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第四十話

 商談帰りに桜ちゃんと思わぬ出会いを果たした日から幾許かか過ぎた休日。今日はお馴染みの女性陣と桜ちゃんの顔合わせがある。どちらも精神的に成熟しているので喧嘩になったり、言い合いをするという事は無いだろう。というか目の前で女性が喧嘩するとか恐ろしくてその場に居たくないので心の底からそう言った事が無い事を願う。男なら論理的な話し合いをするし、最悪の状況になっても拳で語り合うという分かり易さがある。そして後に引かずにすぐに元通りの関係に戻れる。

 だが女性の場合は直接的な暴力はほぼ皆無だが口喧嘩が半端ない。もうね口撃で相手を殺せるんじゃないかと思う程苛烈で熾烈。相手の些細な欠点を容赦無く突くし、終いにはあまり関係の無い事でも鬼の首を取ったように罵詈雑言を飛ばしてくる。それでいて喧嘩が終わってもネチネチとほじくり返してくるし、一度壊れた関係は余程の事が無い限り修復不可能ときている。男女どちらが良いとは一概には言えないが俺としては後腐れが無い男の喧嘩の方が好ましく思う。

 それを踏まえて今回俺の家に集まるのは五人の女性。女三人寄れば姦しいと言うがこれが五人になればどうなるのか?それぞれ年齢も違うし学生だったり社会人だったりするので正直どうなるか全く分からない。もし雲行きが怪しくなれば躊躇なく間に入るつもりだが、果たして俺に仲裁する事が出来るのだろうかという不安はある。

 そんな思いを抱きつつ、一つ溜息をつこうとした所でインターホンの音が部屋に響く。返事をしながら玄関に行くとお洒落な服装に身を包んだ四人の姿があった。

「こんにちは。どうぞ入って下さい」

「こんにちは。それでは失礼致します」

 挨拶を交わした後リビングへと移動する。その際にチラリとそれぞれの表情を伺ったが特に気負った感じでも無くいつも通りだったので少し安心したよ。緊張していたり、どんな女か見定めてやる!といった具合であれば俺も身構える所だが至って普通だ。

 これなら問題ないかな?と思いつつリビングに入ると各々がいつの間にか定位置となっている席へと座る。雪音さんだけはキッチンへと移動しているのでお茶を淹れてくれるのだろう。それぞれが椅子に座り一息ついた所でお盆に飲み物を載せて雪音さんが戻ってくる。

「お待たせ致しました。拓真さんはコーヒーで良かったですよね?」

「はい。有難うございます」

 俺に飲み物を渡した後菫さんや小百合さん、千歳さんにも紅茶や緑茶を渡していく。――一連の行動はあまりにも自然で一切の違和感が無いがここは俺の家である。もうね、四人とも自分の家の様にどこに何があるかを把握しているし多分俺よりも家の事を知っていると思う。探し物が見つからないときは誰かに聞けば確実に所在が判明するし、何か困った事があれば彼女達に頼る事になるが大抵の事はすぐに解決してしまう。正直完璧超人過ぎるし、どうやって家の中の事を全て把握できているのか気になる。

 コーヒーを飲みながら考えていると再びインターホンの音が鳴り響く。さっきと同じく返事をしながら玄関へ行くと桜ちゃんが立っていた。初めて見る私服姿だがパンプスに黒ストッキング、制服と同じくらい短いスカートでトップスは薄手のセーターの上にジャケットを羽織っている。清楚でありながらも十代らしい若さが感じられるファッションと言えるだろう。

