第二十九話
彼女達の笑顔を見ながらほっこりしていると航空ショーは次の演目へと移り変わる。今度は編隊連携機動飛行だ。これは分かり易く言えば戦闘機が並んで飛行するというものでアクロバット飛行と比べると派手さは無いしどちらかというと大人向けであると言える。事実子供達はあまり興味が無いのか俺に構って欲しそうにしているしね。くりくりとした大きな目でじぃ~と見られてしまっては無視も出来ない。目の前で繰り広げられる熟練パイロットが織りなす華麗な機体捌きを見ていたいがここは子供優先で。
「三人ともどうした?飛行機を見るのはあまり面白くなかった?」
「ううん、さっきまでクルクル回ってたのはたのしかったよ。でも、今のはあんまりおもしろくない」
「そっか。確かにただ飛行機が飛んでいるだけだもんね」
「うん。……おとうさんはみていて楽しい?」
「楽しいよ。こういうのを見る機会は滅多に無いしね」
「そっか~。じゃあ、わたしたちもがまんしてすわってるね」
三人とも年齢の割には聞き分けが良いし、精神的にも早熟と言えるが幼稚園児には編隊連携機動飛行を見るのは早かったか。となれば次の演目である航過飛行も面白いとは感じないだろう。小さい子供も楽しめるようにするにはどうすればいいのだろうか?……思い切ってお祭りの会場に移動するという手もあるが、警備やその他諸々の事を考えると難しいか。飛行機、高い場所、座らずに済む方法……んっ、待てよ。これだったら楽しめると思うし、俺もある程度はショーを観ることが出来るんじゃないか?よし、早速提案してみよう。
「三人ともちょっといいかな?」
「「「なに~?」」」
「あのさ、俺が肩車してあげようか?それで少し周りを歩いてみよう。きっと楽しいと思うよ」
「やったー!おとうさんありがとう」
「かたぐるま!おとうさんにだっこしてもらえる~」
「さいしょはわたしからね。おとうさんおねがいします」
よし、滅茶苦茶喜んでくれている。観覧席はかなり余裕を持った造りだし、歩き回っても問題無い広さはある。それに一般観覧席とも離れているから無駄に人目に着く事もないだろう。という事で早速友香から肩車をする事にした。腰を屈めてたら、友香が背中をよじ登ってきて肩の位置に脚を掛ける。確りと両手で脚を固定してからゆっくりと立ち上がると頭上から鈴を鳴らしたような声が響く。
「わぁ~、すごくたかい。とおくのものまでみえるよ~」
「あはは、そっかそっか。でもあんまりはしゃぐと危ないから程々にね。それと怖くは無い?」
「うん、だいじょうぶ。おとうさんにささえてもらってるから」
くぅ~、嬉しい事を言ってくれるね。この年頃の子供は純粋無垢で素直だし本当に可愛いな。それに思ったよりもかなり軽いしこれなら長時間肩車しても問題無いだろう。というか本当に軽いんだけど。四~五歳児の平均体重は分からないが友香を担いだ感じとしては十二~十三㎏くらいかな。まあ重いよりは良いし、なによりこの世界の人間は太っている人が居ないからこれくらいでも大丈夫なんだろう。
と下らない事を考えつつ、適当に歩いていると観覧席に座っている小学生くらいの女の子がこちらを凝視している事に気が付いた。はて?何か問題でもあっただろうかと考えてみるが思いつかないのでそのまま散歩を続ける。が、すぐに俺の疑問は美穂と凛の会話によって解消される事となる。
「ねぇねぇ、りんちゃん。あの子ずっとこっちをみていたけどうらやましそうだったね」
「ねっ。ふつうはおとこのひとにこんなことしてもらえないしきもちはわかるけど、おとうさんは渡さないよ」
「うん!おとうさんはわたしたちのおとうさんだもんね」
あー、そう言う事か。確かに普通に考えれば有り得ない光景だよな。そもそも男はこういったイベント毎に参加なんてしないし、ましてや子供と戯れるなんて事は更に無い。だから羨ましくて見ていたのか。とはいえだ、見ず知らずの子供にいきなり話しかけたら確実に事案発生となり警察官にちょっと署までご同行願いますと言われるのがオチだ。なのでここは気付かぬ振りをして凛たちと遊んでいるのが最善手と言えるだろう。君子危うきに近寄らずっていう諺もあるしね。
