第四十九話
今日は平日だが私物を買いに街まで来ている。当然雪音さん達はお仕事の為俺一人なので少し寂しいが、それは仕方ない事だろう。さて、時間は十四時を過ぎた所で学生は学校で勉強中だし社会人は仕事に精を出している事だろう。そんな時間帯なので街もいつもより閑散としているだろうと思っていたがそんな事は無く大勢の人で賑わっている。
平日がお休みの人も居るだろうが、それにしても人が多い。仕事や学校はどうした?と言いたくなるが他人から見れば私服姿で買い物袋を手に持っている俺も大概だろう。しかも男が一人で居るんだから余計に目立つ事この上ない。道行く人が二度見するのは当たり前で、中には立ち止まってジッと俺を見ている人も居るくらいだ。そういう視線には慣れているしいつもの事なので何とも思わないからいいんだけどさ。
そんな感じでいつも通りに買い物をしてこのまま普段であれば帰る所だが今日は違う。実は昨日の夜に透香さんとメールのやり取りをしていた際にこんな話になったんだ。
『明日は久し振りに街に行く予定なんですよ』
『そうなんですか?お仕事関係ですか?』
『いえ、私物を買いに行くだけです』
『……何時頃にお買い物に行く予定かお聞きしてもいいでしょうか?』
『十三時に家を出て街に行く予定です。買い物自体は十数分で終わるのでそのまま帰ろうかなと思っています』
『成程。実は明日の仕事と仕事の間に結構空き時間がありましてもし宜しければお茶でもどうですか?』
『勿論です。では待ち合わせ場所と時間はどうしましょうか?』
『それでは――』
という感じで偶然お互いの予定が噛み合った結果透香さんと会う事になったという訳だ。普通の仕事であれば勤務時間が決まっていて内勤であれば会社に縛られてしまうが、芸能人である場合はそうでは無いみたいだ。次の仕事まで空き時間が合ってその間は自由にして良いというのはある意味で羨ましいと思う。昼寝しても良いし、映画を観に行っても良いし、勉強をして過ごしてもいい訳だからかなり有難いし時間を有効活用できるので自分の為にもなるし良い事尽くめでは無いのだろうか。
ただまあ、それは一般人の感覚で合って多忙を極める芸能人の場合だと全然違うのかもしれないが。そんな事を考えつつ待ち合わせ場所へ向けて歩いているがあと少しで着きそうなので思考を切り上げる事にする。今回待ち合わせしている場所は駅前広場から少し離れた所にあるベンチ等が置いてあるちょっとした休憩場所だ。ここであれば二人ともあまり目立たないだろうという判断で決めた訳だ。有名女優の透香さんに配慮して選んだんだがどうやら間違ってなかったらしい。
ベンチに一人佇む透香さんが見えたので小走りで駆け寄るが、周囲にはほとんど人も居なくて騒ぎになっていないので一安心。
「こんにちは。お待たせして申し訳ありません」
「こんにちは拓真さん。――殆ど待っていないのでお気になさらず」
定番のやり取りをしつつ私服姿の透香さんへと目を遣る。パンプスに膝上丈のフレアスカート、トップスはジャケットを羽織っており、インナーはブラウスにリボンタイを着けていてとても清楚だ。全体のバランスが完璧にとれているし、清潔感がありつつも女性らしさを感じさせる服装だ。一言で表せば俺の好みドストライク。もしかしたら小百合さんや千歳さん辺りから俺の好みの服装を聞いていて選んだのかもしれないが、もしそうじゃなかったら恐るべし透香さんの選定眼と言った所だ。
何よりも大事なのがブラウスを押し上げているおっぱいだろう。推定Fカップの大きな胸が目立つし、自然と視線がいってしまうのは男の性なので仕方ない。だって目の前に大きなおっぱいがあれば誰でも見ちゃうだろう?男なら当然の行動なのだが、あまりジロジロと見ると嫌がられる可能性が大なのでチラ見程度で押さえておこう。
「ふふっ、気になる様でしたら気の済むまで見て構いませんよ」
「えっ……と……。すみませんでした」
