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第三十一話

 話が一区切りした所で場に沈黙が落ちる。他にお客様も居ない為店内に心地よいBGMが流れ静かな時間が過ぎていく。だが無言の空間が心地悪いという事も無く丁度良いクールタイムになっている。そんな中清川さんが一杯目のカクテルを飲み終わった様なので、注文を聞くことにする。

「何かお飲みになりたいカクテルはありますか?」

「では軽めの物をお願いします」

「畏まりました」

 軽めのものと言うオーダーだったのでモーツァルト・ミルクを選んだ。材料はモーツァルト・ブラックチョコレートというチョコレートリキュールと牛乳の二つだ。リキュールの量によってアルコール度数は前後するが大体八度くらいとなっている。だが今回作るのは牛乳の量を多めにして飲みやすいように調整したものをお出ししようと思う。シェイカーにモーツァルト・ブラックチョコレートと牛乳を入れ軽くシェイクした後グラスに注ぐ。新しいコースターを置きその上にグラスを載せて完了だ。

「お待たせいたしました。モーツァルト・ミルクでございます」

「わあ、なんだかココアみたいな色合いですね」

「ブラックチョコレートリキュールと牛乳を混ぜたものなので確かにココアに近いかもしれません。お味の方もお酒と言うよりチョコレートミルクと言った感じですので飲みやすいと思います」

「それじゃあ頂きます。――んっ、甘くて美味しいです。それにとても滑らかでスッと喉を滑り落ちて行きました」

「お口に合ったようでなによりです」

「ふふっ、佐藤さんがお作りになったカクテルはどれも美味しいので本当は毎日飲みたいくらいです」

「有難うございます。そのお言葉を頂けるだけでバーテンダー冥利に尽きると言うものです」

 お客様からこのような事を言われるのは滅多に無いから凄く嬉しい。叔父さんの元で地獄の修行をしてきた甲斐があるってものだし、なによりお客様が自分の作ったカクテルを飲んで喜んでくれるというのが何ものにも代えがたい。本当にこの仕事をしていて良かったよ。

 胸にジーンと来るものを感じつつ、仕事の手は止めない。とはいえ今いるお客様は清川さん一人なのであまりやることは無いのだが。

 少し作業をして丁度手が空いたタイミングで清川さんが話しかけてくる。

「佐藤さんは今お付き合いしている方は居らっしゃるのですか?」

「いえ、彼女は居ません。仕事柄女性と出会う機会は多いのですがそこから発展するという事は皆無ですね」

「そうなのですね。てっきりお付き合いしている方が居ると思っていました」

「恥ずかしい話ですが全くモテなくて今まで女性と付き合った事が無いんです。『佐藤君は良い人なんだけどお付き合いするのはちょっと……』と何度か言われてしまって。別に理想が高いとかではないんですけどね」

「因みにどんな女性がタイプなのですか?例えば年上が良いとか、小柄で可愛い人が良いとか」

「んー、年齢に関しては気にした事がありませんね。外見も美人とか可愛い人だと嬉しいですけどそこまで拘りは無いです。それよりも内面――価値観や性格などの方が重要だと思っています。その辺が合わないと遅かれ早かれ破局する事になりますから」

「確かにその通りですね。では、あくまで例え話ですが見た目も内面も佐藤さん好みの女性が居たとします。ですがその人は実は男性だったとしたら好きになれますか?」

 見た目は女性、中身は男という事だがそれにも色々と種類があるからなぁ。女装をしている・性転換をしている・戸籍まで変更して女性として生きている等々があるし例えば性転換している場合だと胸を豊胸しているか否か、陰茎を切除して女性器に作り替えられているか否か、声帯を短くする手術を受けて高い声になっているか否か、ホルモン注射をしているか否かその他諸々。どこまで女性化しているかによって好きになるかの判断が変わる人も居るだろう。だが俺の答えは一つだ。