そんな事を考えつつ幼女三人を代わる代わる肩車をしたり、抱っこしてクルクル回ったりと楽しい時間を過ごしていたらいつの間にか編隊連携機動飛行も航過飛行も終わっていたんだが……。
「あー、完全に見逃してしまったな。残念」
「うぅ~、わたしたちのせいでみれなくておとうさんごめんなさい」
「「ごめんなさい」」
「凛たちが謝る必要は無いよ。航空ショーはまた来年にでも来ればいいしね。それよりも凛達とこうして一緒に遊べる時間の方が大事だし、楽しかったからさ。皆は俺と遊んであんまり楽しくなかった?」
「「「すごいたのしかった!!」」」
「そっか。なら俺も大満足だよ」
そう言いながら頭を撫でていると、立花さんがこちらに近寄って話しかけてきた。
「佐藤様。今回のショーは我々の方で撮影していますので、もしよろしければ後日データを送る事も出来ますがどうでしょうか?」
「本当ですか。ではお言葉に甘えてデータを送ってもらっても宜しいでしょうか?」
「畏まりました。では後日佐藤様の端末の方にデータを送らせて頂きます」
「はい、よろしくお願い致します」
まさかの展開に思わず笑みが漏れる。今回の航空ショーは個人での撮影はNGだし、テレビ中継もされていないので基本的には生で見る以外に方法は無い。見逃してしまったら最後、来年以降にまた来るしかなくなるのだがまさか撮影データを貰えるとは思わなかったよ。正に僥倖とはこの事だなとおもっていると横から小百合さんが声を掛けてくる。
「拓真さん良かったですね」
「はい。これで心置きなく好きなだけ観る事が出来ます」
「ふふっ、拓真さんが喜んでいる姿を見ていると私まで嬉しくなります」
天使の様な微笑みを浮かべながらそう言う小百合さんはズルいと思います。もう可愛すぎだし、思わずギュッと抱きしめたくなるが他人の目もあるので我慢我慢。
湧き上がる欲求を誤魔化す為にも話題を変えよう。
「そういえばお祭りがあるんでしたよね。丁度お昼時ですし行ってみませんか?」
「良いですね。私もお腹が空いてきたのでどんな物があるか楽しみです」
「俺もです。――よし、それじゃあお祭り会場に行きますか」
次の行き先が決まった所で立花さんの案内の元ゾロゾロと歩き出す。会場に近づくにつれ人が増えてきて歩きにくくなってきたので逸れない様に子供達と手を繋ぐことにした。菫さん達が羨ましそうな視線を向けてきたので、後で何かしらフォローをしよう。あーんはここに来るまでのバスでしたし、単純に手を繋ぐだけと言うのも芸が無いので良い方法が無いかお祭り会場に着くまでに考えておこう。
そんな事を思いつつ歩く事暫し。目に飛び込んできたのは左右にズラッと並んだ屋台と大型のテント、そしてごった返す人の波だった。正直例年よりも規模が拡大しているとは聞いていたがここまでとは思わなかったし、規模が半端ない。一般的にお祭りと言われて想像する何倍もの大きさと言えば分かるだろうか。余りにも想像以上だった為思わず口をポカンと開けて眺めてしまう。そんな俺の様子を見てクスッと笑いながら菫さんが声を掛けてくる。
「拓真さん、随分と驚いていますね」
「いやはやこれ程とは思っていなかったので。というか凄すぎます」
「国から予算が下りていますし、軍警察も緊急予算としてそこそこのお金を出していますから。なにより空軍の皆様が物凄く張り切ったお蔭ですね」
「…………例年とは違ってこれだけの規模のお祭りをしてしまったら来年以降は大変じゃないですか?」
「今年は拓真さんが来るという事で特別にこのような大規模なお祭りを催しましたが来年からはいつも通りになりますし、その点は事前に告知していますので大きな問題にはならないかと。仮に文句を言ってくるようであればそれなりの対処をするだけですから」
「あっ、はい」
