第四十一話
皆さんは小説を読むだろうか?たくさん読む人も居れば、全く読まない人も居るだろう。また、一口に小説と言っても様々なジャンルがある。SF・恋愛・ミステリ・官能小説・ライトノベル等々多種多様にあるがその質は作者によって様々だ。スカスカの内容で数ページ読んだだけで投げ出す作品もあれば、時間を忘れて読み耽る作品もある。これは単純に読み手の感性や好みに合うか合わないかなので面白くなければ読まなければ良いという話で終わる。だが、中には小説の書き方自体を理解していなかったり、意味不明に改行していたり、読点を多用して物凄く読みづらかったりと言う作品がある。特に読点を多用する文章は兎角読みにくいし、変な所で区切られてしまう為読み手にストレスを与える事になる。まあ、読点に関しては学校で習う訳では無いし完全にその人の感性に依るものになるが、個人的には多用している時点で即読むのを止める程に嫌いだ。
まああくまで俺はそう感じているだけと言う話なんだけどね。――なんでこんな話をしているかと言うとこの世界に来て何気なく購入した小説が物凄く面白くて嵌まっているんだけど、その作品の新刊が今日発売されるのだ。しかも通常版と特装版の二種類が発売されて特装版の方にはなんと特典冊子がついてくる。一般的にはこういうおまけ要素は数ぺージとか、よくて十数ページなんだけどこの特装版は違う。なんと百ページの大ボリュームとなっているのだ。これはファンであれば誰もが欲しいし、読みたいと思うだろう。かく言う俺も同じなのだが、この特装版は電子書籍では販売されず紙媒体のみとなっている。普段は電子書籍で読んでいるが今回は書店に買いに行かねばと一週間前から気合を入れていて、迎えた当日。
パパッと外出の準備を整えて街の大型書店へと向かう。そこそこ人気作品だし売り切れることは無いと思うが、万が一の可能性を考えて昼前に動いている。いつも通り昼過ぎに起きて、ゆっくりしてから本屋に向かってみたら完売でしたなんて事になったら目も当てられないからな。
因みに今回は私用なので雪音さん達と一緒では無い。休日は大抵誰かしらと一緒に過ごしているのだが偶にこういう風に一人で過ごす日がある。特に小百合さんと千歳さんはお店でも顔を合わせているので一日、二日会わない日を作らないと精神的に辛くなっちゃうからね。従業員のメンタルケアも雇用主として確りと管理しなければいけないし、その辺を怠っていたら後で痛い目に合うのは確実だろう。
今頃は二人とも思い思いの時間を過ごしているだろうし、リフレッシュ出来ていると良いのだが。そんな事を考えながら人でごった返す街を歩いて行く。
流石に男性が一人で歩いているというのは目立つのか道行く人が必ず振り返り、ひそひそと友達と話し合っている。だが声を掛けられる事も無く、ただ見られるだけと言うのは少し寂しいな。隣に誰かいれば他愛も無い話をしたり出来るのだが一人だし黙々と目的地に向かって進むだけだ。
そうして暫く寒い中歩き続けると書店が見えてきた。今回行くお店は商業ビルにテナントとして入っているタイプでは無く、自社ビル店舗で俺が住む地域で最大の広さと書物数を誇る有名な書店となっている。心を強く持たないとついつい面白そうな本を何冊も買ってしまいそうになるので注意しなければいけない。気がついた時には買い物かごに五~六冊入っていたなんて事になりかねないからな。そんな事を思いつつ自動ドアを潜り抜けて店内へと入ると心地良い暖かさが出迎えてくれた。外は吐く息が白くなるほど冷え込んでいたので、この暖かさは有難い。どこかに座って暫くボケーッとしていたいが目的の本が売り切れていたら最悪なので足を止める事無く売り場を歩く。
