第五十七話
今日は週の半ばの水曜日なのでどうしても客足は伸びづらい。これで天気が悪ければ更にお客様が来ないという事態になるが幸いにして天気は良いので来店数はいつも通りだろう。お客様と会話しつつカクテルを作り、合間合間に使用した道具を洗ったり片付けたりする。そんな風にいつも通りに仕事をしつつ時計に目を遣ると時刻は二十一時を少し過ぎた所だった。まだピークタイムでありこれから来るお客様も多いだろうから頑張らないとなと少し気合を入れた所でドアベルがカランと音を立てる。
「いらっしゃいませ。こちらのお席にどうぞ」
丁度カウンター席が空いていたのでそちらにご案内をする。バッグやスプリングコートをバッグハンガーや収納ボックスに仕舞ったのを確認してから改めてお客様に声を掛ける。
「こんばんは。今日は珍しい組み合わせでいらっしゃったんですね」
「そうなんです。お店に来る途中でばったり菫と透香さんにお会いして、そのまま一緒に来ました」
「普段は皆さん来店される時間もバラバラなのに凄い偶然ですね。というか初めてでは無いですか?」
「言われてみれば確かにこの三人でお店に来るのは初めてです」
雪音さん、菫さん、透香さんが予定を合わせていないのに一緒というのはかなり珍しい。雪音さんと菫さんは比較的早い時間に来店される事が多いし、透香さんは深夜に来店される事が多いのでこの時間に揃って来るというのは本当に珍しい。
俺としては皆と会えて嬉しいし、テンションも上がってしまう。ただ仕事中なのであまり表に出さない様に注意しなければな。
「それではご注文はお決まりでしょうか?」
「ジンバックでお願いします」
「私はシンガポールスリングでお願いします」
「パリスティーナでお願いします」
「畏まりました。少々お待ち下さい」
今回注文を受けたカクテルは全部ロングカクテルになる。ショートカクテルと比べて比較的長い時間をかけてのんびりと飲むことに適したカクテル群のことで量は多めでアルコール度数は低めなのでお酒が苦手な人でも無理せずに飲めるカクテルとも言える。
さて、まずは雪音さんから注文を受けたジンバックを作っていく。材料はジン、ジンジャーエール、レモンジュースだ。作り方は氷を入れたグラスにジンとレモンジュースを注いだ後ジンジャエールを入れて軽く混ぜた後にカットレモンを入れれば完成となる。
お次は菫さんが注文したシンガポールスリングを作っていく。材料はドライジン、チェリーブランデー、レモンジュース、ソーダとなる。作り方はソーダ以外の材料をシェイクして、氷を入れたタンブラーに注ぐ。それからソーダを入れて軽くステアした後にスライスオレンジ等で飾ると完成だ。
最後に透香さんが注文したパリスティーナだが材料は国産のアールグレイリキュール、フランス「サンジェルマン」のエルダーフラワーリキュール、 ドライレモンとなる。ご家庭では揃えるのが少し難しい物もあるので飲みたい場合はBARで注文するのが良いだろう。
さて作り方だがアールグレイリキュールとエルダーフラワーリキュールを注いだ後ソニックを注ぎ、最後にドライレモンを添えれば完成だ。
コースターを置いて出来上がったカクテルを置いて行く。
「お待たせ致しました。ジンバック、シンガポールスリング、パリスティーナでございます」
「有難うございます。――いただきます。……んっ、とても美味しいです」
「お口に合ったようでなによりです」
「拓真さんのお顔を見ながら飲むお酒は最高ね。この至福の時間を知ってしまったらもう他のお店では飲めないし、行こうとも思わないもの」
「分かります。拓真さんがお作りになるカクテルがどれも美味しいのは勿論ですが、一緒の空間に居てお話をしたり時間を過ごすというのが何にも代えがたい至福なんですよね」
「そうなんです。本当はもっとお店に来たいのですが如何せん仕事があるのであまり通えないのが残念で仕方ありません」
「私も撮影や取材が長引く事があって来れない時はテンションが地の底まで落ちてしまって翌日まで引きずる事もあるくらいです」
