第四十七話
宮前さんの準備が終わった所で全員揃って劇場を出る。話によると近くにあるらしいがどんなお店なのだろう?女優さんが行くような店だからかなりの高級店と予想するがあまりにも高いと口座から十万円位消える事になるので経済的にこの出費は結構痛い。とはいえこういう場での支払いは男がするものだから多少の痛みは我慢するべきか。一月か二月節約すればなんとかなるだろうと頭の中で皮算用している内に件の和食店へと着いた。お店の外観はシンプルで看板が一つだけあって、他には一切の装飾がされていない。パッと見では飲食店だと気が付かない人も居るのではないだろうか。
「着きました。事前にマネージャーが電話して座席の確保はしているので行きましょうか」
「分かりました」
宮前さんの気遣いに感謝しつつお店へと入る。時間帯的に丁度夕飯時だったので店内は結構混んでいたが店員さんの案内の元個室へと向かう。土間で靴を脱いで室内に入ると畳敷きの床に掘り炬燵席になっていたので右側の入り口に近い位置に座る事にする。俺の側には小百合さんと桜ちゃんが座り左側には宮前さん、雪音さん、菫さん、桜ちゃんが座る。人数が七人なので三、四に分かれてしまい何となくバランスが悪いがこればっかりは仕方ない。
さて、全員席に着いたしメニューでも見ますか。えーと……ディナーと旬物、単品があるのか。取り合えずディナーメニューを頼んで足りなければ単品を頼む感じで行こう。あとは値段も確認しなければ。一番安いコースメニューで一万五千円。一番高いのは時価ね……。外食でよく行くのがファミレスなのでこの値段は正直高すぎると言わざるを得ない。ファミレスなら千円もあればお腹一杯食べられるのに一万五千円が最安値とかもうね……。どのコースを頼めばいいか全く分からないしこういう場合は慣れているであろう小百合さんに聞くのが正解だろう。
「あの、小百合さんはどのメニューにするかもう決めましたか?」
「はい。この特選懐石コースにしようと思います」
「成程。じゃあ俺も同じにしようかな。あとは単品を二つほど追加しよう。――実はこういう和食の高級店に来るのは初めてなのでどれを選んでいいのか分からなかったので助かります」
「一番は自分が食べたい物があるコースを選ぶ事ですが、何を選んでいいか分からない場合は中間くらいの値段のメニューを選ぶと良いですよ。その場合だとハズレも無いですし、相手にとっても失礼になりませんから」
「そうなんですね。勉強になります。今後同じような事があったらそうしてみます」
「はい。もし分からない事があったら遠慮なく聞いて下さい」
「その時はお願いします」
流石お嬢様だけあってこの手の事には詳しい。今後も小百合さん達にお世話になるんだろうなと思いつつ他の人も頼む物が決まったようで店員さんを呼んでそれぞれ伝えていく。後は料理が来るまでゆっくりするだけだ。さて、どんな話題を振ろうと考えようとした所で宮前さんが話しかけてくる。
「佐藤さんは健啖家なのですね。――その割にはスリムで羨ましいです」
「沢山食べるんですねとよく言われます。でも俺としてはこの世界の一人前の量が少なすぎると思うんです。こんな少なくてよくお腹一杯になるなと不思議なほどですよ」
「…………この世界ですか?」
「あっ……」
完全にやらかしてしまった。普段は俺が並行世界から来た人間だと絶対に悟られない様に言動には気を付けているのに。覆水盆に返らずという諺通り一度言ってしまった事実は決して覆らない。ここで変に誤魔化すのも余計怪しまれるだけだろうしどうすればいいのか。助けを求めて菫さんに目配せをするとすぐに俺の考えを理解してくれて一つ頷いた後、言の葉を紡ぐ。
「拓真さんには公には出来ない事情がありまして、先の言葉もそれに関するものです。今からお話しする内容は口外禁止、もし破った場合には軍警察や国から重い処罰が下されますがそれでもお聞きになりますか?」
