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第六十八話

 デパートの五階にある子供服売り場に来たわけだが、当たり前だけど母娘しかいない。だけど仲睦まじい様子で服を選んでいる光景を見ると心が暖かくなるな。それに雰囲気がほのぼのしているのも良い感じだ。俺にも子供が出来たら一緒に買い物したりするのかな?なんて物思いに耽っていると少し離れた所から『あっ、おとうさんだ!』という幼い声が聞こえてきた。

 この世界で父親と買い物に来るという奇跡にも似た光景を見てみようと声の方へ振り向くと俺の方へ向かって走ってくる幼女三人組の姿が目に入る。そのままトタトタという擬音が付きそうな可愛らしい走り方で俺の所まで来ると三人揃って腰に抱き付いてきた。

「おおっと。美穂、凛、友香は今日も元気一杯だな」

「うん!おとうさんに会えて元気になったの~」

「うぅ~、おとうさんのにおいがする」

「おとうさん、おとうさん。だいすき!」

 俺の腰に抱き付いたままそれぞれ喋っていたが、離れる気配は一切無い。後ろでは彼女達が微笑ましい表情を浮かべながらこちらを見ているが何時までもこのままだと周りの目もあるしマズいだろう。嫌がるだろうが一旦離れてもらおうと美穂達に声を掛けようとしたタイミングで、見知った人達が焦った様子でこちらに駆け寄ってくる。

「佐藤さん、子供がご迷惑をお掛けして申し訳ありません。ほら、佐藤さんから離れなさい」

「いやー。おとうさんと一緒にいる」

「我儘を言わないの。それに買い物の途中だったでしょ。早く選ばないとお家に帰れなくなるわよ」

「おかあさんがえらんだのでいいよ。私はおとうさんとまっているから」

「もう……。佐藤さんにもお連れの皆さんにも予定があるのだし、いつまでも抱き付いていたら困るから早く行きましょう」

「………………」

 幼稚園児だとまだまだ聞き分けが悪いし、一度興味関心を持ったら中々離れたり止めないからな。お母さん達が何とか説得しようと試みているが、これは難しそうだな。助け舟を出したいがまずは彼女達に確認を取るのが先か。

「雪音。この後の予定は特に決まっていませんし、少し美穂達の買い物に付き合っても良いですか?」

「構いませんよ。――他の皆さんはどうですか?」

 雪音の問いかけに五人全員が大丈夫ですよ返事をしたので、あとはお母さん達に聞くだけだ。……しかし自分で言っておいてなんだがデートを中断する形になってしまったので後で埋め合わせをしないとな。帰りにデパ地下で美味しいスウィーツを買うか、高級なお肉でも買おう。

 数秒だけこの後の事を考えて結論を出した後、美穂達のお母さんに向き直る。

「俺達は買い物を済ませて特に用事もありませんし、ご迷惑でなければ美穂達の買い物にご一緒してもよろしいでしょうか?」

「とても嬉しいご提案ですが、良いのでしょうか?お連れの方とのデートを邪魔してしまう格好になりますし……」

「彼女達に確認を取りましたし大丈夫ですよ。それに皆さんと会うのも久し振りですし、近況報告も含めて色々とお話しできたらなと思います」

「そう言う事でしたらお言葉に甘えさせて頂きます。ほら、佐藤さん達にお礼を言いなさい」

「おとうさん、ありがとうございます」

「いえいえ、どういたしまして」

 子供達がお礼を言ってくれたので頭を撫でてあげる。気持ちよさそうな表情を浮かべながら撫でられている様子は凄く可愛らしい。こういう純粋無垢さは子供ならではだろうし、ここまで喜んでくれると俺としても撫で甲斐があるというものだ。ちなみに彼女達と夜の情事をした際、ピロートークの時に必ずと言ってもいいくらい頭を撫でているので練度は以前と比べてかなり上がっている。自慢じゃないが以前透香とHした時に『性的に少し興奮している時に拓真さんに撫でられたらそれだけでイッてしまいそうになります』と言っていたので例え幼女であろうとやり過ぎれば危険だ。という訳でこのくらいで終わりにして子供達の買い物に付き合おう。

