第六十九話
「おはようございます。今日もよろしお願いします」
「おはよう。それじゃあいつも通りお願いします」
「分かりました」
いつもの時間に桜が来たので挨拶を交わした後開店準備に取り掛かる。毎日やっている事なので特に手間取る事も無くサクサクと準備を進めていく。桜もお手伝いを始めて大分経つのでこちらが指示をしなくても作業を熟してくれるのでとても助かっている。
――いつも通りに仕事をしていたが今日は少し早めに終わったので、千歳と小百合が来るまで休憩して待っているか。そういえばお客様に頂いたお菓子があったしお茶と一緒に出そう。
「桜、今日は早めに作業が終わったので休憩にしましょう。今お茶とお菓子を用意するので座って待っていて下さい」
「私もお手伝いした方が良いですか?」
「いや、大丈夫。これくらいならすぐに終わるし俺に任せて下さい」
「それではお願い致します」
えーと、お菓子はクッキーだから紅茶かコーヒーだな。起き抜けにコーヒーを飲んだし、紅茶にしよう。あっ、桜にどちらが良いか聞いていなかった……。今から聞きに行くのも少し面倒だし取り合えず俺と同じにするか。
昔はティーバッグで適当に淹れていたが、今は違う。彼女達がお茶を愛飲しているので色々と手解きを受けて今では茶葉から淹れられる様になった。とは言えあくまでも基本的な淹れ方が出来るだけで、茶葉ごとに最適な淹れ方が出来る訳では無い。水の選び方、事前に温めるカップやポットの温度、お湯の温度、蒸らしの時間、注ぎ方等々沢山ある。正直それらを全て勉強する程の熱意は俺には無かったし、基本が出来ていれば問題無いのでそこで終わっている。もし俺がイギリス人だったら紅茶に対する情熱が遺伝子に組み込まれているだろうから、物心ついた時から当たり前の様に親から教わっていただろうな。
そう考えると日本人だと緑茶がそれに該当するのだろうか?でもそこまでお茶にこだわりを持っている人を今まで見た事が無いからもしかしたらそこまでの熱量は持っていないのかも。
益体の無い事を考えつつも二人分のお茶を淹れ終えたのでお菓子と共に桜が待っているテーブルへと向かう。
「お待たせしました。どうぞ」
「有難うございます」
「よいしょっと。――んっ、悪くない」
紅茶を一口飲んでみたがまあ普通だな。小百合や透香が淹れたものとは雲泥の差だが年季が違うし、そもそもの腕前が俺とは比べ物にならない程上なので仕方ない。
「それじゃあクッキーを頂こうかな。……結構甘いタイプか」
「砂糖を大量に使っている感じはしないので、恐らくアイシングとジャムでデコレーションされているからだと思います」
「あー、言われてみれば確かに。見た目は可愛らしいし、華やかで良いんだけどちょっとくどいかな」
「それでしたらプレーンタイプのクッキーもあるのでそちらを食べてみてはいかがでしょうか?大分甘さは抑えられていると思いますし」
「それじゃあそっちにしようかな」
甘い物は嫌いじゃないが甘さのオンパレード状態だと流石にキツイ。女性とか子供なら喜んで食べそうだけど、俺には合わなかったな。何事も程々が一番なのかもしれない。
「そういえば拓真さんは学園祭に興味はありますか?」
「学園祭かぁ……。友達が通う大学で開催されたのにはほぼ毎回行っていたくらいには好きかな。あのお祭り感と学生ならではの創意工夫が凝らされた出し物が好きなんだよね」
「それは良かったです。実は来月末に私の通う高校で学園祭があるので拓真さんに是非来て頂きたいなと思っていまして」
「そうなんだ。って来月にあるの?」
「はい」
「この時期に学祭をするのってかなり珍しくない?秋くらいに開催されるのが多いと思うのだけど」
「私が通う四季鳴館学院は一応進学校なので三年生受験に響かない様にこの時期に行う事になっているんです。とはいえ一年生にとっては入学して然程経っていないタイミングなのでかなり大変ですけど」