どこに置いているのだろうか?と探しているが一向に見つからないんだが……。そこそこ人気作品だし販売していないという事は無いはずなんだけど。――これは書店員さんに聞いてみた方が早いかもなと思い踵を返した所で見つけた。そう、お目当ての本が端っこの方に平積みされていたのだ。この端の方に置いてある感が何とも寂しい。人気作品や超人気作品などは大々的に宣伝されていたりPOPが飾られていたり、目立つ所に置かれているのだがこの扱いの差よ。
だがしかし、例えそこそこしか人気が無かったとしても小説の内容は間違いなく一級品と言える。個人的にはもっと売れていてもおかしくは無いと思っているが、やはり認知度が低いのが問題だろう。どれだけ面白くても読者が作品を知らなければ手に取ってもらう機会は永遠に来ないのだから。
俺に出来る事があれば是非協力したい所だが作者や出版社に繋がりがある訳でも無いし、精々がお店に来る人や菫さん達にお勧めする位だろう。そんな事を考えつつ特装版を手に取りレジへと向かう。
幸いレジに並んでいる人は居なく、すぐに会計をすることが出来た。その際に店員さんから驚くべき情報が齎される。何でも特装版を購入した人限定でこの後あるサイン会への抽選券が得られるとの事だった。参加上限は百人で今の所七割が埋まっているらしいので、残りの三割に賭けるしかない。抽選はデジタル回転式抽選機で行うのだが、手動ではガラガラを回した事があるがデジタルでは初めてなのでどうするのだろうかと思い聞いてみたらボタンを押せば自動で結果が表示されるらしい。そうと分かれば気合を入れて望ばねばならない。目を瞑り心の中で当たれ!と必死で願う。
緊張で少しだけ震える手でそっとボタンを押すとガラガラと効果音が鳴り、僅かな間を置いて結果が表示される。…………結果はハズレ。目を擦り何度も見直したが表示されている文字はハズレの三文字。ショックのあまりその場で項垂れてしまう。そして深い溜息を一つ。終わった……と泣きそうな気持を必死で抑えていると周囲から殺意の波動が飛んでいる事に気が付いた。
もしやあまりにも情けない俺の姿に周囲の人達が殺意を覚えたのか?と不安になり慌てて周りを見回してみると殺意の波動は俺にではなく目の前に居る店員さんに向けられているのに気が付いた。そして周囲の人達からの剣呑な雰囲気に当てられて泣きそうになっている。こうなった原因は恐らくだが俺がハズレを引いて落ち込んでしまったのが理由だろう。だからと言ってもう一回やらせてくださいなんて言える訳も無いし、無かった事にも出来ない。こういう結果になったのは残念だがここは大人しく帰るのが一番良いだろうと思い踵を返そうとした所で店員さんから待ったがかかる。
「あの、今回残念ながら抽選の結果ハズレでしたが特別にサイン会にご招待いたします」
「えっと……、大変有り難いのですが百人の枠に無理やり割り込む形になってしまいますが大丈夫なんでしょうか?」
「上には確認を取ってOKを貰っていますし、作家先生や出版社の人にも確認した所問題無いとの事でしたので大丈夫です」
「そうですか。それではお言葉に甘えさせてもらいます」
この短時間でいつ確認を取ったのか不明だが何とも行動が早い。そして即決するとは相当仕事ができる人なんだな。取り合えずサイン会には参加出来るみたいだしこれ以上何かを詮索する必要は無いな。有難く厚意を受け取るとしよう。あっ、そう言えば何時頃から始まるか聞いていなかったな。
「すみません。サイン会が何時に始まるかと、どこで行われるのか教えて貰ってもいいでしょうか?」
「はい。開始時間は十三時からになります。場所はこのフロアの端にある多目的スペースで行われる予定です。参加者の方は開始の三十分前までに会場にお越しください」
