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第一話

「ありがとうございました」

 深夜二時を回り最後のお客様を見送る。これで今日の営業も終わりだと一息ついた所で声を掛けられた。

「拓真。お疲れさん」

「店長、お疲れ様です」

「これから俺は店内の清掃をするから拓真は厨房の方を頼む」

「分かりました。あっ、そういえば最近腰を痛めたって言ってましたし気を付けて下さいよ」

「ありがとな。まっ、精々悪くならないようにやるさ」

 そう言って椅子を裏返してテーブルに載せていくのを見ながら俺も厨房へと足を向ける。

 barに限らず飲食店全般に言える事だが、営業時間が終了しても清掃や、仕込み、更に人によっては新たなレシピ作りに精を出す等々やる事が多い。ちなみにうちの店ではフードメニューも充実している為厨房も大きめで掃除するにも中々に骨が折れる。……とまあ愚痴が多くなってしまったが非常に遣り甲斐もあるし楽しいので興味があればチャレンジしてみるのも良いのではないだろうか。最近は若手が少なくなってきたって店長が愚痴っていたしな。――あと、女性にモテるのも忘れてはいけない。雰囲気がいい場所でお酒を飲みながら話す事になるので上手く転がせばコレよ!と左手の親指と人差し指で輪っかを作り、右人差し指で輪っかにズポズポしていた友人を思い出す。そう、バーテンダーはモテる……一部の例外を除いて。

 何を隠そう俺はその例外であり今まで彼女が居た事が無いんだよ。仕事柄身嗜みにも気を使っているし、女性客との会話も卒無く熟し、『拓真君と話していると本当に楽しいし、優しいから女性人気も高いのよね』なんて言われた事も一度や二度じゃない。それに筋トレもしていて所謂細マッチョに分類される体型をしている。だがしかし!モテない、彼女いない、童貞と見事に三拍子揃っているんだよなこれが。

 今となっては独身貴族を貫くしかないのかと半ばあきらめの境地に達しているが、心のどこかでいつかはなんて期待もしていたりして。――うだうだと考え事をしつつも掃除の手は一切止めずにテキパキと熟す。そうこうしている内にピカピカになったのでこれで終了。店長の方はもう少し時間が掛かるだろうしこのまま仕込みも済ませてしまおうか。


 丁度仕込みが終わりそうな頃に店長が厨房へとやって来た。

「おう、拓真掃除は終わったのか?」

「終わりました。仕込みの方ももう少しで終わります」

「そうか。じゃあそれが終わったら上がって良いぞ」

「分かりました。店の戸締りは俺がしますので店長は先に帰ってて下さい。まだ本調子じゃない様ですし、腰痛もありますから」

「悪いな。それじゃあとはよろしくな」

 手を挙げて更衣室へと向かう姿を見つつ、残りの仕込みを一気にする。

 ふぃ~、これで終わりっと。はい、今日も一日を疲れ様でしたと自分に労いの言葉を掛けつつ通路を進み二階へと続く階段を登る。ウチの店は二階建てで一階はbarで二階は居住スペースになっている。今どき住み込みで働くなんて珍しいかもしれないが、俺は割とこの働き方を気に入っていたりするんだよね。なんせ通勤時間が零だし、寝坊して遅刻なんて事も無い。安心安全ってなもんだし、すぐにベッドにダイブできるのも最高。

 あー、早く布団に包まりたいという気持ちが足を早める。ガチャリと扉を開けると、すぐに着替えてベッドの中へ。今日はいつもより疲れたし早々に寝ることにしよう。おやすみなさーい。


 翌日目を覚ますと部屋着のまま洗顔や歯磨きを済ませて、軽く朝食を摂る。その後は普段着に着替えた後お店の前の清掃をするのが日課だ。さてさて、今日も朝日――じゃなくて十三時過ぎてるし燦々と降り注ぐ太陽光を拝みに行きますか。

