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第三十四話

 お休みの今日は久々に街に出掛けている。俺は特に買いたい物があるわけでは無いのだが、菫さんから連絡が来てお買い物に付き合ってもらえませんか?と言われたのでこうして街に来ている訳だ。最初は菫さんと二人だと思っていたんだけどなんやかんやあっていつものメンバー全員で街に繰り出す事になった。雪音さん、菫さん、小百合さん、千歳さんという超美人四人と至って普通の俺と言う組み合わせはかなりバランスが悪いが男友達も居ないし、仕方ない。

 いつか男友達が出来ると良いなとずっと思っているが、未だに男を見かけたことが無い。本当に存在しているのか?と疑いたくなるくらい影も形も無いのだ。最早本当に存在しているのかも疑わしくなってくるが一縷の望みにかけて探す事を諦めないぜ。絶対に男友達を作ってやる。

 ふんっ!と気合を入れた所で隣を歩く雪音さんに訝し気な視線を送られてしまった。

「拓真さん、大丈夫ですか?」

「すみません。少し気合を入れていただけですので大丈夫です」

「そうですか。やはり女性向けのお店に男性が行くのは辛いですよね」

「辛いというより普段そう言ったお店に行く機会がないので、俺が行っても大丈夫かなという心配がありますね」

「その辺は問題無いですよ」

「そうなんですか?」

「はい」

 満面の笑みでそう言うのであれば大丈夫なのだろう。でも女性の連れが居るとは言え絶対に浮くだろうな。普通の服屋でそうなんだからこれが下着屋さんとかだと針の筵だろう。白い目で見られたり、不快感を露わにした視線をビシバシ投げられるとか耐えられない。でも彼女が出来たらそういう機会も来るかもしれないし、今回の買い物は予行練習としては最適かもしれない。

 何はともあれ気を強く持って一日頑張ろう。

 そうして暫く歩いて辿り着いたのは色々なお店が入居しているファッションビルだ。路面店とは違い一度に色々なお店を見て回れるのが利点で、とても便利である。時短にもなるし値段が高いお店から安いお店まで揃っているので自分の懐事情に合わせて選べるというのも有難い。とはいえ彼女達は良い所のお嬢様なので金額などあまり気にし無さそうではあるが。

「菫さんが行きたいお店って何階にあるんですか?」

「五階にあるのでそこまでエレベーターで行きましょう」

「分かりました」

 ゾロゾロと五人で連れ立ってエレベーターホールへと向かう。道中色々な人に見られたが、特に問題もなく五階へと移動する。そして菫さんの案内の元お目当てのお店へ行ったが何とも高級な外観で少し入るのに躊躇してしまう。そんな俺の気持ちを察してか微笑みを浮かべながら菫さんが話しかけてくる。

「ここが私が何時も服を買っているお店になります。店員さんも良い人ですし男性が入店しても問題無いので安心して下さい」

「そうなんですね。少しホッとしました」

「それでは行きましょうか」

 そうしてお店に入ると多種多様な服が出迎えてくれた。綺麗に整頓されて皺一つない状態で棚に置かれている服はパッと見ただけで質が良いと分かる程だ。流石菫さんが贔屓にしているお店なだけはあるなと思いつつきょろきょろと辺りを見回していると俺を見て固まっている店員さんやお客さんの姿が目に入る。これはもう通過儀礼のようなものなので暫くすれば再起動するだろう。

 そんな周りの人達を見ながらただ突っ立っているのも変だし適当に服を見てみる事にしよう。正直女性物の服には疎いし、流行とかも全く分からない。だから隣で話している菫さん達の会話もさっぱりだ。

「今年の流行はレディライクだからウェストを絞ったデザインの服が欲しいわね」

「そうね。きらめきや透け等デティールに遊び心を加えた服で色はブラックやブラウンなどが流行りだからそこは押さえておきたいわね」

「ハイカラーのコートなども良いですよ。どんなインナーとも相性が良いですし、ミディアム丈スカートと合わせればシックな雰囲気に、ミニスカートと合わせればコンパクトなシルエットで綺麗に見えるのでお勧めです」