 そんな彼女を見つつ挨拶を交わす。

「こんにちは。ようこそ我が家へ」

「こんにちは。本日はよろしくお願い致します。――もう皆様はお集まりでしょうか?」

「ついさっき来たばかりだよ。っと、立ち話もなんだし中に入って」

「はい。失礼します」

 桜ちゃんを連れてリビングに戻ると四人の視線が一斉にこちらに向けられた。思わずたじろぎそうになるが腹に力を込めて気合を入れる。

「えーと、桜ちゃんはそこの席に座ってね。俺は飲み物を用意してくるよ。何かリクエストはある?」

「では、紅茶でお願いします」

「分かりました。ちょっと待ってて下さいね」

 すぐに用意して桜ちゃんにコップを渡し、俺も席に着く。ここまで四人は無言を貫いていてちょっと怖いが頑張ろう。

「まずは自己紹介から始めましょうか。俺は佐藤拓真です。バーテンダーをしています」

「静川雪音です。医者をしていますが、今は拓真さんの専属医です」

「倉敷菫です。軍警察に勤務しています。所属は特別警護対象保護課で主に拓真さんの警護や護衛をしています」

「九条小百合です。大学生ですが半年前から拓真さんのお店で働いています」

「清川千歳です。小百合さんと同じく半年前から拓真さんのお店で働いている社会人です」

「初めまして。久慈宮桜と申します。高校生で、この度ご縁があり拓真さんのお店でお手伝いさせて頂くことになりました。どうぞよろしくお願い致します」

 簡潔だが要点を押さえたそれぞれの自己紹介が一通り終わる。桜ちゃんの挨拶で今回の本題であるお店のお手伝いの話が出たので俺の方からも説明しておこう。

「今回皆さんに集まってもらったのは久慈宮桜さんをお店のお手伝いと言う形で俺の仕事を手伝ってもらう事になりました。時間は夕方から大体十八時前位までです。毎日来るという訳では無く、桜ちゃんの時間の都合が良い時に来て貰う感じですね。後はお手伝いと言う形ですが給料もお支払いします」

「そういう条件であれば未成年でも問題無いですね。……ですが学校や親御さんがbarでお手伝いとは言え働くことに難色を示しそうではありますが、その辺りはクリアされているんですか?」

 菫さんの言った事は当然疑問に思う事だろう。学校か親のどちらかに反対されればその時点で俺がどうこう言える話ではなくなるし、その時点で全て無かった事になるんだから。

「その点に関しては事前に桜ちゃんに聞いて確認を取ってもらっています。結果としてはOKという事でした」

「であれば何の問題もありませんね。――確認した所彼女の素性も確りとしていますし、問題を起こすような人柄でも無いようですから安心です」

 菫さんの職業を考えると徹底的に桜ちゃんの事を調べていて当然だろう。もし経歴や本人に問題有りとなれば即座に排除されるだろうし、こうして家まで来ている時点で安全は保障されている。とは言え菫さん以外の人は桜ちゃんの事を何も知らない訳で少し説明しておく必要があるなと口を開きかけた所で小百合さんが疑問を口にする。

「……久慈宮と仰いましたがもしかして久慈宮財閥の御息女でしょうか?」

「はい、母が久慈宮財閥のトップを務めています。とはいえ私はまだ学生ですし偉くも無いので普通に接して頂ければ幸いです」

「成程。あの久慈宮財閥の……。であれば拓真さんのお傍に居ても大丈夫ですね」

「そうですね。小百合さんの言う通り少なくとも拓真さんにご迷惑をお掛けするような人柄では無さそうですし、実家も確かなので安心できます」

「もしどこの馬の骨とも分からない人であれば今回の件について反対しようと思っていましたが、大丈夫そうで良かったです」

 小百合さんの言葉に続いて千歳さん、雪音さんも問題無しとの判断を下したようだ。一概には言えないが労働者階級や中流階級の人達はそこそこの教育と、生活していけるだけの仕事を持っているが何かの拍子にセーフティーネットまで転げ落ちる可能性を秘めている。また、犯罪行為をして捕まる人の大半がこの階級の人と言う統計もある。

 では上流階級ではどうかと言えば行き届いた教育と、幼い事から徹底的に様々な事を身に付けさせられるので他の階級とはまるで違う人間性や価値観を持つ事になる。富や権力も相応にあり、犯罪を犯す可能性はごく僅かだろう。

 以上の点を踏まえて男性が貴重な世界で異質を放っている俺が経営する店で働くには何よりも安全が最も重要になる。その点桜ちゃんは上流階級のトップ層にいる家柄だし彼女達も安心だろう。というか皆の家柄を考えると何かの催しものとかで会ったり、話したりしたことがありそうだが雰囲気的に初対面っぽいんだよな。少し気になるし聞いてみようかな。