 掃除道具を手に扉を開けると目に飛び込んできたのは見知らぬ光景。……まてまてまて。ウチの店の前には建物は無かったはずだ。なのに今俺が見ているのは路地裏とそこから覗く高層ビル群。あれ、幻覚でも見ているのかな?と何度か目を擦ったり、頬を叩いたりしてみたが景色は変わらない。タラリ……と背筋に冷汗が流れる。何かの間違えであって欲しいと願いつつまずは情報収集をする為急ぎ自室へと戻りネットを開くとそこでも信じられない光景が。

『男性の出生率低下が止まらない。現在の男女比は一:二〇〇でありこのままでは人類滅亡の危機である』、『男性の家で働いていた女性が耐えきれずに暴行。男性に怪我は無かった模様だが心身の衰弱が激しく長期療養が必要。女性については裁判の結果はまだ出ていないが死刑で確定だろう』、『日本王国女王の肝いり政策が近日施行される。男性に対する更なる優遇措置と今までとは比にならない程の対女性警護対策が本政策の目玉だ』等々俄かには理解しがたい内容がつらつらとトップニュースとしてデカデカと表示されている。最初はフェイクニュースなんじゃないのか?と疑ったりもしたが、ある程度時間を掛けて調べた結果マジらしい。男女比一:二〇〇、日本王国、無傷の暴行で死刑確定とか知りたい事や疑問に思う事が山ほどあるし、それらに関して追々情報を追うとしてまずはこれからどうするかを考えなければいけない。

 順を追って問題解決に当たろう。


 一:この世界は日本とは似て非なる――そう、並行世界の様なものでそこに俺が転移してきた。それも店ごと。俄かには信じがたいが手に入る情報を統合した所この結論に行きあたる。ほぼ確定で良いだろう。


 二:お金についてだが、元居た世界の通貨は使えるのかだ。もし使えない場合は無一文となり物を買えなくなる。その先に待つのは餓死か窃盗しか道は無い。至急調べるべきだろう。


 三:並行世界転移をしたのでこの国の国籍が無い。ということは身分証明書もなく、医療・教育・財産的権利へのアクセスも不可。警察に職質でもされたら一発アウト。……今できる事は自宅に引きこもる事くらいだが、突如として現れた建物に不審がる人は必ずいるはずでそこから警察が来ようものならその時点でサヨウナラだ。何とかしたいがこればかりは俺にはどうしようも出来ない。天命を待つのみ。


 四:男女比一:二〇〇と明らかに狂っている世界で生きて行く事は可能なのか?想像だが人類存続の為に種馬扱いされる代償として先のニュースで見た男性優遇なんたらがあるのではと思ってしまう。一生を精子を出す機会と過ごすなんて真っ平御免だし、なんとかして元の世界に帰還できる方法を探すべきだろう。


 とまあ、喫緊でやらなければいけない事、考えなければいけない事はこんな所だろうか。なにはともあれ徹底的に情報を集めて生き抜いてやる!

 ……と意気込んでいた七日前の自分を殴ってやりたい。最初は厨房に食材もあるし、節約すれば数週間は生きられるだろうと思っていたがなんとその食材が消えていた。意味不明だがおそらく転移の際に消滅したんだろう。そう考えるしかない。食べ物が無いなら買えばいいじゃないと思うかもしれないが、元居た世界の通貨は見事に使えなかったです。というか通貨や紙幣と言った概念は昔の話であり今は全て電子マネーで決済をしているみたい。現ナマなんて昨今老人ですら持っていないし、若者に至っては現金?なにそれ?ってな感じなんだとか。はい、詰みました。幸い水やお酒はあるので生命線はギリギリ維持できているが何も喰わずに一週間も過ごせば死にそうになるのは必定で。まともに思考できない頭と、フラフラと揺れる身体に鞭を打ちスマホに番号を打ち込む。一一九と。そう、消防へ助けを求める緊急通報番号へと電話を掛けたのだ。プルルと一瞬の間を置きすぐに相手が言葉を投げかけてくる。

『火事ですか、救急ですか』

「きゅ……救急です」

『………………』

 一向に返事が返ってこない。なんかあったのか?