「「私も同じです」」
三人で和気藹々とお話をしているがその内容は嬉しくもあり、ちょっと引きそうになる部分もある。俺が作るカクテルを美味しいと言ってくれるのはとても嬉しいしバーテンダー冥利に尽きる。だがテンションが駄々下がりで翌日まで引きずるのは大丈夫なんだろうか?特に透香さんは女優なんだし演技にも間違いなく影響が出るだろう。俺のせいでNGを連発して怒られるとかいう事があればどれだけ謝っても足りないくらいだ。その辺り問題無いか聞いておいた方が良いだろう。
「お話し中の所申し訳ありませんが、そういう状態で仕事をして問題とかは起きたりしていませんか?もしなにかあるようでしたら私としても出来る事をしたいと思うのですが」
「仕事中は気持ちを切り替えているので大丈夫ですよ。感情に振り回されていたら女優は務まりませんから」
「私も透香さんと同じですね。命を扱う仕事なので気持ちや感情の切り替えは必須ですので」
「護衛や警備の仕事には私情を挟まないのが鉄則ですので私も完全に切り替えています」
「流石ですね。どうやら私の心配は杞憂だったみたいで良かったです」
「心配して頂き有難うございます。拓真さんのそういう優しい所が大好きです」
ぐっ……、微笑みを浮かべながら大好きとかヤバい。語彙力が無くなるくらい破壊力が凄い。サラッとそういうことを言うのはズルいと思います。はぁ~、心臓がバクバクして少しの間クールダウンしないと駄目だな。今は注文も入っていないし使った道具でも洗っておこう。
只々無心で洗い物をしていると透香さんが話しかけてくる。
「そう言えば前にジムに通いたいと仰っていましたが良い場所は見つかりましたか?」
「はい、無事見つかりました。あまり大きな声では言えなのですが軍警察のトレーニング施設を利用させてもらっています。――お伝えするのが遅くなりすみません」
「いえ、お気になさらずに。軍警察の施設なら安全ですし、マシンなども充実してそうですね」
「そうなんです。一般的なジムと比べてかなり設備が整っていて正直こんな良い所を無料で使用して良いのかなと心配になるくらいですよ」
「それは少し羨ましいですね。因みになのですが拓真さんお一人でトレーニングをなさっているんでしょうか?」
「いえ、私と菫さん、雪音さんの三人でしています」
「むうっ……、お二人だけズルイです」
少し膨れながら文句を菫さんと雪音さんに言うが、そういうちょっと子供っぽい所も可愛いと思ってしまう俺はもう末期なのかもしれない。でも心は満たさせているしいっか。内心でニヤついているとズルいと言われた菫さんが言葉を返す。
「私は拓真さんの護衛兼警備でご一緒していますし、雪音は専属医として万が一に備えて必要なので納得して下さい。……まあ役得だとは思いますけどね」
「菫。本音が漏れていますよ」
「おっと、これは失敬」
「悔しいですけど理由が理由なので納得するしかありませんね。でも私も拓真さんと一緒に運動したいです。絶対にトレーニングしている姿も格好良いと思いますし」
「んー、普通だと思いますよ。ボディビルダーみたいにムキムキじゃありませんし、そこまでハードな内容でも無いので見ていても特に面白味も無いかと」
透香さん目線で見ると俺が運動している姿も格好良く見えるのだろうか?あばたもえくぼという言葉もあるし、贔屓目で見ていると考えた方が良いのかな。まあ、格好良いって言われるのは嬉しいし、悪い気もしないしいっか。
――そう言えば透香さんもジムに通っているしどうせなら一緒に運動したいと俺も思うけど軍警察の施設に無関係の人が立ち入る事は可能なのだろうか?その辺りを菫さんに聞いてみるか。
「菫さんにお聞きしたいのですが、透香さんも軍警察のトレーニング施設を利用する事は可能でしょうか?」
「上からの許可が下りれば問題ありませんが、かなり難しいと思います。女優という職業で身元も確りしていますしその辺りは問題無いのですが私達からすればあくまで一般人なので許可が下りる可能性はかなり低いですね」
