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第二十八話

 軍警察での話し合いから一週間半ほど経ち、今日は皆で航空ショーを観に行く日だ。今日を迎えるにあたって氷川さんや菫さんにはかなり助けてもらった。というのも、男性が航空基地に来るのは凡そ百年振りらしく話を通した際に空軍から何度も本当なのか?問い合わせが来たらしい。そして本当だと分かると男性が来て下さるのに既存のショーやお祭りではガッカリさせてしまうと急遽仕様を変更して突貫で準備を始めたとか。普通であればそんな事は許されるはずが無いし、予算だって決まっているのにいきなりあれもこれも追加しますと言った所で却下されるのがオチだ。では何故それが可能になったのかと言うと、菫さんのお母さんである軍警察長官の鶴の一声で決まったのだとか。菫さんのお母さんとは面識が無いが向こうは俺の事は知っているらしく、菫さん曰く相当気に入られているらしい。……いや、オブラートに包まずに言えば娘以上に大切な存在みたいで、実の息子の様に思っているみたいだ。そこはかとない狂気を感じずにはいられないが、会った事も無い人を憶測で悪く言うのは間違っているしそう言う事はしたくない。まあ悪いようにはならないだろうし、今回も力を貸してくれたので良い人なのだろう多分、きっと、恐らく。

 ――少し話が逸れたが、そう言う事で今までにない大規模なショーとお祭りが開催される事となった。そして今回参加するメンバーについてだが俺、雪音さん、菫さん、小百合さん、氷川さんと幼女三人組の美穂、凛、友香、そして母親も来ることになっている。幼女三人組に関しては折角の機会だからお誘いした所滅茶苦茶喜んでくれたし、即参加を表明してくれた。

 そんなこんなで最終的な参加者数は俺も含めて十一人と結構な大所帯となった。大人数で航空基地まで電車で移動するのは小さい子供もいるし大変という事で氷川さんがマイクロバスを手配してくれたのでそれで行く事になる。十一人では座席が結構余ってしまうがまあ荷物を置いたりすればいいし、広々と使えるので問題は無いだろう。あっ、あと待ち合わせ場所は最初は俺の店舗兼自宅と言う話だったがマイクロバスが通れるほど道路が広くなかったので最寄りの駅前に集合と言う形になった。

 さて、脳内で回想をしている内に集合場所に到着。待ち合わせ時間より十五分程早くついてしまったがそこには既に子供達以外の全員が揃っていてので近づいて声を掛ける。

「おはようございます。今日はよろしくお願いします」

「「「「おはようございます」」」」

「まだ時間には余裕があるのに皆来るのが早いですね」

「男性を待たせるような真似は出来ませんから。それに拓真さんに早く会いたかったですし」

 雪音さんが答えると他の三人もうんうんと頷いている。俺に会いたくて早く来てくれるのは嬉しいが一体いつから待っていたのだろうか?ちょっと前に到着したとかなら分かるけど、一時間前からずっと待っていましたとかだと申し訳なさすぎる。……けど、五分前くらいに来てくれていいんですよとは流石に言えない。相手の厚意を無下にしている感じがするし、この世界の男性に対する対応を考えたら尚更だしね。

 自分の中で考えに一先ず決着をつけた所で幼女三人組を待つ事に。他愛無い話をしつつ、ふとマイクロバスって普通免許じゃ運転できないし誰が運転手を務めるんだろうか?というどうでもいい疑問が湧き上がってきたので聞いてみる事にした。

「あの、マイクロバスって確か中型免許か大型免許が必要ですよね。雪音さんと菫さんは普通免許ですし、小百合さんもそうですよね?」

「はい。普通免許しか持っていないです」

「となると氷川さんが中型か大型免許を持っているんですか?」

「いえ、私も普通免許しか持っていません。今回は運転手を用意していますのでその方が運転いたします。とはいえ自動運転なので実際にハンドルを握るわけではありませんが」

「そう言う事だったんですね。何から何まで本当に有難うございます」

「いえ、お気になさらずに」

 疑問も解消してスッキリした所で、とてとてとこちらに走ってくる小さい人影が目に入る。おっ、もしかして来たかな?と見ていると、こちらに駆け寄る勢いそのままに前と左右から幼女に抱き付かれる。

