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第五十五話

 母娘と別れた後他にお客さんも居ないし一度休憩する事にした。女の子を抱っこしたりして少し身体を動かしたからかスポーツドリンクが沁みるぜ。ふぅと一つ息を漏らしたところで千歳さんが話しかけてきた。

「無事商品が売れて良かったですね」

「はい。でもグラスとか他の商品が売れるんじゃなかと予想していたんですが、まさかあみぐるみを二つも買って貰えるとは思っても見ませんでした」

「とっても可愛いですし、出来も良いので欲しいという人は多いと思いますよ。正直私も欲しいですし」

「それじゃあ時間のある時に作るのでプレゼントしましょうか?」

「本当ですか!?凄く嬉しいです」

「どの動物がいいかリクエストがあれば――」

「「「「「ちょっと待って下さい」」」」」

 千歳さんとの話を遮って待ったをかけたのは他の女性達だ。何かあったのだろうかと振り返ると真面目な表情を浮かべながら雪音さんが口を開く。

「あみぐるみ、私達も欲しいです。拓真さんのご負担になるのは重々承知ですがそれでも愛する人の手作りお人形を頂ける機会を逃したくないのです。無理を承知で私達の分もお願いできないでしょうか」

「全然負担ではありませんし、大丈夫ですよ。ただ全部で六つとなると時間が掛かってしまうのでそこは了承して貰えると有難いです」

「勿論です。我儘を聞いて頂いてありがとうございます」

「いえいえ、こちらこそ素人作品を欲しいと言ってくれて嬉しいです。あっ、さっきの続きですがどの動物がいいかリクエストがあれば言って下さいね」

「はい。やはりここは定番の猫ちゃんでしょうか?」

「犬も可愛いし捨てがたいわね」

「ウサギとかも可愛くないですか?」

「リスとかどうですか?毛糸で作ったらもこもこ、ふわふわ感が増してキュートだと思うのですが」

「インコも色合いが鮮やかですし、結構可愛くないですか?」

「私は猫にしようかしら。ピンッと立ったお耳が可愛いし定番ですし」

 雪音さん、菫さん、小百合さん、千歳さん、桜ちゃん、透香さんの順で口々にどの動物が良いか提案していく。意見を聞いた限りだと小動物や犬猫ばかりだな。女性らしいと言うか可愛い動物が好きという事なんだろう。サメとかワニ、ヘビなんかは女性受けしないだろうし男でもちょっと……という人も多いだろう。

 作る方としても定番だったり、人気の動物の方が楽なので助かるというのはあるしマイナーな動物をリクエストされなくてある意味で良かったよ。もしそう言った動物が良いと言われたら一から調べなきゃいけないし作るのにも時間がかかるから言い方は悪いが面倒ではある。

 今回の場合は全部で六つ製作する事になるがチマチマと作業をしたとして三週間もあれば出来るかな。なるべく早めにプレゼントしたい気持ちはあるが、バーテンダーの仕事もあるからどうしてもね……。上手く時間をやり繰りして頑張りましょう。

 そんな感じで今後の事に思いを馳せていたが、相も変わらずお客さんが来ない。このままだとさっきの母娘だけで終わってしまうし、何かこちらからアクションをした方が良いのかもしれないな。

「このままだとお客さんが二人で終了してしまうので、客引きでもしようと思うのですがどうでしょうか?」

「それは拓真さんが直接するという事ですか?」

「そうです。あちらの賑わっている方に行ってお店のアピールでもしようかなと」

「うーん……」

 雪音さんが難しい顔をして黙り込んでしまった。俺としては良い案だと思うし、客引きやお店のアピールなんかは何処でもしている事だから問題にはならないはずだ。しかも男がやるんだから集客効果は抜群だろう。現状を打破する最高の一手ではないだろうか。

「確かにお客さんは大勢来ると思いますが、それ以上に大騒ぎになり大混乱になるでしょう。来場者だけでなく出店している人もこちらに来ると思うのでフリーマーケット自体が機能しなくなる可能性が高いです。なので代替案として私達がするのはどうでしょうか?」