にこやかに菫さんは言ってのけたが、どの様な対処をするのかは怖くて聞けない。というか俺が聞けば答えてくれるだろうけど、なんとなく裏の部分に触れそうなので止めておこう。
あっ、そうえいばさっきから気になっている事があるんだよな。良い感じに話題も変えられるし聞いてみよう。
「そういえば、菫さん。あのテントって何ですか?何個もあるし、やけに大きくて気になっていたんですよね」
「あのテントの内二つは戦闘機のパーツや装備などを展示しています。機体は見た事があるかもしれませんがどのようなパーツや装備を使っているのか等は今までお見せする事が無かったので、今回展示する事にしました。残りの二つのテントですが、あちらはアトラクションスペースとなっています。クッションボールで満たされたプールやボルダリング等様々な遊具が配置されていますので小さなお子様から大人まで楽しめる施設ですね」
「成程。かなり凝っていますね。俺としては戦闘機関係にかなり興味を引かれるので後で見に行こうかな」
「良いと思います。――子供達は余り楽しめないと思うのでアトラクションスペースに行く組と展示会場に行く組に分かれるのも手ですね」
「確かにそうですね。その件に関しては後で皆と相談しましょう。まずは腹ごしらえをしましょう」
腹が減っては戦は出来ぬと言うし、何はともあれ飯だ。子供達との戯れが予想以上にハードだったので実は滅茶苦茶お腹が減っているんだよね。さて、色んな出店があるが何を食べようかな?定番だと焼きそばとかたこ焼き、クレープ、お好み焼き等々だが甘い物は取り合えずパスで考えよう。ガッツリと食べたいから出来ればご飯物が良いが屋台に丼物は無いしな……。となると粉ものメインになるが腹に溜まらないし。うーんと悩んでいると幼女達はすでに食べるものを決めたのか声を掛けてくる。
「おとうさん、わたしフライドポテトが食べたい!」
「あのね、わたしは綿飴がいい」
「りんご飴がたべたいけどうっているかな~?」
「甘い物を先に食べたらご飯が食べられなくなるよ。だから確りとご飯を食べた後にお菓子を食べようね」
「う~、ごはんよりも綿飴をたべたいけどおとうさんがそういうなら我慢する」
「うん、偉いね」
そう言いながら友香の頭を撫でてあげる。幼稚園児だとジャンクフードやお菓子優先にどうしてもなってしまうからな。そういったものでお腹を満たすと身体にも悪いしお母さん達に怒られてしまうだろうから素直に言う事を聞いてくれて良かった。
とは言え屋台で売っている物も大抵ジャンクフードだからどっちもどっち感はあるな。というか雪音さん達に何を食べたいか聞いていなかった。彼女達の意見も参考にしつつ決めるとしよう。
「あの、雪音さん達は何か食べたい物はありますか?」
「そうですね……フランクフルトが食べたいです」
「へぇ、なんか意外ですね。てっきり雪音さんはそう言う物は食べないと思っていました」
「普段は食べないのですが、折角の機会ですから久々に頂こうかと思いまして」
「そう言う事ですか。分かりました。菫さんと小百合さんは何かありますか?」
「うーん、お好み焼きにしようと思います。色々と種類もある様なので」
「豚玉だけじゃないんですね」
「はい。海鮮お好み焼きやチーズキムチお好み焼き、変わり種で野菜たっぷりお好み焼きと言う物もあるみたいですよ」
「おぉ、聞いているだけで涎が出てきそう。俺もお好み焼きを食べようかな。――小百合さんは何を食べるかもう決まっていますか?」
「私は具だくさんちゃんぽんというのがあったのでそれを食べてみようと思います」
「えっ、麺類なんて置いているんですね」
「そうみたいです。ですが種類は一つみたいですが」
「それでも屋台でちゃんぽんがあるなんて珍しい。よし、これも食べよう」
と言う感じで話している内にそれぞれ食べたい物が決まったので手分けして買ってくることに。とはいえ大混雑しているので買うまでに時間が掛かるだろうと踏んでいたのだが、調理・提供の回転が異常に早くあっという間に俺達の番になりあっさりと買うことが出来た。嬉しい誤算にホクホクしつつ次々と