「小百合さんとか千歳さんは家柄的に桜ちゃんとパーティーで話した事があると思っていたんですが初対面だったんですね」

「はい。そう言った催し物は数百人単位が参加しますし、派閥等がありますからどうしてもお会いしたり話したりする人は限られてしまうんです。久慈宮財閥が所属している派閥と私や千歳さんの実家が所属している派閥は違いますから会う機会はありませんでした」

「あー、やっぱりそう言うのがあるんだ。俺なんかには縁遠い世界だな。一般市民として興味はあるけど誰だコイツ?みたいな目で見られそうでちょっと怖いかも」

「絶対にその様な事は起こり得ません。その様な態度を取った時点で他の参加者からの印象は最悪ですし、誰も相手にしなくなるでしょう。――拓真さんの様な男性がもしパーティーにいらっしゃったらどのようにお近づきになるか必死に考えると思いますよ」

「そうなんですか?上流階級の人達であれば一回か二回は男性と会話したり会った事があると思うのですが違うのでしょうか?」

「確かにそういう機会に巡り合う可能性は高いですが、ほとんどの人は見た事も無い、話した事も無いと思います。仮に男性と話した事があったとしても一言二言で終わりでしょう。物凄い嫌な態度を取られたり、暴言を吐かれたりというおまけ付きですが」

 小百合さんの最後の言葉には色々な意味が含まれている。自身が子供の頃に男の子から笑った際に見える八重歯が吸血鬼みたいと言われてトラウマになったという経緯がある。その事を思い出してしまったのだろう。

 今では大分改善してマスクをする事は殆ど無くなったし、良く笑顔を見せてくれるようになったが心の傷が完全に癒えるにはまだまだ時間が掛かるという事か。少しでも良くなるようにこれからも頑張っていかないとな。何時の日か誰に対しても心の底から笑顔を浮かべられるように。

 決意を新たにした所で冷めたコーヒーを口に含む。苦みと酸味が増して風味も落ちてしまったがそれでも美味しく感じるのは淹れてくれた雪音さんの腕がいいからだろう。コクコクと半分ほど飲んだ所でなんとなく周りを見回してみる。流石に六人もいるとかなり窮屈に感じるな。元々この部屋は一人暮らし用として設計されているから当然なんだが、この面子で集まる事もこの先多くなるだろうしもっと広い家に引っ越しを考えた方がいいのだろうか?というか男性が一人で暮らせる物件って存在するのか?確か雪音さんと菫さんは独り暮らしだったしそこら辺について知っているかもしれないな。

「すみません。雪音さんと菫さんに質問なのですが、男性が一人で暮らせる様な物件ってあるのでしょうか?」

「私もそこまで不動産に詳しいわけではありませんが、そう言った物件は見た事がありません」

「私も雪音と同じく見た事が無いです。基本的に男性は実家で生涯を過ごしますし、結婚していたとしてもそれは同じです。なので男性が一人暮らしをするという事はほぼ皆無なのでそう言った部屋は無いかと思います」

「そうですか。じゃあ男性用ではなく一般的な物件であれば俺でも借りられるという事ですね」

 俺の言葉にこの場に居る全員が驚いた表情をする。何か変な事を言っただろうか?HPに載っている良さそうな所があれば内見してみようかなと考えていたんだがマズかっただろうか?そんな俺の疑問に答える様に雪音さんが真剣な表情で話しかけてきた。

「結論から言えば拓真さんでもお部屋を借りることは出来ます。……が、男性が入居したという事は瞬く間に住人や近隣に伝わりますし、襲うというような直接的な行動には早々には出ないと思いますがゴミを漁られたり、待ち伏せされたりと言った事は確実に起こります」

「雪音が言った事だけでなくお裾分けと称して頻繁に手作り料理を届けに来たり、拓真さんの行動を監視したりもするでしょう。マンションに住む拓真さんを除くすべての人が女性ですから、その……間違いなく夜のオカズにされてしまいます」