「私としてはトランスペアレントがお勧めです。シフォンやレースなどのシアー素材を使用しているので透け感がありますが、インナーにブラウスを着れば押さえられますし女性らしさを強調できるので男性にも魅力的に映ると思います」

 菫さん、雪音さん、小百合さん、千歳さんの順で自分のお勧めを言っていたが何を言っているのかチンプンカンプンだよ……。俺がファッションに疎いというのもあるが、それにしたって難解すぎる。女性は髪と服には半端じゃない情熱を掛けているからな。こういう時男は黙って見守っているのが一番だし、変に口を挟むのはNGだろう。という事で四人の話し声をBGMに適当に見ているとマネキンが来ている服に何となく目が吸い寄せられた。着ているのは少しもこもことしたVネックセーターなんだが、胸元が見えるくらい深く開いているのでついついおっぱいに目が行ってしまう。例えマネキンだとしても胸に視線が吸い寄せられるのは男の性だろう。つい集中して見ているといつの間にか話し合いが終わったのか菫さんが俺に声を掛けてきた。

「何か気になるものでもありましたか?」

「あっ、えーと……あのセーターが素敵だなと思いまして」

「――あのマネキンが着ているのですか?」

「はい」

「すみません、あれと同じものってまだありますか?」

 菫さんが店員さんに聞くと在庫はあるみたいで、サイズ確認をした後ニコッと笑顔を浮かべた後着替えてきますねと言って試着室へと入っていった。一連の流れがあまりにも早かった為一瞬ポカンとしてしまうが、すぐに気を取り直す。というか凄い食いつきだったけど菫さんの好みとかもあるだろうし、別に試着しなくても良かったのでは?と思っていると試着室の中から菫さんが話しかけてくる。

「着替え終わりましたのでカーテンを開けますね」

「分かりました」

「どうでしょうか?少し胸元が強調され過ぎかなと思うのですがどうでしょうか?」

「とても素敵だと思いますし、似合っています。それにとてもセクシーですし」

「そうなんですね。それじゃあこういう感じとかどうですか?」

 少し前屈みになりつつ両腕でおっぱいをギュッと寄せて谷間を強調してくる。若い人には伝わらないと思うがだっちゅ~のポーズだ。深い谷間とぷるんっと揺れる柔らかなおっぱい。そしてチラリと見える黒のブラジャーが欲望を際限なく刺激してくる。女性経験が無い俺には余りにも刺激が強すぎるし、例え経験が豊富だとしてもこの攻撃には耐えられないだろう。そんな俺の様子を見て菫さんが微笑みながら嬉しそうな声で言の葉を紡ぐ。

「ふふっ、拓真さんをドキッとさせられたようで良かったです」

「もうドキドキしっぱなしなのでこれ以上は勘弁して下さい」

「分かりました。じゃあ、元の服に着替えますね」

 そう言ってからシャッとカーテンが閉まり着替え始める。そのタイミングを見計らったかのように今度は雪音さんが声を掛けてきた。

「以前拓真さんは清潔感があって清楚な服装がお好きと仰っていましたが、ああいう少し露出度が高い服もお好きなんですね」

「そうですね。基本的には清楚系が好きですが、ワンポイントとしてああいう女性らしさを強調できる服を着るのはアリだと思っています」

「成程。そうなるとミニスカートにオフショルダーのトップス等の組み合わせは駄目という事ですね」

「ですね。そこまでいくと下品に見えるので、ミニスカートを履くならトップスはブラウスとかセーターとかで、オフショルダーのトップスなら膝上のスカートとかを合わせて欲しいです」