「「「おとうさん~!」」」

「おっとと。元気一杯だな」

「うん!えっとね、おとうさんに会えてすっごい嬉しい」

「そうか。俺も嬉しいよ」

「えへへ~」

 三人の頭を順番に撫でながら会話をしていると、後ろから不穏な気配を感じて恐る恐る振り返る。そこには絶望の表情を浮かべた四人の美人の姿が……。なまじっか信じられない程美しいからこそ沈み込んだ表情がとても恐ろしい。どうしたの?と聞くのを躊躇ってしまうが、このまま放置も出来ないので勇気を振り絞って声を掛ける事に。

「あの、なにかありましたか?」

「…………その子供は拓真さんの娘さんですか?」

「えっ?いやいや、違いますよ」

「でもお父さんって言ってましたよね。何時の間に子供を作ったんですか?……子供が居るという事は拓真さん結婚している……んですよね?」

「あー、それは完全に誤解です。この子達は俺が近所の公園に散歩に行った時に――」

 そこから二十分ほどかけて懇切丁寧に説明した結果なんとか誤解を解くことが出来た。こんなことなら事前に説明しておくべきだったな。確かにいきなり子供からお父さんなんて呼ばれている所を見たら驚くし、混乱もするだろう。完全に俺の落ち度である。猛省しているとホッとした表情を浮かべながら雪音さんが話しかけてくる。

「本当に吃驚しましたが、冷静に考えると拓真さんがこの世界に来て一年も経っていないのに四~五歳の子供がいるなんておかしいですよね。それに以前に彼女が居ないとも仰っていましたし」

「そうですね。驚かせてしまってすみません。それとこの子達は年の割には凄くしっかりしていますし困る様な事もしませんから安心して下さい」

「それは助かりますね。このくらいの年齢だと普通は聞きわけが無かったり、手が掛かるはずなんですが親御さんの教育が良いんでしょうか?将来の為にもお話を聞きたい所です」

「あー、確かに言われてみれば気になりますね。俺もいつかは子供を持つわけですし」

 子供を持つわけですしの部分で女性陣が一斉に反応を示す。小声で何か話しているようだが、距離が近い為割と聞こえてしまっているんだが。因みに内容はこんな感じだ。

「拓真さんとの子供ですからきっと凄く可愛いんでしょうね」

「沢山産みたいですが、お嫁さんも多くなると思うし一人か二人になるのかな?」

「出来れば男の子が良いですが、女の子でも立派に育てて見せます」

「疑問なのですが、人工授精で妊娠する事になるのでしょうか?それとも何度も肉体を重ねて妊娠となるのでしょうか?」

「私としては人工授精は拓真さんが望まない限りしないつもりです。――それに拓真さんは普通の男性とは違って性欲も強いと思いますから、私で発散して欲しいという願望もあります」

「分かります。自分の身体を男性が好きなようにする様を想像すると凄く幸せな気持ちになります」

 等々かなり踏み入った部分まで話している。正直ここで俺が口を挟むのも違うだろうし、聞こえないふりをして子供達と遊ぶ事にする。

 抱っこしたり、幼稚園で流行っているという遊びをしていると話が一段落着いたのか女性達がこちらに振り向き声を掛けてくる。

「お待たせして申し訳ありません。そろそろ行きましょうか」

「分かりました」

 そうしてマイクロバスに乗り込み一路向かうは航空基地だ。

 基地までは約一時間半程かかる為車内にはお菓子や飲み物などが用意されていた。俺も子供達の為にお菓子を用意していたがどうやら必要無かったようだ。さて、その幼女達だがたくさん種類があるお菓子に夢中になっている。あれもこれもと頬を膨らませながら食べている姿は微笑ましく、子供らしくて良いなと思うがどうやら母親にとってはそうでは無いらしい。