「そうですか。私としては透香さんも参加出来れば良いなと考えていたのですが残念です。ですが一度駄目もとで聞いてもらっても良いですか?」
「分かりました。明日にでも氷川課長に聞いてみます。結果が分かり次第お伝えしますね」
「よろしくお願いします」
結果がどうなるかは分からないけど、許可が下りたらいいなと思いながら途中で止まっていた手を動かす。作業をしながらふと頭に疑問が過る。透香さんが運動する時はジャージなんだろうか?それとも菫さんみたいにスパッツを履いているのだろうか?はたまたヨガウェアみたいな露出が多い服装という可能性もある。滅茶苦茶スタイルが良い透香さんが露出多めの格好だと正直トレーニングどころではなくなってしまうだろう。ただでさえ菫さんぴっちりスパッツとタンクトップで目のやり場に困っているっていうのにもう一人増えたら理性を保てる自信がない。前日にこれ以上出ないってくらい自慰行為をしたとしても危険だな。いっそのことお寺にでも行って精神修練をした方が良いのかも……。
はぁ。これが狙って露出の高い服装をしているとかだったらあっ、そうっすか。それじゃって感じで流せるんだけど完全に無意識かつ普通の運動着と認識しているから自然に醸し出されるエロスが凄い事になっているんだよね。だからといって肌を覆い隠すような恰好をして下さいともいえるわけが無いから俺が耐えるしかないだろう。これも一つの精神修行と考えれば多少は気持ちが楽になるかもしれない。
益体も無い事を考えながらも仕事を黙々とこなしていく。オーダーされたドリンクを作ったり、お客様からの変わった要望に応えたり、お話をしたりと結構やる事が多い。接客の方は千歳さんと小百合さんが担当してくれているので以前と比べれば大分楽になったが我儘を言うのならもう一人バーテンダーが欲しい所だ。叔父さんレベルとまでは言わないけどある程度の技量がある人が居れば良いんだけど、俺の立場もあって中々に難航している。
焦って変な人を雇うのは避けたいし、地道に探していくしかないのだろう。
「ふぅ……」
「お疲れの様ですが大丈夫ですか?」
「失礼しました。元気なので大丈夫ですよ」
「それならいいのですが。拓真さんお一人でカクテル作りや接客をしている訳ですし無理はしないで下さいね」
「はい。適宜休憩を取っていますし、最近は早寝を心掛けているので一時期と比べたら大分体調は良いんですよ。それに美味しいご飯も毎日食べていますしね」
「それを聞いて安心しました。こっちに来たばかりの拓真さんの生活を思うと現在はかなり改善されていますし、定期健診の結果も良好なのでこのまま元気で居て下さい」
「勿論です。雪音さんに心配を掛けたくはありませんので」
雪音さんは医者なので健康管理には一家言あるのだろう。というか俺以上に俺の身体の状態を把握しているだろうから雪音さんの言う事に間違いは無い。これからもお世話になりますと心で頭を下げた所で不思議そうな表情で透香さんが雪音さんに質問をする。
「こちらに来たばかりの拓真さんの生活は結構酷かったんですか?」
「私と菫が最初に拓真さんとお会いしたのは病院だったんですよ。搬送された理由が栄養失調だったので目を疑いました」
「ご飯を食べられないくらい経済状況が逼迫していたのでしょうか?それとも別の理由が?」
「その辺りは私も詳細は知らないんです。――拓真さん。もし宜しければ教えて貰ってもよろしいですか?」
「お恥ずかしい話ですがこちらの世界のお金を持っていなかったので食べ物を買えなかったんです。冷蔵庫にあった食品は全部ダメになっていましたし、お酒でお腹を満たすのは流石にマズいので水だけ飲んで過ごした結果限界がきて倒れてしまったというオチです」
「納得です。確かにお金が無ければ何も買えませんよね」
「それもありますし、知らない場所でウロウロするのが怖かったので外出を控えていたという理由もあります」