買っていき飲食スペースへと移動する。子供達とお母さんはまだ戻ってきていない様なので待っていると小さい手で一杯に料理を持った子供達が帰ってくる。
「おぉ~、沢山買ったね」
「うん、おいしそうなおりょうりがいっぱいあったからおとうさんのぶんもかってきたんだ」
「有難う。それじゃあ、冷めない内に食べようか」
「わかった~」
皆集まった所でお昼ご飯を食べ始める。最初に手を付けたのはちゃんぽんだ。最初に食べないと麺が伸びてしまうのでね。ズズズッと啜ると鶏ガラと豚骨スープが麺にマッチしていて美味しい。それに野菜がシャキシャキしていて食べ応えもある。このクオリティのちゃんぽんを屋台で出すとか本当に凄いな。下手なお店よりも美味しいしお値段も五百円と良心的だしこれは当たりだわ。
だが俺的には美味と感じるが、お嬢様である小百合さんはどうだろうか?――というかよくよく考えたら雪音さんも菫さんもお嬢様なんだよな。今更ながらに庶民的な食事で大丈夫だろうかという不安が鎌首を擡げてくる。チラリと三人の様子を伺うと笑顔を浮かべているので美味しくないという事は無さそうでホッとしたよ。あと、子供達もニコニコしながら食べているし心配は無用だな。
しかしこうして大人数で食事をするのはこの世界に来て初めてなので少し新鮮に感じる。というか男一人に女性が八人、幼女が三人と言う組み合わせは他人からはどう見えるのだろう?
「一番妥当なのは家族かな」
「えっ?」
やばい、考えが口から漏れていたらしい。雪音さんが不思議そうな顔でこちらを見ているし、ここで変に誤魔化すのもあれなので素直に白状しよう。
「えっと、こうして皆でご飯を食べている光景を他人が見たら家族に見えるのかなと思いまして」
「家族ですか……。そうですね、他の人から見たらそう見えるかもしれません」
「ですよね。この子達を見ているといつかは俺も結婚して子供が欲しいなって思っちゃいます。なるべく若いうちに子供を作った方が良いですし」
「えっと、人工授精の場合は冷凍している精子を使うので年齢はあまり関係ありませんよ」
「えっ?」
「えっ?」
お互いの考えている事が嚙み合わずに思わず間の抜けたような声を出してしまう。なんで子作りに人工授精が出てくるのだろうか?普通はSEXして妊娠してという流れのはずだが……。
「え~と、順を追って確認したいのですがまず結婚します。そして奥さんと夜の営みと言うか、愛を確かめ合う行為をしてその結果妊娠、出産と言う流れでは無いのですか?」
「…………あぁ、そう言う事ですか。あの……はい」
小さい子供もいるから言葉を濁して伝えたがそれでも雪音さんの頬が真っ赤になっている。それは雪音さんだけではなく、菫さん、小百合さん、そして氷川さんや立花さんやお母さん達も同じように頬が染まっている。俺としては普通の事を言っただけなんだが何か恥ずかしい要素があっただろうか?そんな俺の疑問に答える様に雪音さんが少し声を抑えて説明してくれた。
「この世界では例え結婚していたとしても子供は人工授精で作るのが普通です。男性とその……行為をするのはある種の伝説と言うか空想染みた物になっているのでまさか拓真さんがその様なお考えをお持ちとは思いませんでした」
「あー、もしかしてそういうのは不潔な行為として認識されていたりします?」
「いえ、とんでもない。寧ろ全女性の憧れであり、誰しもが乞い願う行為です。ですが、人類存続のために何れは子供を産まなければいけませんし、その際に処女を散らすと言うのが一般的です」
そうなんだ。まあ、男の絶対数が少ない上に子供を産まなければ人間と言う種が消えてしまうとなれば純潔を守り通すのは難しいよな。でも子供がいるのに男を知らないと言うのはなんとも不思議な感じがするのは俺が異なる常識を持っているからだろう。――待てよ。という事はこの場に居る人で美穂達のお母さんを除けば全員が処女という事だよな。そして誰かとお付き合いすれば漏れなく初めてを貰える訳か。なんとも男冥利に尽きる話だし、嬉しいな。