「こら、あんまり食べ過ぎるとお腹一杯になって眠くなってしまうわよ」

「だいじょうぶ。たくさん寝たから眠くないもん」

「もう、そんな事を言って。今から行くお祭りでも色んな屋台が出ているしそこで食べられなくなっても良いの?」

「いや~!」

「じゃあ、少しだけ食べましょうね」

「うん」

 うーむ、たくさん食べれば眠くなるのは自然の摂理だし抗うのが難しいからね。それが子供となれば尚更だろう。結果バスでお昼寝をする事になり、航空ショーやお祭りを楽しむ事なく終わるという悲しい事態になってしまうというね。わんわん泣き叫ぶ姿が簡単に想像出来てしまう。そうならないようにお母さんが対処した訳だが、上手い事誘導するなと感心してしまう。俺だと単純に身体に悪いから少しだけにしなさいで終わってしまうだろうな。親になるにはこういった所も考えて言わなければいけないのだな。うん、勉強になる。

 内心でふむふむと頷いていると前の座席に座っていた凛がポッチーを持ちながら俺の方に歩いてくる。

「おとうさん、これおいしいよ」

「おっ、そうか。じゃあ一つ貰おうかな」

「じゃあ、わたしがたべさせてあげる!あーんってして~」

「あーん……。うん、美味しい」

「えへへ~、よかった」

「それじゃあお返しに俺からもはい、あーん」

「あーん――おいしい~!」

 満面の笑みで言う姿がもうね物凄く可愛い。子供補正を抜きにしてもこの破壊力はヤバイ。幼女の時点でこれだけ男の心を揺さぶるなんて将来が楽しみでもあり、恐ろしくもある。だけど可愛いは正義であり、ありとあらゆる問題を解決してしまうから大丈夫だろ。若干脳が侵されている感があるが幼女には誰であれ勝てないんだから仕方ない。

 凛の頭を撫でつつ幸せな気持ちに浸っていると、左右からジトッ~とした視線を感じる。その視線の主は今までの遣り取りを見ていた大人達だ。もうね、この時点で俺は察したね。恐らく彼女達は凛にしたみたいにあーんをされたいのだと。だが、自分からおねだりするのは恥ずかしいのでそれとなく視線を送っている訳だ。ジト目だけども……。

 ここまでアピールされて無視するわけにもいかず、一人一人にポッチーを食べさせてあげました。全員それはもう顔を真っ赤にしつつも幸せそうな表情を浮かべていたのでやってよかったな。特に氷川さんが頬を染めながら小さく口を開けているのを見れたのは本当に最高だった。普段キリッとしていて冷たい印象を与える美人が照れるのは筆舌に尽くしがたいものがある。えぇ、心のアルバムにしかと保存しましたとも。

 そんな事もありつつ他愛も無い話で盛り上がったり、早起きした為か子供達が少し早いお昼寝タイムに突入したりと色々あったが無事航空基地間近まで来ることが出来た。そのまま車は進みてっきり一般開放されている駐車場に行くのかなと思ったら、グルッと回って関係者以外立ち入り禁止と看板が建てられた方へと向かって行く。まさか道を間違えた訳では無いだろうが、万が一もあるし菫さんに聞いてみよう。

「菫さん。道間違っていませんか?このまま進むと関係者しか入れない場所に行く事になりますが」

「この道で合っていますよ。一般開放されている駐車場では男性が来たと分かればパニックになってしまいますから今回は関係者専用の駐車場に車を停める事になっているんです」

「そう言う事ですか。――でも、航空ショーを見たりお祭りに参加したりすればどのみち騒ぎになるのでは?」

「多少の混乱は織り込み済みですし、警備を担当する人員も例年よりも増員していますから余程の事が無い限り対応可能です。もし想定よりも大騒ぎになった場合は拓真さんには避難して貰います。その場合は申し訳ないのですが、航空ショーは別室で観覧する事になります。またお祭りには参加できないので申し訳ないですがご了承下さい」

「分かりました。安全第一ですし、何かあってからでは遅いですからね」

「はい」

 少し真面目な話をしている間にどうやら駐車場に着いたみたいだ。各々荷物を持ってマイクロバスを降りると四人の制服を身に纏った女性が立っていた。その中から一番前に居た女性が声を掛けてくる。