「分かりました。有難うございます」
今が十一時半だからあと一時間は余裕があるのか。普通であればこの時間に昼食を摂るだろうけどお腹が空いて無いしな。ご飯は家に帰ってから食べるとして、適当に本を見て回って時間を潰すか。立ち読みでもしていればあっという間だろう。
そうして気になった本を読んでいる内に端末が震えて時間が来た事を教えてくれた。さて、会場に向かいますか。フロアの端にあると言っていたが店自体がかなり広いので今居る所から結構歩かなければいけない。黙々と目的の場所に向けて歩を進めているが、何故か俺の周りの人がついて来ているんだが。全員がサイン会の参加者では無いだろうし、男がこんな所に居るのが珍しくて後をつけてきているのかな?なんて考えているといつの間にか到着した。
入場券を見せてベルトパーテーションで区切られた空間へと入っていく。会場はオープンになっていてパーテーションの外から会場の様子を見られるので、何となく緊張してしまう。会場の周囲には大勢の人達居てこちらを見ているし、参加者の人達も八割程集まっていてギョッとした表情で俺を凝視しているんだから緊張するのも仕方ないよね。まさに針の筵と言った状態で三十分を過ごすのは結構キツイので近くにいる人に話しかけようかとも思ったが止めた。幾ら男が貴重な世界と言っても初対面の人からいきなり声を変えられたら怖いだろう。何か切っ掛けがあれば別だが何にもないからなぁ……。大人しく開始まで待っているのが吉だな。
無になってただ時間が過ぎるのを待っていると、ようやく開始時間となった。司会者の方が前に出て話し始めたが大して気になる情報も無かった為適当に聞き流す。暫く話が続いた後、ついに作家先生が登場した。本人の姿を初めて見たが凄い美人だ。スタイルも良いし胸も服を押し上げるくらい大きい。この世界に来て色々な美人・美少女を見てきたがどのタイプとも違う。エキゾチックな顔立ちとおっとりした雰囲気が絶妙にマッチしていて独特の色気を醸し出している。その美しさに思わず見惚れていると作家先生がチラリとこちらを見た……気がする。一瞬だったので気のせいと言う可能性もあるが、先生の頬が赤くなっているので俺を見ていたという線も捨てられない。
まあ、見ていようがいまいが今は重要ではない。これから先生のお話が始まるのだから。
「この度は新刊の発売に合わせたサイン会にご参加頂き有難うございます。この様な機会を与えられてとても嬉しく思いますし、偏に皆様の応援があってこそだと感じています。これからも――」
お話は十分程続いたが内容が確りと練られていて非常に聞きやすかった。そして何よりも声が良い。透き通るような繊細な声でありながら、耳馴染みが良くスッと入ってくる。何時までも聞いていたいと思わせるが如何せんもう終わってしまったんだよな。残念だが仕方ない。
だが、お次はいよいよメインイベントであるサイン会が始まる。事前に順番が決められていて俺は一番最後となっている。まあ割り込む形で参加したのだからこうなるのも仕方ないだろう。参加者は俺を含めて百一人なので一人当たり二分掛かったとしても俺の順番が来るまで二百分、三時間二十分もかかる事になる。一応椅子も用意されているし、軽食や飲み物も用意されているのである程度は時間を潰せるだろうがそれでも暇だ。取り敢えずは椅子に座ってボケっとしているか。立ちっぱなしも疲れるし。
ただ椅子に座って一時間経った辺りでお腹が減ってきたので用意されている軽食を食べる事にした。何があるのかな?とテーブルに近づいて見てみるとサンドイッチやハンバーガー、おにぎりやおいなりさん、ごま団子や点心など結構バリエーション豊かだ。どれを食べようか悩んでいると隣にいた女性がサンドイッチを手に取ったので思わず声を掛けてしまった。