「お願い致します。このまま何も知らずに佐藤さんと接するのは私にとって死ぬのと同義ですので」
「分かりました。拓真さんはこの世界の住人ではありません。私達が住む世界と似て非なる並行世界の――」
菫さんが俺に関する秘密を話していく。予想外の出来事に俺は焦るばかりだったが、菫さんは冷静に現状を把握して何が最適解かを判断した上で話す事にしたのだろう。頼りになる事この上ないが、俺が口を滑らせたのが原因なので大変申し訳なくもある。
そして俺が並行世界から来た人間と言う突拍子も無い話を果たして宮前さんは信じてくれるのかと言う問題もある。普通に考えれば一笑に付す内容だし、妄想や頭のおかしい人と思われても仕方ない。どの様な反応が返ってくるかドキドキしながら菫さんの話が終わるのを待つ。なんだかんだで十五分くらい話した所で終わり、菫さんがふぅと小さく息を吐く。対して宮前さんは何やらスッキリとした表情を浮かべており、うんうんと頷いている。自分の中で結論が出たのか俺を真っ直ぐ見ながら口を開く。
「短い時間しか佐藤さんと接していませんが、今までの言動や行動全てに納得出来ました。この世界の男性では無く、男女比ほぼ一:一の世界で生まれ育ったからこそだったのですね」
「はい。俄かには信じられない話かもしれませんが全て事実です。ただこの事が公になると世界に多大な影響を与えると思うので宮前さんの胸の裡に留めて貰えると助かります」
「勿論です。絶対に他言はしませんのでご安心下さい。――いきなり見知らぬ世界に来たと分かった時は相当驚いたのではないですか?」
「最初に目覚めたのが自宅だったのでいつも通りだったのですが、少ししたら違和感を感じて色々調べて俺が居た世界じゃないと知った時はかなりショックを受けました。お金も無いので食べ物も買えず倒れて病院送りになったのは今では良い思い出です」
「えっ!?大丈夫だったんですか?後遺症などはありませんか?もし何か不自由な事があれば私に言って下さい。どんな事でもお力になりますから」
「幸いただの栄養失調で数日もすれば元気になりましたし、後遺症もありませんので安心して下さい。それに悪い事ばかりでも無くて病院に運ばれた事で雪音さんと菫さんに出会うことが出来ましたから」
「それでも心配です……」
「定期健診を雪音さんが働く病院で受けていますし、もしなにかあればすぐに検査入院する手はずになっているので本当に大丈夫ですよ」
深刻な表情で心配している宮前さんを見るともう少し言葉を選べばよかったと後悔している。まさか出会ったばかりの俺の事をここまで案じてくれるのは嬉しさ、半分申し訳なさ半分と言った所か。今後は宮前さんに余計な心配をさせない様に言動には気を付けよう。少しだけ彼女の事が分かった所で注文していた料理が運ばれてくる。流石は二万三千円もする特選懐石コースだけあってどの料理も凄く美味しそうだ。品数も十品もあって大食いの人でなければ満足する量だし人によっては食べきれないだろう。だがそれはあくまでもこの世界基準で見た場合だ。俺にしてみれば相も変わらず半人前しかなく全部食べてもお腹一杯にはならないだろう。これを見越して単品料理を二品頼んでいたので抜かりはないが、果たして女性達は全部食べられるのだろうか?普段の食事風景を考えると多分食べきれないんじゃないかな。もし残してしまったら俺が食べてあげるのも一つの手だが、嫌がられる可能性もあるしその辺りは聞いてみるしかないか。
もしもの場合について考えている内に配膳が終わり皆で手を合わせて頂きますをしてから食事に手を付ける。
「んっ、美味しい。本格的な和食は久し振りに食べましたが凄く美味しいです」
「お口に合ったようで良かったです」
「普段食べているご飯も美味しいけど、高級店だとまた違った味わいがありますね」
「佐藤さんは普段自炊をしていらっしゃるのですか?」