「長時間の移動お疲れ様でした。――本日皆様のご案内を担当致します軍警察空軍広報部部長の立花優華(たちばなゆうか)と申します」

「初めまして。佐藤拓真と申します。今日はよろしくお願い致します」

 その後軍警察に所属している菫さんと氷川さんを除く全員が挨拶をしていく。というか案内役で部長が出張ってくるとは思わなかったよ。普通であれば平社員――軍だから一等兵とか上等兵かな――が案内するはずなんだがまさかの上役直々とはね。それで言えば氷川さんも超エリート部署の課長だしなんだか感覚がバグってきそうだ……。一旦落ち着くために眉間を揉み解していると心配そうな表情を浮かべながら雪音さんが話しかけてくる。

「拓真さん、大丈夫ですか?もし具合が悪いようでしたら医務室で休みましょう」

「ああ、すみません。少し緊張してしまって」

「それならいいのですが、少しでも気分が悪かったりしたら言って下さいね」

「分かりました。その時はすぐに言います」

 ふぅ、雪音さんと話した事で少しは落ち着いた。皆心配そうな顔をしながらこっちを見ているし、一言大丈夫だと伝えておこう。

「心配をお掛けしてすみません。至って元気なのでこのままショーを観に行きましょう」

「分かりました。ではご案内致します」

 立花さんが先導してくれるので俺達はゾロゾロと後ろを付いて行く。普通であれば絶対に見る事は出来ない空軍基地内部だがなんというか軍警察本部とは全然違うな。軍と警察で役割が違うと言うのもあるが、こちらは質実剛健というべきか一切の無駄を省いていて装飾品等が無い。偏見だがいかにも軍人が好みそうな感じだ。キョロキョロと歩きながら周りを見ている内に開けた場所に出た。そこには幾つもの観覧席が用意されており、周囲には警備の人が大勢いる。

「ここは一般観覧とは別に用意されている特別観覧席となります。皆様にはこちらでショーを楽しんでいただければと思います」

「あの、質問宜しいでしょうか?」

「はい。どの様なご質問でもお答えいたします」

「特別観覧席というのは偉い人や高貴な身分の方が利用する場所だと思いますが、私達が利用しても大丈夫なのでしょうか?こちらには小さい子供もいますし」

「その点に関しては全く問題ありません。こちらの席に座る方で佐藤様よりも身分が上の方は居らっしゃいませんし、小さなお子様がいらっしゃっても文句を言う人はいないでしょう。仮に何か言ってきたとしたら私どもですぐに対処いたしますのでご安心下さい」

「えっと……はい」

 確かに以前軍警察で話し合いをした際に俺の立場がかなり上がったと言われたがこれ程とは思わなかったよ。というかチラッと周囲を見渡したけど経済誌に良く名前が挙がる人や、有名な旧家・名家の人もちらほらいるんだけど本当に大丈夫だろうか?こういう人たちは面子を大事にするし、なにより気難しいというイメージがあるから変な事に巻き込まれない様に大人しくしていた方が良いのだろうか?でも子供達に騒がず静かにしていなさいというのも可哀想だしなぁ……。どしようかと思い悩んでいると小百合さんが声を掛けてくる。

「拓真さん。常識の範囲内で騒いだり、はしゃいだりするのであれば問題ありませんしそこまでお気になさる必要は無いですよ。それにこの場に居る人達は軍警察が厳選しているはずですし下らない事で言い掛かりをつける方はおりません」

「うーん、じゃあ大丈夫かな。そこら辺が少し心配だったのですが安心しました。小百合さん、有難うございます」

「いえ、拓真さんの心配事が解消出来てなによりです」

 そういって柔らかく微笑んでくれる。俺の事を慮っての行動だろうけど何も言わずともこうして行動出来るのは本当に凄いと思う。小百合さんに感謝しつつ、何時までも立ち話をしているのもなんだし座ることにしよう。用意されていた椅子はよくあるパイプ椅子ではなく室内でも使用できるような確りした造りで、なおかつフカフカのクッションまで付いているという長時間座っても苦にならない物だった。なにより肘掛けがあるのが有難い。身体を傾けて座る時や態勢を変えたいときにあると便利なんだよ。子供達も喜んでいるし、お尻が痛くなったりしないからじっと座っていても大丈夫だろう。

