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第三十九話

 お店を経営していると様々な問題に直面する。例えば資金繰りだったり、お客様に関する事だったり様々だが今回は完全に俺の与り知らぬところで起きた出来事だったので、最初に話を聞いた時は物凄く驚いた。

 というのも取引先の酒販店から珍しいお酒が入荷したので是非見に来て下さいと言われたのが始まりだ。事前に資料を貰ったので目を通した所俺が居た世界には無かった種類のお酒でかなり特徴的な製法で作られていた。また、流通量が凄く少なくて生産地域で流通しているくらいで他国に出回る事はほぼ無いらしい。非常に希少性が高く、値段も一般的な同種のお酒の二倍はする。

 そんな普通であればお目に掛れないお酒を入荷できたのは流石という他無いし、他の取引先より先に俺に声を掛けてくれたのは本当に僥倖と言えるだろう。最初に話を貰った時は思わずウチで本当に良いんですか?と聞いたくらいだ。そういう経緯を経て今回商談の場を設けさせて貰った訳だ。一応取引は順調に進み無事契約締結出来たんだけどその話し合いの中でどうやって貴重なお酒を手に入れられたのか?という話になって色々聞いてみたらちょっとキナ臭い内容だったんだ。

 結構長かったので要点を纏めるとこんな感じになる。

 過去に何度か酒造会社に取引を持ち掛けたが全て素気無く断られてしまった。だが、半月ほど間にいきなり酒造会社の方から連絡が来て是非私どものお酒を扱って欲しいと言ってきたそうだ。しかも俺のお店に卸せるよう配慮して欲しいという条件付きで。流石に怪しいと思ったのか軍警察に連絡した所すぐに背後関係を洗ったみたいで、その結果日本王国の友好国であるアルメカ国が関与している事が判明した訳だ。アルメカ国は俺が男性でありながらお店を経営しており、お客様である女性達とも友好的に接している事が分かっていてその上で何とかして自国に興味関心を抱いて欲しいという思惑から今回の話になったらしい。

 珍しいお酒を購入するだけだと思っていたのにまさか国が絡んでいるとは思わなかったし、まさかこんな手段を取るとは誰が予想出来るだろうか。まさに青天の霹靂と言える出来事だったが悪意がある訳でもないし俺の方にデメリットが生じる話でも無いので契約したんだけどさ。何となく今後も似たような事が起こりそうではあるが、悪いようにはならないだろう。たぶん、きっと、おそらく。

 適当に未来の自分に問題を丸投げした所で思考を切り上げてふぅ、と一息つく。商談を終えて今は帰路に着いているが時間が十六時前なので駅前にはスーツ姿の人は少なく代わりに制服に身を包んだ学生が目に付く。時間的に丁度学校帰りだろうし、これから遊びに行ったりするんだろうな。俺は一仕事終えて、更にお店に帰ってから深夜まで仕事だよと悲しい気持ちになりつつトボトボと駅構内を歩いていると少し離れた所に見覚えのある人を見つけた。ここで声を掛けずに帰るのは流石に他人行儀かなと思い軽く挨拶だけでもしようと彼女の方へと歩いて行く。

「桜ちゃん、こんにちは」

「えっ?あっ、拓真さん。こんにちは」

「見た所学校帰りかな?」

「はい、そうです。拓真さんは……お仕事ですか?」

「うん。取引先との商談帰りなんだ」

「そうなんですね。――拓真さんはこの後何か予定はありますか?」

「ううん、無いよ。お店に戻って時間になるまでボケッとして過ごすくらい」

「ふふっ、そうですか。もしよろしければどこかでお茶でもしませんか?」

「良いですよ。じゃあ駅構内にカフェがないか探してみますね」

「私も探してみます」

 二人で端末を使い今いる場所の近くにお店が無いか探してみたが結果は一軒も無し。変わりと言っては何だがファストフード店は数店舗あった。

「カフェは無かったけどファストフード店は結構ありますね。俺はそういうお店でも大丈夫ですが桜ちゃんはどうですか?もしカフェが良いなら少し遠い場所にあるけどそこに行きますか?」

