第五十三話
軍警察での話し合いから早いもので二ヶ月が過ぎようとしている。あの後上層部との話し合いがあったらしく、喧々諤々の議論の末俺が提案した毎回各部署から数人を選んでその人達で警備するという事で決着が着いたみたいだ。――それならばすぐにでもトレーニング施設を利用できるのではないかと思ったのだが、男性が利用するという事で設備や内装、トレーニング器具等を当初の想定よりも大規模に刷新する事にしたらしい。そうなると普通であれば計画を立てて業者を手配して、打ち合わせを何度も繰り返した後工事をして~という流れになり早くても数ヶ月、施設の規模によっては七~八ヶ月はかかる工事になるんだけど科学技術が発展しているこの世界では僅か二ヶ月で全てを終えてしまった。掛った費用は教えて貰っていないので不明だが少なく見積もっても数千万、妥当な所で億単位のお金が使われたと思われる。国民の血税を俺の為に使っていも良いのだろうか?と不安になり菫さんに聞いてみたが笑顔でこう返された。
「拓真さんの日本王国への貢献を考えると誰も不満なんて言いませんよ。というかですね、男性の為にお金を使うというのはこの世界では当然であり、それが税金でも男性の為に使われるなら国民は文句は漏らしません。寧ろもっとお金を使えと言うと思いますよ」
という様な事を言われてしまったので色々と思う所はあるが納得はした。ただ何らかの形で国や女性達にお返しをしなければいけないのは間違いない。出来る事が微々たるものだとしても、何もしないよりかは断然ましなんだから。
とまあそんな事がありつつも数日中には工事が完了して施設の利用が可能になると連絡を受けたので、早速来週からお世話になろうと思っている。今までは自宅でトレーニングをしていたのでかなりラフな格好――タンクトップにトランクス――で問題無かったが流石に国の施設でそんな真似は出来ないのでトレーニングウェアも新調した。と言っても男性用のトレーニングウェアなんて売っていなかったのでTシャツとハーフパンツを選んだ。何時でも行ける準備は出来ているので早く来週にならないかなとワクワクしつつ日々を過ごしつつ待つ事に。
幾日か経ち今日から軍警察の施設でトレーニングをする事になる。少し緊張しつつ着替えを詰め込んだバックを手に持ちタクシーで軍警察へと向かう。いつも通り地下駐車場へと降りるとそこには氷川さんと雪音さん、菫さんが待っていた。
「おはようございます。今日はよろしくお願いします」
「こちらこそよろしくお願いします。――早速ですが行きましょうか」
「はい」
挨拶を済ませた後菫さんの先導のもとトレーニング施設へと向かう。地下駐車場からは歩いて呪分くらいの場所にあるらしく他愛無い話をしながら歩いて行く。ちなみに菫さんは仕事の一環として一緒にトレーニングする事になっている。雪音さんはもし怪我をしたり体調を崩したりした時の為に専属医として付いて来て貰っている。勿論トレーニングも一緒にする予定だ。
この世界に来て初めて仲良くなった二人と俺だけというのはかなり久々なので思いの外会話も盛り上がる。一番付き合いが長い二人なので話題が途切れることはなく、話し続けている内にいつの間にか着いたみたいで菫さんが話しかけてくる。
「ここがトレーニング施設になります。入場の際にはお渡ししたIDカードをこの端末でスキャンする事で扉が開きます。他にも更衣室の出入りにも使用するので無くさない様注意して下さいね」
「分かりました。ポケットに入れていたら無くしそうなのでネックストラップを買ってそれに入れる事にします」
「その方が無くす心配が無いので良いと思います。――もし宜しければこちらで用意する事も出来ますがどうしますか?」
「それじゃあお言葉に甘えさせてもらいます」
「課の方にストックがあるので今日の帰りにでもお渡し致します」
「有難うございます」
「それじゃあ中に入りましょうか」
