第二十七話
「では、これ以上影響を受けさせない為に外出を控えたりした方が良いですか?」
「それでは佐藤様もストレスが溜まると思いますし、私共としても行動制限等をするつもりはありません。――軍警察としてはゆっくりと衰退している現状を打破できる唯一の存在が佐藤様であり、その力も決して悪い物ではなくある意味女性にとっての福音になるのではと考えています。ですので佐藤様には今まで通りお過ごし頂きたいというのが我々の見解です。ですが、国の方ではどの様に考えているかが分からない為早急に会談の場を設けるつもりですが、結果如何によっては佐藤様に何かしらの制限が掛けられる可能性もあります」
なるほど。意見を擦り合わせていって最終的な落とし所としてそういう事になるかもしれないか。まあ、その際は大人しく受け入れるし、従うつもりだ。
そういう風に自分の中で納得していると横から厳しい声色で反対意見が飛び出してきた。
「それだとまるで拓真さんが犯罪者みたいでは無いですか?先程仰っていた拓真さんと親密になればなるほど影響を受けるという点だって最終的には当人次第だと思いますし」
小百合さんの意見に菫さんと雪音さんも深く頷いている。言っている事は間違ってはいないが正しいとも言えない。この問題に関しては正解は無いと思うし、最終的には国が決定する事だ。俺達がとやかく言った所で何かが変わる訳では無いが、それでも彼女達は俺を想って意見を言ってくれている。それが凄く嬉しいしその優しさが心に染みる。
「確かに九条様の仰る通りです。ですがそう考えない人も居ますし、どうしても政治が絡んでしまう以上国益を優先しなければいけません。相手が政治屋であれば尚更です。軍警察としましても佐藤様には何不自由なく、また一切の制限などを掛けずにお過ごしいただきたいと思っておりますのでもしそういう意見があった場合は遺憾の意を表するつもりです」
「仰ることは理解できます。ですが――」
「小百合さん。そこまででお願いします。俺の事を思って言ってくれたのはとても嬉しいですが、ここでいくら議論をした所で最終的には国が決める事です。どの様な結果が下されようが俺は従うつもりです」
小百合さんの目を見てきっぱりと言い切る。日本王国という国に住んでいて、今まで様々な優遇を受けてきたし、この世界に転移してきた際も便宜を図ってくれたのだ。それなのに相手の言う事は聞かずにこちらの意見のみ通そうとするのは流石に図々しいと言うものだろう。
口には出さなかったが俺の言いたい事が伝わったようで静かに頷きを返してくれた。
「分かりました。拓真さんがそう仰るのならその様に致します。ですが、何があろうと私は拓真さんのお傍に居りますし、味方ですので」
「有難うございます」
小百合さんと同じ気持ちなのだろう雪音さんと菫さんも私も一緒ですよと目で訴えてくる。勿論二人の目を見ながら頷きを返す。その様子を見ていた目の前に座る女性が再び口を開く。
「国との会議の結果が出次第すぐに佐藤様にはお伝え致します。不利になる条件は出来るだけ排除するよう努力いたしますのであまりご心配なさらないで下さいね」
「分かりました。ご迷惑をお掛けしますがよろしくお願い致します」
こうして今回呼ばれた内容の一つが終わった。残りは俺が居た世界に戻る方法に進展があったという話だ。果たしてどの様な内容なのか……。
「では、二つ目の佐藤様が並行世界から転移した現象についての話になります。――研究機関が調査・研究をした結果とある未知の物質が発見されました。それは佐藤様がこの世界に転移して一週間程経ち、栄養失調で倒れられて病院に運ばれた直後に我々が現場調査でbar周辺に赴いた際に採取した空気に含まれていました。あらゆる原子・元素とも違う今までに発見されていない物であり、どの様な装置を使っても解析が出来ませんでした」
「ですが、進展があったという事は何かしらの発見があったという事ですね?」
「はい。佐藤様は無質超越理論というのはご存じでしょうか?」
「いえ、寡聞にして存じません」