『た、大変申し訳ありませんが男性の方でしょうか?』

「はい」

『んんっ、失礼致しました。では、お名前を伺っても宜しいですか?』

佐藤拓真(さとうたくま)です」

『佐藤様ですね。年齢をお聞かせ願えますでしょうか』

「二十四歳です」

『若い。これは……とっ、すみません。すぐに救急を向かわせますので住所を教えて頂けますか』

「はい。住所は――」

『約十分でそちらに救急隊員が到着しますが、容態はどうでしょうか?』

「意識が朦朧として……かなり辛いです」

『玄関まで移動する事は出来ますか?無理であればなるべく廊下の方に動いて下さい』

「分かりまし――」

 そこまで言った所でとうとう力尽き意識を手放してしまう。スッと身体から力が抜け、重力に従い床へと倒れ込み最後にドスッという鈍い音のみが空間に木霊する。

『佐藤様?佐藤様、大丈夫ですか!私の声は聞こえますか?』

 必死でオペレーターさんが声を掛けてくるがそれに答える者はいない。こうして俺の並行世界への転移は終わる事にな――るのかは神のみぞ知る。


 何の前触れもなく深い深い深淵から意識が僅かに浮上する。目を開けようとするが鉛のように重く瞼は閉じたままで、身体も同様に指一本動かす事が出来ない。質の悪い金縛りにあったかのような状態で唯一の救いは音が聞こえるという事だ。優しい声色で何事かを話す女性の声が耳朶を打つ。心地良いその声色は不安を払い、安らぎを齎してくれる。それと同時に今にも泣き出しそうな、悲哀を含んだ声も聞こえてくる。何かあったのだろうかと心配になりその声に耳を傾けてみると、やや不明瞭ながら会話の内容が段々と分かってきた。どうやら俺を心配しているらしい。恐らく俺が倒れた事が原因だろうし、何時までも女性を悲しませる訳にもいかない。何とかして起きなくては!と決意した所で急激に上へと引っ張られる感覚と共に意識が覚醒した。

 最初に目に飛び込んできたのは見知らぬ天井。そして鼻孔を擽る微かな甘い香りだった。目覚めた瞬間に知らない場所にいると普通はパニックになるものだが、不思議と冷静であーこれ病院だわなんて考える余裕がある。そう、そこまでは問題無かったんだ。

「目が覚められてのですね!身体は動きますか?どこか痛い所はありますか?」

「こら、落ち着きなさい。今目覚めたばかりなんだから」

「うぅ、すみません」

 滅茶苦茶美人な女性二人が俺の前に立ち問答をしているではないか。一人は白衣を身に纏っているので恐らくは女医さんだろう。もう一人は軍人?警察?だろうか。どちらとも取れるような恰好をしている為判然としないな。ただまあ、一つだけ言える事は二人とも芸能人も裸足で逃げ出すくらいの美女という事だ。これが天国だろうかなんて益体も無い事を考えてしまうくらい俺に強烈なインパクト与えてくる。

「こんにちは。私は医者をしております静川雪音(しずかわゆきね)と申します」

「佐藤拓真です。あの、ここは病院ですよね?」

「はい。佐藤様から救急通報を受け自宅に向かいましたが廊下で倒れられていました。すぐに当病院に運び込まれて各種検査をしたところ栄養失調だったので、点滴を打ち目が覚められるのを待っていたんです」

「そうだったんですね。ご迷惑をお掛けして申し訳ありません」

 まだ身体が重く、立ち上がるのも凄く辛い為ベッドの上に座ったまま頭を下げる。少しして顔を上げると驚いた表情で固まっている二人。えっ、もしかしてこの世界では頭を下げて謝罪するのは失礼にあたる行為だったとか?それなら、かなりマズいんだけど……。

