第三十七話
毎日変わらない生活を続けていると退屈に感じる事がある。何か刺激的な出来事がないかなとか新しい出会いが訪れないかなとかを考えてしまう。同じことの繰り返しと言うのはとてもつまらないし、暇を持て余すと人間は駄目になってしまうし精神衛生上よくないのは確実だ。ではスリルと刺激に溢れた毎日を過ごすとなればどうだろうか?暫くは飽きる事無く生活を楽しめるだろうが、人間と言うのは慣れるものでそう言った日々も何れは当たり前になり日常に変化していく。そうなれば更なる刺激を求め、また慣れての繰り返しでキリが無い上にいつかは破綻するだろう。それに刺激が強いというのは精神と肉体に多大な負担を強いる事になる。それが長く続けば遅かれ早かれ変調を来たし同じような生活をすることが出来なくなるだろう。結局の話平凡で平穏な生活と言うのが一番という事だ。
なぜこんな話をしているかと言うと最近俺の周りで怪しい人物がうろついているからだ。最初にその人を見たのは一週間ほど前だっただろうか。いつものように夕方に差し掛かるあたりで開店準備を始めていたのだが、何となく視線を感じて道路に面している窓から外を見ると少し離れた所から店内を伺っている女性がいたのだ。最初は近所の人か偶々通りかかった人が興味本位で見ているだけだろうと思っていたんだ。
だが、それが四日も連続して続くと考えも変わる。もしかして非公式ファンクラブの人がどの様な手段を使ったのか分からないがお店の場所を特定して見に来ているのか、もしくはストーカーの可能性もある。でも本当に偶然が重なった結果と言う線も僅かながらある為一先ずは様子見をする事にしたんだ。
それが先週の話で、今週に入ってから二日経つが昨日も一昨日も同じ女性が同じ場所に佇んで店内を見ているとなれば流石に怖くなってくる。だが、こういう場合に真っ先に動くだろう菫さん達――特別警護対象保護課の面々が何もアクションを起こしていないという事は危険は無いという事だろう。そして確実に謎の人物の素性も洗っているはずなので、それを踏まえて考えると怪しいが安全な人物ということだ。一見矛盾しているがそういうことなんだろう。
俺としてはただ見られているというのは怖いのでお店に来るなり、話しかけるなりして欲しい所だ。closedと札が扉に掛けられているのでお店に入るというのは勇気がいるかもしれないがジッと観察されるよりもマシだからな。それか俺から話しかけに行くべきかもしれない。相手からのアクションを期待していても無駄に終わる可能性が高いし、こちらから行動を起こす方が楽だろう。一応安全な人っぽいし。
などと昨日の夜に考えていた事がまさかすぐに実行されてるとは思わなかった。
お店であれこれと開店に向けて準備をしているといつもの時間にいつもの人がいつもの場所に現れ店内を見ている。そんな中何の前触れもなくゴロゴロと空が鳴ったと思ったらポツポツと雨が降り始める。それは次第に強くなり時間を置かずに本降りになった。起きた時に確認した天気予報では晴天となっていので通り雨だろう。暫くすれば止むはずだしわざわざ気に掛ける必要もない。――そのはずなのに視線は彼女が居る場所へと向かう。果たしてそこには軒先で降り注ぐ雨を凌ぐ姿が目に入る。
その瞬間、考える間もなく傘を持ち扉を開けて彼女の方へと歩を進めていた。
「大丈夫ですか?すぐそこに俺のお店があるので雨宿りしていって下さい」
「よろしいのですか?」
「勿論です。傘は一本しかないので使って下さい」
「でも……」
「大丈夫ですから。それじゃあ案内しますね」
彼女に傘を渡した後お店にすぐに戻る。中に入った後はカウンター席に案内して待ってもらっている間にタオルと温かいココアを用意する。この時期の雨はまだまだ冷たいし、温かい飲み物は必須だろう。
「お待たせしました。タオルを持って来たので良かったら使って下さい。あとココアを作ったので良かったらどうぞ」