「よし、これで終わり。それじゃあ買い物に行きましょうか」

「もっとなでなでしてほしかったです……」

「それはまた今度ね。今はお母さんとの買い物を済ませなきゃね」

「わかった~」

 素直に言う事を聞いてくれたので、そのままお母さん達の案内の元お店へと向かう。店内に入ってまず驚いたのは商品の多さだ。大人向けのお店だとずらっと服や小物が置いてあるが、それに引けを取らない程多くの衣服や小物が陳列されている。正直子供服なんて毎年のように買い替えなきゃいけないし、定番の物ばかりが並んでいてそこまで品数は多くないと思っていたが全然違うんだな。俺が子供の頃なんてズボン・ハーフパンツ・Tシャツ・長袖なんかがデザイン違いで売っていた記憶がある。まあ、男の子と女の子ではファッションに目覚める時期も全然違うし、幼いながらも可愛い服を着たいという欲求が強いのかもしれない。ただ、子供なんてあっという間に成長してすぐに着れなくなるのだからお財布には優しくは無いよな。――いや待てよ。雪音達の下着を買いに行った時に値段の安さに驚いたし、子供服もかなりお手頃価格なのかもしれないぞ。そう思い、近くにあった服の値札を見てみると俺が想像していた値段の半額くらいだった。滅茶苦茶安いな。これだったら毎年買っても大して痛くは無いだろう。

 女の子の服がこれだけ安いという事は男の子の服はかなり高いんだろうな。一家族に男の子が二人居るなんて事はほぼ無いだろうからお兄ちゃんのお下がりとかも無いだろうし、何よりも世間体を考えれば毎年買わざるを得ないか。うーん、こう考えると男児が居る家庭ってかなり大変なのでは無いだろうか?

 当然男児が居る事によるメリットは計り知れないが、それ相応のデメリットもある訳だ。ただ、一概に良い悪いで判断出来る事では無いし難しいよな。ぼんやりとそんな事を考えている内にいつの間にか何着か服を選び終わったみたいで子供達が俺の方へと歩いてくる。

「おっ、気に入った服はあった?」

「うん。これとこれと、これなんだけど一つしか選べないの。だからおとうさんに決めて欲しいなって思って」

「それは美穂だけじゃなくて、凛と友香も同じかな?」

「「うん」」

「よし、分かった。それじゃあ選んできた服を見せてもらっても良いかな」

「じゃあ私からみせるね」

 美穂が選んだのはフリルがあしらわれたボタンシャツと可愛いイラストが描かれているTシャツ、最後に胸元に猫の刺繍がある薄手のトレーナーの三着だ。どれも可愛らしくて美穂に似合いそうで迷うが、ここでどれも良い感じだし好きなのを選べば良いんじゃないとか言ったら怒られるんだろうな。しかもこういう場合欲しい物は決まっていて後押しが欲しいとか、ただ聞いてみただけというのが往々にしてあるのが非常に厄介だ。

 これが子供にも当て嵌まるのかは分からないが、下手にリスクを背負う真似は避けるべきだろう。さり気無く美穂の表情や視線を観察していると胸元に猫の刺繍がある薄手のトレーナーを頻繁に見ている事に気が付いた。ここまで分かり易いヒントがあれば間違いようがない。

「この猫の刺繍があるトレーナーが良いんじゃないかな。可愛いし、美穂に似合うと思うよ」

「私もこれが可愛いなって思っていたんだけど、おとうさんも同じでうれしい!」

「それじゃあこのトレーナーで決定だね」

「うん」

 無事決まった所で次は凛と友香のを選ばなくては。……幼くても女の子だけあって色々と気を使うな。最初はただ見ているだけで良いと思っていたが、結構大変だ。あと二人、気合を入れて行こう。

 ――何とか頑張って終わらせたと思ったら、次はスカート選びに移りこれまた俺が意見を言う事になってしまったが、なんとかかんとかそれも終わり今はレジで会計をしているので待っている所だ。ふぅ……と一息ついた所で桜が話しかけてくる。

「お疲れ様です」

「桜もお疲れ様。待っているだけでも結構大変だったでしょ?」

「拓真さんと子供達の微笑ましい遣り取りを見ていたらあっという間だったので大丈夫です。それに将来子供が出来た時のシュミレーションも出来たので有意義な時間を過ごせました」