「あぁ、そういう理由があったんだ。秋とか冬に開催となると受験勉強真っただ中だし、人によっては最後の追い込みをかけている時期だもんな。そういうのを考慮すると確かにこの季節にするのがベストか」
「はい。――開催日時は土曜日となっているので拓真さんや、雪音さん達も参加出来ると思うのですがどうでしょうか?」
「平日だったら仕事があるから無理だったけど土曜なら問題無いですね。ただ男性が行くとなると色々と問題が起きそうですし、事前に理事長や担任の先生に確認を取った方が良さそうですね。あっ、その前に関係者でも無い一般人が参加する事って出来るんですか?」
「学生に招待券が五枚発行されるので家族や友達に渡して招待することが出来るので大丈夫です」
「五枚という事は桜は在学生だから除外するとして、俺、雪音、菫、小百合、千歳、透香で六人か。そうなると一枚足りなくなるな。んー、それじゃあ俺は辞退するから女性同士で行くのはどうだろう」
「それは絶対に嫌です。折角拓真さんが来てくれるというのに学校側のせいで駄目になるのは許容できません。先生にお願いして招待券を一枚多くもらえるか直談判してみます」
「そこまで俺の事を思ってくれるのは嬉しいけど、桜の学校での立場もあるだろうし先生の印象を悪くするような事は避けた方が良いのでは?」
「そうかもしれませんが、こればかりは譲れません。それに拓真さんが学園祭に来るのは学院にとっても計り知れないメリットがありますし、その点を強く押せば了承してくれると思うので任せて下さい」
「ふむ……、そこまで言うのであればお願いしようかな。でも絶対に無理だけはしない事。これだけは約束して下さい」
「分かりました。妥協できるラインを決めて最悪の場合そこで手を打ちます」
「うん。よろしくお願いします。少し話が逸れたけど理事長や担任の先生への確認は俺がした方が良いかな?二人の連絡先も知っているし電話して聞いてみてもいいけど」
「いえ、明日学校に行った際に聞いてみます。――サラッと流してしまいましたがいつの間に理事長先生と桜川先生の連絡先を知ったんですか?」
「二ヶ月くらい前にお店に二人が来店された時に話の流れで交換しました。桜が通う学校の先生なのでもし何かあった場合お互いに連絡が取れないと困りますしね」
「そう言う事でしたか。ですがあまり簡単に個人情報を教えるのは感心しません。男性の情報は闇市場でかなりの高額で取引されると聞きますし、ましてや拓真さんは格好良くて優しくて女性の理想を体現した男性なのですから、もしかしたら脈があるのでは?と勘違いした女性からしつこく電話してきたりメールを送り付けてくる可能性が高いです。なのでくれぐれも注意して下さいね」
「確かに桜の言う通りですね。今後は気をつけます」
「はい、お願いします」
ちょっとした事で勘違いして、もしかして私に気があるのかも?と思われる可能性はゼロでは無い。最初は話しかけたり、お店に足繁く通う程度だったのが次第にエスカレートしてストーカーにでもなったらたまったものじゃない。さらに男の情報は闇市場で高値で取引されると言うのも恐ろしい事実だ。
今の所彼女達と、お義母さん達。あとはごく限られた知り合いにしか俺の連絡先は教えていないが今後はもっと細心の注意を払うべきだろう。身の安全を守る為にもね。
「一応話は纏まったしあとは先生からの回答待ちかな」
「そうですね。なるべく早く答えてくれると嬉しいのですが、もしかしたら時間が掛かるかもしれませんので気長に待つ事にしましょう」
「だね。――しかし学園祭かぁ。俺が高校生の時は二回しか出来なかったんだよな」
「風邪などを引いて参加出来なかったんですか?」
「それだったらまだよかったんだけどね。高校二年生の時なんだけど学園祭の準備を毎日コツコツ進めてあと少しで全部終わるっていう時に大地震が起きて用意していたものが全部おじゃんになってしまったんだ。しかも地震が起きたのが開催四日前という最悪なタイミングで……。リカバリーも無理だし、なによりも地震の被害が大きくて学校は休校になり、当然学園祭も中止。俺は二年生だからまだよかったけど三年生にとっては最後の学園祭が無しになってかなりショックだったんじゃないかな」