「有難うございます」
お礼を言った後タオルで濡れた制服や髪を乾かしていく。そう彼女は制服を着ている。OLが着る様なものではなく、完全に学生服である。それから分かる通り彼女はおそらく高校生だろう。中学生にしては大人びているし、何となく制服の作りと言うか着こなし方が高校生っぽい。
そしてどこか見覚えがあるんだよな。でも俺には高校生の知り合いなんて居ないし、お店に来ることも絶対にない。そもそも店がある場所が初見ではほぼ見つけられない様な所なのでもしかしたら親か姉に教えて貰って興味本位で来てみたとかだろうか?もしそうなら一回見たら満足しそうなものだけどな。結構な頻度で来る理由が思い浮かばないし、意味も分からない。ただどこかで会ったような気がするのは気のせいでは無いだろう。女子高生、出会い、見覚えがある……何かが記憶の琴線に触れたような気がするがあと一歩のところで思い出せない。うーん……と考えていると女子高生から声を掛けられる。
「タオルをお貸し下さり有難うございました。これは洗った後に後日お返しします」
「いえ、そこまでしなくても大丈夫ですよ。こちらで洗濯しますからお気になさらずに」
「分かりました。ではお返しいたします」
「はい。あっ、ココアが冷めてしまうので良かったら飲んで下さい。もし苦手だったらコーヒーや紅茶も用意できますがどうしますか?」
「ココアで大丈夫です。お気遣い頂き有難うございます」
「いえ、お気になさらずに」
短い時間しか話していないが随分と言葉遣いが綺麗だし、丁寧だ。ちょっとした所作も洗練されているしもしかしたらどこかのお嬢様なのだろうか?俺が高校生のときなんて所謂若者言葉のオンパレードだったし、椅子の上で胡坐をかいたり持ち物も結構乱雑に扱っていたのものだ。女子も似たようなもので男子に比べれば多少丁寧にはなるがまあ……今思えばだらしがないなと思う様な事も平気でしていたな。それを考えると本当に目の前の女の子は上品だ。一括りにお嬢様と言ってもピンキリだからな。成金の家なのか、由緒正しい歴史ある家なのか、はたまた財閥などの大金持ちの家なのかでかなり変わる。実際俺の店も身分の確かな人しか来ないから色々と分かる事があるのだ。
それを踏まえて考えると彼女はおそらく相当良い所の家に生まれたのだろう。それこそ名家・旧家・財閥系の有名どころじゃないだろうか。とはいえだ、相手によって態度を変えるのは印象が悪いし子供だからと言って下に見るのも駄目だろう。というか俺自身がそう言った事をしたくないしね。
などと考えているとココアを飲んで人心地がついたのかこちらを見てお礼を言ってきた。
「ココアとても美味しかったです。有難うございます」
「お口に合ったようでなによりです。――ところで幾つかお聞きしたい事があるのですがよろしいですか?」
「はい。何でも聞いて下さい」
「先週から何度かお店の前に居るのを見かけたのですが、お店か私に何か用事でもあったのですか?」
「えっと……大分前の事なので覚えていらっしゃらないかもしれませんが、お店の住所が書かれた名刺を貰ったので来てみたのです。ですが私は学生なので営業時間中は入店できないので閉店中にお邪魔するしかなくて……」
「ちょっと待って下さい。今記憶を掘り返しますので」
高校生――多分そうだと思う――に俺が名刺を渡す?いや、普通に考えてありえないだろう。そういった物を渡すのは基本的に取引先の人や成人していると確認出来た上で縁があった人にしか渡していないんだ。だから学生に名刺を渡すなんて無い。そして大分前の事と言っていたから下手したら彼女が中学生の時に渡した可能性もある。…………過去の記憶を遡っても思い当たる節は無い。だが、確実に彼女との奇縁はあったはずなのだ。思い出せ俺と必死に思考を巡らせていると、目の前に座る彼女から助け船が出された。
「今から一年半前くらいに病院の中庭で少しお話したのですが、その時に名刺を貰ったんです」