 なんて下らない事を考えている内にいよいよ航空ショーの始まりだ。最初はアクロバット飛行、次に編隊連携機動飛行、最後に航過飛行と言う流れになっている。言うまでもなく目玉はアクロバット飛行だろう。どんな戦闘機が出てくるのだろうかとワクワクして待っていると、然程間をおかずに続々と滑走路に出てくる。機体は俺が居た世界とはかなり違っている。まずエンジンが無い。超重量の機体を動かすには必ず高出力の装置が必要になる。これに例外は無く絶対に動力源は必要なのだ。では今目の前で動いている戦闘機はどうしているのかというと……分からない。なので立花さんに聞いてみる事にした。

「すみません、立花さん。あの戦闘機にはエンジンが見当たりませんがどの様にして動いているのでしょうか?」

「我が国で採用している機体は全て小型の融合熱反応路――核融合炉を搭載しています。ですので超高出力を維持しながら飛行可能になっております。また石油等を使わない為環境にも優しいという面もあります」

「核融合炉って安全性は大丈夫なのでしょうか。放射能問題や熱による材料の融解等が起きた場合等リスクがかなり高いと思うのですが」

「その点についてはご安心下さい。放射能問題は完全に解決しておりますし、万が一に備えて二重三重の対策をしております。また、材料に関しましてはナノマシンを用いた自己修復可能な物を使っておりますので、例え融解が起きた場合でも即座に修復されますので破損が起こる可能性は限りなく零に近いです」

「そうなのですね。なんかもう凄すぎて言葉が無いです」

 今迄も自動運転やらあらゆる物の電子化等で驚いていたがまさか戦闘機に搭載できる程小さい核融合炉を開発して実用しているとは思わなかった。俺の居た世界でも核融合炉は二十年後には実用段階になるだろうと予想はされていたがあくまでそれは大型施設を使用しての事であり、コストなども考えるとなかなか難しいという記事を見た。それを考えるとこの世界の科学技術は以前考えていたよりも遥かに進んでいるのだろう。仮に戦争が起きた場合決着は一瞬で着きそうだな。核爆弾を落とすとかそういったものではなく、人のみを殺す殺人光線的なものを宇宙から放射して終わりみたいな。SF染みた考えだがあながち的外れでも無いと思う。出来れば戦争はして欲しくないが、こればっかりは俺にはどうしようも出来ないしなる様にしかならない。願わくばずっと平和が続きますようにと願いつつショーに目を向けるのだった。

「おぉー、凄い。あんなにクルクル回って目を回したりしないのかな?」

「三半規管を鍛えていたとしてもあそこまで回転をしていては気持ち悪くなりそうですね」

「ですよね。幾ら体を鍛えていても俺には無理だろうな」

「パイロットは特殊な訓練を積んでいますし、元々の素質もかなり影響しますから落ち込む必要はありませんよ」

「ははっ、有難うございます。それにしても雪音さんは博識ですね。俺なんてそう言う事は全く知らなかったので」

「職業柄そういうお話を耳にする機会があっただけですよ。――あっ、今度は激しい上下運動をしていますよ」

「うわー、格好良い。空を縦横無尽に駆け巡って自身の手足の様に機体を操るのって本当に憧れます」

 羨望の眼差しで空を見上げていると今度は菫さんから声を掛けられる。

「拓真さんはパイロットになりたかったのですか?」

「そうですね。子供の頃はなりたかったです。というか男の子なら一度は憧れると思いますよ。スポーツ選手とかお医者さんなんかも人気でしたね」

「あの……警察官等はあまり人気が無かったのでしょうか?」

「そんな事はありませんよ。警察官もなりたい職業のトップ五には入っていましたし」

「そうですか」

 不安そうな表情から一転、パアッと明るい顔になり喜んでいる。大変可愛らしい。菫さんは軍警察所属だから自分の職業が不人気じゃないか心配になったのだろう。因みに雪音さんは医者が人気だと聞いてニコニコしていた。

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