いきなり知らない世界に来てウキウキしながら行動できる人は殆どいないだろう。お金も無い、ここがどういう場所なのかもよく分からない、極めつけは男女比が大幅に傾いているから男と分かれば問答無用で襲われるんじゃないかという恐怖もあったから外にも出られなかったし。今にして思えば杞憂だったし、恐れずに助けを求めればよかったと思うよ。
「今では笑い話ですけどね。皆良い人ばかりですし、そんなに怖がる必要は無いと当時の私に言ってあげたいですね」
「でもそういう警戒心はとても大事ですよ。世の中善人ばかりではありませんし、お店がある場所は人気が少ないので拓真さんが憔悴している状態に付け込んでイタズラしようという輩がいてもおかしくありませんから。……なにはともあれ本当に無事でよかったです」
「菫さんの仰る通りです。もし拓真さんに何かあったらと思うと胸が張り裂けそうですし、ご無事で何よりです。栄養失調で倒れられたとの事ですが後遺症などはありませんか?」
「あれから結構経っていますが今の所特に不調などは無いです。雪音さんにも診てもらっていますし」
菫さんと透香さんにかなり心配されてしまったが多分大丈夫なはずだ。何かあれば雪音さんを始めとした検査をしてくれている病院の人が言ってくるだろうし。というか異常が見つかれば即入院させられるだろうからね。一応確認のためにチラリと雪音さんに視線を送ると一つ頷いてから口を開いた。
「定期健診の結果も良好ですし、問題ありませんよ。それに病院の方でも何かあった場合に備えて万全の態勢を整えていますしそこまで神経質に心配する必要は無いのでご安心下さい」
「いつもお世話になっております。ただ健康なのが一番なのでなるべく病院に行かない様にはしたいですね。お店も営業できませんし、お客様や雪音さん達にも心配を掛けてしまうので」
「医者をしている身で言うのもなんですが無病息災で人生を過ごせるならそれに越した事はありませんし、病院のお世話にならないのが一番です」
「確かに雪音さんの言う通りです。――この世界ではナノマシン治療もありますし大概の病気や怪我が治療できるというのは凄いですよね。大病を患ったり大怪我をしても完治出来るというのは安心出来ますし」
「そうですね。今やナノマシンは無くてはならないものですし、生まれた時から当たり前にある機械ですから。もし存在しなかったらと思うとゾッとします」
「体の不調があっても体内に入れているナノマシンが勝手に治療してくれるし、病気もある程度は未然に防いでくれるので雪音の言う通りナノマシンが無かったらゾッとするしまともな生活が送れないわ」
「私の場合は仕事時間が不規則なので健康管理と維持の為にも絶対に必要ですね。あとは美容関係もナノマシンでのボディケアが前提なのでそれが出来ないとなると芸能活動にも支障が確実に出るのであまり考えたくないです」
「透香さんみたいに芸能活動をしている人にとっては尚更必須ですよね」
「はい」
ごく当たり前に皆ナノマシンを体内に入れているし、様々な分野で活用されているが俺が居た世界の事を考えると信じられないよ。ごく限られた分野でナノマシンの実用化はされているけどまだまだ発展途上だし、限られた使い方しかされていないので広く一般に普及するまでには長い年月が掛かると雑誌に書かれていたな。当然値段も目玉が飛び出る程高いし、仮に一般に出回ったとしても需給の問題で数年~十年くらいは一般人には手が届かない価格になるだろうしこの世界みたいに誰もがお手軽に利用できるまでには数十年、最悪百年以上かかるかもしれないな。
それを前提に考えるとこの世界の発展ぶりがどれだけ凄いか分かるってものだ。ブレイクスルーが数十年前にあってそれから急激にあらゆる分野が成長したという話だが特に問題も起きず、更には人々もすぐに順応して生活に取り入れているんだからそういう意味でも凄いと思う。
何だかんだ考えたが生活水準が上がるのは良い事だし、メリットはあれどデメリットはほぼ無いんだからこれからも恩恵を受け続けよう。