「…………あっ!もしかして久慈宮桜さん?」
「はい、久慈宮桜です」
ヒントを貰った瞬間頭の中がスパークしたように電流が走り一気に全てを思い出した。そうだ!俺がこの世界に来てすぐの時に金が無くて飯を食えずに倒れて入院したんだ。そのまま暫く病院のお世話になったんだけど、その時に外の空気を吸いたくて夕方に中庭に出た時にベンチに座っている彼女と出会ったんだよな。くそっ、何で今まで忘れていたんだ。かなり印象に残る出来事だったのにすっかり頭から抜け落ちるなんて不覚もいいところだ。
「今まで忘れていてごめんなさい。全て思い出しました」
「謝るような事では無いですし、思い出して頂けた様なので大丈夫ですよ」
「いや~、そっか。あの時から一年半も経ったんだ。というか久慈宮さんが変わり過ぎてて全然わからなかったです」
「そんなに変わったでしょうか?あまり実感が無いので良く分からないのですが」
「凄く綺麗になったし大人っぽくなりましたね。元々綺麗な人でしたが更に磨きが掛かっています。それと出会った時は心配になるくらい細かったですが今ではとても健康的で女性らしい身体つきになりましたね」
「うぅ、恥ずかしい。――男性にここまで褒めて貰えるなんて夢のようです。それに綺麗って言って頂けて本当に嬉しいです」
顔を真っ赤にしながら嬉しそうに感謝の言葉を伝えてくる。滅茶苦茶可愛い。元々お人形さんの様に顔立ちが整っていてとても可愛らしい女の子だったが、先も言った通り病気のせいでかなり瘦せ細っていたので少しだけ魅力を損ねていた所がある。
でも今は大分肉付きも良くなり出ると事は出て、引っ込むところは引っ込んでいる女性らしい身体つきになっている。特に注目すべき点は胸だ。出会った時は小さいながらも確かな膨らみがある程度だったが今はブルンブルンだ。たった一年半でちっぱいからやや巨乳に変化するなんて誰が信じられるだろうか?というか成長期ってここまで大きく変わる事もあるんだな。一般的には背が伸びたり、身体つきが男性らしく又は女性らしくなるくらいだけど久慈宮さんの場合は変身と言う言葉がピッタリなほどの変わりようだ。
なによりも健康的になってなによりである。
「初めて会った時は病院だったけどもう病気の方は大丈夫なんですか?」
「はい。佐藤さんとお会いしてから半年後くらいには完治しました。今ではお医者様が太鼓判を押すくらい健康なんですよ」
「それはなによりです。心配だったので完治したという話を聞けてホッとしました」
「有難うございます。――ところで佐藤さんもあの時病院に居ましたがご病気で入院されていたんですか?」
「いえ、そうでは無いんです。お恥ずかしい話ですがあの時入院していたのは栄養失調で倒れてしまって救急車で搬送されたからなんですよ」
「えっ!?それって大丈夫だったんですか?」
「病院食と点滴でなんとか回復しました。単純に一週間も水だけで過ごしていたのでそれが原因なんです。今思えば馬鹿な事をしたなと反省しています」
「失礼ですがご家族の方は何をしていたのでしょうか?普通であれば男性の方が栄養失調で倒れるまで放置するなんて絶対に有り得ません。――はっ!もしかしてご家族の方から虐待を受けていたのでは?もしそうなら軍警察に連絡すればすぐに保護して貰えますよ」
「えーとですね……ちょっと複雑な問題がありまして私には家族が居ないんです。いや、居ないといういい方は語弊がありますね。物凄く遠い居場所に居て二度と会えないかもしれないが正しいです」
「それはご家族の方が海外に行っていて会えないという事でしょうか?」
「ニュアンスとしては近い物がありますがちょっと違いますね」