「無質超越理論と言うのはざっくりと説明すると世界を構成する無の物質が存在していて、それが変質した場合異なる世界へ移動する鍵になるというオカルト染みた理論です。大昔に学会にて発表されたのですが、あまりにも非現実的な内容である上に実証も出来ないので学者の妄想と笑いものにされたと残されています」
確かに余りにも突拍子が無いし子供が考えたような話だ。そもそも世界を構成するのは何か?等いまだに解明されていない事なのに無の物質がそれです!なんて言われても??となるのが普通だ。だからこそ今まで誰の目にも触れずに埃を被っていたのだろう。だが、それは俺と言う異世界人の登場で変わったと……。
「では、その未知の物質が無の物質かもしれないという事ですか?」
「その可能性はゼロではありませんが、何分あらゆる検査方法を用いても解明出来ていないので現状では何とも言えません。仮に無の物質だった場合どの様な方法を取れば世界間移動が出来るのかという問題に直面しますし……」
「確かにそうですね。発表された理論では鍵になるという事でしたし、じゃあどうすれば良いのと言う話になりますね」
「はい。ですので解析・研究には長い年月が掛かると思われます。佐藤様がご存命の内に世界間移動が可能になる可能性は――極めて低いかと」
うん、俺もそう思う。そもそも異なる世界に行くなんて空想の話だし、どれだけ最先端科学を駆使しても実現なんて数百年はかかるのではないだろうか。まあ、こうして進展があっただけでも儲けものだし有難い話である。と同時に俺が生きている内に元の世界に帰るということはほぼ不可能という事がハッキリした訳だ。
もう二度と親や友達、叔父さんに会えないと思うと寂寥感に襲われる。心ではもう会えないかもしれないという事は分かっていたし、覚悟も決めていた。だけど改めて現実を突きつけられると辛いものがあるな……。だけどその思いをこの場で吐き出す事はしてはいけない。グッと腹に力を込めて胸の裡に全てを押し込む。
「色々とご尽力下さり有難うございます。こうして進展があったと知れただけでも希望が持てます」
「はい。日本王国最高峰の研究機関が心血を注いで良い結果を出せる様努力していますので時間はかかるかと思いますがお待ち頂ければと思います」
牛歩の歩みかもしれないが、遠い未来に異なる世界に行く事が可能になればこの世界は劇的な変化をするだろう。男女比率が改善されるだろうし、滅亡を待つしかなくただただ手を拱ている時は終わりを告げ、明るい未来が待つ世界になるかもしれない。それは俺がこの世界にやって来た事が無駄ではなかったという証明だし、立派な証になる。
そう考えるとなんだか気持ちも前向きになると言うものだ。今日ここにきてお話を聞けて本当に良かったし、沢山得るものがあった。
「改めて本日はこのような機会を設けて頂き有難うございました」
「いえ、こちらこそこうして佐藤様と直接お話しできて嬉しかったです」
微笑みながらそう言葉を紡ぐ彼女の姿に思わず見惚れてしまう。なんというかキリッとした雰囲気と表情から一変して柔らかく優しい表情をされるとギャップにドキッとしてしまうのは俺だけでは無いだろう。これがギャップ萌えか……等と下らない事を考えているとふとそういえば目の前に座る女性の名前を聞いていなかった事に気付く。ここまで話して今更かよと思うかもしれないが、入室してからの流れで聞くチャンスが無かったのだ。遅ればせながらお名前を教えてもらおう。
「すみません。まだお名前を教えてもらっていなかったのでお聞きしてもよろしいですか?」
「あっ、すみません。私ったらまだ自己紹介をしておりませんでしたね。失礼致しました。私は軍警察特別警護対象保護課課長の氷川美沙と申します」
「課長さんだったのですね。という事は菫さ――倉敷さんの上司という事ですか」
「はい。そこに居ります倉敷の直属の上司になります。それと呼び方はいつも通りで構いませんよ」
「すみません。お気遣い頂き有難うございます」
つい、いつものように菫さんと言ってしまったが、こういう公式の場で名前呼びは基本的にはNGだ。慌てて呼び名をしたが時すでに遅し。恥ずかしい所を見せてしまったと頬が赤くなるのが分かる。
「ふふっ、倉敷とは仲が宜しいのですね」
「はい。いつもお世話になっておりますし公私ともに助けて頂いています」
「まあ、男性からその様な事を言われるなんて羨ましですし、女冥利に尽きますね」
