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第十九話

 今日と明日はお店が休みなのでゆっくりと過ごせる。昼過ぎに起きて、ご飯を食べ後小型端末を弄りながら適当にニュースを見たり、気になった情報を調べたりしていると一時間程経っていた。まだまだ今日は始まったばかりだが、早速やる事が無くなってしまったよ。元居た世界では小説を読んだり、アニメを見たり、ゲームをしたりとやる事はあったんだけどこの世界では兎角男性向け娯楽が少ない。――男女比が著しく傾いている為商売として考えた時に女性をターゲットにするのは当然だし、数少ない男性向けに商品を開発したとしても売れないんだから当たり前と言える。では、男性は普段何をして過ごしているのかと言うと正直俺も分からない。その手の情報が一切無いからだ。だからここからは俺の想像になってしまうが毎日ネットサーフィンをしたり、ベッドでゴロゴロして過ごしているのではないかと思う。仕事をしている訳でも無いし、学校に通っている訳でも無い完全なるニートだし外出もしないとなればそれくらいしか思い当たる事が無いんだよね。果たしてそれで生きていると言えるのかと問われれば……疑問だ。人として終わっているし、ただ惰性で生命活動を維持しているだけという感じがするんだ。それでも家族や周りの人達、そして社会は当然として受け入れているし、それで良いと思っている所が末恐ろしい。

 ……この世界の女性は兎に角男性に尽くすし、世話を焼いてくれる。それはもう過剰なほど――いや、異常なほどにね。今まで菫さんや雪音さん、その他女性と接してきて彼女達が俺を不快にさせた事など一度も無いし、こちらが何も言わなくてもさり気無く手助けしてくれたりと至れり尽くせりでこのままじゃ駄目男になってしまうと危機感を抱いた事は一度や二度では無い。改めて振り返ってみると俺も一歩間違えればこの世界の男性と同じ道を辿っていたかもしれないんだよな。思わず背筋が寒くなってしまう。

 堕落した人間にならない様に自分で出来る事は自分でやって、女性に頼る場合でも節度を持って、一定のラインを越えない様に注意しなければな。これは俺の為でもあるし、ある意味女性の為でもあるんだから忘れない様に心に確りと刻み込もう。


 そうして考え事をしている内にある程度時間は経ち現在十四時を少し回った所。なんとなくこのまま自宅で無為に時間を過ごすのも嫌なので街にでも行こうかな。特に何か買いたい物があるわけでも無いけど適当にブラつくのも悪くない。そうと決まれば出掛ける準備をしよう。

 クローゼットから適当に服を選んできた後は、髪をセットして身嗜みはOK。小型端末もズボンのポケットに入れたし準備完了したので行きますか。

 最初は電車に乗って街まで行こうと思っていたが、土曜日という事もあり混んでいそうだったのでタクシーで向かう事にする。無人タクシーで繁華街のタクシー乗り場まで移動して車から降りると目に飛び込んでくるのは大勢の人、人。子供と一緒に歩いている母親や、友達と一緒に楽しそうに話している人達、そして足早にどこかに向かうスーツ姿の女性等々様々な女性が歩いている。

 そんな光景を見つつ、俺も歩き出した。特に行く当ても無いので目についたお店を冷やかそうかなと思っている。そんなこんなで最初に気になったお店は良い匂いを漂わせているお団子屋さんだ。屋台風の作りで路面に面している部分にはホログラムでメニューが表示されている。定番の餡子、ゴマ、醤油に加えてザラメをまぶした物や、激辛唐辛子粉末を練り込んだ変わり種まで様々な商品がある。複数人で遊びに来ているならそれぞれ違う物を選んで一口貰うという方法を取れるのだが、生憎俺は一人なのでド定番かつ間違いのないゴマを選ぶことにした。