「あの、サンドイッチの具材って何が入っているか分かりますか?」
「えっ!?……あっ、はい。分かります。タマゴサンド、ツナサンド、ハムサンド、野菜サンド、後はBLTサンドになります」
「成程。因みにお勧めはありますか?」
「野菜サンドがお勧めですが、男性の場合だと少し物足りないかもしれません。なのでBLTサンドはどうでしょうか?ボリュームもありますしお腹も一杯になるかと」
「それじゃあBLTサンドとおにぎり。あとは点心を適当に食べようかな。――いきなり質問したのに親切にお答えいただき有難うございます」
「いえ。私の方こそお力になれたなら幸いです」
いきなり話しかけたのに訝しがる様子もなく質問に答えてくれるとか本当に良い人だな。本当に感謝ですと内心でお礼を言ってからその場を後にする。空いているテーブルを見つけたのでそこに座ったが椅子が五席あるのに座っているのは俺一人。周りの席は結構埋まっていて和気藹々と談笑していたりするのに俺は一人……。寂しい気持ちを掻き消す様にご飯に手を付ける。家で一人でご飯を食べている時は別に何とも思わないのだが、周りに大勢いる中で一人と言うのは存外心にくるものがある。思わずはぁ~と溜息を吐きそうになった時少し離れた所から声を掛けられた。
「あの、御相席させて頂いても宜しいでしょうか?」
「あっ、はい。勿論です」
「有難うございます。では失礼致します」
声を掛けてきたのはさっき俺が話しかけた女性だった。まさかこの短時間でまた会う事になるとは思っていなかったので少し驚いたが、これで一人じゃなくなったし有難い限りだ。そう思っていると斜め前に座った女性が驚いた顔をしてこちらを見ているの気が付く。
「何か気になる事でもありましたか?」
「えっと、凄く沢山お食べになるんだなと思いまして。健啖家なんですね」
「親しい人から良く言われます。でも俺としてはこれくらいが普通の量で、女性達の食べる量が少なすぎると思うんです。すぐにお腹が減るんじゃないかと心配になるくらいですよ」
「この量でも十分に満腹になりますしお腹が減る事は無いですね。もし男性の方と同じ量を食べたら二日は何も食べられないです」
「あはは、確かに俺の食事量だとそうなりそうですね。――っと、話してばかりで食事の邪魔をしてしまっていますね。食べましょうか」
「はい」
そうして改めて食事を始める。恐らくケータリングだと思うがどれも美味しい。パサパサしていたり雑な味付けだったり、冷たくて美味しくなかったりするものだが野菜は瑞々しいし点心も熱々だ。こんな美味しい料理を無料で食べられるとか信じられない。
あっという間に取ってきた料理を食べ終えてしまったが、折角だからもう少し食べよう。甘いデザートもあったからそちらも忘れずに持ってこなければ。
「すみません。お代りを取ってくるので少し席を外します」
「分かりました。お気をつけて」
先程とは違う料理を選び、席に戻る。そこからは女性と雑談をしながら食事を進め、食後のお茶を飲み干しても話は続く。会話のキャッチボールが上手だから話が途切れる事が無いし、楽しく会話できる。そうしてしばらく時間が経ったこと端末で時間を確認すると俺の番まであと少しとなっていた。
「もうそろそろサインの順番が来そうなので行きますね。楽しい時間を過ごす事が出来ました。有難うございます」
「こちらこそ素敵な時間を過ごせました。有難うございます」
お互いにお礼を言ってからその場を立ち去る。いよいよ先生からサインを貰えるのだと思うと緊張してくる。変な所が無いか身嗜みを確認したり、髪型をチェックしているといよいよ俺の番が来た。さあいざ往かん!