菫さんの言葉の後施設の中へ入るとかなり広くて、目算だが三百坪はありそうだ。そしてトレーニングマシンも様々な種類の物がゆったりとした間隔で設置されており、安全性もきちんと確保されている。更に改装工事をしたばかりという事もありとても綺麗で清潔感がある。正直こんな高級ジムみたいな所を無料で利用して良いのだろうかと心配になるが、今更やっぱり利用不可ですとはならないはずだ。
もし何か変更があれば言ってくれるだろうしね。
という事で早速着替えてトレーニングをしたい所だが更衣室は何処だろうか?普通は入り口の近くに男性更衣室、女性更衣室と別れて設置してあるはずなんだがそれらしいのが見当たらない。きょろきょろと辺りを見回していると菫さんが察してくれたようで声を掛けてくる。
「男性用更衣室は安全を考量して少し離れた場所にあるんです。因みに女性用更衣室は入り口から見て左側の廊下を少し進んだろことにあります。男性用は右側の廊下の先にあるのでご案内しますね」
廊下を歩き、一回角を曲がった先に扉が見えたがあれが更衣室だろう。ただ、入り口から少し離れた所に二人の警備の人が立っていて周囲を警戒している。そして立て看板がありそこには『これより先は関係者以外立ち入り禁止。もし無断で侵入した場合厳罰に処す』とかなり物騒な事が書かれている。このトレーニング施設に来る人は軍警察の関係者なのでその人達に向けた物だろう。身内にも一切の容赦をしない姿勢はある意味感心するな。俺の世界の警察も見習ってほしい所だ。
本当に身内には甘いし、不祥事を起こしてもなぁなぁで済ませるから……っとついつい愚痴が漏れてしまったが今はそんな事はどうでもいい。
「えーと、この先が更衣室ですね。それじゃあ着替えてきますので後で落ち合いましょう」
「……お着替えのお手伝いは必要ありませんか?」
「初めての場所ですし何かお困りになる事もあるかもしれませんから、私も一緒に行った方がいいのではないでしょうか?」
「雪音さんと菫さんの気持ちは嬉しいのですが一人で着替えられるので大丈夫です」
「「そうですか…………」」
物凄いシュンってしちゃったよ。悪い事をしてしまった気持ちで一杯だが、小さい子供でも無いし流石に着替えを手伝ってもらうのは……ねぇ。それに流れからして自分も着替えるだろうし、そうなると俺の理性が持たない。密室で美女二人の着替えが眼前で行われていたら悟りを開いた坊主でも欲望に抗うことは出来ないだろう。そうなれば待っているのは肉欲に溺れた饗宴の始まり、始まりだ。
それもいいかもという悪魔の囁きを頭を振って追い払う。
「それじゃあ行きますね」
「はい。それではまた後でお会いしましょう」
やや急ぎ足で更衣室へと入り、持って来たウェアに着替える。ものの五分程で着替え終わったが、心を落ち着かせる為にももう少し一人で居よう。煩悩退散、煩悩退散と何度も心の中で唱えて深呼吸を繰り返すと大分落ち着いてきた。最後に立ちあがり頬をパンッと叩いてから更衣室を後にする。
廊下を歩き入り口に行くとそこにはすでに雪音さんと菫さんの姿があった。二人の格好は雪音さんが下はジャージで上はTシャツという定番の格好。菫さんは下はショート丈のぴちっとしたスパッツで上はタンクトップという格好だ。雪音さんは問題無いが菫さんの服装が非常にマズい。タンクトップを押し上げる大きな胸と深い谷間が凄まじい破壊力だし、スパッツがピッタリと張り付いているので股間の形が丸分かりなのだ。そこまでだったらなんとか理性を保てるがスジも見えているとなれば話は別だ。俺の中の悪魔が『これはもう誘っていること間違いなしだから襲え!』と喧しく騒いでいるが天使が『こんな所で女性を襲えば社会的に死にますし、軍警察の人間が間違に居るので確実に逮捕されます!』と声を荒げて叫んでいる。果てしない悪魔と天使の言い合いの末俺が選んだのは天使だ。
すぐに菫さんから視線を雪音さんを見ながら口を開く。
「お二人とも普段とは違う格好なので新鮮ですね」
「言われてみればそうですね。ラフな格好なので可愛くないですし出来ればあまり見ないで貰えると嬉しいです」