「すみません。ゴマ団子を一つお願いします」

「はーい。かしこま……」

 言葉を途中で止めたと思ったら何度も目をゴシゴシと擦った後俺の顔をジッーと見てくる。それに対して笑顔で優しく声を掛けてあげる。

「大丈夫ですか?体調が悪かったりしますか?」

「えっ?えっと、はい大丈夫です!あの、醤油団子をお一つですね?」

「ゴマ団子を一つです」

「し、失礼致しました。すぐにご用意いたしますので少々お待ち下さい」

 顔を真っ赤にしながらも、手際よく団子をパックに入れる。だが、一つと注文したのになぜか三本パックに入っているのは俺の見間違いでは無いだろう。

「お待たせいたしました。お会計は百三十円になります」

「あの、注文よりも本数が多いのですが間違いでは?」

「サービスになります。男性がお店に来て頂いただけではなく、こうして私なんかとお話してくれたお礼です。本当はお金をお渡ししたり、お望みの物をご用意すべきなのですが今できる事がこれくらいしか無くて……本当にすみません」

「いえ、とんでもないです。こうしてサービスして貰えただけで嬉しいですし、感謝していますので」

「はうぅぅ。なんてお優しいのでしょうか。あの、本当に有難うございます」

「こちらこそ有難うございます。では、これで失礼しますね」

「はい、お気をつけて」

 そうして店員さんと別れた後、早速団子を食べる為に適当に座れる場所を探す事に。きょろきょろと辺りを見回しつつ暫し歩いた先にベンチが並んでいる一角を発見。幾つかは座られてしまっていたが、丁度今いる所から近い位置に空いているベンチがあったのでそこに腰を下ろそう。

「ふい~」

 ベンチに座って第一声がこれとかオヤジくさいけどつい口から漏れてしまうのだから仕方ない。座った時に『どっこいしょ』と言ったり、風呂に浸かる時『あぁ~』って無意識に口をつくのは誰しもが経験がある事だろう。だから他人からうわぁー……なんて思われても気にしない。男同士なら何も思わないだろうし、女性も差して気にも留めないだろうからね。

 さて、一旦下らない思考を打ち切って先程買った団子でも食べようかな。袋からパックを取り出していざ食べんとした時声を掛けられた。

「あれ、拓真さん?」

「んっ?――小百合さん。こんにちは」

「こんにちは。こんな所でお会いするなんて奇遇ですね」

「確かに。あっ、立ち話もなんですし良かったら座りませんか」

「では、失礼します」

 隣に座ったのを確認してから再び口を開く。

「小百合さんは買い物に来たんですか?」

「はい。授業で使う物がありましてそれを買いに来ました」

 そういって袋を持ち上げて見せる。授業で使うものね……って学生だったの?えっ、本当に?一応それとなく確認してみるか。俺の聞き間違いという線も無きにしも非ずだし。

「小百合さんは学生だったんですね。てっきり社会人かと思っていました」

「今年大学三年になりました。周りからよく大人っぽいと言われるので拓真さんがそう思われるのも仕方ないかと」

「そうなんですね。いや、これは失礼しました」

「いえいえ、私がもっと早くにお伝えしていれば良かっただけですので」

「――あっ、そうだ。よかったら団子食べませんか?さっきお店で買ったんですけどよければ」

「頂いてもよろしいのですか?」

「はい。ちなみに全部ゴマ団子なんですが大丈夫ですか?」

「ゴマは好きなので嬉しいです。では一本頂きますね」

「どうぞ」

 小百合さんが取った後俺も串を取り一口。んっ、美味い。練りゴマとすりゴマが絶妙な加減で配合されており舌を楽しませる。甘さも控えめなのでゴマの風味が存分に楽しめるし、団子もモチモチとしているが、柔らかすぎず固すぎずいい塩梅で食べやすい。ついつい無言で黙々と食べてしまう。そんな中不意に横合いから声を掛けられる。

「拓真さん、お口の横にゴマが付いていますよ」

「えっ?どこですか?」

「そのままじっとしていて下さいね。今お拭きしますから」

 そう言うといつの間にか手に持っていたハンカチで口元を優しく拭かれる。その際お互いの距離が縮まり小百合さんからとてもいい香りが鼻孔を擽る。香水でも無いしシャンプーや柔軟剤でもない、優しくて何時までも嗅いでいたくなるとてもいい香り。だが、口元を拭くのは一瞬で終わり小百合さんが離れてしまう。