「確かに女性性を強調し過ぎる服装はパーティーに出席するなら兎も角普段着る服としては上品さに欠けますね。それに拓真さんが好む系統とも掛け離れてしまいますし」

「雪音さんが言う通りです。あくまでワンポイントとしてであれば魅力的という事ですね」

 俺が居た世界の話になるが街を歩くとショートパンツにノースリーブブラウスやミニスカートにチューブトップの服を着た女性を見る事が偶にあったが正直かなり引いた。本人がそれで良いと思っているなら別に他人がとやかく言う権利は無いし、ファッションなんて所詮は自己満足なんだから好きにして構わないんだけどその上で敢えて言わせてもらう。かなり引いた……。兎に角下品だし、不快で仕方なかったのを今でも覚えている。例えば先程雪音さんも言っていたがパーティー等であればある程度の露出は必要だろう。ドレスだってそういう風に作られているし、その格好を見てうわっ……と思う事は無い。とどのつまりがTPOを弁えた格好をした上で、無駄に肌を見せるような服装は避けた方が女性として魅力的に見えますよと言う話である。そんな事をつらつらと頭の中で考えていると着替え終わった菫さんが試着室から出てきたので思考を切り上げる。

「お待たせしてすみません。この服を買う事にしました」

「気に入ったのがあってよかったですね」

「はい。ですが、もう少し見て回りたいのですがいいですか?」

「勿論です。気の済むまで見て下さい」

「有難うございます」

 そうして引き続き服を見て行く女性陣を横目に俺も適当にブラブラと店内を歩く事にした。しっかし色々な服が置いてあるな。服屋なんだから当然なんだけど男物と比べて明らかに種類が多い。基本的には男の服なんて下はズボン一択になるし、上はある程度種類が増えるとは言えそこまで豊富とは言えない。女性の場合はズボン、スカート、ショートパンツ、キュロットパンツ等々複数の選択肢がある。何故男女でここまで差があるのか理由は分からないが選ぶ楽しさや、着る楽しさと言うのは間違いなく女性が上だろう。まあ、その分苦労もあるのだろうが少し羨ましく思う。

 そして女性の買い物が長いと言われる理由も種類が豊富だからこそ試着したり、悩んだりで時間が掛かってしまうのだとしたら納得かな。長時間の買い物を許容できるか否かはまた別になるけど。なんて事を思いながら適当に手に取ってみた服の値札を何となく見てみるとそこに記載されていたのは四万五千円と言う値段。あの~、セーター一着でこの値段と言うのはどうなんでしょうか?確かに手触りを良いし、作りも確りしているので良い品なのは分かる。だがそれにしたって少しお高くはないだろうか。うーん……と唸っていると『どうしましたか?』といきなり声を掛けられて思わず変な声が出てしまう。

「うわっ!?って小百合さんでしたか」

「驚かせてしまってすみません」

「いえ、お気になさらずに。菫さん達と一緒に服を見ていたのでは?」

「そうなのですが、拓真さんが眉間に皺を寄せて悩んでいる様なのでこちらに来ました」

「そうだったんですか。――実はこのセーターの値段に驚いてしまって、これぐらいが普通なのかなと悩んでいたんです」

「値札を見せて貰っても良いですか?……この品質でこのお値段なら妥当だと思いますよ」

「女性物の服ってこれくらいが普通の値段なんですか?」

「うーん、お店によっても違いますが私達が買うようなお店だと普通ですね。勿論もっとお安いお店もありますがその場合品質がかなり落ちますね。それこそワンシーズンのみ着て終わりと言う感じになるのではないかと」

「ファストファッションとかだとそうですよね。一見節約できているようで、長い目で見ると結構な金額になってて全然節約できていないとか普通にありますからね」

「仰る通りです。良い物を長く愛用するか、短いスパンで安い物を買うかは人それぞれですが私達の場合は立場もあるのでどうしても安価なお店で服を買えないというのもあるんです。安っぽい服を着ているとそれだけで色々な噂が立ちますし、家にも迷惑を掛けてしまいますから」