「今まではただ重いし、肩も凝るしで邪魔でしかなかったのですが拓真さんの好みに合っているようですし今では大きな胸でよかったと思っています」
「大変素晴らしい物をお持ちで眼福です」
こういう時は変に取り繕わずに心からの言葉を言うべきだろう。変に取り繕うと逆に相手に不信感や不快感を与えてしまう可能性があるので男の本能に従いつつも言葉を選んで伝えるのがベスト。実際透香さんも嫌な顔一つせず、寧ろ喜んでいるみたいなので間違いないだろう。
取り合えずおっぱいに関してはこの辺にして予定通りにお茶を飲みに行くか。
「それじゃあカフェに行きましょうか。透香さんはどこか行きたいお店はありますか?」
「そうですね……。では最近新しく出来たスターライトカフェはどうでしょうか?お友達からとてもいいお店だと聞いていて一度行ってみたかったんです」
「初めて聞くお店の名前ですが透香さんのお友達のお墨付きがあるのなら間違いなさそうですね。俺は場所が分からないので案内してもらっても良いですか?」
「分かりました。ではご案内致しますね」
こうしてお店に向かって歩き出した。カフェと一口に言っても形態は様々で高級店から大衆店まで幅広くあり、ケーキなどのお菓子だけでなく食事も提供するお店もあるので本当に多種多様だ。今から行くお店がどういう感じなのかかなり興味があるし、新しく出来たと言っていたのでもしかしたらチェーン店では無く個人店なのかもしれない。色々と思考を巡らせつつ透香さんと並んで歩く事十数分。
「到着しました。ここがスターライトカフェになります」
「へー、シックな外観でお洒落ですね。どちらかと言えば学生向けではなく社会人向けのお店っぽいですね」
「確かにそうですね。確かメニューのお値段もそこそこするようですから大人向けのお店だと思います。――それじゃあ入りましょうか」
「はい」
店内に入ると十四時台なのに結構なお客さんで賑わっている。スーツ姿の人や私服姿の人もいて仕事中の休憩で利用していたり、大学生が授業終わりにでも来ているのだろう。これは良い席は取られているだろうし、あまり目立たない位置で二人分の席があればいいなと店内を見つつ考えているといつの間にかカウンター前の列が捌けて俺達の番になったのでそれぞれ注文をする。俺が選んだのはマンデリンコーヒーで名前を聞いた事がある人も多いだろう。インドネシアにあるスマトラ島が産地で希少性が高い品種だ。味はほろ苦さと酸味の少なさ、そして重厚さのあるコクとやや強めの苦味がある。風味はハーブやシナモンの様に感じる品種となっている。割と癖があるので好みが分かれる所だが俺は好きだ。
因みに透香さんはレモンティーを選んでいた。てっきりケーキも一緒に食べるのかと思っていたが注文しなかったのは意外だ。――やはり体形維持には気を使っているという事だろう。少しでも太ればイメージが損なわれるし、演じる役などにも影響が出るだろうからな。
流石プロは違うなと感心している内に注文した品を受け取り空いている席へと移動する。幸い二人で座れる席はあったがお店の中央に近い位置なので結構目立ってしまうのが難点だ。だが他にいい場所が無かったので仕方ないな。そうして座席に座り一息ついた所で透香さんに話しかけた。
「やっぱり目立ってしまいますね。もう少し端の席を確保できれば良かったんですがすみません」
「いえ、拓真さんが謝る必要はありませんよ。こればかっかりは運ですから。それに仕事柄人に見られるのは慣れていますし。拓真さんの方は大丈夫ですか?もし視線が気になる様でしたら外に出ましょうか?」
「お気遣い頂き有難うございます。ですが俺も大丈夫です。普通に歩くだけで必ず見られますし、街に来たなら尚更ですからもう慣れました」
「男性は大変ですね。もし私が一般人だったら大勢の視線に晒されるのは耐えられないと思います」