俺が並行世界から突如としてこの世界に来たというのを説明しないと理解は難しいだろう。とはいえ、誰彼構わず話して良い内容では無いし国や軍警察も絡んでいるからな。とはいえだ。久慈宮さんとはまだ二回しか会っていないし浅い付き合いだけど悪い人では無いというのは確かだ。それにこの店の前で何度もこちらの事を観察していたけど菫さん達は一切動いていないし、俺にも何も言ってこない事から危険人物だったり何かしらの問題を抱えているわけでも無いのだろう。であれば下手にここで誤魔化すよりも真実を打ち明けた方がいいのかもしれないな。
「これからお話ししようと思っている内容は私に深く係わる問題であり、俄かには信じられないと思いますがお聞きになりますか?」
「是非お聞かせください」
「分かりました。では今から話す事は他言無用でお願い致します。ご家族や友人、その他仲の良い人にも絶対に話さないようにして下さい。……私はこの世界の人間ではありません。今から一年半前に並行世界から来たんです。何の前触れもなく朝起きたら世界間移動をしていて――」
今まで何度か俺の事について話してきたので要点をまとめた上で分かり易くかみ砕いて説明できたと思う。ただあまりにも現実味が無いし理解しがたい話なのですぐには納得も出来ないし、自分の中で消化するには時間が掛かるだろう。妄想を垂れ流している、現実とフィクションの区別が出来ていないと思われても仕方ないし人によっては精神疾患者と認識されて触れずにそっとしておこう、距離を取ろうとしてもなんらおかしくはない。果たして久慈宮さんの反応は如何にと恐々としながら伺っていると真剣な表情で俺に話しかけてくる。
「俄かには信じられませんが、お話を聞いた事で色々と腑に落ちた点もあります。それらを踏まえて私は佐藤さんのお話を信じます」
「有難うございます。ですが腑に落ちた点と言うのはどういうことでしょうか?失礼ですが私と久慈宮さんがお話をしたのはこれで二回目だったはずです」
「一つ目ですが女性に対して余りにも自然な点です。私は今まで佐藤さん以外の男性とお会いした事はありませんが、一般常識として男性は女性に対して忌避感や嫌悪感を持っており普通に会話する事すら困難……というか不可能です。ですが病院でお会いした時に当たり前の様に私と会話していました。それが一つ目です。二つ目は女性に対してとても優しいという事です。普通であれば例え家族であろうとも女性に対して男性が優しくするというのは絶対に有り得ません。召使いの様に扱き使うか身の回りのお世話をしてくれるロボットと言う認識ですので優しくする理由が無いのです。これが二点目ですね。最後はこのお店です。基本的に男性が働くことはありませんし、働く意味もありません。国から補助金や給付金が支給されますし、家族が何不自由ない生活を送れるようにしているからです。翻って佐藤さんはお店を経営しており、毎日働いておられます。しかもbarという接客業です。沢山の女性のお客様と接しなければいけない仕事をしているというのは余りにも異質に過ぎます。以上の点から並行世界から佐藤さんが転移してきたというお話を信じる事にしました」
思わず久慈宮さんの話に聞き入ってしまったが言われてみれば確かにその通りだ。仮に何らかの理由で突然変異したとしても俺の様にはならないだろう。異常、異質と言う言葉がピッタリだし数百年かけて形成された一般的な価値観や常識をぶっ壊しているのだからそれこそ異世界から来ましたとか並行世界から来ましたと言われた方が色々と納得も出来るだろう。ただ理解出来るのと納得できるのとでは全く違う話になる。普通であれば頭では分かっていてもどうしても自分の中で消化するのが難しいし相当時間も掛かるだろう。人によっては長い年月がかかる場合もある。
その点を踏まえて考えると久慈宮さんは相当頭が良いのだろう。これは単純に勉強ができるとかそういう話ではなく頭の回転が速く、また柔軟性も備えているという意味だ。当然まだ若いというのもあるだろう。それにしたって随分と聡明なんだなと思う。
「かなり理解しがたい私の妄想とも取れる話を信じて下さり有難うございます」