「はい、綺麗になりました」

「すみません、お手数をお掛けして。いい年して口に恥ずかしいです」

「ふふっ、そんなことはありませんよ。とても可愛らしかったですし、こうして男性のお世話を出来るなんて夢見たいですから」

 微笑みながらそう言ってくれるが、やはり恥ずかしさは消えない。清楚可憐な女性から色々として貰うのは嬉しいが、出来れば今回みたいな子供みたいなやらかしでお世話して貰うのは避けたい。主に俺のメンタルに多大な影響が出るのでね。まあ、今回は小百合さんが喜んでいるから良しとしよう。

 取り敢えずは残りの団子を食べてしまおう。黙々と食べてあっという間に二本食べ終えてしまった。

「ふぅ、ご馳走様でした」

「ご馳走様でした。とても美味しかったです」

「お口に合ったようで良かった。っと、飲み物を買うのを忘れていたのでちょっと行ってきますね。小百合さんは何が良いですか?」

「それでしたら私が買ってきますよ。拓真さんは何かご希望はありますか?」

「それじゃあ、お茶をお願いします」

「分かりました。それでは少々お待ち下さい」

 自販機に向けて歩いて行く後姿を見送る。なんか女性をアゴで使っているみたいで申し訳なく感じるし後で確りとお礼を言おう。なんて考えている間にペットボトルを二つ抱えながら戻ってきたので一本を受け取る。

「有難うございます。お金払いますね」

「いえ、大丈夫ですよ。お団子を御馳走になったお礼です」

「なんかすみません。――じゃあ、頂きます」

 キャップを外し勢いよく喉にお茶を流し込む。うー、美味い。やはり和菓子にはお茶が一番だな。口の中に残っていた甘さがお茶の渋みが洗い流してくれる。

「ふぅ~」

「ふふっ、一気に飲みましたね。もしかして喉が渇いていたんですか?」

「はい。ようやく人心地付けました」

「それはよかったです。拓真さんはこの後はもうお帰りになるのですか?」

「いえ、夜くらいまで適当にぶらつこうかなと思っています。小百合さんはこの後の予定はあるんですか?」

「私は特にありません。とはいえ家に帰ってもやる事がないので暇なのですが」

「じゃあ、もし良かったら一緒に街を見て回りませんか?」

「よろしいのですか?」

「勿論です。一人じゃちょっと寂しかったので」

「では、お言葉に甘えさせてもらいますね。――拓真さんは普段からお一人で出掛けてられているのですか?」

「普段は仲の良い人と一緒の事が多いですね。街に遊びに来るのもそうだし、どこかに出掛ける場合もその人達とって言う感じで」

「そうなんですね。あの、もしかしてその方達とはお付き合いをされているのでしょうか?」

「いえいえ、付き合ってはいません。俺がこのせか……あー、なんというかその……」

「拓真さんのご事情は母から聞いておりますので濁さなくても大丈夫ですよ」

「えっ?俺に関する情報は限られた人しか知らないはずなんですが」

 小百合さんの発言に思わず身構えてしまう。俺が別の世界から転移してきた事や、男児が生まれやすい精子を持っている等々は極一部の人しか知らないと菫さんが言っていた。勿論家族と言えども他言無用だしもし漏らしてしまえば厳罰が処されるはずだ。となれば考えられるのは――とそこまで考えた時小百合さんが真面目な顔でこちらを見ながら口を開く。

「今からお話しする事は内密にして欲しいのですが、私の母は日本王国の女王なんです」

「………………」

「いきなり言われても信じられませんよね。こちらをご覧下さい」

 そういって差し出された小型端末に映っていたのはいつか見た事のある日本王国女王と小百合さんが仲良さげに写っている写真だった。それも一枚や二枚では無く似たような写真が沢山あるし、なかには明らかに自宅で撮影したと思わしき物もある。ここまで明確な証拠を出されてしまえば疑う余地は無い。

「本当に女王陛下の娘さんだったんですね。疑ってしまい申し訳ありませんでした。また、これまでの御無礼をお許し下さい」

「そのように畏まる必要はありませんよ。今までどおりで大丈夫ですから」

「いえ、流石にそれはマズイと思いますので」

「母が女王と言う立場なだけであって、私はただの一般人ですから。それに拓真さんに他人行儀な態度を取られると凄く寂しいです」

 今にも泣き出しそうな表情で言われると、これ以上何かを言うのは躊躇われてしまう。うーん、本人が問題無いと言うなら大丈夫かな?