「いえ、食事はここに居る女性達が毎日作ってくれています。一応俺も最低限の料理は作れるのですが栄養バランスとか一切考えないし、かなり適当なので本当に助かっています」
「……つかぬ事をお聞きしますが静川さん達とは結婚されているのでしょうか?」
「皆さんとは仲良くさせてもらっていますがまだそういう関係では無いです」
「成程。という事は私にもチャンスはあるという事ですね。――あの、佐藤さんにお願いがあるのですが私の事は透香と呼んで下さい」
「分かりました。では透香さんとこれからは呼ばせて頂きますね。俺の事もお気軽に拓真と呼んでくれると嬉しいです」
「それじゃあ拓真さんとお呼びさせて頂きます」
微笑みながら俺の名前を呼ばれて思わずドキッとしてしまった。今まで出会った女性の誰とも違う可愛らしさと妖艶さが混ざった蠱惑的な笑みはどんな男でも虜に出来てしまうだろう。まさに傾国の美女と言っても過言では無い程の破壊力だ。正直このままだと下種な思考に走りそうなので目の前の料理を黙々と食べる事にする。煩悩を振り払うようにひたすらにご飯を口に運んでいる間に女性達で何やら盛り上がっている様子だ。話の内容は俺が好きな料理はなんだとか、好きな服装はあれこれだとか殆ど俺の話題ばっかりなのが気になるが下手に会話に参加するのも藪蛇になりそうだしここは静観しているのが正だろう。我関せずでいると、透香さんが話を振ってきた。
「小百合さんからお聞きしたのですが拓真さんはお店を経営していらっしゃるんですね」
「はい。元居た世界でbarで働いていたのですがお店ごとこの世界に転移してきたのでそのまま引き継ぐ形でお店を経営しています」
「もしご迷惑でなければ今度お店にお伺いしてもよろしいですか?」
「勿論です。透香さんみたいな有名人にとってはパッとしなお店に映るかもしれませんがそれでもよろしければ是非お越しください」
「パッとしないなんてそんな事はありません。私にとっては拓真さんがいらっしゃるだけでどんなお店よりも素敵ですから」
「有難う御座います」
うーん……この高評価は嬉しいけどそこまで持ちあげる様な店でも無いんだよな。格式高い訳でも無いし著名人が多く訪れる様な有名店でもない。だからこそ実際に来た際にガッカリしないか心配でもあるわけで。とはいえこれ以上俺から自分の店を下げるような事を言うのを違うだろうし、透香さんが素敵と言っているのだから問題無いだろう。
そう言えばお店で思い出したけど芸能人である透香さんが俺と一緒に食事をしていて大丈夫なんだろうか?念のために確認しておこう。
「透香さんにお聞きしたいのですが、俺と一緒に食事をしている所をもし週刊誌にでも撮られたらスキャンダルになりますがその辺は対策されているのでしょうか?」
「えーと……、男性と一緒にお食事している所を撮られてもスキャンダルにはなりませんよ」
「え!?そんなんですか?俺が居た世界では男女問わず異性と一緒に居たりすると週刊誌に大々的に掲載されて大きな問題になるのですが」
「男女比がほぼ均等だとそうなるのですね。こちらの世界では男性芸能人が存在しないのでそもそも問題になる事がありませんし、女性が男性と一緒に居るのが知られても殆どの人が羨ましさと嫉妬の感情を抱くだけですからこちらも問題はありません」
「女性の嫉妬はかなりドロドロしてそうで怖いのですが本当に大丈夫なんですか?」
「はい、大丈夫です。例えば私ではなく一般の方でも同じような状況になると思いますし。雪音さん達も経験がおありだと思いますよ」
透香さんの言葉に雪音さん達に視線を送るとうんうんと頷いているので彼女達も似たような経験をしているのだろう。今まで事件が起きたり、危害を加えられたりと言った事は無いので大丈夫だと思うが念の為これからはより警戒を厳にしていこう。
しかし芸能界もこちらの世界と俺が居た世界では全く違うんだな。出来れば裏話や業界に関する話を聞いてみたいが迷惑じゃないだろうか?当然口外できない事もあるだろうからそこら辺は省いて教えて貰えるか聞いてみよう。