「あぁ、確かにそうですね」

 今回買い物に来ているメンバーは全員良い所のお嬢様だものな。ウニクロとかジャラとかH&Nとかの服を着ていたら経済的に苦しいのでは?と邪推されたり、相手によっては馬鹿にされていると思われる可能性もある。だからこそ自身の品格に見合った服を然るべきお店で買わなくてはいけないのだろう。なんとも面倒臭い――じゃなくて大変だな。良家に生まれるのも楽では無いという事か。小百合さんと話をしてそんな事を思いました。

「そういえば話は変わりますが、拓真さんは黒のストッキングがお好きでしたよね?」

「大好きです」

「例えばベージュとか白とかはあまりお好きでは無いのですか?」

「微妙ですね。ベージュは仕事などで履く人も居るでしょうし、汎用性が高いので良いのですが白は好きか嫌いの二択で言えば嫌いです。正直白ストッキングは幼稚園児や小学生が履いているイメージが合って大人が履いているとどうしてもうーん……ってなっちゃうんです」

「あっ、それ何となくわかります。言い方は悪いですが子供っぽい印象がありますよね」

「そうなんです。それに脚を綺麗に見せるという点でも白は膨張色なので脚が太く見えてしまって駄目ですね。黒の場合は収縮色なので細く見えますし、色の効果もあって脚が細くて綺麗に見えるのも好きな理由です」

「明確な理由があったんですね。てっきり男性は胸が好きだと思っていましたが、話をお聞きする限り拓真さんは脚の方がお好きなんですか?」

「一番は脚ですね。二番目に胸で三番目がお腹と言う順番になります。とはいえあくまで俺の好みなので他の男の人だとまた違うと思いますけど」

「うぅ、お腹ですか。今の状態だと拓真さんにお見せ出来ないので精進しなければいけませんね」

 そう言ってお腹をさすさすしている小百合さんだが別にお腹が出ている訳でも無いし、太ってもいないので今のままで問題無いと思うんだが。女性って太ってもいないのにダイエットしなきゃとか言ってガリガリになるまで痩せようとする人が偶にいるけどあれはどういう心理なんだろうか?自分が追い求める理想を体現する為に必要だからとか、モデルとか俳優をしていて仕事上必要だから等の理由があるなら理解できるけど特に意味もなく手足が棒のようになるまで痩せようというのはある意味狂気じみている。まあ小百合さん達がそういうダイエットはしないと思うが一応一言伝えておこうかな。

「今のままで十分綺麗ですし、スタイルも良いので無理に何かをする必要は無いと思いますよ。というか変に痩せすぎていると魅力が無いですし、見ている方もこの人大丈夫かな?と不安になるので」

「拓真さんがそう言うのでしたら現状維持……したいですが少しだけお腹周りをスッキリさせたいので無理のない範囲で頑張ります」

「そう言う事でした俺も応援していますので頑張って下さい」

 話が一段落したので菫さん達の方を見るとまだ洋服選びの最中だったのでもう少し時間が掛かりそうだな。さてこれからどうしようかな?小百合さんと適当に店内を歩くのも良いし、お店から少し離れた所にベンチがあったのでそこに座って待っていても良いが俺一人だと絶対に目立つしな……。やはりここは小百合さんと居るのが最善手かなと考えていると洋服を持ちながら菫さん達がこちらにやってきた。

 何かあったんだろうかと様子を伺っていると雪音さんが持っている服を俺に見せながら聞いてくる。

「拓真さん、このお洋服のデザインなのですがお好きですか?」

「全体的にシックな感じですが胸元にあしらわれているフリルが可愛らしくて良いと思いますよ」

「そうですか。――身体に当ててみるとこういう風なのですがどうでしょうか」

「おぉ、凄く似合っています。履いているラップスカートとも合っていますし雪音さんの雰囲気にもバッチリですね」

「有難うございます。それじゃあこれを買おうかしら」

「気に入った物があったみたいで良かったですね」

「はい。本当は菫の買い物に付き合うだけで買う予定は無かったのですが、拓真さんのお墨付きも頂きましたし買う事にしました」

 そういうのはあるあるだな。俺も男友達の買い物に付き合った時特に何か買う予定は無かったけど、何となくいいなと思う服が合って買うとかあったし。予想外の出費でその月に生活が苦しくなってモヤシ生活をしたのは良い思い出だ。そしてモヤシ料理のレパートリーが増えたのは有難い反面あの生活苦を思い出すトラウマにもなっているというね。少し昔の事を思い出して感傷に浸ってしまったが、今は菫さん達の買い物が優先だ。気持ちを切り替えていこう。