「そう言う事であれば俺がやらない方が良いですね。それじゃあお願いしても良いですか?」

「お任せ下さい。――それでは私と小百合さん、千歳さんと桜ちゃんで行きましょうか。菫と透香さんは拓真さんと一緒にいて下さい」

「「「「「分かりました」」」」」

 話が纏まった所で各々動き出す。といっても俺は相も変わらず店番なんだけどね。雪音さん達がお客さんを捕まえてくるまでは暇なので適当に時間を潰すか。並べてある商品の位置を変えたり、在庫を確認したりしていると千歳さんと桜ちゃんがこちらに向かってくるのが見えた。そして後ろには数人のお客さんらしき人達もいる。どうやらお客さんを捕まえる事に成功したみたいだ。

 よしよし、良い感じだなと心の中でにやけている内にお客さん達がお店の前まで来たので対応しよう。

「いらっしゃいませ。どうぞごゆっくりご覧ください」

「話には聞いていましたが本当に男性が居た……」

「夢じゃないよね?男の人が私に話しかけてきて、更に笑顔まで浮かべているなんて御伽噺の世界に紛れ込んだのかな?」

「えっと、もしかしてこの並んでいる商品すべて男性の私物だったり?ど、どうしよ!今すぐ銀行に行って貯金を全額下ろしてこなきゃ」

「待って。確かにその可能性もあるけど違うかもしれないし一応聞いてみましょう」

「そ、そうね。少し早とちりしていたわ」

「あの、不躾な質問で申し訳ありませんが並んでいる商品は貴方の私物なのでしょうか?」

「はい、そうです。着なくなった服とか、今は使っていないグラス等を販売しています」

 男の使用済みの物を売っているのでなるべく不快感や嫌悪感を与えない様爽やかな笑顔を浮かべながら答えたんだが、返ってきたのは無反応だった。例えば超イケメンが同じことを言ったら相手も喜んで買うんだろうが生憎と俺は至って普通の顔立ちだからな。逆の立場になって考えるとパッとしない女性の私物を買いたいかという話だ。正直いらない。美少女だったり美人だったら物凄い勢いで買うけどね。今回は残念ながら購買には繋がらなかったという事――

「全部買います!勿論言い値で構いません。貯金を全部下ろして、消費者金融と銀行からお金を借りれば二千万円まで出せます」

「ちょっと!ここにある物は全部私が買う予定なんですけど。お金はお母さんと友達に借りて、いつか来るかもしれない結婚の為に貯めていた資金を使えば二千五百万円まで出せます」

「ふふっ、そんな端金で私に勝てるとでも?お母様に資金援助してもらって、投資しているお金を全て回収すれば一億円まで出せますよ」

「ぐっ、流石にそこまでのお金は出せないわ。――私に差し出せるものは身体と人生しかありません。どうか代金として受け取ってもらえないでしょうか?」

「それって実質結婚じゃない!ズルい!私も身体と人生を貴方に捧げます。どうかよろしくお願い致します」

 先程までの無反応から一転。怒涛の如き勢いでお客さん達がアピールしだしたんだが。不要物に数千万払うというのも凄い話だが、最終的には一億まで吊り上がるとか意味不明だよ。というか最後の方は結婚するっていう話になっているしどういうことだってばよ。

 すごい勢いで展開される話に付いて行けないんだが……。そして横に座っている菫さん達が微笑んでいるけど圧が凄い。俺という存在が消し飛ぶのではないかと思うくらい凄まじい圧力に困惑もどこかにいってしまったよ。いや、俺の心が逝く寸前だわ。