「さっき透香さんが男性芸能人が居ないと仰ってましたが、ドラマや映画で男性役がある場合はどうするのでしょうか?」
「その場合は女性が男性役を演じますね。より男性らしく見える様に胸に晒しを巻いて平坦にした上で肩パットや粘着性クッション材を身体に貼り付けて肉付きを良くさせたりとかなりの苦労があるので大変なんですよ。それと声を自分が出来る精一杯の低い声を出さなければいけないので喉にも負担がかかりますし」
「思ったいたよりも大変なんですね。――でもそこまで男に近づけなくても視聴者はあまりに気にしないのでは?」
「あくまで見ている人は男性を求めていますので少しでも中途半端だと放送局や制作会社にクレームが大量に来てとんでもないことになってしまいます。昔の話ですが予算の関係で手抜きの男性役をやらざるをえなかったドラマが大炎上して会社がつぶれたという実例がありますから」
「あっ、そのドラマを私リアルタイムで見ていました。役者さんは一生懸命演じていたのですが胸は大きいし、体型も凄く細くて腰もくびれていたりと見るに堪えなかったです」
「私も雪音と同じくリアルタイムで見ていたけど余りの惨状に何度もクレームを入れたもん。今でも最低のドラマとして語り継がれるある意味で伝説だよね」
雪音さんと菫さんが話している内容を聞いてそらそうなるわなと思うよ。百歩譲って凄く細いのは良いとしておっぱいが大きいのとか腰がくびれているのはアウト。これが男の娘だったり女装子だったら何ら問題は無いんだけど役柄は普通の男性だからな。誰に聞いてもそんな男いないよ!と言うだろう。
男装している女性は残念ながら見た事が無いので少し興味はあるが、宝塚みたいなものだろうか?もしそんな感じなら俺は普通に美人な女性を見ていたい。何よりも目の保養になるからね。
「話は少し変わるのですが芸能界に居れば男性との会う事も一般人よりも多いと思うのですが透香さんは今まで会った事が無いんですよね」
「はい、一度もありませんでした。イベントやパーティーに男性が参加する事は皆無ですし、よほどコネがあるか何かしらの縁がない限りは例え芸能人でも男の人に会う機会は無いですね」
「なんか意外です。俺なんかは芸能人に会えるとなればウキウキで参加するのに世の男共は勿体ない事をしますね」
「ふふっ、そんな事を思うのは拓真さんだけだと思います。――というかですね、拓真さん程素敵な男性であれば芸能人だろうが有名人だろうがより取り見取りですよ」
「いやいや、流石にそれは無いですよ。相手にも好みがありますし、目も肥えていると思うので歯牙にもかけられないんじゃないかと」
「「「「「「それはありません」」」」」」
この場に居る六人の女性が声を揃えて否定してくる。その気持ちは有難いがこればっかりは相手がどう思うかに依るし、男なら誰だっていい訳では無いだろうからね。俺を慮って言ってくれたのだろうし気持ちだけ有難く受け取っておこう。
「しかし芸能界か。ドラマや映画を結構見ているのでそういう世界にも興味があって、一度だけエキストラ募集のに応募した事があったんですが見事に落ちたのが今でも鮮明に思い出せます」
「それは担当者の見る目が無かっただけですね。もし私が担当していたらエキストラどころか主役に抜擢します。だって拓真さんの演技が見れるんですよ。当然ですよね」
「俺に演技経験は無いので見るに堪えない大根役者だと思いますよ。例えエキストラだとしても演技経験があったり、養成所に通っている人には勝てませんから」
「むぅ……、そんなことは無いと思いますが」
真面目な話ド素人がモブキャラだとしても演じていたら作品が台無しになるし、炎上する事もあるからな。台詞の棒読みに始まりぎこちない演技を見せられたらどれだけ素晴らしい役者さんを揃えていてもその時点で視聴を打ち切ること間違い無し。