「いえ、私の方こそ佐藤さんの秘密を打ち明けて頂いてとても嬉しいです。――しかし並行世界ですか。私達が居る世界とは大分違うのでしょうか?」
「似て非なる感じですね。日本王国はただの日本という名称ですし、北アメリカ連合や中東連合国、ヨーロッパ統一国家等は存在しませんでした。あとは一番の違いは男女比率でしょうか。世界統計で人口性比は百一・七となっていますので男性の方が女性より一・七%多い事になります。まあほぼ男女比は同じという事ですね」
「……俄かには信じられませんが本当なのでしょうね。という事はお付き合いする場合や婚姻を結ぶ場合はどうなるのですか?お一人とお付き合いしたり結婚したりするのでしょうか?」
「そうですね。ほぼすべての国で一夫一妻制となっています。ただ恋人関係の場合は複数の人と付き合う事も出来ますがその場合は浮気になります。もしバレればほぼ確実に別れることになりますし、場合によっては刃傷沙汰にまで発展する事もありますね」
「私の価値観とあまりにも違い過ぎて何と言っていいのやら……。男女比がほぼ同じだからこそ可能なのでしょうね」
確かに久慈宮さんの言う通りだろう。どちらかに偏っていたらこの世界と同様に複数人と結婚するのが当然になる。そうしなければ子孫を残せないし、延いては人類が滅んでしまう恐れがあるからだ。一夫多妻、一妻多夫どちらでも比率が狂えば起こりうることだ。俺が居た世界だって近代以前には一夫多妻は当たり前だったし寧ろ一夫一妻は異質として受け止められていた。ではなぜ現代日本に限らず多くの国で一夫多妻制が法律で禁止されているのかと言うと世界宗教と言っても過言では無いキリスト教が多いに関わっている。理由については非常に長くなるので割愛させて頂くが興味がある人は調べてみると良いだろう。ただ宗教に関わる事なのでその点には注意して欲しい。
――少し話が逸れたが結論から言えば歴史や風習、男女比等様々な理由により変わっていくものであるという事だ。
「そうですね。まあ、良いか悪いかは人によって判断が変わりますしなんとも言えませんが。それに俺が居た世界では晩婚化やそもそも付き合わない、結婚しないという人も沢山いましたからね」
「えっ?それは男性だけでなく女性もですか」
「はい。男女ともにです。理由は幾つもありますが、代表的なもので言えば人間関係が面倒臭い、結婚する事にメリットを感じない等でしょうか。金銭的にも子供を一人成人まで育てるには約三千万~四千万はかかりますからかなりの負担になります。子供が二人であれば二倍ですし、三人であれば三倍ですからね。結婚を躊躇する理由には十分でしょう」
「成程。てっきりほとんどの人が誰かとお付き合いしたり、結婚していると思ったのですが違うのですね。ちなみに佐藤さんはどのようにお考えなのでしょうか?」
「結婚願望はありますし恋人が欲しいとも思っていますよ。ただ出会いはあるのですがいつも良い人止まりなんですよね。私が居た世界の話になるのですがお客様から『佐藤さんは顔も悪くないし性格も良いんだけど、どうしてもその先が見えないんですよね』と何度か言われた事があります」
「随分と失礼な人ですね。もし私がその場に居たら絶対に一言文句を言っています」
「あはは、それは心強いですね。まあいつもそんな感じだったのでお恥ずかしい話ですが今まで恋人が居た事が無いんです。それと言い訳になりますが仕事が忙しかったのと大会に向けて日々鍛錬を積んでいたのでそこまで気を回せる余裕が無かったんです」
「大会ですか?佐藤さんはバーテンダーですしご趣味で何かされていたのですか?」
「バーテンダーの大会があるんですよ。簡単に言ってしまえばカクテル作りの腕を競い合って一番を決めると言うものですね」
「そう言った催し物があったなんて初めて知りました」
「あまりメジャーでは無いですし、興味がある人も少ないので仕方ないかと」