「それは悲しいですね。自然災害は人間にはどうしようも出来ないとはいえ、もう少し発生する時期が遅ければと考えてしまいます」
「桜の言う通りどうしようもない事なんだけどね。まあ、そんな感じだったから遅れた青春を取り戻すという訳でも無いけど桜から学祭の話を聞いた時はかなり嬉しかったんだ。失われた一年をもう一度取り戻せるような気がしてさ」
「拓真さんに喜んで頂けて何よりです。私も色々と頑張らないといけませんね」
ふんすっ!と可愛らしく腕を曲げて気合を入れている。その際おっぱいがブルンと揺れたのを俺は見逃していないぜ。出会った時は手のひらに収まるサイズだったのに今では両手で包み込んでも足りないくらいの大きさだからな。そりゃあ、勢い良く腕を曲げたらおっぱいも揺れますわ。
うーん、健やかに成長しているな。これはこれで満足なんだが、俺としてはもうワンサイズ大きくなってくれると最高なんだが、こればっかりは俺にはどうしようもないので願う事しか出来ない。
ちょっと下種な事を考えつつもそろそろ小百合と千歳が来る時間になったので桜のお手伝いはここまでとなる。
「そろそろ時間なので上がって下さい」
「分かりました。それではお疲れ様でした」
「お疲れ様。気を付けて帰ってね」
「はい。拓真さんもこの後のお仕事頑張って下さい」
「有難う。桜にそう言って貰えると元気になるし、張り切って仕事をするよ」
「ふふっ。それでは失礼致します」
丁寧にお辞儀をしてからお店を出て行く。さてと、これからが本番だ。今日もお仕事を頑張りますか。
――桜と学園祭の話をしてから二日後には学院側から返答があった。内容は要約するとこんな感じだ。
まず、招待券については一枚多く渡すので是非来て下さいと言うものだった。次いで男が学園祭に行くという件だが学院側としては歓迎するが、警備や医療体制について一度話をしたいという事だった。これについては男性が来るので警備体制を例年よりも強化しなければいけないし、医療体制についても万が一怪我をしたり、体調を崩した場合どういった対応をするかを決めなければいけない。ただこの件に関しては俺は門外漢なので専属医である雪音と特別警護対象保護課に勤めている菫を交えて話し合いをしたいと思っている。その他にも在校生や学園祭に来る関係者の対応等々色々と決めなければいけない事が多いらしく、一度学院に来て貰って諸々を話し合って決めたいとの事だった。
こちらの都合の良い日時で構いませんという事だったが、来月末に開催されるのだからあまり暢気にはしていられないだろう。なるべく早い方が良いだろうからすぐに雪音と菫に連絡を取り、お互いの予定を擦り合わせた結果三日後に学院へ行く事が決定した。
そういえば桜の通う学院に行くのって初めてなんだよな。日本王国三大高校の一つで、有名な進学校という情報はあるがそれ以外は不明だから少し緊張する。理事長や、担任の先生――甲崎さんや桜川さんはとても良い人だし、学校環境が悪いという事は無いだろうがそれでも初めて行く場所はどうしてもね……緊張するよね。うぅ……、今から胃が痛くなってきた。
――気が付いたら今から胃が痛いよと言っていた時から三日経ち、今日は学院で話し合いをする日だ。ビシッとスーツを着て、髪型もいつもよりも気合を入れて整えたし準備は万全だ。雪音と菫とは俺の自宅の前で待ち合わせしているので、そこからタクシーで学院まで行く予定だ。
なんて考えている内にいい時間になったので家を出る事にする。玄関から外に出ると丁度こちらに向かって来る雪音と菫の姿が見えたので手を振りながら少し待つ事に。
「「こんにちは。今日はよろしくお願いします」」
「こちらこそよろしくお願いします。それじゃあタクシーももうすぐ着きますし移動しましょうか」
「はい」