そういう場合は大抵コネや、何らかの取引があって選ばれた場合が殆どだし政治的な思惑が透けて見えるのも心証が悪くなる一因だろう。というか一時期そういう作品が多かったがあれは最悪だったな。テレビを観る気が失せて一年くらい一切ドラマとか映画を観なかったほどだ。そんな悲しい人を生み出したくないし、もし演技する機会があったら短い期間だろうが必死で勉強して、練習をしてから望むだろう。
最後に残ったデザートを食べながらそんな事を考えていると、他の人達も食べ終わったみたいでご馳走様と言っている。
「ご馳走様でした。……流石にコース料理は量が多くて食べきれませんでした」
「品数も多いから一品の量が少なくても満腹になりますよね」
「そうなんです。本当はデザートも食べたかったのですがこれ以上食べるとお腹がパンクしてしまうので残念ですが諦めます」
桜ちゃんは高校生だしこれくらいならサクッと食べてしまえるんじゃないかと思ったが無理だったか。雪音さん達も食べきれずに残しているし、透香さんも結構残しているな。――俺は完食した上で単品料理も平らげました。これだけ食べれば満腹だし満足だし本当に美味しかったからお金に余裕がある時にまた来たいと思う。その時はまたこの面子で来れたら良いな。
食後のお茶を飲みながらぼんやりとそんな事を思っていると、ある事を思い出したので透香さんに声を掛ける。
「そういえばまだ名刺を渡していませんでしたね。お店の住所と電話番号が記載されていますのでもし来店される際に問題があったら連絡してください」
「分かりました。――あの、もしよろしければプライベートの電話番号を教えて貰ってもよろしいでしょうか?」
「構いませんよ。ついでにメールアドレスも教えますね」
二人揃って端末を取り出して連絡先を交換する。昔は手書きのメモを渡して手入力で携帯に打ち込んでいたものだが、今は通信であっという間に終わってしまうから楽になった物だよ。技術の進歩に感謝しつつ、女優さんの連絡先をゲットできたという事実に年甲斐もなく心が躍ってしまう。
「これでいつでも拓真さんにご連絡出来ますね。夜のお仕事されていますしメールやお電話を差し上げる際は夕方以降の方がいいでしょうか?」
「朝でも昼でも構いませんが寝ていて返信が遅くなる可能性があるので、早急に連絡が欲しい場合は夕方以降の方が有難いです」
「分かりました。ではなるべく夕方以降に連絡するようにしますね」
可愛らしい笑顔を浮かべながら言うのは反則過ぎると思います。何と言うか用も無いのにどうでもいい内容でメールとかしてしまいそうな自分がちょっと怖い。透香さんは女優さんだし相当忙しいだろうから自重しなければ。相手の立場に立って物事を考えるというのは社会人として当然の事だし、そこを疎かにすれば人間関係が円滑にいかないのは自明の理。という事で俺から連絡するのは控えめにしよう。
さて、一通りやるべき事も終わったしご飯も食べ終えてまったりとした時間を過ごせたことだしそろそろお暇しようか。透香さんも舞台終わりで疲れているし、いつまでもお喋りをしていては寝る時間が少なくなって明日の仕事に影響が出るかもしれないしね。
「それじゃあそろそろいい時間ですし、お開きしましょうか」
「私としてはもっとお話をしていたかったですが、それはまたの機会に取って置きますね。今日は楽しい時間を過ごせました。改めてお誘いを受けて下さり有難うございました」
「いえ、俺の方こそ楽しい時間を過ごせました。これっきりという訳では無いので都合の良い日にでもまた遊びましょう」
「はい、約束ですよ」
こうして思わぬ出会いから始まった食事会は幕を閉じるのだった。まさか舞台を観に行ったら主演女優と一緒にご飯を食べるなんて神様でも予測できるはずがないだろうし、俺にとっても驚きの連続だったがこうして縁を紡げたのだから大切にしていきたいな。
夜空を見ながらそう思うのだった。