 雪音さんが言っていたゴミ漁りとか待ち伏せはかなり怖いな。犯罪では無いので取り締まりも出来ないし、かと言って我慢するというのも精神的にかなり辛いものがある。次いで菫さんが行ったお裾分けについては普通に作ったのであれば有難く受け取るだろう。だが、体毛や体液を混入されたりする可能性があるんだよな……。そしてそれを確かめる手段も無い以上破棄せざるを得ないというね。最後に夜のオカズにされるというのは全く問題無い。この世界の女性は美女・可愛い人ばかりなのでそういう人達が俺をネタにオナニーしているとか興奮するじゃないか。そういう姿を想像して俺もオカズにするという永久機関擬きを完成させられる。と言う感じで最後以外は無理と言う結論になる。

「確かにそれは怖いですね。どれだけセキュリティが万全だろうとも同じ住人が相手であれば何の意味も無いですし。――となればどこかに土地を買って家を建てるというのが一番安全なのでしょうが、結婚しているならまだしも独身で一軒家は手に余りますよね。こりゃ引っ越すのはもう少し先になりそうだな」

 一軒家というのは兎角金が掛かる。土地代や建築費だけでなく修繕費や税金、保険に定期点検や設備更新などでお金が飛んでいく。更には掃除も大変だし、空き部屋も出るだろう。余程の理由が無い限りは一人で住むには無駄があまりにも多すぎる。だからこそこの案は却下した訳だが。

 内心で現状維持が最適解かと思いつつ、下げていた視線を上げるとどこかソワソワしている五人の姿が目に入る。今の話の流れで別段変な所は無かったはずだが何か引っかかる事でもあったのだろうか?そんな風に内心で思っていると目の前に座る雪音さんが話しかけてくる。

「あの、一軒家に引っ越すのはもう少し先になると仰っていましたが、それは誰かと結婚するご予定があるという事ですか?」

「えっ?……あっ、すみません。それは言葉の綾でまだ誰かと結婚するとかは考えていません。とは言え俺もいい年ですし早く彼女を作って、結婚したいなとは思いますけど」

「拓真さんは良いなと思う女性や、気になる女性は今の所いらっしゃらないのでしょうか?」

「別に隠す事でも無いので正直に言いますが、気になる女性は居ます」

「因みにそれはお一人でしょうか?それとも複数人でしょうか?」

「複数人ですね。幾らこの世界が一夫多妻制とは言え我ながら節操が無いなと思いますが……」

 未だに交際相手や結婚相手は一人と言うのが抜けきらない。それでも大分考え方や価値観は変化しているとは思うが、中々に難しい。――そして今の会話で勘の良い人は気付いたかもしれないが、俺が気になっているのはこの場に居る面々だ。桜ちゃんに関してはまだ付き合いが浅いのでハッキリと好きと言う感情は認識できないけど他の人達には確実に好意を持っている。じゃあさっさと告白しろと言う話だが、まだ覚悟が出来ていないんだ。何人もの女性と付き合うだけの甲斐性が俺にあるのか?とか相手の人生に責任が取れるのか?等色々と考えてしまって躊躇してしまっている部分もあるのは確かだ。でもそう遠くない内に告白をしようと思う。桜ちゃんを除く四人の好意は痛い程伝わっているのだから何時までも引き延ばすのは誠実さに欠けるからな。

 心の中でそういう風に考えていたが、あまりにも静かな事に気が付いた。部屋には呼吸音のみが響きそれ以外の音が一切無い。どうしたのだろうかと女性達に視線を向けると何やら真剣な顔で思案しているようだ。頭の良い人達だから先程の会話で全てを理解したのだろう。でもハッキリと誰々が好きですとは言っていないのでもしかしたら自分じゃない可能性があると思っているのだろう。

 ここで俺から何か言うのも変だし大人しくしておこう。

 ――そうして暫く経った頃に五人揃ってお待たせして申し訳ありませんと謝ってきたので、気にしないで下さいと返す。だが何となく雰囲気が硬くなっているので空気を変える為に適当な話を振ってみる。