「あくまで持論なのですが人を好きになるのに性別も年齢も立場も関係ないと思っています。男が男を好きなる事もありますし、女が女を好きになる事もあります。親子で、または兄弟姉妹で男女として好きになる事もあるでしょう。一般的には忌避されたり禁忌とされる関係だとしてもそれは好きになった相手が偶々そうだっただけです。その事に対して外野が口を出すのは間違っていますし、相思相愛であるなら何ら問題は無いと思います」

「人を好きになるのに性別も年齢も立場も関係ない。確かにその通りですね。ですが、相手が男性だった場合子を産むことは出来ませんし結婚する事も難しいです。世間の目も厳しいものになりますし進む先が茨の道でも佐藤さんはその方を好きでいられますか?」

 お付き合いするという話であれば至極単純で迷わず俺は付き合う。でも結婚となると清川さんが言う様に困難が待ち受けるだろう。あらゆる生物の根源にある種の保存を無視しているし、果たしてそれは生物としては間違っているのだろう。次代に繋ぐために子を残さなければ滅亡待った無しだし、同性婚や近親婚が忌避され禁忌とされるのは子供を作れないからであり、また何らかの障害を持って生まれる可能性が高いからだ。愛の力で乗り越える!等と戯言を言う輩もいるかもしれないがそれは全く現実が見えていないか現実逃避しているだけだ。同性や近親者と結ばれるには並々ならぬ覚悟と何があろうと己の道を貫き通す強い意志が必要になる。もし俺がその立場になった場合どうするのかと問われれば先と同じで答えは一つだ。

「確かに清川さんの言う通り艱難辛苦が待っているでしょう。ですが、それでも私は愛する人と共に生きたいと思います」

「そう……ですか。佐藤さんはとてもお強い人なのですね。その様な方と生涯を過ごせる人がとても羨ましいです。私は何処まで行っても本当の意味で女性にはなれませんから」

 寂しげな表情を浮かべてどこか諦めた様に言の葉を紡ぐ姿は儚く今にも消えてしまいそうだ。そんな姿を目の前で見ていたからだろうか、勝手に口が動きだす。

「清川さんはとても素敵な女性だと思いますよ。それに言い方は悪いですが子供を作れない、または産めない女性もいます。当然男性にもそういう方はいますが果たしてその方達は本当の意味で男性・女性と言えるのでしょうか?」

「言えると思います。確かに子供を作れないという点を考えれば極論男女どちらでもないという解釈も出来ますがあまりにも強引ですし無理があります。それに身体は確りと性別通りなのですから」

「成程。であればやはり清川さんは女性です。確かに身体は少しだけ男性の部分がありますが、ほぼ女性と同じという事ですしほとんど違いは無いですよね。それに精神的にも完璧に女性ですし。――少し恥ずかしいですが、初めて清川さんが来店された際に見惚れてしまったんです。凄く綺麗でスタイルも良くてこんな美人と仲良くなれたらなぁなんと考えたりしたんですよ」

「す、すごく嬉しいです。でも恥ずかしい……」

 頬を真っ赤にして照れてしまったが先ほど言った言葉は俺の本心だ。百人に聞けば全員が美人、綺麗と言うだろうしそれ程女性としての魅力が溢れているのだ。だから実は男だったんですと言われても彼女に対する考えや見方は何も変わることは無い。

「清川さんはとても魅力的ですし、もっと自信を持って良いと思います。何かあったら私が力になりますし、悪口を言ってくる様な奴が居ればガツンと成敗してやりますから」

「ふふっ、そう言って頂けるだけで勇気が湧いてきます。そうですね。何時までも立ち止まってクヨクヨしていてもしょうがないですし前を向いて歩いて行きます。それにもっともっと綺麗になって好きな人に振り向いてもらえるよう頑張ります!」