「子供かぁ。最低でも五人は生まれるから、生活もガラッと変わるだろうし買い物とかも一苦労しそうですね」

「一人づつ産めば確かにそうなりますが、二人目を産んだら十人になりますよ」

「そうなると大家族ですね。正直全く想像が出来ませんが……」

「私もです」

 父親が一人、母親が六人、子供が十人の合計十七人家族とか物凄い昔だったらいたかもしれないが、現代では有り得ないだろうな。というか十人も子供が居たら生活費とか学費とか物凄い金額になるだろうし立ち行かなくなるのは明白だ。仮に夫婦共働きだとしても最低年収が一千万を超えなければ厳しいな。

 真面目な話俺が結婚して五人の子供が出来たとする。妻六人、子供五人を今の収入で養えるかと問われれば贅沢をしなければ問題無いと答えるだろう。現状雪音、菫、小百合、千歳、透香が働いている為そちらの収入も合わせれば毎日のように豪遊しなければかなりの余裕をもって生活できるだろう。

 ただ、男は外で働き、女は家を守るという古い考えが俺の中にあるので出来れば一家の大黒柱として自身の稼いだお金だけで家族を養っていきたいんだよな。勿論共働きが駄目だと言うつもりは毛頭無いし、妻が稼いだお金を俺があれこれ指図して使わせないようにするなんてのは以ての外だ。一所懸命汗水流して必死に稼いだお金を旦那に分捕られるとか悪夢以外の何ものでも無いからね。

 もし俺が奥さんの立場だったらブチ切れて、翌日には離婚届を出しているよ。想像したらイライラしてきたが、丁度お会計が終わったようでお母さんと子供達がこちらに来たので一度深呼吸して気持ちを落ち着かせる。

「すぅ~、はぁ~。――皆さんこの後は何か予定が入っていますか?」

「いえ、何も入っていません」

「そうですか。もしよろしければ地下一階にケーキ屋さんがあるので少し休憩していきませんか?」

「ケーキ!おとうさん、私イチゴのショートケーキがたべたい!」

「私はフルーツタルトがいい!」

「えっとね、りんごがいっぱい入ったケーキが食べたいの~!」

「おぉ、もう食べたいケーキが決まっているんだな。子供達もこう言っていますしどうでしょうか?」

「買い物に付き合って貰っただけではなく、休憩までご一緒してしまい佐藤さんにはご迷惑をお掛けしますがご厚意に甘えさせて頂きます」

「分かりました。それじゃあ行きましょうか」

 行き先が決まった所で全員揃って地下一階へと移動する。ちなみに件のケーキ屋さんはお店に来たお客様に教えて貰ったお店だ。凄く美味しいので一度行ってみて下さいと熱弁されて、先月彼女達と一緒に訪れたのだが物凄く美味しかった。お客様が目をキラキラさせてお勧めしてきただけはある。

 デパ地下にお店があるので並んでいる商品は基本的に大人向けだが、定番のケーキであれば子供でも食べられるだろう。あれこれと考えている内にお店に着いたので中に入り、ガラスケースに入っている美味しそうなケーキをそれぞれ選んでいく。俺が選んだのはラム酒がふんだんに使われたガトーショコラだ。前に来た時も同じ物を食べたが、濃厚なチョコレートとラムレーズンの甘み、そしてラム酒が華やかな香りが口内で渾然一体となり舌を喜ばせる。甘さ控えめでチョコレートはビターな風味なので甘い物が苦手な人でも美味しく頂けること間違いなしの一品だ。

 うぅ、あの味を思い出しただけで涎が出そうになるが、グッと堪える。全員が注文を終えてから少し待つとお皿に乗った商品を手渡されたので、近くにあるイートインスペースへと移動する。

「よっこいしょっと。ふぅ、立ちっぱなしだったからこうして腰を下ろすとホッとしてしまいます」

「ずっと立っていると足腰にきますし、疲労回復も兼ねて適度に休憩するのは大事ですね」

「千歳の言う通りなんですが普段立ち仕事をしているので、ついまだ大丈夫だろうという感覚で行動する事が多いので注意しなきゃいけないな」

「仕事の時は私や小百合さんがタイミングを見計らって拓真さんに休憩を促す事が出来ますが、こういう大勢で買い物をしたり、お出かけをした時等は中々難しいのでもっと注意して見るようにします」