「じゃあ、今まで通りに接する事にしますね」

「はい!」

 向日葵のような笑顔を向けられて、思わずその可愛さに見惚れてしまう。というか改めて考えてみるとこの短時間に何度も驚かされたし、衝撃の事実が判明したりとかなり濃い時間を過ごしているよな。でも、こういうのも悪くない。寧ろ小百合さんの事が知れて嬉しいし、もっといろいろな面を見てみたいと思う。それはこの後の散策で見られるかもしれないし、見られないかもしれないが楽しみに取っておこう。

「さて、確りと休憩も出来たし行きますか」

「分かりました。拓真さんは何か見たいお店や、場所はありますか?」

「そうですね……、特にこれと言ったのは無いので適当に目についた所に行きましょう」

「はい」

 そうしてベンチから立ち上がり、二人揃って歩き出す。

 一人で居た時は周りからの視線が凄かったし、小声で何か言われる事も多かったが隣に女性が居るとそれらも大分緩和される。その分小百合さんに羨望の眼差しやら嫉妬やらが向けられるので申し訳なさもあるわけで。心配になりさり気無く小百合さんの表情を伺うと周りの反応なんてどこ吹く風と言った感じで泰然としている。これは要らぬ心配だったかとも思うが、何かあれば俺が矢面に立とうという決意は変わらない。

 そんなこんなで周囲に気を配りつつ、最初に訪れたのは大型書店だ。紀伊國〇書店とかジュンク〇書店 みたいな所で広々としたスペースに多種多様な本や雑誌が置かれている。

「拓真さんは紙の本をお読みになるんですか?」

「前までは電子書籍がメインだったんですが、この世界に来てからは紙の書籍を読む事が多いですね」

「私も基本的には紙の方を読みます。ですが、古い本だったり絶版本等を読みたいと思った時はどうしても電子書籍になってしまいますね」

「確かに手に入りずらい本なんかはそうなりますね。紙には紙の良さがあるし、電子書籍にも良い所はあるので上手く使い分けしたい所ですね」

「そうですね」

 なんて他愛も無い話をしつつ適当に本棚を見ていると平積みされた雑誌が目に入る。表紙にはでかでかと『男性が魅力的に感じるファッション特集!』と書かれている。どんな内容か気になるが小百合さんも居るし立ち読みは避けるべきだろうか?少し悩んでいると隣から声を掛けられた。

「何か気になる雑誌でもありましたか?」

「この雑誌の謳い文句がちょっと気になりまして」

「でしたら少しお行儀が悪いですが、立ちながら読むのはどうでしょう?」

「じゃあ、少しだけ見てみますね」

 そうして雑誌を手に取り特集ページを開く。最初に目に飛び込んできたのは割と露出の激しい服を着たモデルさんだった。胸元が大きく開いていたり、かなり丈の短いスカートを履いていたりと目のやり場に困る服装で思わずページを捲ってしまう。すると似たような恰好をした写真がズラリと目に入ってくる。隣に女性が居るにも関わらずエロい格好をした女の人の写真を見ている男とか最悪過ぎる。これはあかんとそっと本を戻そうとしたが、平然とした様子で小百合さんが口を開く。

「拓真さんはこのような服装はどう思いますか?」

「うーん、ここまで露出が激しいのは好きではありませんね」

「そうなんですね。てっきり男性は胸元を見せたり、ミニスカートを好むと思っていたのですが」

「それは間違っていませんが、程度の問題ですね。例えばスカートを履く場合はストッキング肌の露出を抑えたり、胸元を見せるにしてもシャツの第二ボタンくらいまで開けるとかだったら良いんですが流石にここまでいくと……」