 このカオスな状況を早急に何とかしなければ大怪獣戦争が勃発しそうなので一度深呼吸をしてからお客さんに値段について説明する事にした。

「こちらに置いてある商品は全て三百円~五百円となっています。それと全部買うのは他に買いたい人も居るので遠慮して頂けると幸いです」

「男性の使用済み品が三百円~五百円で買えるって夢では無いですよね?あっ、もしかしてドッキリですか?どこかにテレビカメラがあるのかしら?」

「本当ですよ。それとドッキリとかではないのでご安心下さい」

「わ、分かりました。……これはどの商品を買えばいいかが一番の問題になりますね。日常使い出来るグラス等を選ぶか、普段着に使用できる服を選ぶべきか。それとも部屋に飾って置ける物も捨てがたいですね」

「確かにどれも魅力的だし、今後の人生で男性の私物を手に入れる機会なんて皆無という事を考えると慎重に選ばなくては後悔するわね」

「一ヶ月は悩みたいけど時間も限られているし、すぐに決めなきゃいけないのが辛い所だわ。うーん、どれにしようかしら」

 まさに人生を左右する決断を迫られているという鬼気迫る表情で悩んでいるんだが。俺としてはもっと気楽に良いなと感じた商品を買えば良いのでは?と思うんだけどそうはいかないのだろう。幸いにして目の前に居るお客さん以外には誰も居ないし存分に悩んでくれて構わない。決まるまで手持無沙汰だしぼけっ~としながら待っているか。

 なんだかんだで三十分くらいは悩んでいたお客さんがようやく買う品を決めた様で声を掛けてきた。

「すみません、これ下さい」

「毎度ありがとうございます。三百円になりますのでこちらの機械に端末を翳して下さい」

「分かりました」

「はい、有難うございます。これで決済は完了です」

「とうとう買ってしまったわ。もう何も悔いは無いし幸せな人生でした」

 もうすぐ死ぬみたいな言い方をされてギョッとしてしまうが、恍惚とした表情を浮かべているし大丈夫だろう。でも幸せ過ぎて現世に満足して来世にこんにちは!する可能性も無きにも有らずだし、小さな芽だろうと詰んでおいた方が良いな。という事でここで俺のお手製あみぐるみを披露しよう。

「喜んで頂けて私としてもとても嬉しいので、お客様だけに特別商品をご紹介しますね」

「特別商品。どの様な品なのでしょうか?」

「ふふふっ、これです」

「あみぐるみですか?」

「はい。私の手作りなので多少不格好な所はあると思いますが手の平サイズなので置く場所にも困りませんしお勧めです」

「手作り?男性の?」

「はい、私の手作りです。――先程二体売れて残りは八体になるので是非お買い求めください」

「買います!この猫ちゃんを一体ください」

「お買い上げありがとうございます。五百円になります」

 よし、売り込み成功だぜ。一人が買った後他の三人も続けてお買い上げいただいたので残りは四体だ。このペースなら全部売り切る事も出来るかもしれないな。内心でニヤニヤしつつ色々と買って頂いたお客様を見送った所でこちらに向かって歩いてくる集団が目に入る。どうやら雪音さんと小百合さんが大物を引き当てたみたいだ。大人数だしかなり忙しくなるだろうから、皆にも接客を手伝って貰わないと駄目っぽいな。

「すみません、俺一人では対応できないと思うので手伝ってもらっても良いですか?」

「お任せ下さい」

 ――結論から言えば大盛況であみぐるみはもちろん並べてある商品全て完売。在庫も全て売れて今は店仕舞いをしている。まさかここまで売れるとは思っていなかったので嬉しい限りだが、あみぐるみを巡って争いが起きそうになった時は本当に焦ったよ。流石に暴力を振るうとかは無かったけど、札束の殴り合いがえげつなかった……。最終的にはじゃんけんをして勝ち抜いた四名が購入権を得るという方式で落ち着いたがあれはもう二度と味わいたくは無いね。

 まあ、そんな不幸な出来事もありつつも無事終わったしよかったのかな?多分良かったんだろう。

 この後はお昼ご飯を食べて午後からみんなと一緒にお店を見て回る予定だ。めっけもんがあればいいなと期待にワクワクしながら片づけを進めていく。

 皆が作ってくれた手作りお弁当を食べて元気一杯になったので、場所を変えてフリーマーケットに出店しているお店を見て行く。売っている物は様々で中には怪しげな骨董品を売っているお店もあった。なんか象形文字っぽいのが刻んであったりと中二心を刺激される要素についつい足が向きそうになったが小百合さんからくいっと手を引かれてしまい歩みが止まってしまう。