「とても似合っていると思いますし、可愛いですよ」
「そ、そうでしょうか?そう言って頂けるてとても嬉しいです」
「私はどうでしょうか?いつもトレーニングをしている服装で申し訳ないのですが」
「菫さんは……」
思わず言葉に詰まってしまう。滅茶苦茶エロいです!とは口が裂けても言えないし、かと言って普段からトレーニングをする時の格好なのでジャージとかの方が良いのでは?とも言えない。何か上手い言い方はないだろうかと頭を高速で回転させる事数秒。
「動きやすそうですし、似合っていますが少しだけ男にとっては刺激が強いかな~なんて思います」
「そうでしょうか?確かに肌を晒している面積は大きいですが特に問題は無いような?」
「ま、まあこの場に男は俺しかいませんし大丈夫と言えば大丈夫なのですが。それに俺が邪な目で菫さんを見なければ良いだけですしね」
「そうですか?それならよかったです。――では準備運動をしてから本格的に始めましょう」
イマイチ理解していない感じだが俺が気をつければ良いだけだし問題無いだろ。ということで早速準備運動として軽いジョキングをする。俺が高校生の時は静的ストレッチ――筋肉や関節を伸ばしたまま一定時間固定する事――をしていたが、怪我のリスクを高めたり筋力や瞬発力の低下に繋がる為今では全くやっていない。変わりに動的ストレッチ――軽いランニングや、実際に行うスポーツの動作に似た動き――をしている。体感として実感できる程にパフォーマンスが変わるので知らなかったという人は是非実践してみるべきだろう。
考え事をしながら十分程ジョキングをした所でマシンの方へと移動する。まずは軽い重量から負荷を掛けていき、徐々に重量を上げていく。とはいえ気張る程の重さでは無く、少し気合を入れれば持ち上げられるくらいの重量だ。だが女性にとってはかなりの重量らしく雪音さんと菫さんから驚いた声が上がる。
「拓真さん凄いです。あんなに沢山のプレートが浮き上がっているなんて力持ちなんですね」
「前腕と二の腕の筋肉が盛り上がっているし、血管も浮いていてとてもセクシーです。男性の腕ってこんなに逞しいんですね」
「ふぅー……。一応今までも鍛えていましたからこれくらいは問題ありません。あと筋肉についてはそこそこあるとは思いますが、マッチョと言えるほどでは無いので少し恥ずかしいですね」
「恥ずかしがることは無いですよ。私はムキムキな男性よりも拓真さんの様にほどよく引き締まっていて筋肉が付いている方が好きです」
「私も雪音と同じ意見です。大柄でマッチョな人はなんか怖いです」
確かに滅茶苦茶鍛えている人とか、格闘技をしていて鍛えられた肉体を持っている人とかは威圧感があるからな。しかもそういう人に限って身長も高い場合が多いから女性なら怖いと思うのも仕方ないだろう。かく言う俺も目の前にそういう人が居たら怖いし、あまり関わりたくないと思ってしまう。人を見た目で判断するなんて物凄く失礼な話だけどこればっかりはね。
何事も程々が一番じゃないだろうかと思った所で、次は雪音さんの番だ。使用したマシンの座席を備え付けのタオルで綺麗にした所で場所を譲る。
「それじゃあ次は雪音さん、どうぞ」
「分かりました。重量は一番軽いものにします。――ふっ……、ぐぬぬっ~」
「あと九回だから頑張って」
「お、重い。それに腕がプルプルしてきたんだけど」
「大丈夫よ。はい、あと八回」
どうやら雪音さんはあまり筋力が無いみたいだ。医師という仕事柄重い物を持つ事が殆ど無いだろうし力仕事でも無いからさもありなん。でも美人がプルプルしながら頑張ってトレーニングしている姿は嗜虐心が刺激されるな。二の腕をつんつんしたり、言葉責めしたくなる衝動に駆られるがそんな事をしたら確実に起こられるので止めておく。
そんなこんなでなんとか既定の回数を終えた雪音さんは息も荒く、よろよろと立ち上がった後菫さんにマシンを譲る。
「それじゃあ私はいつもの重量で行きます」
「結構重い重量でトレーニングするんですね」