「俺の場合は仕事が接客業で常にお客様と接しているというも一因としてあるので、そう言うのを抜きにすれば透香さんと同じく無理だと感じるでしょうね」
他人からジロジロと見られるというのは慣れていない人にとっては精神的にかなりの苦痛だろうし、場合によっては視線恐怖症になったり、対人恐怖症になって外に出られなくなる場合もあるから実はかなり恐ろしかったりする。例えば芸能人や有名人などは仕事の一環として他人から興味関心を抱かれて見られるというのがあるので、仕事だと割り切る事が出来るので前述した症状が現れる事はほぼ皆無だがそれでもゼロではないので透香さんにも注意して欲しいなと思う。
俺は割と図太い所があるし、美人な人や可愛い人から好意の視線を向けられるのは大歓迎だ。隣に誰もいなければ鼻の下を伸ばしてしまう程だからな。まあ俺の事はどうでも良くて、それよりもコーヒーが冷めてしまう前に飲もう。
「んっ、美味しい。これは今まで飲んだコーヒーの中でトップ五に入る美味しさですね」
「気に入ってもらえたようでなによりです。飲み物は全て厳選した材料を使っていて、マイスター資格を持っている人でなければ作ってはいけないという決まりがあるみたいなので味は確かと評判みたいです」
「チェーン店なのに随分と力を入れているんですね。他のお店と比べればちょっとお高めの値段設定ですがこの味なら納得です。今までは特にお気に入りのお店などは無かったんですが、今後はこのお店に通おうかなと思うくらいですよ」
「そこまで言ってもらえるとお店を紹介した甲斐があります。これは友人にも感謝しなければいけませんね」
「出来ればご友人にも俺から直接感謝を伝えたい所ですが、流石に迷惑かもしれないので透香さんからお伝えして貰ってもよろしいですか?」
「勿論です。私の方から伝えておきますね」
屈託のない笑顔を浮かべながら了承してくれたが、有難い限りだ。人によっては嫌な顔をされたり、伝えておくと言っておきながら何もしないという人も居るからな。その点透香さんなら間違いなく相手に感謝を伝えてくれるだろうから安心だ。
コーヒーで喉を潤しながら改めて透香さんに視線を向けてみたが本当に美人だな。カフェでお茶を飲んでいるだけなのに絵になるし、雰囲気も合わさってある種の神々しささえ感じる。周りのお客さんも見惚れているし、流石と言わざるを得ない。などと考えながら見ていると俺の視線に気が付いた透香さんが不思議をそうな表情を浮かべながら声を掛けてきた。
「私の顔に何かついていますか?」
「透香さんがあまりにも綺麗なのでつい見惚れてしまっていました。じーっと見つめてしまいすみませんでした。ご不快でしたよね」
「い、いえ。そんな事はありません。拓真さんになら一日中でも見ていてもらいたいくらいですから。それに綺麗って……凄く嬉しいですけどちょっと恥ずかしいです」
頬を真っ赤にして照れてしまったがそんな仕草も可愛いし、最高です。傍から見たらバカップルに見えるかもしれないが、甘んじてその屈辱的な称号を受け入れよう。だって透香さんのこの可愛さには勝てないし、モジモジしながらレモンティーを飲んでいる姿も文句なしにグッドだし完璧すぎるだろ。バカップル?大いに結構。今の俺にはどんな悪口でも受け入れられる程寛大な心持ちだからな。
ふふふっと悪役さながらの悪い笑みを心の中で浮かべていると、近くの席でこちらを見ながら話している声が聞こえてきた。
『ねぇ、あの人って宮前透香じゃない?』
『あっ、本当だ。初めて生で見たけど流石芸能人だけあって綺麗だし雰囲気があるね』
『確かに。やっぱり私達一般人とは全然違うよね』
『うん。…………それよりも一緒に居る男性は誰なんだろう?宮前さんって結婚していたっけ?』
『未婚だったはずだよ。というか仮に結婚していたとしても御主人と一緒にカフェでお茶を飲むってありえないでしょ』