「ああいうのはそれっぽく作った素人作品を高値で売りつけているので買っては駄目ですよ」

「でもなんか格好良くないですか?神秘を感じますしもしかしたら凄い骨董品かも知れませんよ?」

「うーん……、私には普通の壺に見えますし特に神秘も感じませんね。なんか拓真さんが悪い人に簡単に騙されそうで少し心配です」

「一応俺も大人ですし、仕事柄人を見る目はあると思っているので多分大丈夫です」

「でも怪しい壺を買おうとしてましたよね?」

「うっ……。返す言葉もございません」

「これは私達で確りと拓真さんを見ていないと駄目ですね。万が一悪い人や悪徳商法に引っ掛かったら大変ですから。少しでも怪しいなと思ったら買ったり、付いて行ったりしてはいけませんよ」

「はい」

 まさか年下の女性に窘められるとは思わなかった。しかも最後の方は小さい子供に言い聞かせるような内容だったし、もしかして俺って何にでも興味を持って目が離せない幼子と思われているのではないだろうか?小百合さんが母親か。それはそれで悪くないと感じてしまうが、ある意味で迷惑を掛けている事も忘れないようにしないとな。

 決意を新たにした所で怪しげな骨とう品を置いているお店から離れる。――適当に流し見しながら歩いているが売っている商品は全部女性向けなので特に興味を惹かれる物が無い。なにか目を惹かれる品があればいいんだけどなと考えていると横から千歳さんに声を掛けられた。

「拓真さんが興味を持つような品はありませんでしたか?」

「そうですね。女性物ばかりなので俺は使えませんし。ユニセックスの商品があればまた別だったんですけど見た所無さそうかな」

「えっと、ユニセックスとはなんでしょうか?」

「あれ?普通に使う言葉ですし知っていると思ったんですが。えーと、男女兼用という意味です。主にファッションについて使う言葉ですね。男女どちらでも着る事が出来るのでデザインや機能性はシンプルなんですが安くてお財布にも優しいんですよ」

「成程。そういう意味で使われる言葉なんですね。勉強になりました。――拓真さんがいらした世界では男女比がほぼ一:一だったのでそういう商品が売られていたと思いますが、この世界は一:二百ですから男女兼用という発想自体が無いので探しても無いと思われます」

「あー、完全にその事を失念していた。言われてみればそうですよね。それじゃあ今回は皆が欲しいものを買う事にしましょう。お店を手伝ってもらったお礼にお金は俺が出しますので」

「「「「「「駄目です」」」」」」

 全員からNOと言われてしまったんだが。だがここで諦めるわけにはいかない。無償で働かせるなんて俺の矜持が許さないし、人としても駄目だろう。

「午前中いっぱい手伝ってもらいましたし、客引きもして頂いたのでちょっとしたお礼ですのでどうか受け取って下さい。それに普段からお世話になっていますしお返しという事で」

「うぅ、そう言われてしまうと断れないです。分かりました。それではお願い致します」

「はい、何でも好きな物を選んでいいですからね」

「本当に有難うございます」

 素直に俺がお金を出す事を認めてくれて良かった。人によっては問答を繰り返す事になってどちらかが折れて終わりになるパターンもあるからな。その場合関係にヒビが入ること間違いなしだし、男のプライドも傷ついてしまうから絶対に止めた方が良い。俺の友人がそれをやられて良い感じだった女の子と疎遠になったという実例があるからな。

 とまあそんな遣り取りがありつつも、楽しい買い物を続けていく。見ているだけでも楽しいし、新しい発見もあったりして中々に悪くない。特に彼女達がキャッキャッしているのを眺めているだけで幸せな気持ちになれるし、滅茶苦茶可愛いんだよね。美少女と美人が一緒に楽しそうにしているというのが文句なく最高だし、大変目の保養になります。