 なんて不安をよそに再起動して二人が慌てて言葉を紡ぐ。

「さ、さ、佐藤様。私達に頭を下げる必要などございません。寧ろ迷惑を掛けているのは私達の方ですから!ねっ、菫」

「うん。本来であれば私達が病室にこうして居る事自体必要な事とは言えかなり男性に負担を掛ける行為ですから。あの、少しだけお話を聞いたらすぐに出て行きますのでご寛恕下さい」

 顔を真っ青にしながら、懸命に言う二人を見て思い出した。この世界の男女比は一:二〇〇であり圧倒的に男性が少ない。その為国――いや、世界が男性を超優遇しているという事を。それを前提として考えれば彼女達の言動も然もありなんと言った所だ。

「いえいえ、迷惑だなんて思っていませんよ。というか俺も色々と聞きたい事があるので丁度良いです」

「寛大なお心遣い感謝いたします。……ですが、まだ目覚めたばかりですし詳しい話は後日ということで宜しいでしょうか?」

「はい。実を言うとまだ少し頭がぼっーとするし、身体も怠いのでそうして貰えると助かります」

「分かりました。菫もそれで問題無いわね?」

「うん、大丈夫です」

「では私達はこれで失礼致します」

 そう言ってから頭を下げて二人が退室する。はぁー、短い時間だったけど衝撃的な事が多かったし頭を整理する為にも少し寝るか。そうしてベッドに横になるとすぐに睡魔が襲ってきて眠りに就くのだった。


 明けて翌日。目を覚ますとカーテン越しに日の光が差し込んでくる。ふぁあ~と一つ欠伸をしながら身体を伸ばすと少し目が冴えてきた。そのまま時計へと目をやると十三時を過ぎた頃。昨日寝た時間から逆算すると十二時間は寝ていたことになる。うーん、流石にこれは寝過ぎだなと心の中で反省していると、タイミングを見計らったかのように扉がノックされる。

「はい、どうぞ」

「「失礼致します」」

 スッと扉を開けて中に入ってきたのは女医さん――静川雪音先生と菫と呼ばれていた女性だった。

「おはようございます。お加減はどうでしょうか?」

「はい、今の所目立った不調は無いですね」

「それはなによりです。見た所起きてすぐの様ですが、ご飯は食べられそうですか?」

「もうお昼は過ぎていますが、大丈夫ですか?なんなら売店に行って何か買ってきますが」

「問題ありませんよ。すぐに持ってきますね」

 そう言って退室していく。しかも二人揃って……。もしかしなくても俺嫌われているのではないのだろうか?会って二日目で女性に嫌われるとか心の傷は特大ですよ。なんて感傷に浸っている内にブランチと呼ぶには遅い時間だが、ご飯を持って来てくれたのでそれを無言で食べる。静川先生と菫さんからじっ~と見つめられながら。やや息苦しさを感じつつ食事も終えた所でいよいよ本題に入る事に。

 最初に口を開いたのは静川先生だった。

「まずは現状確認からさせて頂きます。佐藤様は六日前に倒れられ当病院に緊急搬送されました。結果としては栄養失調で外傷もなく暫く安静にすれば問題ありません」

「あれ?六日前ってどういうことですか?俺が倒れた日から二日しか経っていないのでは?」

「佐藤様は三日間昏睡状態で意識不明でした。普通では有り得ない事なので私達も細心の注意を払って見守っていましたが、二日目に無事意識を取り戻したわけです」

「三日も眠っていたんですか!?」

「はい」

 道理で最初に目が覚めた時身体が鉛のように重かったわけだ。寝返りなどで多少は身体を動かすとは言え寝たきりだったらそらそうなるわな。まあ、今は大分楽になったけど。というか今入院しているけどいつまでいればいいんだろうか?色々と考えなきゃいけない事や、やる事もあるから早めに退院したい所だ。そんな俺の考えを見透かしたように静川先生が答えを出してくれる。

