

「あの!もしよろしければ佐藤先生の食べかけを下さい」

「本当に俺の食べかけでいいんですか?なんだったらテーブルにある他の食べ物でもいいんですよ」

「いえ。佐藤先生の食べかけが欲しいです」

「あっ、はい」

 鬼気迫る表情で言われたので素直に頷くしかない。年頃の女の子であれば見知らぬオッサンの食べかけなんか絶対に嫌だと思うんだが。いや、例えイケメンでも相当厳しいんじゃないだろうか。やはり新しい物を買ってきた方が良いのではと良心が訴えるが、目の前で今か今かと待っているので諦めるしかないだろう。――というか今気が付いたが佐藤先生って呼ばれてたんだよな。という事は桜のクラスメイトか友達だろうか?もしそうなら万が一問題が起こってもなんとかなる……かもしれないな。一応の安心材料を得た所でおにぎりをくれた生徒に牛串を渡す。

「それじゃあ、どうぞ」

「有難うございます。頂きます。――はぅぁ~~♡」

「ちょ、大丈夫ですか!」

 一口食べた瞬間に恍惚の表情を浮かべて、痙攣しながらぺたんと座り込んでしまったので慌てて声を掛けつつ近づいて様子を窺う。まだ微かに痙攣しているが息はあるし、命に別状はなさそうだ。ただ、座り込んだ拍子にスカートがめくれて薄いピンク色のパンツが丸見えなのと、アヘ顔――いや、ギリギリトロ顔の範囲だろうか?ダブルピースをしていたら最高だったんだけど――を浮かべているのが非常に気になる所だ。もしかしたら俺はエロゲの世界に迷い込んでしまったのかもしれない。『女子高生に食べかけの牛串をあげたらアヘ顔浮かべてイッちゃいました』なんて三流エロゲみたいなタイトルを思いつくくらいには今の状況はカオスだ。もし周りに誰もいなかったらエッチな悪戯をしてもバレないだろうし、彼女もこの状態だと喜ぶだろうからwin-winじゃねと下種な思いが湧き上がってきた所で雪音が俺の隣に来て診察を始めたので俺も気持ちを切り替える。

「呼吸、脈拍ともに異常なし。顔が赤いですが一時的な体温上昇なので問題ないでしょう。若干瞳孔が開いていますが、もう少しすれば落ち着くはずです。取り合えずベンチに横にさせて安静ですね」

「分かりました。あの、俺の牛串を食べた瞬間に体調を崩したんですけどもしかしてアレルギーとかあったんでしょうか?」

「あー……、それはその……」

「遠慮なく言って下さい。また同じようなことが起きないように俺も気を付けたいので原因が知りたいんです」

「イッてしまったんだと思います」

「えっ?」

「拓真さんの食べかけを口に入れたことにより、肉体の許容限界を遥かに超える爆発的な快感に襲われて絶頂してしまったんです。痙攣していたのも性的興奮が最高潮に達した時に起こる肉体反射ですし、蕩けた表情で目が虚ろなのもそういう事です」

「あ、あ~なるほど。よくよく考えれば雪音達がエッチの際に見せる表情と同じですもんね」

「もう、拓真さんったら恥ずかしいです」

「あっ、ごめんなさい」

 周りに人がいる中で言う内容ではなかったな。反省します。

 というか食べ物を口に入れただけでイクとか難儀な体質をしているなぁとはならない。さすがに俺でもそれは分かる。この世界に来て数か月経った頃に雪音と菫が俺の体質というか存在が与える影響について話をしてくれたからな。それを考えれば彼女がこうなってしまうのも当然の結果といえよう。

 だからと言ってこのまま放置はできないのでベンチに横にさせて、様子を確認するか。

「よしっと。これで大丈夫ですね」

「はい。少ししたら症状も治まると思いますし、彼女の様子は私が見ているので拓真さん達は食事を続けて下さい」

「分かりました。雪音も無理はしないで下さいね」

「はい」

 結果としてはあれから少しして休んでいた子が復調して、物凄い謝られてしまったが俺も配慮が足りなかったのでお互い様という事で話が纏まった。そんな事もありつつ食事を終えて、学園祭巡りを再開する。

「ご飯も食べましたし、次は少し体を動かす出し物に行ってみたいです」

「そうなると、体育館でミニバレーボールやルールや人数を絞ったバスケットボール、あとはテニスコートで一セットマッチでテニス部部員と対戦出来るみたいですよ」

「結構あるんですね。この中だとテニスが良いかな。グラウンドから近いし、確か桜のクラスメイトがテニス部の部員だったはずなのでもしかした会えるかもしれないですしね」

「そうですね。ではテニスコートに行きましょうか」

 テニスは中学時代に少しかじった程度なので上手くプレーできる自信はないが、普段から体は鍛えているしまあなんとかなるだろう。ルールはうろ覚えなので事前に部員の人から説明してくれることを願おう。

 ――一度身体を動かすとなんか楽しくなって結局テニス、ミニバレーボール、バスケットボールと全て制覇してしまった。彼女達は運動に適した服装をしていなかったので最初のテニスに一度参加した後は応援に回ってしまったが、これが嬉しい誤算だった。

 美人・美少女からの応援で気合とやる気がMAXになっていつも以上に奮闘出来たのだ。その反動で体力が七割ほど失われてしまったし、Tシャツも汗でしっとりしているが後悔は無い。でも、出来ればシャワーを浴びて着替えたいけど家に帰るまでは我慢かな。というか今の俺は汗臭いだろうし周りに迷惑をかけていると思うので、ここで切り上げてもいいかも。

「この後はどうしますか?どこか行きたい場所や見たい所があれば遠慮なく言って下さい」

「私は十分に楽しめましたしこの辺りで終わってもいいかと思います」

「そうね。拓真さんも沢山運動して疲れていると思うし、早くお風呂に入って着替えないと風邪を引いてしまうわ」

「午前中に来て今は夕方に差し掛かっている頃なのでそろそろお開きにしてもいいかと」

 雪音、菫、小百合がもう終わりで良いという意見だが他の面々も同じ考えらしく首肯している。俺も体力的にこれ以上見て回るのは少し辛いので丁度良かった。

「それじゃあ今日はこれで終わりましょうか。お疲れ様でした」

「お疲れ様でした。――拓真さん。お家に帰ったら一緒にお風呂に入りませんか?」

「いいですよ。千歳とお風呂に入るのは久し振りなので楽しみです」

「ふふっ、私の体を使って一所懸命拓真さんのお背中を流しますね」

「…………お願いします」

 千歳よ。耳元でそんなエロい事を囁くんじゃない。下半身が元気になり始めているし、風呂の途中で絶対に我慢出来なくて襲ってしまうのが目に見えている。そして透香や小百合たちも乱入してきて最終的には六人全員を相手に大ハッスルして全てを搾り取られてしまうのだろう。

 果たして明日まで俺は生きていられるのだろうか?一抹の不安を抱えながら学院を後にするのだった。

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