「そうですか。陰ながら私も応援しています」

 そっか……清川さん好きな人が居るのか。いやさ、別に誰が誰を好きになっても構わないし自由なんだけどちょっとショックと言うか、あれだよね。こうして中々人には打ち明けられない相談とかされてさもしかしたら俺に好意を持っているのでは?なんて少しだけ考えてたんだけど甘かったですね。というかこういう中学生男子みたいな勘違いをすぐにするからモテないんだよ。あくまでバーテンダーとお客様と言う関係でしかないし偶々相談するのに良い感じの人が居たから言ってみたというだけでそれ以上もそれ以下でもない。俺に気があるんじゃないかとかさ……もう勘違いも甚だしすぎて恥ずかしい。

 いっそ殺してくれとさえ思うよ。取り合えず一切合切を棚に上げて今は仕事に集中しよう。何かいい話題はないかな?恋愛以外、かつ女性でも楽しめるとなると……ファッションとか美味しい食事処とかだろうか。よし、この二本立てで行ってみよう。

「清川さんが今着ていらっしゃる服もそうですが、とてもセンスが良いですよね。普段どういうお店で服を買っていらっしゃるのですか?」

「繁華街にある路面店で買っています。色々なテナントが入っているビルの方が一度に見て回れて便利ではあるのですが、あまり好みの服が置いていなくて。それにそういう所は学生向けの派手めなのが多いので私には似合わないかなと」

「確かに清川さんは大人っぽいと言うか落ち着いた感じの服装が多いですもんね」

「はい。昔から装飾が多い服や色味が派手なのは苦手滅多に着る事は無かったです。友人からはたまには地味なのじゃなくて可愛いのとか着てみたらと言われるんですが、どうしても躊躇してしまって」

「個人的には可愛い格好も似合うと思いますが、無理して着るものでも無いですからね。自分の好きな服を着るのが一番楽しいですから」

「確かにそうですね。――でも佐藤さんから可愛い服も似合うと言って頂けたので偶に着てみようかなと思います」

 それは嬉しいな。清川さんの雰囲気だとコテコテの可愛い系じゃなくて少しだけフリルがあしらわれていたり、淡い暖色系の服とか似合いそうだな。でもさっきの話の中で路面店で買い物をするって事だったけど基本的にそういうお店はお値段が高い傾向にある。俺は前の世界ではウニクロとかで適当に買っていたし、この世界に来てからは百貨店で買っているがそこまで高くはない。清川さんは名家の生まれという事だし贔屓にしているお店も高級店なんだろうな。そう考えると偶にしか着ない服をわざわざ買うのもあれだよな。俺が安易に似合うなんて言ったせいで余計な出費をさせるのも嫌だしそれとなく伝えるか。

「あの清川さん。さっき可愛い服も似合うと言いましたが、無理をして買う必要はありませんからね。今の服装も十分すぎる程似合っていますし」

「お気遣い頂き有難うございます。ですが私としても良い機会ですから挑戦してみたいと思っていまして。それにそういう系統の服でしたら上下を一通り揃えたとしても十五万円以内には収まるはずですし、お財布にも優しいので」

「そ、そうですか」

 いやいや、上下を一通り揃えて十五万円以内って全然お財布に優しくないんですけど。俺なんてウニクロで買うから正味一万くらいで間に合うんですが……。これが一般市民と名家出身のお嬢様の価値観の違いか。最早金銭感覚が違い過ぎて笑えてくる。んっ?という事は雪音さんや菫さん、小百合さんもお金持ちのお嬢様だし似たような感じなのだろうか?でも、一緒に遊びに行った時は俺と変わらない金銭感覚だったような気がする。なんか噛み合わない感覚があるんだが、明確に答えが出ない。うーんと心の中で唸っていると清川さんが話の続きを口にする。

「服やアクセサリーなどが安物ですと家の品格を落とす事になるので、多少無理をしてでも良い物を身に付けなければいけないんです。正直私も十数万するのは高いなと思いますし、安くても品質が良いお店も沢山あるのですが家のこと考えるとどうしても利用することが出来なくて」

「確かに安物の服を着ていたら金銭的に困窮しているのでは?とか落ち目なんじゃないか?と邪推される可能性がありますね。面子の為にも妥協する事は許されないという事ですか」