 後ろで腕を組んでうんうんと頷いていると、桜ちゃんが申し訳なさそうな表情で口を開く。

「後ろで見ているだけですと暇ですよね?宜しければ拓真さんも一緒に商品を見て見ませんか?」

「お気遣い頂き有難うございます。ですが大丈夫ですよ。後ろで皆が楽しそうにしている姿を見ているだけで満足ですから」

「そうなんですか?」

「はい。心が満たされると言いますか、素晴らしい光景なのでもっと見ていたいというのが本音です」

「ふふっ、分かりました。ではもう暫くお買い物にお付き合い下さい。もし何かありました遠慮なく声を掛けて下さいね」

「分かりました」

 高校生なのにここまで気遣いが出来る子なんて中々いないよな。親御さんの教育が素晴らしいというのもあるが、元来の性格もあるのだろう。というか可愛い、性格も良い、家柄も文句無し、頭も良い、料理や家事全般も卒無く熟すという完璧超人を体現している少女が俺と一緒に居るというのが奇跡だよ。勿論雪音さんを始めとした他の女性達も桜ちゃん同様に完璧超人だし、俺には勿体ない女性だ。

 彼女達の好意に応えられる様に努力を惜しまず頑張らないとな。俺の人生を決める決断の日はもう間もなく訪れるのだから悠長にはしていられない。

 空を見上げて一つ深呼吸した所で買いたい物が決まったらしく、菫さんが声を掛けてきた。どうやら日常使い出来る品をそれぞれ選んだみたいだ。お洒落だし品質も結構よさげで流石のセンスと言えるな。俺なんて怪しい壺を買おうとしていたからな。落差が酷い。

 ……ま、まあそれはさておき会計を済ませますか。端末を機械に翳して支払いをした後お店を後にする。そのまま別のお店を見たりしたが特に何かを買うという事も無く他愛無い話をしながら時間が過ぎていき、気が付けば空が茜色に染まり始めていた。

「もうそろそろ終了の時間ですし帰りましょうか」

「そうですね。今日は楽しい時間を過ごせました」

「こちらこそ楽しかったです。また機会があれば来ましょう」

「はい。――あっ、そうだ。お夕飯なんですが何か希望はありますか?」

「午前中から動いていたのでみんな疲れているでしょうし外食でもいいですよ?」

「お気持ちは嬉しいですがこの時間だとそろそろ混み合ってくるでしょうしお家でゆっくりと食事をしたいのですが駄目ですか?」

「勿論OKです」

 透香さんに上目遣いからのそっと服の裾を引っ張って『駄目ですか?』と言われたら断れるはずが無い。例え無理難題でもOKと答えるだろう。もう破壊力があり過ぎてチートの域に達しているね。しかもあざとさなんて皆無でごく自然にやっているんだから強すぎる。最強かよ。

「有難うございます。それでは先程の話に戻りますが食べたい物はありますか?」

「じゃあハンバーグでお願いします」

「ハンバーグですね。確か冷蔵庫に挽き肉と玉ねぎはあったはず。生パン粉とニンニク、お豆腐はあったかしら?」

「お豆腐はありますが、生パン粉とニンニクは切らしているので買わないといけません」

「そうでしたか。雪音さん、教えて頂き有難うございます。それじゃあスーパーで少しお買い物をしなければいけませんね」

「それじゃあ帰りにいつものスーパーに寄って行きましょうか」

「はい、お願いします」

 当たり前の様にやり取りしていたが冷静に考えると完全に夫婦の会話だよな。お付き合いもしていないのに夫婦とはこれ如何にと思うがまあ今更だろう。

 それよりも今日の夕飯はハンバーグだし、今から楽しみだ。外はカリッとしていて中はふわふわで凄い美味しいんだよ。デミグラスソースも濃厚なんだけどしつこくなくてご飯が進む、進む。やべっ、想像したら涎が……。

 慌てて口元を拭いつつ帰路に着くのだった。


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