「佐藤様の退院時期ですが、経過観察も兼ねて三週間後となります。ご不便をおかけしますが何卒ご容赦下さい」

 三週間ってかなり長くないか?怪我をしたとか病気とかなら分かるけど栄養失調でこんな長期間入院する事ってあるのかな。まあ、この世界基準で言えばなくもない……のかもしれないが。正直分からん。

「分かりました。それだけの期間が必要なのであれば従います」

「有難うございます。では、質問などはありますか?無ければ倉敷の方からお聞きした事があるのですが宜しいですか?」

「はい、お願いします」

 倉敷と呼ばれた女性がこちらを見た後一礼する。

「私は軍警察所属の倉敷菫(くらしきすみれ)と申します。佐藤様に幾つかご質問をさせて頂きますが、答えられる範囲で宜しいのでお答えいただければと思います」

「分かりました」

 とうとう来たかという心境で頷きながら返答を返す。真面目な話俺の事を少し調べれば不自然な点が山ほど出てくるからな。普通に考えれば何らかの罪に問われて刑務所行き確定だろうし、場合によっては最悪の事態も考えられる。さて、賽の目はどう出るか。

「まずは、佐藤様が搬送された際に身元確認の為お財布の中を拝見させて頂きました。その中で運転免許証がありましたがこの国の物とは明らかに違いました。念の為の確認として紙幣や硬貨も見てみましたがこちらも我が国で流通している物とは違う事が判明しました。この時点で私の手に負えるものではなくなり、上層部預かりとなりその権限で佐藤様の自宅関係を調査した結果……。6日前まではその場所は空き地であり建物などは無かった、土地の権利も国有であり建築許可などは下りていないと分かったのです。という事は一切建築工事を行わずに突如として建物が現れ、この国とは異なる身分証明書や通貨を持っている人が現れたという事になります」

ここまで言い切ってふっと小さく息を吐く倉敷さん。現状から言えば俺は突如現れた自分達と似て非なる存在となるだろう。どう割り切って考えたとしても道理がつかないし、超常的なナニカで済ませられる問題でもない。だが、これで済むはずもなく更に倉敷さんが説明を続ける。

「わが国では男性は全員DNAに紐づけた国籍管理をしております。――実は佐藤様が入院している間に採血したのですが、そのDNAを調べた結果データベースに該当する者は無しと出ました。単刀直入にお聞きします。佐藤様は何者なのでしょうか?」

こうなる事は当然の帰結であり、定められた結果と言えるだろう。ここで嘘や誤魔化しは通じないし、元の世界に帰る手段がない以上正直に話すしかない。相手が信じるかどうかはこの際置いておこう。

「分かりました。全てをお話します。ですが、私自身も未だに信じられない部分があり、また荒唐無稽な話になりますがすべて真実ですのでその点はご了承下さい」

そうして目が覚めたら突如として並行世界に転移してきた事、元の世界では男女比がほぼ一:一である事、日本王国ではなくただの日本で女王が即位していない等々頭の中で整理しつつ全てを話す。結局一時間程喋り続けてしまったがこれで俺が出せる情報は全てだ。二人は長い一人語りに相槌を打つくらいで口を挟むことは無かった。色々と聞きたい事や疑問などがあるだろうに本当に有難い限りです。

沈黙が空間を支配する中最初に口火を切ったのは静川先生だった。

「医師として言わせてもらいますが各種検査の結果佐藤様には一切の異常はありませんでした。当然脳にも問題は無く、言動や態度から見ても心身に障害を抱えているとは思えません」

「私としても静川に同意します。並行世界へ転移したと考えれば全ての辻褄が合いますし。それに一番佐藤様の言を真実たらしめているのは女性に対する忌避感や嫌悪感が一切無い事です」

「えっ?」

倉敷さんの発言に思わず間抜けな声が漏れてしまう。信じるに値する部分が女性に対する忌避感や嫌悪感が一切無い事って……えっ?

?で頭が満たされている俺に倉敷さんが優しく説明をしてくれた。その内容とは――

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