「いえ、ファストフード店で構いません。偶にですがお友達と利用する事もありますので」

「そうなんだ。てっきりそういうお店には行かないと思っていたよ。勝手なイメージで申し訳ないけど名門お嬢様学校に通う人って庶民が利用するようなお店には興味関心が無いんだろうなと考えていました」

「親が厳しい子はそうですね。ゲームセンターやカラオケ等も禁止されていたりします。でもそういう子は少数で大体の人は普通の女子高生と変わりありませんよ」

「成程。桜ちゃんの親御さんはそこ辺りは寛容なタイプなんだね」

「はい。何かを禁止されたり、常に口うるさく言ってくる感じでは無いですね」

「そっか。――何時までも立ち話もなんだしお店に行こうか」

「そうですね。では行きましょう」

 二人で連れ立って目的のお店へと歩いて行く。現在地から一番近いファストフード店は全国展開している誰でも知っている有名店だ。お求めやすい価格と圧倒的な提供スピードが売りでどちらかと言えば社会人よりも学生が多く利用する店となっている。

 そんな事を考えながら歩いているとあっという間に目的地に着いてしまった。軽く店内を除いてみると学校帰りと思しき学生さんで結構混雑している。これは最悪席に座れないかもしれないと思いつつ入店して列に並ぶ。――そこまでは良かったんだけど何故か無言で並んでいた人達が左右に分かれてカウンターまでの道が出来ているんだが……。入店と同時に騒がしかった店内がシンと静まり返り、更には今の状況だ。俺は十戒のモーゼじゃないんだけどまさに今目の前でそれが再現されているというある意味奇跡が起きている。

 はぁ、現実逃避は止めにしてこの状況を何とかしなければ。

「あの、俺達の事は気にしなくていいですよ。並んでいらっしゃるのに割り込むみたいな事はしたくないので」

 そう言うと左右に分かれていた人達が元の位置に戻っていく。そもそもファストフード店なんて回転率が高いから結構並んでいてもすぐに順番が回ってくるから苦では無いし気にしなくても良いんだけどそうはいかないんだろうな。こういう事態にはある程度慣れてはいるが制服を着た学生さんにやられると物凄い罪悪感が湧いてくる。取り敢えずは自分の番になるまで大人しくしているのが吉だな。

 そうして待っていると五分くらいで順番が回ってきたので俺はコーヒーとチーズバーガーを注文した。桜ちゃんはシェイクとSサイズのポテトを注文していたが一分もかからずに品物がトレイに乗って渡されたのには少し驚いたよ。なんにせよ後は席の確保だけになった訳だが一階は満席。階段を登り二階に行くと奥の方に空席があったのでそこに座ることにしよう。

「よっこいしょっと。……ってオジサン臭いな」

「いえ、その様な事はありませんよ。私も思わず言ってしまう事がありますし」

「そうなんですか?じゃあ仲間ですね」

「ふふっ、はい」

 座る時やお風呂に入った時に無意識的に声が出てしまう事があるけど、世代問わずに起きる現象だったんだな。ビールを飲んだ時にぷはぁ~と言ってしまうのは流石にオッサン丸出しだと思うけど座る時によっこいしょと言ったり、お風呂に入った時にはぁ~と言うのはギリギリセーフだろう。多分……。

 オッサン臭い行動についてつい考えてしまったが余りにも下らないしさっさと思考を切り上げよう。というかハンバーガーやポテトが冷めてしまう前に食べないと。

「それじゃあ、冷める前に食べますか。いただきます」

「いただきます」

「んっ、何と言うかジャンクフード感が物凄いな。この身体に悪い感じがなんとも」

「拓真さんはあまりこういった物は食べないのですか?」

「そうですね。この世界に来る前は週一回くらいの頻度で食べていたんですが、今は全く食べないですね。毎日美味しいご飯を作ってもらっていますし、わざわざ食べようとは思わないです」