「本当に私には勿体ない女性です。いつか――」
言葉を続けようとした矢先にぐぅぅ~~と盛大にお腹が鳴ってしまった。今日はいつもより早起きして出掛ける準備をしていた為ご飯を食べていなかったのだ。折角雪音さんに用意して貰ったのに申し訳ない気持ちで一杯だが、時間と言うのは待ってはくれないので泣く泣く朝ご飯を食べるのを諦めたという経緯がある。その結果話し合いの場で盛大にお腹を鳴らすという失態をしたのだから目も当てられない。余りの恥ずかしさに耳まで顔を赤くしていると、横に座る雪音さんが声を掛けてくる。
「拓真さん。朝ご飯は食べていないのですか?」
「はい。準備にバタバタしていて食べる時間が無くて……」
「そうだったのですね。この後お仕事ですし何も食べないと身体が持たないと思ので少し遅いですがお昼にしませんか?」
「それは有難いですが、今の時間だとランチも終わっていますしどうしよう」
十五時を過ぎているので当然飲食店のランチタイムは終了している。お店によっては夕方~夜の営業まで閉店している所もあるだろう。となると営業しているお店を探すところから始めなくてはいけなくなる。さてどうしたもんか……と思考を巡らせていると菫さんがとある提案をしてきた。
「でしたら、ここの食堂を利用しては如何でしょうか?」
「ここというと、軍警察のですか?」
「はい。本来であれば関係者以外の利用は禁止されているのですが、拓真さんであれば問題無いはずです。――氷川課長。今から食堂を利用しても大丈夫でしょうか?」
「問題ありません。もし何か言ってくる人がいても私の方で対応しますので」
「分かりました。それでは行きましょうか」
とんとん拍子に話が進み、食堂に移動する事になった。てっきり俺達だけで行くのかなと思っていたが氷川さんを始めとした会議室に居る全員が席を立ちゾロゾロと付いてくる。あのまま、はいさようならでは少し寂しかったし俺としては有難い。それに護衛や警備の面で俺から離れるわけにはいかないと言うのもあるのだろう。
そんな事を考えつつエレベーターに乗り下のフロアへ移動した後、少し歩くと大きなエンジンドアが目に入ってくる。縦にも横にもデカくゆうに十人くらいは同時に中へ入る事が出来るだろう大きさだ。滅茶苦茶大きいなと愚にもつかない感想を浮かべつつ扉を潜ると広々とした空間が出迎えてくれる。流石にこの時間だから人は少ないだろうと思っていたが座席が四割程埋まっており、時間に関係なく利用する人が居るのだなとちょっと驚いた。そして驚いたのは俺だけでなく談笑していたり、タブレット端末を見ながら話していた人達が一斉に俺を見て固まる。銃を持った護衛の人が複数人居て、更にはエリート中のエリートである特別警護対象保護課課長までいるのだ。そら驚いて固まりもするわなと一人納得しかけたが、全員の視線が俺に向いている事に気付いた。……あー、これはいつものあれですね。精神的に鍛えられている軍警察の人でも一般人と同じようになっている事に少し笑いそうになったが何とか堪える。
「拓真さん。この食堂はそこにある端末でメニューを選ぶことが出来ますよ」
「そうなんですね。――ふむふむ。かなりメニューが豊富ですね」
「はい。隊員の要望になるべく応えるべく料理の種類は和洋中の他にイタリア料理やジャンクフードもあります」
菫さんの言う通りハンバーガーやホットドッグ、フライドチキン等のジャンクな食べ物をある。今回はそれらはスルーしよう。確りとした食事を摂りたいしね。という事で選んだのは豚カツ定食と野菜たっぷりポトフ定食だ。肉と野菜で栄養バランスも取れているしお腹にも溜まるので今日の仕事終わりまでお腹が空くことは無いだろう。さっそくパネルをタッチして料理を注文する。
「菫さん、注文が終わりました。受け取りはどこですればいいんですか?」
「あそこで受け取ることが出来ます。私達が着くころには出来上がっていると思いますよ」
「早いですね。ここから歩いて一~二分位の距離なのに」
「回転が遅いとお昼が終わっちゃいますし、食堂に来る人の数も膨大ですから。混んでいる時はこれでも結構待たされるんですよ」
「そうなんですね」