「はい。これくらいの負荷が無いと物足りないので。――それでは……ふっ」
女性が扱うにしては負荷が大きいと思ったが菫さんはなんなく熟していく。細腕でよく出来るなと感心してしまうよ。見た感じ引き締まってはいるが、筋肉質ではなく女性らしい華奢な腕なので目の前の光景は意外に感じてしまう。
「九……、十。これで終わり。ふぅ~」
「流石普段から鍛えているだけあって楽勝そうですね」
「ふふっ、そうですね。雪音みたいに貧弱ではありませんからこれくらいは簡単です」
「うぅ……、こんなことならもっと鍛えておくべきでした。折角拓真さんに良い所を見せられるチャンスなのに不意にしてしまうなんて」
「これっきりという訳では無いですし、これからですよ。一緒に頑張りましょう」
「拓真さん。そうですね、二人で頑張りましょう」
「ちょっと雪音!私を省かないでよ。――拓真さん、三人で頑張りましょうね」
わいわいと二人が言い合いをしているが、なんとも微笑ましい。今までは一人でトレーニングしていたので会話も無く黙々と熟していたが、こういう風に他愛も無い話をしながら鍛えるのも良いものだな。なによりも美人二人と一緒というのがでかい。自然とやる気も出るし、男らしい所を見せようといつも以上に頑張れるから鍛錬効率も上がっているのではないだろうか。
よし、この後も張り切って鍛えよう。気合も十分に次から次へとマシンを使って様々なトレーニングをしていく。そんな中、端の方にブルーのマットが敷かれているエリアが目に入ったので菫さんに聞いてみる事にした。
「あのブルーのマットが敷かれているエリアは何をする所なんですか?」
「あそこは体幹トレーニングエリアとなっていて、様々な道具が置いてあります。バランスボールやバランスボード、ケトルベル等定番の物からポールまで多種多様な器具があるのでお好みの物を選んで使うことが出来ます」
「体幹トレーニングってインナーマッスルを鍛えるやつですよね?」
「そうです。普通の筋力トレーニングではあまり鍛えられないので、それとは分けて鍛える必要があります。また使う器具も全く違うのでエリア分けしているんですよ」
「成程。実は前々から興味があったので行ってみても良いですか?」
「勿論です。それでは行きましょうか」
三人揃って別のエリアへと移動した後、菫さんの指導のもと色々と器具を試してみる。簡単に出来そうに感じたがいざやってみるとこれが思いの外難しい。バランスボールの上で寝転がって身体を左右に動かしたり、伸びの姿勢で前後に動くだけなんだけどコロッと落ちそうになるわ、バランスが取れずに後ろに倒れ込みそうになるわで難易度が思っていたよりも高い。
だが同じ動作をしている雪音さんは難なくこなしている所を見ると、男性よりも女性の方がバランス感覚に優れていたりするのかもしない。ちょっとコツでも聞いてみようかと立ち上がり雪音さんの方へと視線を向けると衝撃の光景が飛び込んでくる。
なんとTシャツが捲り上がりお腹とちょっとだけブラジャーが見えているのだ。菫さんには鍛え方が足りないと言われていたがキュッと括れていて驚くほど細く、さらにぺったんこのお腹を見ていると実は結構鍛えていたりしない?と思ってしまう。うーん、おへその形も縦長で綺麗だし括れからお尻にかけてのラインがまた芸術的でまさに男の理想を体現したような曲線だ。アクセントとしてブラちらしているのも最高。これは見るなという方が無理だし、逆に凝視しない方が失礼まである。だからこそ俺は視線を外さずに見続けるぜ!と気合を入れた所でバッチリ雪音さんと目が合ってしまう。
「そんなにジッと見られると少し恥ずかしいです」
「あっと、これは失礼しました。Tシャツがちょっと捲れていたのでつい視線が向いてしまって」
「えっ?――すみません。だらしない姿をお見せしてしまいました」
「いえいえ、とんでもないです。女性らしい括れた綺麗なお腹でしたしだらしないなんてことは無いですよ」
「そうですか?私としてはもう少し細い方が男性受けするのではと考えていたのですが」