『そうなんだけど目の前で男性とお茶を飲んでいるんだけど。――どういう関係なんだろう?凄く仲が良さそうだし、男の人からも積極的に話を振っているし普通じゃ有り得ないよね』
『普通じゃない関係でかつ結婚もしていないとなると……さっぱり分からない。ただ一つ言えるのはあんなに格好良くて女性に優しい男性は見た事が無いという事だね』
『もしかして私達白昼夢を見ているんじゃないかな?創作の中でも見られない素敵な男性が近くにいるとか……もう今日死んでもいいくらいだよ』
『同感』
いや、死んじゃ駄目だろ。というか透香さんの旦那さんじゃない?って言われて俺としては嬉しいけど芸能人にとってはある意味最悪のスキャンダルでは無いだろうか。人気女優の宮前透香が未婚と言っておきながら実は結婚していた!とか週刊誌にでも掲載されたら女優生命が断たれるのは間違いない。かと言ってここで俺が彼女とはそういう関係では無いですよと否定するのも違うだろう。ここは透香さんの反応を見てどうするか決めるべきだろう。
という事でさり気無く目線を送るとなにやら俯いて何事かを呟いているようだ。
「私と拓真さんが結婚。私の旦那様。あぁ、なんて素敵なんでしょうか。拓真さんに何一つ不自由させないだけのお金はありますが、将来子供も産まれる事ですしもっと稼がないといけませんね。でもそうなると愛しの旦那様との時間が減ってしまいますし、ギャラを増やして貰えるようお母様に交渉しなければ。それと子供と住む事になれば今の家では手狭ですし引っ越しもしないと駄目ですし、早急に物件を探さないと」
あー…………その~、なんだ。こういう場合俺はどういう反応をすればいいのだろうか?妄想の世界にどっぷりと浸かっているし、無理に現実に引き戻せば何か悪影響を与えそうな雰囲気もある。かと言ってこのまま放置すればそれはそれで問題だろうしどうしよう。
取り合えず呟きの内容に関してはかなり飛躍している部分もあるが深すぎる愛を感じるのは確かだ。ここまで言われれば少し鈍い俺でも透香さんが俺に重い好意を持っているのは嫌でも分かる。それ自体はとても嬉しいが今はそれよりも正気に戻すのが先という事で勇気を振り絞って声を掛けてみよう。
「あの、透香さん。お取込み中すみませんが、周りの人の注目を集めているのでそろそろ戻ってきて貰えないでしょうか?」
「はっ!?――すみません、少しだけ違う世界に行っていました」
「いえいえ、大丈夫ですよ。少々目立っていますし場所を変えますか?」
「大丈夫です。これくらいなら問題ありません。拓真さんがお嫌でしたら違うお店に移動しますがどうしますか?」
「このままで大丈夫です。幸い騒ぎにもなっていませんし、少しすれば落ち着くでしょうから」
「分かりました。ご迷惑をお掛けして本当にすみません」
「お気になさらずに」
うん、正気に戻ったようでなによりだ。今までもなんとなくそれっぽい言動や行動があったが今回の事でハッキリと確信したよ。透香さんは深くて重い愛情を持つ一途な人で、甘えたがりで寂しがりやな面を持っている。だからと言って束縛したり、ヤンデレ気質がある訳では無くて純粋に好きな人に極大の愛を抱き、ぶつけるタイプなんだろう。果たしてそれを受け入れられるだけの器があれば何ら問題は無いが、受け止められない場合はどうなるのだろうか?一気に暗黒面に落ちて、ヤンデレ化する可能性もゼロではないが出来るだけそうはならない様にしたい所だ。包丁で背中を刺されるとか勘弁して欲しいしな。なんにせよ俺に宇宙並みの広さがある器があればいいだけだ。そうすればどんな激重愛情も受け入れられるから精進あるのみ。
「そういえば透香さんはこの後お仕事でしたよね」
「はい、そうです」
「もしかしてドラマの撮影とかですか?」
「残念ながら雑誌のインタビューと写真撮影になります」
「インタビューとか受けた事が無いので想像になりますが、色々な事を聞かれて答えなくてはいけないのはかなり大変だと思うのですがどうなんでしょうか?」