「……拓真さんは確か一人暮らしでしたよね?」

「そうですよ」

「という事はお食事を誰かに作ってもらっているんですか?それも毎日」

 おっと、何か風向きが変わったぞ。桜ちゃんの言葉に圧が籠っているし、心なしか目のハイライトが消えている様な気がする。何となくだがここで返答を誤れば惨事に見舞われそうなそんな予感がするんだよな。誤魔化すのは悪手、オブラートに包んで答えるべきか正直に言うべきか……。

 これから先の事も考えると正直に伝えるべきだろう。下手に隠し立てして後で判明するというのは気持ちのいいものでは無いし、誠実さに欠ける行いだ。よし、言うぞ。

「お店の従業員の九条さんと清川さん、それと仲の良い友人である静川さんと倉敷さんが厚意でご飯を作ってくれているんです。一人だとどうしても適当に食事を済ませてしまうので、それを見かねて提案してくれたんですよ」

「成程。そう言う事だったんですね。男性に手料理を食べて貰えるなんて凄く羨ましいですし、少し妬いてしまいます」

「俺としても凄く助かっているからwin-winだと思いますよ。――因みに桜ちゃんは料理はしますか?」

「朝ご飯かお夕飯のどちらかを私が作る事になっているのでお料理は毎日しています」

「そうなんだ。それだと腕前もかなりものなのでは?」

「基本的な和洋中の料理は全て作ることが出来ます。ですが、手の込んだ物は勉強中なので腕前としてはまだまだですね」

「いやいや、その年でそこまで出来るなんて立派だよ。俺なんて野菜炒めとかニラ玉とかしか作らないし本当に凄いと思うよ」

 男の人でも手の込んだ料理を作る人も居るだろうし、そもそも料理人は圧倒的に男性が多いからな。それを考えると俺の場合は簡単で味はそこそこな料理を作ったら満足してしまうから何時まで経っても料理スキルが向上しないんだろう。それに一人分の材料を用意して態々作るというのは存外手間がかかるというのも理由としてはある。前の世界の話になるが高校生時代に調理実習があったんだけどその際男共は簡単な作業でも手間取ったり失敗していたな。女子は結構手際よく料理していたが今話を聞いた桜ちゃんと比較すると雲泥の差だ。これは単純にこの世界の女性は料理が出来て当たり前で、その上でどれだけ男性の好みに合わせられるか、またその人に合った栄養バランスを考えて料理を作れるかが重要と言う考え方が魂に刻み込まれているからだ。基礎となる土台も違えば経験も圧倒的に違うのだから大きな差が生まれるのは当然なのだろう。

 ……しかし女子高生の手料理か。人によっては大金を払ってでも食べたいという人がいるのかもな。俺も頼めば美少女女子高生の手作りご飯を作ってもらえないだろうか?――さりげなく聞いてみよう。

「因みに桜ちゃんの得意料理は何ですか?」

「強いて言うなら和食全般が得意です。出汁を丁寧に取ったお味噌汁や、下拵えを確りとした上で炭火で焼いたお魚などはお母様からも好評を頂いております」

「うぅ、話を聞いているだけで涎が出てきそう。炭火焼の魚とか絶対に美味しいし、白いご飯と一緒に食べたいな。あー、でも家にあるのは遠赤外線のグリルだしベランダも無いから炭火は無理か」

「最近のグリルは高性能ですし、機器によっては炭火よりも美味しくなるんですよ」

「そうなんですか?初耳です。――うーん、話していたら桜ちゃんが作る料理を食べたくなってきた」

「そう言って頂けてとても嬉しいですが、私が拓真さんにお料理を作るとなると仲の良い女性達が黙っていないのでは?」

「それは大丈夫だと思うよ。それくらいで機嫌が悪くなるような性格じゃないし、桜ちゃんもこれからお店の手伝いをしてくれるんだから知らない人じゃないしね。ただそうだね。一度皆と顔合わせをしておいた方が後々の事も考えると良いかもしれないね」