「なんだか手間のかかる子供みたいで恥ずかしい限りですが、よろしくお願いします」

「手間だなんて思いませんよ。拓真さんに関わる事でしたらどんな内容でも嬉しいので」

 こういう些細な事でも見逃さずに手を貸してくれるのは本当に助かる。というか現状俺の生活は彼女達に管理されていると言っても過言では無い。普通であれば例え家族であっても生活を管理されるなんて絶対に嫌だ!という人が大多数だろう。だが、徹底的にスケジュールを組まれてその通りにしろと言うのでは無く、彼女達の場合は気遣いや配慮をしっかりとした上でごく自然にやっているので違和感も無いし、当たり前の様に受け入れてしまうんだよな。その結果最愛の彼女達が居なければ生活が立ち行かなくなるダメ人間の出来上がりという訳だ。これが果たして良い事なのか悪い事なのかは人それぞれだろうし、解釈によっても変わってくるが俺としては双方がwin-winなんだから良いのではないかと思う。

 これでどちらかが不利益を被っているなら話は別だけどね。――長々と考えてしまったが結局のところ今が幸せなので全て良し!って話だ。

「さてと。それじゃあケーキを頂きますかね。……んっ、美味しい」

「前に来た時も思いましたが本当に美味しいですね」

「ですよね。透香は何のケーキを選んだんですか?」

「私はシャルロットケーキを選んでみました」

「シャルロットケーキ?初めて聞きました。見た目は帽子みたいな形をしていて可愛らしいですね。それに沢山フルーツが乗っていて美味しそうです」

「シャルロットはフランス発祥のお菓子で起源は十八~十九世紀のヨーロッパと言われています。外側を覆っているビスキュイ生地にババロアやクリームを詰め込み、フルーツ等でデコレーションしたお菓子なんですよ。見た目も可愛らしいし、色々な味を楽しめるので人気があるお菓子の一つです」

「物凄く詳しいんですね。もしかして透香はスウィーツにかなり造詣が深かったりしますか?」

「私の友達がその手の事に詳しくて、一緒にお茶をした時等は必ずと言っていい程蘊蓄を傾けるんです。その結果私もある程度詳しくなってしまって」

「そうだったんですね。でもこうして知らない事を教えて貰って勉強になりましたし、俺としては透香の友達に感謝しないといけませんね」

「ふふっ、そう言って頂けると友達も喜ぶと思います。それに今まで頭の片隅で埃を被っていた知識に非の目が当たって私としても嬉しいです」

 こういう食べ物に関する歴史を聞くのが苦手な人も居るだろうが、俺は結構好きだったりする。タメになるし、未知を既知にしていく感覚と言うのは何度味わっても良いものだからね。

 ――しかしシャルロットケーキ美味しそうだな。頑張れば追加で食べる事も出来そうだけど、完食した後胸焼けと胃もたれに襲われそうだから今度来た時に絶対に食べよう。そう固い決意を固めたタイミングで透香が話しかけてくる。

「拓真さん。もしよろしければ一口食べてみますか?」

「えっ?良いんですか?」

「はい。では、あーん」

「………………あーん」

 ぐっ、まさかこんな行動をしてくるとは思っていなかったので少しの間逡巡してしまったよ。だが、可愛い彼女があーんをしてくれているのに『いや、普通にお皿を渡して下さい』なんて愚かな真似は絶対にしない。そんなの馬鹿がする事だからな。――少しは人目を気にしろって意見もあるだろうが、テーブルに着いているのは見知った顔ばかりなので何の問題も無い。

「んっ。美味しいです。透香が食べさせてくれたので何倍にも美味しく感じているというのもあると思いますが。あっ、俺のも良かった一口いかがですか?」

「それではお言葉に甘えさせて頂きます」

「はい、あーん」

「あーん」

 形の整った口元へとガトーショコラを運ぶと、パクッと可愛らしい食べ方を見せてくれた。……なんかこう込み上げてくるものがあるな。名状し難い気持ちだが悪くない。そしてもくもくと小さな口を動かしている透香が可愛すぎる。はぁ~、やっぱり俺の彼女は最高だぜと思いつつ見惚れていると食べ終わったのか声を掛けてきた。