なんて話している内に受け取りカウンターに着き、お姉さんから豚カツ定食とポトフ定食を受け取る。豚カツから揚げたての良い香りが何とも食欲をそそる。
早く食べたい気持ちが先行してしまって、すぐ近くにある席に座る事にした。幸いにして近くに食事している人は居ないし大丈夫だろう。というわけで早速手を合わせて頂きます。
「まずは豚カツから頂こうかな。えーと……」
「はい、どうぞ」
「有難うございます」
何も言わずとも今何が欲しいかを察してすぐに菫さんがソースを手渡してくる。休日に食事を作りに来てくれた際に一緒に食べているが、その時にも同じようにこちらが何を欲しているかを察して用意してくれるので本当に良くできた女性だと思う。
そんな事を思いながらソースを軽くひとかけしてから口に入れると、サクッとした食感と肉の甘み、そして少し濃い目のソースが口の中に広がる。
「美味しい。とてもではないけど社員食堂のレベルじゃないです」
「ふふっ、食事は私達にとって特に重要ですので力を入れているんですよ」
「そうなんですね。しかし美味しいな」
菫さんが説明してくれたが、それにしてもこのレベルの料理は早々お目に掛れないよ。俺が居た世界でも超大手企業とかその辺じゃないとコスト的に無理だと思うし、それを考えれば流石は軍警察と言った所か。
黙々と食べ進めているとふいに横から手が伸びてきたので思わず振り返ると、微笑みを浮かべている雪音さんが目に入る。
「拓真さん、お口にソースが付いているので拭きますね」
言うが早いか口元に手が伸びハンカチで優しく口を拭かれる。
「はい、綺麗になりました」
「すみません。夢中で食べていたので気が付きませんでした。子供みたいで恥ずかしい……」
「あら、とっても可愛らしかったですし私は気にならなかったですよ」
「お気遣いありがとうございます」
いやはや、いい歳した大人が口にソースをつけているとか小さい子供なら可愛げがあるし、十代半ばの美少女とかなら萌えるかもしれないがオッサンだと絵面的に最悪だよな。しかも超美人な人に口元を拭いてもらうとか……羞恥の極致。もう遅いけど気を付けて食べよう。
そうして食事を再開して少し経った辺りで、氷川さんが少し驚いた表情で俺に話しかけてくる。
「佐藤様は健啖家でいらっしゃるのですね。それに倉敷や静川さんとのやりとりはまるで熟年夫婦の様な阿吽の呼吸でしたね」
「この世界基準では確かに健啖家になりますね。ですが、俺の居た世界ではこれくらいが普通なんですよ。二人前でようやく一人前の量なのでどうしてもたくさん食べていると感じるかもしれませんね」
「成程。では、男性だから沢山食べるという事では無いんですね」
「ですね。まあこの世界の男とは会った事が無いので比較は出来ませんが俺の場合はそうです。それと菫さんや雪音さん、小百合さんとは一緒に食事をする機会が多いので自然とそうなったといいますか」
「――特別な日などではなく日常的に一緒に食事をしている……のですか?」
「そうですね。毎日ご飯を作って貰ったり、家事をして貰っています」
あれ?世界から音が消えたぞ。そして時が止まったかのように誰も身動ぎすらしない。もしかして身の回りのお世話をさせているのは拙かっただろうか?菫さんの職務はあくまで俺の警護だし家政婦みたいな真似をさせるな!とお叱りを受けても仕方ない。完全に失言だったし、やらかしである。どうやって弁明しようかと必死で頭を働かせていると氷川さんがわなわなと唇を震わせながら絞り出すように言葉を吐きだす。
「毎日男性のお世話を出来るなんて羨ましい。倉敷。私と立場を代わって下さい。お金なら言い値で払いますし、望むのであれば課長の座を譲ります」
「幾ら課長でも駄目です。拓真さんの身の回りの事をするのは私の生きがいですし、どの様な条件を出されても絶対に譲りません」
「…………はぁ~、そうよね。例え頭に銃を突きつけられてもNOと言うわよね。分かってはいるのだけど……羨ましい」
物凄くガッカリした表情を浮かべながら俯いてしまったよ。あのキリッとしていて氷の様な印象の女性が意気消沈している姿は胸にくるものがあるな。なんとか笑顔にしてあげたいが食事や家事は雪音さん達三人が譲る事は無いし、となるとあれかな?