「成程。あまり肌を見せる服装は男性は好まない傾向にあるんですね。因みに拓真さんが好きな服装はどの様な感じなのでしょうか?」

「そうですね……。シンプルで清楚な服装が好きですね。例えばジャケットにスカートとか、Vネックカーディガンにミニスカートとかそういう系統が好きです。あと、個人的には黒ストッキングは着用していて欲しいです。特にスカートを履く場合は」

 結構勢いよく話してしまったが引かれていないだろうか?特に最後の黒スト云々の下りは力を込めて言ったので少し――いや、かなり心配だな。恐る恐る小百合さんの様子を伺うと何やら自分の服装を確認しているみたいだ。どうしたんだろうかと見ていると不意に顔を上げてこちらを見てくる。

「えっと、どうしましたか?」

「あの……私の格好はどうでしょうか?先程拓真さんがお話された服装の系統とは少し違いますが……」

「とても似合っていると思いますし、可愛いですよ」

「か、可愛いですか。あの、有難うございます」

 耳まで真っ赤にして恥ずかしがっている姿は滅茶苦茶可愛い。今日の小百合さんの服装は膝上スカートに黒ストッキング、そしてフリルがあしらわれた白のシャツにケープを羽織っている。清楚可憐な小百合さんの魅力を十二分に引き立たせる見事なセンスと言えるだろう。などと勝手に品評をしてしまったが、もう少し褒めてみようかな。

「小百合さんはスタイルが良いのでどんな服でも似合いそうですよね」

「そう言って貰えてとても嬉しいのですが、私としては拓真さん好みの服を着たいです。好きな男性の色に染まりたいというのは女性なら誰でも思う事ですので」

「そ、そうですか。なんかそう言われると照れてしまいますね」

「ふふっ、照れている拓真さんも素敵です」

 どこぞの青春ドラマだよ!って言いたくなるような面映い遣り取りだが、悪くない。こういう甘酸っぱい会話なんて灰色の高校生活を送っていた俺は一度も味わった事が無いから嬉しさも一入(ひとしお)だぜ。内心でニヤニヤしつつなんとなく周りを見てみると羨望の眼差しでこちらを見ている女性たちの姿が。うっ、よくよく考えれば通路に面している場所でイチャイチャしてたら誰でも見るよな。流石に恥ずかしいし、居た堪れないので二人揃って逃げる様に本屋を後にするのだった。

 今回得た教訓は人前でイチャつくのは程々にしましょうだ。

「ふぅ、ここまで来れば大丈夫かな。なんか小百合さんにも迷惑を掛けてしまってすみません」

「迷惑だなんて思っていませんし、なにより拓真さんとああいう遣り取りが出来てたのがとても嬉しかったです。なんだか恋人同士みたいで」

 最後の方は小声で言っていたので街の喧騒に搔き消されて聞き取れなかったが嫌では無かったのなら良かったです。さて、本屋を後にした訳だが次に行く場所は何も決めていないので適当に歩いているがどこか興味を引かれるお店はないだろうか?服屋とかアクセサリーショップとかはほぼほぼ女性向けなので若干入りずらいが小百合さんが興味があれば行く事も吝かではない。

 なんて考えていると、グゥ~とお腹の鳴る音が響く。

「この時間でしたら拓真さんにとってはお昼ご飯を食べるタイミングですよね。何か食べたい物はありますか?」

「うーん……、結構歩いて体力を使ったので、ガッツリしたご飯が食べたいです」

「ではファミレスなどよりも食堂のようなお店の方が良いですね。和洋中どれでも一通りはメニューにありますし」

「良いですね。そうしましょう。あっ、でも夕方という中途半端な時間ですけど小百合さんのお腹の減り具合はどうですか?夕ご飯にしてはやや早いですし」

「実は私も結構お腹が減っていたんです。なので問題ありません」

「そうですか。ここら辺で食堂ってどの辺りにあるんだろう?端末で調べてみます」

「私の方でも調べますね」

 そうして二人揃って端末片手にネットで調べてみると、割と近くに数件あった。その中で評価が一番高い所を選んで行く事に。歩いて十五分くらいで着くから空腹で倒れる心配もない。あぁ~、お腹減ったぜ。

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