そんな内心が表情に現れていたのか、凛がニコニコしながら声を掛けてくる。
「おとうさん、とってもうれしそう」
「凛達と一緒にご飯を食べる事が出来て嬉しいからね」
「そうなんだ!わたしもおなじだよ」
うぅ、ごめん。邪な事を考えてニヤニヤしてましたとはとてもじゃないが言えない。純真無垢な凛の笑顔で煩悩は消え去ったし、これ以降は不埒な事は考えない様にしよう。その後は皆でワイワイとお喋りをしながら食事を楽しみ、良い感じにお腹も膨れた所で展示会場組とアトラクションスペース組に分かれて行動しようかと言う話をした所子供達がお父さんと離れたくないと猛反対したので全員で見て回る事になった。
最初に向かったのは展示会場で菫さんから先に説明を聞いていた通り戦闘機などのパーツや装備が説明文付きで並べられている。こういうパーツや装備はメカメカしいと言うかいかにも複雑な構造で大きいというイメージがあったが目の前にあるそれらは至ってシンプルかつ洗練されていて驚いてしまった。それは他の人も同じなようで立花さんに色々と質問したりと、感想を言い合ったりと楽しい時間を過ごす事が出来た。が、やはり子供にとっては興味を引かれなかったのか結構退屈そうにしていたので悪い事をしてしまったな。でもこの次に行くアトラクションスペースでは思う存分楽しんで欲しい。
という事で次に来たのは様々なアトラクションが用意されている大型テントだ。中では友人同士や家族連れで賑わっており、とても楽しそうに遊んでいる。そんな光景を見つつ友香達にどれで遊びたいか聞くとボールプールが良いと答えたのでそちらに行く事に。
「それじゃあ俺達はこっちで見ているから思う存分遊んできていいよ」
「「「はーい!」」」
元気よく返事をした後ボールプールへと走っていく。俺はもうそんな体力が残っていないというのに本当に子供は無尽蔵のパワーを持っているなとオジサン臭い事をつい考えてしまう。それと同時にほうっと小さな溜息も漏れる。
「お疲れの様ですが大丈夫ですか?」
「少し疲れましたがまだ大丈夫です。小百合さんは疲れていないですか?」
「実は私も結構疲れてしまいました。移動で結構歩いていましたし、こういう催しは普段来ることは無いのではしゃいでしまったと言うのもありますが」
「はははっ、それは俺も同じです。――それじゃあ子供達を見守りつつ休憩していましょうか」
「はい」
小百合さんと少し話した後自販機でジュースを買いベンチに腰掛けながらまったりとした時間を過ごす事に。缶ジュースのプルタブを開けゴクゴクと炭酸飲料を流し込むとパチパチと喉に心地よい刺激が走ると同時に身体に水分が染み渡る。一気に半分ほど飲んだ所でホッと息を吐く。
さて、子供達はどうしているかなと視線をやるとそれはもう大はしゃぎで遊んでいた。その光景を微笑ましく見つつ時間は流れて一時間くらい経っただろうか。美穂達がクタクタになりながらこちらに戻ってきたので飲み物を渡して暫し休憩した所でそろそろいい時間なので帰る事に。
「それじゃあそろそろ帰ろうか。皆忘れ物は無い?」
「はい、大丈夫です」
雪音さんが確認をした後返事を返してくれたのを聞いた後、本日お世話になった立花さんにお礼を言う為に身体を向ける。
「立花さん、本日は有難うございました。お蔭でとても楽しい時間を過ごす事が出来ました」
「お楽しみいただけたようでなによりです。また、機会がありましたら是非遊びに来て下さい」
「その時はよろしくお願いします」
「はい。楽しみにお待ちしております。……あの、その時はまた私に案内役をさせて貰っても宜しいでしょうか?」
「勿論です。こちらこそ是非お願いします」
なんて話をしつつ、関係者用の駐車場へと移動してマイクロバスに乗り込む。全員乗車しているのを確認した後帰路へと着いた。
こうして何とも濃い一日は終わりを告げるのだった。