「はい。ですがそういう家に関わる事柄以外にはあまりお金は使わないようにしているんですよ。奇跡的に男性とお付き合い出来た際に浪費家ではすぐに愛想を尽かされてしまいますし、お金目当てで擦り寄ってきたと思われたくないですから。質素倹約とまではいきませんが、それに近いものを常に心がけています」

「それは素晴らしいですね。きっと清川さんは良い奥さんになれますね」

「えっ!?」

 ……もしかしてやっちゃった?まさかこんな反応が返ってくるとは思わなかった。もしかしてセクハラで訴えられたりするのだろうか。内心で冷汗を掻いていると予想だにしない返答が返ってきた。

「お、奥さんだなんてそんな。とても嬉しいですけど心の準備がまだ出来ていないと言いますか、お母様にも報告しなければいけませんし。いえ、まずは佐藤さんのご両親にご挨拶をするのが先ですね」

「えっと……、申し訳ないのですが今のはプロポーズの言葉ではなく素晴らしい女性の比喩表現です。なので私としてはまずはお友達から始められたらなと」

「………………」

 空気が凍るとはこの事を言うのだろう。時間が停止したみたいに清川さんは微動だにしない。いや、俺の言い方も悪かったな。女性に対して良い奥さんになれますねなんてこの世界の事情を考えたら勘違いしない方がおかしいし、それこそプロポーズと捉えられても仕方ない。そして即座に否定&断られたら今みたいな雰囲気になるのも当然だろう。

 このまま地獄の様な時間を過ごすのはお互いにとって良くないのでフォローしておこう。

「私としては清川さんの様な綺麗な人と友達になれたら凄く嬉しいですし、先の事は分かりませんがもしお互い好きになったら恋人関係になる可能性もあります。ですのでお互い頑張りましょう」

「そうですね。まだお互いの事を良く知りませんし、まずは相互理解を深める所から始めましょう。えぇ、順序をすっ飛ばしても碌な事になりませんしこれからですよね。――私でよければ是非お友達になって下さい」

「はい。よろしくお願いします」

「生まれて初めて男性のお友達が出来ました。あっ、折角ですし私の事は千歳とお呼び下さい」

「分かりました。それでは私も拓真と呼び捨てでお願いします」

「うぅ、流石に男性の方を呼び捨てにすることは出来ません。なので拓真さんとお呼びしても宜しいですか?」

「はい、大丈夫です」

「はぁ~、まさか私にこんな素敵なお友達が出来るなんて夢みたいです。――あの、拓真さんに相応しい女性になれるよう努力しますので見捨てないで下さいね?」

 今にも泣き出しそうな表情で言われてしまえば返す言葉は一つしかないだろう。ここは男としてガツンと攻めるべきだ。

「何があろうと決して千歳さんを見捨てるような事はしませんし、泣かせるような事もしません。何かあったら貴女を守りますし、困った事があれば力になります。そして俺から離れる事は絶対に無いので安心して下さい」

「そう言って頂けて凄く嬉しいです。それに安心しました」

 彼女の境遇を考えれば自分の秘密を知った上で仲良くしてくれる相手なんて殆どいないだろうし、真実を知られたら自分から離れてしまうのではないかと言う不安を抱くのも当然だろう。だからこそ安心させる為に恥ずかしい台詞を言ったが上手く不安を取り除けたようでなによりだ。

 さて、話の流れ的に丁度良いしあの話を切り出してみるか。

「千歳さんは少し前の話で就職したいという事を言っていましたが、どのような職種に就きたいとか希望はあるのですか?」

「特にこれと言ったものはありません。ですが、強いて言うなら落ち着いた雰囲気の職場が良いなと思います」

「成程。待遇についてはどうでしょうか?例えばお給料はこれくらい欲しいとか、残業が無くて福利厚生がしっかりしていて有給休暇が取りやすい等々」

「お給料に関しては一人で生活していけるだけ――手取りで二十万円くらいでしょうか。その他に関しては残業が無かったら嬉しいですね」

 手取りで二十万って一人暮らしをするなら結構きつい金額だけど大丈夫だろうか?地方都市か都心かでも変わるし、どんな家に住むかでも変わるけど正直余裕をもって生活は出来ないだろう。千歳さんは名家の生まれだし、なにかとお金を使う機会も多いだろから心配だな。