「あの、氷川さん。私の身の回りの事をお任せすることは出来ませんが、お店にいらした際に差し入れという事でお菓子やおかず等でしたら受け取ることが出来ます」
かなり上から目線で言っているし、もし俺がそんな事を言われたらムカッとくるけど今できる事はこれくらいしかないんだ。差し入れなら雪音さん達も嫌がらないだろうし、氷川さんも間接的に俺の生活を支えることが出来るのでWin-Winだと思うのだが。
果たして氷川さんの反応は如何に。
「本当に宜しいのですか?でも、営業中に差し入れなどご迷惑になるかもしれませんし……」
「大丈夫ですよ。他のお客様から差し入れを貰う事もありますし、バックヤードに冷蔵庫もありますから足が早い物でも問題ありません」
「――そう言う事でしたら今度お店に行った時にお持ちしますね」
「はい、楽しみにしています」
俺がそう答えると先程までの気落ちした表情から一変し、ニコニコと嬉しそうな表情を浮かべている。うん、やっぱり女性は笑っている顔が一番だ。そう思いつつ止まっていた食事を再開する。
その後も他愛無い話で盛り上がりつつ食事を終えて雪音さんが買ってきてくれたペットボトルのお茶で一息つきながら食休み中だ。お腹が一杯になりぼぉ~としていると壁に貼られているポスターが目に入る。ポスターには軍警察航空基地で再来週末に大規模な航空ショー&お祭りが開催されるとデカデカと書かれていた。俺が居た世界でも軍の施設でショーやイベントをするのはそこそこあったが一度も言った事は無い。仕事の関係上どうしても夜型の生活になってしまうので見に行く機会が無いと言うのもあるし、一人で行くのも寂しいから行ってみたい気持ちはあれど行動に移せずにいた訳だ。――友達や彼女と一緒に行けば良いという意見もあるかもしれないが、社会人になると友達付き合いが希薄になるし彼女なんて今までいた事が無いから……。
少し自虐的になりつつも行ってみたいなと思っていると、横に座る菫さんから声を掛けられた。
「拓真さんは航空ショーにご興味があるのですか?」
「そうですね。実は前から一度行ってみたいと思っていたんです」
「そう言う事でしたら、皆で一緒に行ってみませんか?軍警察の施設なので色々と融通も利きますし、警備や警護の面でも万全の態勢を敷けますので」
「そう言う事だったら行ってみようかな。雪音さんと小百合さんは再来週末に何か予定が入っていますか?」
「空いていますのでご一緒致します」
「私も予定は入っていませんので拓真さんと一緒に行きます」
雪音さんも小百合さんもOKっと。割と直近だったから難しいかなと思っていたけど大丈夫そうで良かった。後は今週中に待ち合わせ場所とか諸々を詰めていけば良いか。あっ、折角だからあの子達も誘ってみようかな。明日にでも聞いてみよう。
頭の中で今後の予定を組み立てていると、真剣な表情をした氷川さんがやや強張った声で俺に話しかけてくる。
「あの、佐藤様。私も同行してもよろしいでしょうか?勿論警護要員としてですが、航空基地には知り合いもいますので何かあった場合にお力になれるかと」
「私として是非お願いしたい所ですが、お仕事の方は大丈夫ですか?それに週末ですしもしお休みでしたら申し訳ないです」
「仕事の方は問題ありません。佐藤様の警護をするのが私の仕事ですから。それと再来週末は非番ではありませんのでそちらも大丈夫です」
「分かりました。それでは是非お願い致します」
「お任せ下さい」
そうして思いがけない所からテーブルを囲んでいる面子で出掛ける事になるのだった。