「そうして頂けると私としても助かります。お店でばったり出会ってお互いにこの人誰?となるのは出来れば避けたいので」

「うん、分かった。それじゃあ皆に予定を聞いてみるね」

「はい、お願いします」

「あれ?そう言えば桜ちゃんと連絡先を交換していたっけか?」

「いえ、まだです。お店の番号は知っていますが拓真さん個人の連絡先は知りません」

「そっか。それじゃあ交換しようか」

 端末を操作して連絡先を交換する。改めて連絡帳を確認すると登録されているのは十人ちょっとしかいない……。凄く寂しいがお客様にプライベートな番号を教えるわけにはいかないし、かと言ってちょっと知り合ったくらいの人に連絡先交換をしようと言う勇気もない。というか菫さん辺りに誰彼構わずに男性の番号を教えるのは絶対にしないで下さい!と怒られるだろう。頬を膨らませてプンプンしている姿が目に浮かぶよ。どうしてもここら辺の感覚の違いに未だに慣れない所がある。二十数年かけて培ってきた価値観や常識と言うのはちょっとやそっとでは変わらないという事か。下手したら一生変化する事が無いのかもしないな。でもそうなれば物凄く苦労するだろうから出来れば少しづつでも変わっていけたらなと思う。

 なんて事をチーズバーガーを食べながら考えていたが、気が付けば完食していた。口の中に残る油っぽさと強い塩気を洗い流す様にコーヒーを一口飲む。うん、安いインスタントコーヒーだな。値段相応と言えばそこまでだが二百円もするんだからもう少し頑張って欲しい。そんな思いが顔に出ていたのか桜ちゃんが気遣わしげに俺に声を掛けてくる。

「大丈夫ですか?」

「うん、大丈夫だよ。ちょっとこのコーヒーが予想より美味しくなかったからさ」

「私はあまりコーヒーは飲まないのですがやはり味は良くないのですね」

「だね。まあ、こういう所で飲む人は少ないだろうしどうしてもコスト削減に走るのは仕方ないのかもね。社会人ならカフェかコーヒーショップに行くだろうし」

「そうですね。――私は普段カフェで甘いジュースばかり頼んでいるのですが、拓真さんから見たら子供っぽいですよね?」

「いや、そんなことは無いよ。好きな物を頼んで良いし、ジュースを飲んでいるから子供でカプチーノとか紅茶を飲んでいるから大人という事では無いからね。俺だって炭酸飲料とかよく飲んでいるし」

「そう言って頂けて少しホッとしました。でも少しずつ苦い飲み物にも慣れていきたいです。何時までも子供っぽいのは恥ずかしいので」

「好みもあるし無理に飲まなくても良いと思うけど、年齢を重ねると味覚も変わるからその時に美味しいと思ったら飲み続ければ良いんじゃないかな」

 子供の頃や若い頃は苦手な食べ物が年を取ると美味しく感じて好物になるなんてよくある話だ。かく言う俺も漬物や塩辛がどうしても食べられなくて大人はこんな不味い物をよく食べられるなと思っていたが今ではどちらも好きだ。結局は味覚なんて様々な要因で変化していくものなんだから無理して飲み食いする必要は無いし、ましてや子供に無理やり食べさせるなんて事は絶対にしてはいけない。あれって人によってはトラウマになるからね。駄目、絶対。

 あまり美味しくないコーヒーを飲みつつ思考を打ち切る。ふぅ、と一息ついた所で周囲を見渡してみるとチラチラと周囲のお客さんがこちらを見ているのに気が付いた。

「やっぱりこの時間帯だと学生さんが多いですね」

「そうですね。丁度今いる駅が近隣の学校への交通ハブになってるので朝とか学生でごった返していますよ。余程早くに家を出ないと席に座れないくらいです」

「電車通学だとそうなるのか。俺の場合店舗兼自宅で仕事をしているから通勤時間ゼロだけど普通の社会人や学生さんは毎日地獄の様な通勤、通学をしているんだよね」

「席に座れた日は一日気分良く過ごせるくらい大変です。男性の同伴者が居れば男性専用車両に移れるのですが夢のまた夢ですね」

「んっ?男性専用車両ってなんですか?この世界の男性は基本的に家に引き篭もっていて滅多に外に出ないはずだからそう言った専用車両は不要なのでは?」

「えーっと……拓真さんの仰る通りなのですが万が一男性が外出した際に電車に乗っているのが女性ばかりでは問題が起きるので、例え誰も使わなくても用意しておく必要があるんです。法律でも使用の有無に関わらず男性用を作らなければいけないと明記されていますね」