車で移動する事三十分くらいで高い塀で囲まれた建物が見えてきたがあれが桜が通う学院だろうか?窓から見る限りかなり広大な印象を受ける。流石は名門校といった所かなんて益体も無い事を思いつつ、職員用駐車場の手前でタクシーが停車したので降りて、関係者用通用口へと向かう。
歩ている途中で改めて校舎を見てみるが、先進的なデザインで格好良い。そしてなによりも縦にも横にもデカい!一般的にイメージする校舎の二倍はあるんじゃないかな?そんなのが一棟ではなく数棟あるんだから驚きだ。建設費用をペイ出来るのは果たして何十年後になるのだろうか?とか、学生数が大学並みじゃないと教室が余るのではなんて思うがどうなんだろう。
色々と疑問が浮かんでくるが、この場にいる面々は誰も答えを持ち合わせていないし考えるだけ無駄かもな。……というか通用口の前に立っているのって甲崎さんと桜川さんだよな。もしかして時間を間違えたかと慌てて端末で確認したが予定通りだ。という事は出迎える為に待っていたのかもしれないし、急ぎ足で向かうとしよう。
「お待たせしてしまい申し訳ありません」
「お約束した時間までまだ余裕がありますし、こちらの都合で来て頂いているので出迎えるのは当然の事なのでお気になさらないで下さい」
「お気遣い頂き有難うございます」
「では、応接室までご案内致しますので私について来て頂いても宜しいですか?」
「はい。お願いします」
理事長――甲崎さんの案内の元応接室まで歩いて行く。建物の外観も立派だったが内部もかなり立派だ。廊下に調度品が置いてあったり、豪華な照明で照らされているとかではないがとても品があるとでも言えばいいのだろうか。建物を設計した人のセンスが抜群なのか、またはデザイナーが関わっているのかは不明だが実に洗練されている。高校の校舎と言われなければ美術館と勘違いする人も居ると思う。
流石は日本王国三大高校の一つだな。金のかけ方が半端じゃない。俺もこういう学校に通いたかったなと物思いに耽っている内に応接室に着いたみたいで中へと入る。
「そちらのソファにお掛けになって下さい」
「はい」
「久慈宮さんはもうすぐ来ると思うので、少々お待ち下さい」
「分かりました。……あの、今は授業中だと思うのですが桜が抜けても大丈夫でしょうか?もし欠席扱いになるのであれば今からでも授業に出て欲しいのですが」
「その点に関しては公欠として扱っていますので問題ありません。――佐藤さんはとてもお優しいんですね。こんなに男性に思われている久慈宮さんが羨ましいです」
「いえ、当然の事です。俺のせいで出席率に影響して進級できませんでしたなんて事になればどれだけ謝罪しても許されませんから。確認するのは当然ですよ」
相手が学生だろうと社会人だろうとどういう扱いになるのかを確認するのは当たり前だ。今回の場合は俺のせいで桜が話し合いに参加する事になったので尚更だよ。というかいきなり授業を欠席したら悪目立ちするんじゃないかな?大丈夫かな?と心配している所にコンコンとノック音が響く。
「久慈宮です。入っても宜しいでしょうか?」
「どうぞお入りください」
「失礼致します」
「久慈宮さんはそちらの席に座って下さい」
「分かりました」
桜が俺達が居る側に座ったタイミングで甲崎さんが口を開く。
「それでは学園祭についての話し合いを始めさせて頂きます。まずは警備と医療体制についてですね。学院側としては民間警備会社と学院が提携している病院にお願いしようと思っているのですが問題無いでしょうか?」
「民間警備会社の場合社員の質がばらけていますし、なにより男性の警備・警護経験がほぼ皆無なのが問題です。もしトラブルが起こった場合対応できない可能性が高いですし、最悪怪我をしたら責任を取れないと思うので私としては反対です。代案として軍警察特別警護対象保護課に任せて頂けませんか?我々は拓真さんの専属と言っても過言ではありませんし、実績もあります。なにより問題が起こった場合軍警察が動くことになるので拓真さんの安全は確実に保障されます」