 なんだかんだで一時間半くらい時間が経っただろうか。最終的には四人とも何かしらの服を買って買い物は終わりとなった。まだ一店舗しか見ていないしこれから他のお店も見て回るのかなと考えて、長丁場に備える為気合を入れようとした所で菫さんが俺に話しかけてきた。

「今日はお買い物に付き合って頂いて有難うございました」

「いえ、全然構わないですよ。というよりもまだ一店舗しか見ていませんが他のお店は見なくていいんですか?」

「はい、大丈夫です。もともと沢山のお店を見る予定ではありませんでしたし、良い物も買えたので。これからの予定ですがどうしましょうか?拓真さんはどこかに行きたいとか希望はありますか?」

「このビルに雑貨屋とかってありますか?寝室に飾るインテリアが欲しくて見に行きたいのですが」

「少しお待ち下さい。……一階に雑貨屋さんがありますね。ただ私も行った事が無いのでどういうラインナップかは分からないのですが大丈夫でしょうか?」

「余程変わった物を置いているとかでなければ問題無いので行ってみても良いですか?」

「勿論です。それでは一階に移動しましょうか」

 そうしてみんなで下の階へと降りると、雑貨屋を目指して歩いて行く。他愛無い話をしながら通路を進んでいると大勢の人が集まってなにやら騒いでいるのが目に入ってきた。ファッションビルで一ヶ所に大勢の人が集まるなんてあまり見ないので隣にいる千歳さんに聞いてみる事にした。

「何かのイベントでもやっているんですかね?」

「その可能性が高いと思います。新人アイドルが宣伝のためにパフォーマンスをしたり、後は子供向けのヒーローショーもありますがこのビルの客層を考えると除外しても良いかもしれません。……調べてみましょうか?」

「いえ、そこまでしなくても大丈夫ですよ。少し歩けば何をしてるのか見えると思うので行ってみましょう」

「分かりました」

 野次馬根性丸出しで人だかりに近づくとカメラを持った人やレフ板を抱えている人、沢山の服が掛けられている移動式キャスターを前に真剣な顔で考え込んでいる人等が見える。そして何より目を引いたのはモデルさんと思しき人が二人いる事だ。状況から考えるにおそらくファッション雑誌の撮影か何かだろう。珍しい光景に思わずジッと見てると視線に気が付いたのか二人のモデルさんが俺の方へ振り向き固まる。一切瞬きをせずに俺を凝視したまま微動だにしない。状況としてはいつもの事なんだけど相手がモデルという事もあり、目力が凄く俺も何となく視線を外せないという良く分からない状況になってしまっている。

 そんな俺に助け舟を出してくれたのはさっきまで話していた千歳さんだ。

「拓真さん、大丈夫ですか?何か不快な事でもされたのなら言って下さい」

「あっ、すみません。大丈夫です。――何となくモデルさんと目が合ったんですが、目力が凄くて視線が外せなくて……」

「そう言う事ですか。拓真さんに危害を加える様な素振りはありませんが、少し注意して見ますね」

「有難うございます」

 千歳さんの注意して見るという言葉に雪音さんや菫さん、小百合さんも小さく頷いていたので彼女達も俺の事を心配していたのだろう。こういうちょっとした事でも心配してくれるのは嬉しいが、あまり彼女達に負担を掛けない様に俺自身がもっと確りとしなければいけないな。

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