「事前に聞かれる内容を教えて貰っているのでそこまで大変では無いんですよ。NGな話題も事務所の方で相手に知らせていますので困る様な事もありませんし」
「そうなんですね。それだといきなり変な事を聞かれて困るという事も無いですし良いですね」
「はい。それと写真撮影に関しては拓真さんも経験があると思いますのでそれとほとんど同じ感じになります」
「ふむふむ。俺の場合は突発的な物だった事もあり数十分で終わりましたが、インタビューと写真撮影含めて結構時間が掛かるのでは?」
「大体数時間は掛かりますね。長引いた場合は半日とか時間を取られる事もあるんですよ」
「えぇ、それは大変ですね。次の仕事に影響が出るでしょうし、各方面に迷惑も掛けるしで仕方ないとはいえ良い事では無いですよね」
「仰る通りです。現場は時間で動いているのでどこかで仕事が押してしまうと撮影出来なくなったり、後で別撮りになったりとお金も時間も余計にかかる事になるので出来るだけ避けたい事態ですね」
ドラマや映画、後はテレビ番組等は出演者が居なければ撮影することが出来ないし、透香さんは主演を務める事も多いだろうから尚更スケジュール管理には気を付けているのだろう。その点自営業の俺は気楽なもんだ。決まった時間に仕事をして、決まった時間に終わるのだからどこかでスケジュールが圧迫されて開店時間や閉店時間が伸びるという事はほぼ皆無だからな。改めて芸能界の厳しさを実感させられたよ。
残りが僅かなコーヒーを一気に飲み干しながらそんな事を考えていると、いつの間にか混雑しているのに気が付いた。ポケットから端末を取り出して時間を確認するとなんと十六時半を示している。このお店に来たのが十四時過ぎだったので二時間以上お喋りをしていた事になる。体感的には一時間も過ぎていないと思っていたのにあっという間だな。――そういえば透香さんの休憩時間は何時までか聞いていなかったな。もしかしたら時間的にギリギリかもしれないし大丈夫か聞いてみるか。
「今時間を確認したら十六時半だったのですが、次の仕事までの時間は大丈夫ですか?」
「次の仕事が十八時過ぎなのでまだ大丈夫です。移動に掛かる時間が車で三十分くらいなのであと一時間は余裕がありますね」
「そうですか。それならまだ一緒に居れますね」
「はい。私としてはこのまま拓真さんとずっと一緒に居たいのですが、仕事が……。本当にタイミングが悪すぎて自分の運の無さを恨みます」
「二人でどこかに出掛けるのは今回きりっていう訳では無いですし、またお互いの予定が合った時にでもこうしてお茶をしたり遊びに行ったりしましょう」
「約束ですよ」
そう言いながら小指を立てて俺をジッと見ている。これはあれだ。指切りげんまんをしようという事だな。そっと小指を透香さんの指に絡めて二人声を合わせて『指切りげんまん、嘘ついたら針千本呑ます
』と言ってから指を離す。こういう事をしたのは小学生以来だが中々悪くない。勿論相手が透香さんだからというのもあるし、子供っぽい一面を見られて嬉しいというのもあるだろう。
何気ない事で相手の知らない面が分かるとちょっと面映ゆいな。でもちょっと恥ずかしいし、頬も熱くなっているから少し外の風に当たりたい。丁度混み合ってきたタイミングだしそろそろお店を出るか。
「少し外の風に当たりたいので、お店を出ませんか?」
「私も同じなので行きましょうか」
こうしてカフェでの一時は終わりを告げて、透香さんの次のお仕事までの時間を街をぶらつきながら過ごした後、お別れをするのだった。
凄く楽しい時間を過ごせたが、この後仕事だと思うと少し憂鬱になってしまう。だが、透香さんとの別れ際に手を握られて微笑みながらお仕事頑張って下さい!と言われたので気合を入れて仕事に臨まなければ。……コンビニでエナジードリンクドリンクを買って帰ろう。