 そして残業の有無や福利厚生の手厚さ、その他諸々に関しては余り拘りは無いと。ふむふむ。

「例えばの話ですがお酒を扱うお店に就職する事に抵抗はありますか?また、その場合昼夜逆転生活になりますが体調や精神面で問題は無いでしょうか?」

「お酒は好きですしそう言ったお店で働くことに抵抗はありません。昼夜逆転生活については夜型遺伝子なので苦ではありませんし、ここ一年ほど夜型生活をしていますが特に体調や精神面で不調をきたすような事もありませんでした」

「そうですか。有難うございます」

 話を聞いた限りだと特に問題は無さそうかな。一番の懸念点だった昼夜逆転生活に関しても問題無いみたいだし。あとはこちらの出す条件を吞んでくれるかだな。

「お店を開いてから有難い事に毎日沢山のお客様に来て頂いてますが、流石に私一人では手が回らなくなってきていまして新しく従業員を雇おうかと考えているんです。そこでなのですが、もし宜しければ千歳さん。このお店で働いてみませんか?」

「えっ!?本当に良いのですか?」

「はい。私としても何も知らない初めましての人より、少なからず交流がある人の方が安心ですから」

「そう言う事でしたら是非お願いしたい所なのですが……。もし私を雇う場合問題も抱える事になりますが大丈夫でしょうか?それで拓真さんにご迷惑をお掛けしてしまうのは避けたいのでもし懸念があるなら折角のお誘いですが辞退させて頂ければと」

「その辺りは特に問題は無いと思います。仮に千歳さんの秘密がバレたとしても私が守りますから。なので何も心配することは無いですよ」

「分かりました。そう言う事であればよろしくお願い致します」

 ふぅ~、上手くいって良かった。ここまで話しておいて断られたら目も当てられなかったよ。一先ず一番の難関は突破出来たので後は細かい部分を詰めていかなきゃな。とはいえ今すぐにとはいかないが。

「こちらこそよろしくお願いします。――それでですね、細かい条件を詰めたり雇用契約を結ぶのは少し待っていただいても良いですか?」

「はい、勿論です」

「私の店は男性が経営・接客をしているという事もあり色々な柵がありまして。関係各所に諸々の事を確認しなければいけないんです。私の方で勝手に話を進めた場合ちょっと面倒臭い事態になってしまうので申し訳ありませんが後日千歳さんも一緒に話し合いの場を設けられればと思っていますがどうでしょうか?」

「はい、問題ありません。私の方で何か用意しておいた方がいい物などはありますか?」

「そうですね……。身分証明書があれば大丈夫です。それ以外に特に必要になるものも無いので」

「分かりました」

 あとは必要な人のスケジュールを押さえるだけだな。軍警察所属の菫さんと、俺の専属医である雪音さん。あとは小百合さんも呼ぼう。こうして羅列してみるといつもの面子だな。流石に菫さんの上司である氷川さんを呼ぶほどでもないしメンバーは今挙げた人で問題無いだろう。さて、あとは何処で話すかだがお店に関する話だし俺の部屋で良いか。取り合えずこんな感じで行こう。

「それでは、話し合いをする日時ですが来週末の午後などはどうでしょうか?」

「大丈夫です。因みに場所はどこになるのですか?」

「一応私の家でと思っています。このお店の二階に住んでいるのでどこかに行くよりも良いかなと」

「た、拓真さんのお家でお話……。分かりました。万全の準備をして行きます」

 やけに気合を入れているが他の人も居るんだから何も起こらないはず。まあラッキースケベくらいはあるかもしれないがそれ以上は無いだろう。だがまあ、折角やる気を漲らせているのだから水を差すのも悪いしそっとしておこう。

 こうして波乱に満ちた濃密な時間は閉店するまで続くのだった。

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