「拓真さんに食べさせて頂いたのでとっても美味しかったです。有難うございました」

「こちらこそ透香の可愛らしい表情が見れて眼福でした」

「もう、もう。恥ずかしいです」

「恥ずかしがっている顔も可愛いですよ」

「うぅ~……」

 バカップル丸出しで、独り身の男性が見たら爆ぜろ!クソ野郎!と罵声を浴びせられそうだが仕方ないじゃない。透香があまりにも可愛すぎるんだから。IQが三くらいになっても仕方ない。

 いや~、恋人が居ると言うのは最高ですねと心の中で呟いていると、周りから冷たい視線が向けられているのに気が付いた。――完全に周りに雪音達や子供達、またお母さん達が居るのを失念していた。もう手遅れかもしれないが謝罪しよう。

「周りの目も考えずに行動してしまいすみませんでした。今後は注意したいと思います」

「別に拓真さんと透香さんがイチャイチャしていても構わないんですよ。えぇ、恋人同士なのですから何の問題もありません。ただ、私達もいるということを忘れないでほしいです」

「はい、雪音の言う通りです」

「ですので私達にもあーんをして下さい」

「えっ?」

「私達にもあーんをして下さい」

「いや、聞こえなかった訳では無いんですが……。皆にも透香と同じ事をすればいいんですね?」

「はい。お願いします」

 途中でいきなり話の流れが変わったが嫌ですとは言えない。雪音を始めとした彼女達の有無を言わせぬ圧力に負けた……もといお願いを聞くのは彼氏として当然の事だからな。

 最初は雪音から順番にあーんをしていったが皆幸せそうな表情を浮かべていたし、機嫌も良さそうだったから先程までの不満は解消したと思っていいだろう。ちなみにお母さん達も物欲しそうな顔で俺の事を見ていたが、流石に人妻にやるような事では無いのでそれとなくスルーした。子供達は少し羨ましそうな表情を浮かべていたがすぐにケーキに夢中になったので問題ない。

 さてと、俺もケーキを食べるかな。そういえば洋酒を使っているお菓子に合う飲み物ってなにがあるだろう?緑茶とかは和菓子だし、コーヒーか紅茶かな?ワインやビール、ウィスキーなんかも案外合いそうな気がする。ただその場合お酒×お酒になってしまうので少々くどさを感じるかもしれないな。

 カクテルだとかなり甘さを抑えた物でないと口の中が甘ったるくなってしまって、美味しさよりも不快感が勝るだろう。こうして考えると結構難しいな。

 ついつい仕事目線で考えてしまったが、今はデート中なんだし思考を切り替えないと。

「ごちそうさまでした」

「おっ、もう食べ終わったんだ。美味しかった?」

「うん。すごくおいしかった~」

「そっかそっか。友香の口に合ったようで良かったよ」

「おとうさん、くちにあうってどういう意味なの?」

「食べ物が友香の好みに合うっていう意味だよ」

「へ~、べんきょうになりました。……ふぁ~」

「お腹が膨れたから眠くなっちゃったかな?」

「少しだけねむいかも」

 小さい手で目を擦りながら答えてくれるが、この様子だと暫くすれば寝てしまいそうだ。美穂と凛も少し眠そうにしているし、ここら辺で解散した方が良いか。チラリとお母さん達に視線を送ると一つ頷いてから子供達に話しかける。

「それじゃあ、そろそろお家に帰りましょうか。お買い物もしたし、美味しいお菓子も食べられたし今日はこのくらいにしましょう」

「うぅ~、おとうさんともっと一緒にいたいけど分かった~」

「それでは佐藤さん、皆さん。本日は楽しい時間を過ごせました。また機会があればよろしくお願い致します」

「こちらこそ有難うございました。気を付けてお帰り下さい」

「はい。それでは失礼致します」

 お母さん達がそれぞれ子供の手を引いて帰路へと着く。俺達は時間的にも体力的にもまだ余裕があるのでもう暫く適当に見て回る事になるだろう。色々とあったがまだまだデートは続くのだ。

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