「軍警察に勤めておられる倉敷さんがそこまで仰るのなら問題ありません。では警備に関しては軍警察に一任するという形で宜しいですか?勿論私共も必要な情報があれば開示しますので仰って下さい」
「はい。私共にお任せ下さい。一度こちらでプランを作った後学院側と詳細を詰めていきたいと思っているのでよろしくお願いします」
警備に関しては予想通り軍警察が担当する事になった。まあ当然だな。国家の武力を司る組織が動くと言っているのに、民間の会社にお願いしますという馬鹿はいないだろう。それに国の組織だから依頼料を払う必要が無いのも大きいんじゃないかな。国家機関だから国民の血税で運営されているし、後からお金を払え!なんて言われる心配も無いのは大きいと思う。
甲崎さんと菫の会話を聞きながら俺なりの意見を纏めた所で議題は次へと移る。
「では次に医療体制についてですが、先程お伝えしたように学院が提携している病院にお願いしようと思っているのですが問題無いでしょうか?」
「その病院は男性の受け入れ体制は整っているのでしょうか?」
「一般の病院なので男性を受け入れられるような体制は整っていないと思います。ですが、医師や看護師を学園祭当日に派遣してもらう事は可能なので軽度の怪我であればその場で対応できると思います。もし重度の怪我を負った場合は国から認可が下りている男性対応可能な病院に搬送するという形で考えています」
「それだとかなり不安が残りますね。私が勤務する病院の男性専用病棟から看護師を回してもらった方が何かあった場合でも十二分に対応できます。勿論拓真さんの専属医である私もいるので、先程仰ったように万が一大怪我を負った場合でもすぐに勤務先の病院に搬送して治療出来ます。定期健診で得たデータもありますし一から情報を調べるという手間もかかりません」
「そう言う事であれば静川さんにお任せするという形で進めさせて頂きます。警備・医療の両面でお世話になってしまい申し訳ありませんがよろしくお願い致します。また、詳細については後日打合せさせて頂ければと思います」
「「分かりました」」
この話も予想通り雪音が担当する事になった。俺としても見ず知らずのお医者様よりもこの世界に来た時から付き合いがあり、信頼している雪音が付いてくれる方が安心できる。それと定期健診に行っている病院だと顔見知りも多いし、男性に対する扱いもどういう感じか知っているのでそういう意味でも安心だ。
……ただ菫と雪音には仕事を押し付ける形になってしまって本当に申し訳ない。二人共かなり多忙だし神経を使う仕事をしているのでキャパオーバーで潰れてしまわないか心配だ。俺に出来る範囲で手伝うつもりだし、なるべく負担を減らせるよう頑張らないとな。最愛の彼女が精神的に病んでしまうとか笑えないからね。
「では最後に教職員と在校生、学園祭当日にお越しになられる関係者への対応についてお話をさせて頂きます。男性が学園祭に来られるという情報を伝えれば確実にパニックになると思うのでまずは教職員に話をしてから在校生へと伝える予定です。佐藤さんに関する事は機密情報なので簡易的ではありますが秘密保持契約を結びたいと考えています。同様に当日来られた関係者も受付で簡易的な秘密保持契約にサインしてもらうつもりです。――ただ、人の口には戸が立てられないという言葉もある通り情報がどこからか漏れてしまう可能性はゼロでは無いのでその点は了承して貰えますでしょうか?」
「分かりました。そこまでして頂いた上で漏れたのなら手の打ちようがありませんし仕方ないです」
「有難うございます」
この世界は超情報化社会だしどれだけ細心の注意を払って準備した所で漏洩する時はしてしまう。だからある程度は許容しないと何も出来なくなるからな。というか学院としてもかなり無茶をしているだろうしこれ以上対策を施せとは口が裂けても言えない。逆にここまでして貰って申し訳ないくらいだ。