「あまりにも細すぎると心配になりますし、少しは肉付きがいい方が男受けは良いと思いますよ。俺としても今以上に細くなると大丈夫かなって思いますし」
「そうなんですね。では今の状態をキープしたいと思います。拓真さんの好みにも合っているみたいですし」
女性が理想とする体型と男が好きな女性の体形はかなり違うからな。兎に角細い方が良いと思ってダイエットする女性が多いが、存外男は多少ムチッとしている方が好きだったりするんだよ。――因みに俺の好みはかなり偏っていて全体的に華奢だけどおっぱいとお尻は大きくて、脚はすらっと引き締まっていて長いのが好きだ。そしてお腹はキュッと括れていて腰からお尻へかけての曲線が美しくないと駄目だ。……凡そ現実離れした体型だがそういう人が居ない訳では無い。極々少数ではあるが神が与えたもうた肉体美を持っている人も二、三度見た事があるのでいるには居るのだ。ただ滅多にお目に掛れない存在と思っていたんだけどこの世界に来てその価値観は崩壊した。雪音さん達を始めとしたこの世界の女の人はほぼ全員先程言ったような素晴らしいスタイルの持ち主なのだからさもありなん。
そしていつの間にかそれが当たり前に思っている自分が少し恐ろしくもある。この辺のバランスを確りと取らないと後々大変な事になりそうだし気を付けていこうと心のメモ帳に書きつつ、トレーニングを続けていく。
「これで一通りのメニューは熟したので最後にクールダウンをして終わりましょう」
「分かりました。それじゃあ軽くウォーキングした後にストレッチで良いですか?」
「はい、それで問題ありません」
菫さんに確認を取った後ランニングマシンへと向かいゆったりとしたペースで歩く。暫くそうして歩いた後ストレッチをする事に。う~んと身体を伸ばすと心地良い痛みと共にしっかりと筋肉が伸びているのを感じられる。割と体は柔らかい方だが、年を重ねるとどんどんと柔軟性が落ちていくという話も聞くし怪我の予防も含めて今後はストレッチする頻度を上げてもいいかもな。
自宅でも簡単に出来るし、後は俺のやる気次第だなと思いつつ隣にいる菫さんの方へと目を遣る。
「おおっ、凄い体が柔らかいんですね」
「これくらいは普通ですよ。拓真さんも毎日ストレッチをしていれば私と同じくらいでしたら数ヶ月でなれると思います」
「いやいや、百八十度開脚なんて無理ですよ。股関節周りの柔軟性が低いので百度くらいしか開脚できませんし」
「そういう方でも毎日続けていれば何れは出来るようになりますから安心して下さい。私もお手伝い致しますので」
「有難うございます。菫さんみたいになれるよう頑張りますね」
「はい」
柔らかい笑顔で答えてくれたが俺の視線は菫さんの股間から離れてくれない。両足を左右に広げている状態で座っているので女性器の形がハッキリと分かる。それはもう割れ目からぷっくりとした大陰唇、更には中身の一部まで丸見えというね……。ここで俺が指摘すると確実にセクハラになるし、菫さんに恥を搔かせる事になるので見て見ぬ振りをするのが大人だろう。
しかしあまりにも刺激が強くてムスコがキタァー!と叫びながらムクムクと起き上がろうとしているのは頂けない。この状況では般若心経を唱えても大した効果は得られないだろうし、最終手段を取るか。そう、スキンヘッドで髭面の厳ついおっさんが汗まみれで再度チェストをしながら微笑んでいる姿を想像するのだ。――そうするとあら不思議。さっきまで勢いよく隆起しかけていたマイサンが見る見るうちに萎んでいくでは無いか。と同時に俺の精神力も物凄い勢いで擦り減っているが大丈夫だろう。
ふぅ……、一先ず冷静になれたところでストレッチを再開する。勿論菫さんを見ないようにして。そうして一通りクールダウンを終えたら後は帰るだけだ。なんか肉体的にも疲れたがそれ以上に精神的に疲れた。これから仕事があるというのにどうしよう?気合とエナジードリンクで乗り切れるだろうかという若干の不安を抱えつつ初めての軍警察施設でのトレーニングを終えるのだった。