キリが良い所で思考を切り上げた所で千歳さんがオーダーを伝えに来たのでカクテルを作り始める。まとまった数の注文なので結構作るのに時間が掛かりそうだな。お客様をお待たせする訳にはいかないし手早く熟していかなければ。
「拓真さんがお仕事をしている姿はいつ見ても格好良いですね」
「分かるわ。手際よくカクテルを作っていく姿には惚れ惚れするし、いつもと違う服装というのも私としてはグッとくるわね」
「私としては腕を上げてシェイクする姿が一番好きです。あとは集中している時のお顔も凄く格好良くてドキドキしてしまいます」
「「分かります」」
雪音さんも菫さんも透香さんも俺を持ち上げてくれて嬉しいが、多分にバーテンダー補正が掛かっていると思う。間接照明で照らされた店内でベストとシャツを着こなした男性が淀みない動作でお酒を作るとか普通に格好良いしね。更に髭を生やしたダンディなおじ様だったら映画のワンシーンと言われても納得するくらい絵になるからなぁ。雰囲気補正とは恐ろしいものである。
「一緒に働いている千歳さんや小百合さんは毎日拓真さんの格好良い姿を見られて羨ましいです。いっその事医者を辞めてホールスタッフに転職しようかしら?」
「雪音だけズルイですよ。そういう事なら私だって拓真さんと一緒に働きたいです」
「待って下さい。それは私も同じなので三人一緒に転職しませんか?」
「「ありですね」」
「いやいや、それは駄目でしょう。三人とも他人が憧れる職業に就いてるわけですし勿体ないですよ。それに雪音さんはお医者様、菫さんは軍警察、透香さんは女優だったからこうして出会えた訳ですし、今のお仕事を大切にしてほしいと思うのは私の我儘でしょうか?」
「「「前言撤回します」」」
異口同音に前言撤回をするとか仲良いなぁ。……正直な話ホールスタッフは千歳さんと小百合さんで十分回っているから今の所必要では無いし、お給料も三人の今の仕事と比べれば大幅に下がってしまうから不自由させてしまう可能性が高い。様々な面から考えてウチの店への転職は止めた方が良いだろう。
何だかんだと考えてみたが、正直な話俺も将来の事を考えるともっと稼がないといけないよな。結婚したり子供が生まれたりしたら毎年かなりの金額が飛んで行く事になるし今の収入では心許ない。そうなると副業をするべきなんだろうが、そもそもこの世界では男性が働くという事が無い為男性可の仕事が無いというにっちもさっちもいかない状況というね……。結局は男でも出来る仕事を地道に探していくしかないのだろう。
思考の海にどっぷりと浸かっていたいたがそろそろ気持ちを切り替えて仕事に集中しなければ。時計を見れば二十三時を回った所だし、これから来店されるお客様も居る事だし頑張らなければ。
「お話し中の所すみません。皆さん明日もお仕事があると思いますが時間の方は大丈夫でしょうか?」
「あら、もうこんな時間だったんですね。もう少し飲みたい気持ちもあるけどどうしようかしら?」
「雪音は明日何時から仕事なの?」
「十時からね。だから時間的には余裕があるのだけど迷うわ」
「それじゃあもう少し居ても良いんじゃない?私は朝一で会議があるからそろそろ帰ろうかな」
「菫さん。朝から会議は大変だと思いますが頑張って下さい」
「有難うございます。拓真さんからそう言って貰えただけで頑張れます」
さて、雪音さんと菫さんの状況は分かったが透香さんはどうなんだろうか?
「透香さんは時間の方は大丈夫ですか?」
「はい。明日は午後から取材と舞台の練習があるくらいなので閉店まで居ようと思います」
「分かりました。ではお酒は明日に残らない様に軽めのカクテルにした方がいいですね」
「そうですね。それでお願いします」
各々から確認が取れた所で菫さんが帰ることに。会計を済ませて見送った所で再びカウンターへと戻り仕事を熟していく。結局雪音さんも閉店まで居て透香さんと一緒に俺の部屋でご飯を食べて帰ったのはここだけの話だ。