「いや、ちょっと待って。流石にそれは……」

 例えばトイレや公共浴場などの場合は確実に男性用が必要になる。これは当たり前だし男女共に異論は無いだろう。だが誰も使用者がいないのに万が一の可能性を考慮して態々男性用の車両を用意するとか無意味すぎるだろ。ランニングコストも嵩むし、乗客だって一両分乗せられないんだから損失は割と馬鹿にできない程大きくなる。本当に無駄の極致だよ。

「拓真さんが仰りたい事は分かりますが、この様な対処は女性の自衛の為でもあります。もし女性が不意に男性と接触して相手がセクハラされたと言えばその時点で女性が逮捕されます。ほぼ確実に実刑が課されますし、社会的にも終わりを迎えるでしょう。そう言った事態を避ける為にもこういう対処は必要なのです」

「成程。冤罪を防ぐために必要な措置でもある訳ですか。しかし女性に触れられただけでセクハラになるとか今でも信じられません。正直俺なら女性にそんな事をされたら嬉しくて幸せな気分になっちゃいますよ。電車で込み合っている時に隣にいる女性の胸が当たったり、脚が当たったりしたら二日はハッピーな状態になりますね」

「それは拓真さんだからこその意見ですね。世の女性が今仰ったことを聞いたら嬉々として身体を押し付けてきますよ」

「でも男がそんな事を思っているとか気持ち悪くありませんか?近づいたら変な事をされそうとか、下種な事を考えているとか最低とか色々とあると思うのですが」

「全くその様な事はありません。男性と触れ合えるなんてとても嬉しい事ですし、嫌な感情は湧いてこないです。逆に自分の身体なんかに触れてしまって男性の方は不快では無いかと心配になりますね」

「そっか。それじゃあ必要以上に気にする事はないのかな?」

「はい」

 前の世界ではセクハラと言えば男性が女性にするものと言う認識が強かったが、この世界では逆になるんだよな。美少女や美女にボディタッチされて嫌がる男は極少数だろうが皆無ではない。そういう人にとっては地獄に感じるだろう。でも、一度想像してみて欲しい。天使の様な清楚可憐でおっぱいも大きく、更には完璧と言えるスタイルを持ち性格も非の打ち所がない女の子が頬を赤らめながら腕とか触ってくる様を。どうだろうか?これでもボディタッチは嫌だと言えるかな?

 俺は喜んで受け入れるし、寧ろもっとしてくれと懇願するだろう。そしてそれが妄想では無く現実で、電車に乗れば実現されるとあれば控えめに言って最高。今日はタクシーでは無く電車で帰ろうかなと一瞬考えたが後で女性陣から怒られそうなので止めておこう。

 ――美少女のおっぱいが俺を呼んでいるが心を鬼にして振り払う。これから仕事が待っているんだし馬鹿な事を考えるのは止めだ。ふぅ。なんとか煩悩を振り払った所で端末で時間を確認すると十七時に差し掛かろうかと言う所だった。時間的にそろそろ帰らないとマズいな。

「桜ちゃん。そろそろいい時間だし帰りましょうか」

「分かりました。……なんだかんだで一時間ばかりお話をしていたんですね。あっという間で気が付きませんでした」

「楽しい時間は過ぎるのが早く感じるよね。俺としてももう少しお話していたいけど仕事もあるから」

「そうですよね。それでは行きましょう」

 二人揃ってファストフード店を出て改札前で挨拶をしてから別れる。まさか商談帰りに桜ちゃんと会えるとは思わなかったが、こうして楽しくお話し出来てなによりだ。

 ――さて、今日も一日仕事を頑張りますか。

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