「もう十七時なんですね。皆さんにこの後の予定が入っていなければ一緒に晩御飯でもどうですか?」

「「「「「是非ご一緒させて下さい」」」」」

「それじゃあ決定ですね」

 皆いい笑顔を浮かべているし、作戦は成功だ。時間的にも今から作れば余程凝った料理を作らない限り十分に余裕はあるし大丈夫だろう。後は何を作るかだな。普段は彼女達にご飯を作ってもらっているので冷蔵庫に何があるか全く分からない。こういう時は聞いてみるのが一番だ。

「食材は冷蔵庫にある物で足りそうですか?もし足りないならスーパーに買いに行きますが」

「昨日確認した限りではお肉もお野菜も少し足りませんね。他の食材でかさ増しすれば作れない事も無いですが、その様な物を拓真さんのお口に入れるわけにはいきませんので買いに行きましょう」

「分かりました」

 千歳さんが淀みなく答えてくれたが、二日に一度くらいの頻度で食材を補充してくれているし、何より一人分しか作らないのだから食材が足りないのは当然か。

「それじゃあ後でスーパーに行くとして、何か食べたい物はありますか?」

「特にこれといった物はありません。拓真さんは何かリクエスト等はないですか?」

「んー……今の時期だと鍋とかどうでしょうか?寄せ鍋とか水炊き、後はすき焼きとか美味しそうです」

「お鍋でしたらお野菜も沢山取れますし、栄養バランスも良いので確かに良い案ですね。――では寄せ鍋にしましょうか」

「賛成です。いやー、鍋って基本的に一人では食べないのでこういう機会が出来て良かったです」

 菫さんからもお墨付きを貰い今日の晩御飯は寄せ鍋に決まった。先程一人では鍋物を食べないと言ったが、聞いた話では一人鍋なるものが存在するらしい。なんとなく鍋=大勢で食べるものと言う認識がある為一人鍋とか物凄く寂しく感じられる。孤独感が凄まじいし、虚しくて無意識の内に涙が零れそうだよ。うーん、少し考えただけで精神的ダメージがくるな。これ以上は考えるのは止めよう。

「皆さんは鍋とか結構食べますか?」

「一人暮らしなので滅多に食べる事は無いですね」

「私も雪音と同じです」

「お料理する時間があまり取れないときにお手軽に作れるので偶に作ります」

「私はお母様と一緒に割とよく食べますね」

「我が家は鍋料理は大勢の人が集まる時に作るくらいです」

「私の家も千歳さんと同じです」

 雪音さん、菫さん、小百合さん、千歳さん、桜ちゃんの順で答えてくれたが一人暮らし組は基本的には作る事はほぼ無い。実家暮らし組はそれぞれと言った所か。まあ順当な結果と言えるだろう。

 雪音さんと菫さんにとっては久し振りの鍋料理になる訳だし少し贅沢な食材を買ってもいいかもな。俺が何時も行くスーパーには高級食材も多く揃えられているので良い感じに買えるだろう。

 さてと、そろそろいい時間だし買い物に行くかな。

「それじゃあ、スーパーに行きましょうか。――あっ、事前にご飯を炊いておいた方が良いですか?」

「そうですね。炊けるまでに時間が掛かりますし、そうしましょう。私が準備をしますので拓真さんはお出かけのご用意をお願いします」

「分かりました。よろしくお願いします」

 菫さんが当たり前の様に言ってくれたので、お言葉甘えて外出の準備をしよう。と言ってもコートを羽織って、エコバックを用意するだけなんだけどね。基本的に電子決済だから財布は必要無いし本当に楽なもんだよ。だが女性達はそうでは無いようで手鏡を使って髪を整えたり、メイクが崩れていないかを確認したり、コートやジャケットに皺が無いか等色々とやっている。こういう所が男女の違いなんだろうなと思いつつも、暫し待つ事に。

 そうして十分くらいした所で全員揃って外へと出る。今夜は桜ちゃんも交えての初めての食事だからすごく楽しみだ。はぁ~と吐き出した息が白く染まり空へと昇っていくのを見ながらそんな事を思うのだった。

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