「こんにちは。こうして先生とお会いできて光栄です」
「わ、私の方こそ佐藤さんとお会い出来てまるで夢見たいです」
「そう言って貰えてとても嬉しいです。……あれ?」
「どうかしましたか?」
「あまりにも自然で聞き流してしまいましたが自己紹介していませんよね。なんで俺の名前を知っているんですか?」
俺が先生のペンネームを知っているのは本を読んでいるのだから当然だろう。だが何故先生は俺の名前を知っているのだろうか。考えられるのはお店に来た事があるとか、友人知人が俺の仕事の取引先に勤務していてそこから情報が伝わったとかだろう。前者は問題無いが後者の場合はかなり大事になる可能性がある。だからこそこうして本人に聞いてみたのだが果たして返答は如何に。
「実は佐藤さんの非公式ファンクラブに入会していまして、そこで知り合った会員No一桁の人から教えて頂きました」
「あー、成程。そう言う事ですか。納得しました」
「もしご迷惑でしたらすぐに記憶を消します」
「いえ、大丈夫ですよ。応援している作家先生に名前を憶えて貰えるなんてファンにとってはこれ以上なく名誉な事ですから」
「分かりました。――早速ですがサインをしたいので本を貸して貰っても宜しいですか」
「はい。あの、佐藤拓真さんへと書いてもらう事は出来るでしょうか?」
「勿論構いませんよ。頑張って書くので少々お待ち下さい」
そう言ってから本を取りサインペンで書いていく……のだが先生の手が震えている。一発勝負なので最悪ガタガタな文字になってしまうかもと不安な気持ちになるが、一度深呼吸をしてから物凄く真剣な顔でサインと俺の名前を書いていく。まさに一筆入魂と言った感じで一字一字丁寧に綴っていく姿を見ているとこちらも緊張してしまう。
そうして五分ほどかかってようやく書き終えて本を返して貰った。他の人に比べて何十倍も時間が掛かったがそれだけ気持ちが籠っているという事だから嬉しさも一入だ。さて、目的のサインも貰ったしこれで終わりか。大分時間も押しているだろうし、先生ともう少し会話していたかったが我儘を言っても迷惑だろうしさっさと退場するか。そうして踵を返そうとした所で先生から声を掛けられる。
「あの、もしご迷惑でなければ佐藤さんとツーショット写真を撮りたいのですが大丈夫でしょうか?」
「こちらこそ是非お願いしますと言いたい所ですが、男性とツーショット写真を撮ったとなるとスキャンダルになる可能性もあるのでは?もしそうなったら取り返しのつかない事になりますし本当に良いんですか?」
「問題ありません。確かにファンの女性や、世間からは羨ましがられるでしょうし妬み嫉みも買うでしょう。ですがそんな物佐藤さんと一緒に写真を撮れるという奇跡に比べれば心地良いくらいです。なので全く問題無いです」
「そ、そうですか。ではよろしくお願いします」
凄い気迫で言い切った先生に若干気後れしつつも撮影する事にした。先生が端末をマネージャーさんに渡し、横並びになっていざ撮るという段階になって気が付いた。先生が結構距離を空けて並んでいるのだ。これじゃあ画角に入らないんじゃないだろうか?
「あの、そんなに離れていたらカメラに収まらないかもしれないのでもう少し俺の近くに寄った方が良いのではないでしょうか?」
「え!?でも女性が男性に近づいたら不快感を与えてしまうのでは?」
「俺は全くそう言うのは無いので大丈夫です。寧ろ先生の様な綺麗な女性が近くに居て下さればとても幸せな気持ちになります」
「き、綺麗ですか。有難うございます。――それではお言葉に甘えてもう少し近くに寄りますね」
そう言ってから近くに来たがまだ一人分の距離は空いている。一応カメラには収まるだろうが絵面としては寂しい物があるので俺の方から距離を詰めて肩が触れ合うくらいまで近くに寄ってみた。一瞬驚いた表情をした後頬を真っ赤に染める先生は大変可愛らしい。何時までも見ていたい気持ちになるがグッと抑えてマネージャーさんに撮影の合図を送る。ジェスチャーだったがすぐに理解してくれてパシャとシャッター音が響く。上手く取れた様でグッとサムズアップしていたので大丈夫そうだ。
「この度は私の我儘に付き合って頂き有難うございました。今回撮影した写真は家宝にします」
「そこまで大層な物では無いと思いますが、気に入ってもらえたようなら俺も嬉しいです」
「もしこの後にご予定が無ければもう少しお話をしませんか?」
「はい、特に予定も無いのでこちらこそお願いします」
そうして一時間程他の参加者も含めて会話に華を咲かせた。最初はどうなる事かと思ったが全てが良い方向に向かったし、大満足の一日だったな。先生から色々な裏話も聞けたしファンとして興奮しっぱなしだったよ。帰ってからも購入した本を読むという楽しみもあるし、今日と言う一日は生涯俺の記憶に残る事だろう。




