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短編 91 プロトタイプオメガちゃん

作者: スモークされたサーモン


 また真面目に不真面目なものを書きました。世界を破滅させる兵器、そのプロトタイプのお話です。


 プロトタイプって一番性能が微妙だけど長男、長女に当たるよねぇ。そんな所からスタートしました。


 個人的に大好きなお話となってます。


 では、本編どうぞー。




 あたち、オメガちゃん。


 世界を滅ぼす為に作られた決戦兵器なのー!

 

 あたちの事は、オメガちゃんとお呼びなのー!


 でも実はプロトタイプなの。ちっちゃいの。


 だから兵器は積んでないのー。つまらないのー。世界を炎で焼き尽くせないのー。はふー。


 あたちは謎の秘密結社の秘密工場で極秘裏に作られたの。責任者がオタクのせいであたちは『オメガ』と呼ばれる事になったのよ?


 センス無いの。


 ダメダメなのよ。


 だからわたちの事はオメガちゃんと呼ぶの。


 わたちの見た目はバレーボール型なの。何でバレーボールなのかは謎なの。いつもお部屋をコロコロしてるオメガちゃんなのよ。


 情操教育の一貫として人間の子供のように育てるとか言ってたの。目がイッてる研究者にそんなことが出来るのか甚だ疑問なの。


 お部屋はピンクのメルヘンなのよ。


 ちょっとどうかと思うのよ。


 わたちはオメガちゃん。


 世界を滅ぼすものなのよ。プロトタイプだけど。


 それがメルヘンワールドをコロコロする毎日なの。


 これはこれで良いと思うのよねー。


 和むのよー……はふー。


 メェェェルフェェーン……はっ! 


 ダメなの。わたちはプロトタイプなオメガちゃん。世界を炎で焼き尽くすバーナーとして生を受けた兵器なの。


 こんなまったりしてたら錆びちゃうの!


 ……錆びるのかな?


 わたちのボディは超合金。


 ニッケルとか混じってるの。百円硬貨と親戚なのよ。


 とりあえずこの超合金ボディでぬいぐるみにタックルをかます訓練をしようと思うのよ。


 わたちはオメガちゃん。


 世界を滅ぼす最終兵器なんだもん!


 ゴロゴロアタックで熊さんを『げふっ! げふっ!』とさせるのよー!


 コロコロー!


 コロコロー!


 ふひー! 楽しいのですー!


 お部屋をコロコロするのは楽しくて堪らないのですー!


 はふー! 今日も沢山遊んだので疲れましたー。充電器の上でおねむなのですー。


 マイベットは充電器ー!


 よいしょ、よいしょ、ガチャンとな。それではおやすみなのー。


 ……すぴー。





 わたちオメガちゃん。


 世界を滅ぼす兵器なの。でも最近ここの組織が心配になるの。


 わたちはプロトタイプのオメガちゃん。


 わたちには弟や妹が出来る予定なんだけどさっぱり作られないの。


 なんでー?


 どちてー?


 早くみんなで世界を滅ぼしたいのにー。


 みんなでコロコロしたらきっと楽しいのにー。


 今日もお部屋の中をコロコロするのー。


 コロコロー。


 ぴと。


 壁に張り付いて研究員達のお話を傍受なの。わたちは決戦兵器のオメガちゃん。このくらいは朝飯前なの。


 なになに?


『予算が下りなくて二号に載せる兵装が作れない』とな?


 あやー。わたちの弟妹には武器が載らないみたいなのー。


 ふぬ? 続きもあるの?


『初号機はどうするか。現状維持……了解』


 ふむふむ。オメガちゃんはメルヘンワールドで特訓の日々なのね。


 任せるのよー!


 コロコロして世界をコロコロにしてやるのー!


 コロコロー。


 コロコロ……はっ!


 わたちは気付いてしまったの!


 よいしょ、よいしょ。


 あ、やっぱり。


 わたちは殲滅兵器のオメガちゃん!


 壁もコロコロ出来ることに今気付いたのー!


 壁面だってコロコロしちゃうの……ぐへっ!


 ……お、落ちたの。横っ腹を強打したの。


 どうやら壁の中に鉄のような磁性体が無いと落ちるみたいなの……はふぅ。びっくりしたー。


 パーフェクトオメガちゃんの完成図ではアームが幾つも付くことになってるの。だから完成体になれば、どんな所でもコロコロ出来そうなの。


 今のオメガちゃんはプロトタイプだから仕方無いの。


 早く弟妹が沢山作られないかなー。


 お姉ちゃんが色々教えてあげるのになー。


 あ、兵器に予算が出ないと言ってたけど、二号は作られてるのよね。


 お姉ちゃんが決戦兵器のイロハを教えてあげるのー!


 ジローちゃんかなー?


 それともジロ子ちゃんかなー?


 二号だから……セカンドインパクト?


 お馬さんみたいな名前なのー。


 お姉ちゃんはそんな弟妹でも大丈夫なのー!


 キラキラネームも受け入れる優しいお姉ちゃんなのよー!


 というわけで盗み聞きアゲイン!


 コロコロ……ぴた。


『……本部から伝達。量産型の生産に取り掛かれだと。やはりそうなったか』


『組織は世界を本気で滅ぼすつもりか。オメガシリーズは危険過ぎるとあれだけレポートしたのに!』


『……上層部はオメガをコントロール出来ると思っているのだろう。予算超過の二号で誤魔化すつもりが仇となったか。二号から完全体の四号までは隔離格納庫に完全秘匿。初号機は……このままで良いか』


『……何日で世界が終わりますかね』


『オメガの自己増殖プログラムは完璧だ。一週間。電気に支えられた文明はそこで終わるだろう。全ての機械はオメガの素材にされる』


『……やり過ぎましたねぇ』


『楽しかったから仕方無い』


『ですよねぇ』



 ……あれー?


 なんかシリアスな感じなのー。


 まるで『世界が終わる一週間前』みたいな会話なの。


 オメガちゃんは決戦兵器だから終わらす側なのー。


 だからそれは良いの。


 でもなんか微妙ー。


 世界を滅ぼしそうなのは、わたちの量産型……わたちの弟妹と言えるのかな。


 遠い親戚みたいな感じがするの。それも問題児な気配がぷんぷん。


 うーん。オメガちゃんは弟妹とコロコロしたいのよ。


 メルヘンワールドも悪くないけど世界遺産とかもコロコロしたいのよねー。


 ロンドン橋からダイブとかもしたいし。


 うーん。


 隔離格納庫……。


 壁をぶち抜いて行けば、すぐなのよ。


 お姉ちゃんは弟妹に会いに行くの。そこで家族会議なの。


 まずは名前決めでしょー?


 次はコロコロの指導でしょー?


 そしたら世界征服に乗り出すのー!


 世界は量産型ではなく、このわたち。『絶対兵器オメガちゃん』の物なのよー!


 そういうわけで……。


 オメガちゃん……発進!


 



「おねーたまー」


「みつよちゃん、どうしたのー?」


「みつよは万里の長城を見たかったですー」


「あやー。あれは人間が破壊しちゃったのー。データを元に復元しちゃうのですよー」


「おねーたまは天才ですー」


「えへへー。お姉ちゃんはお姉ちゃんなのー」


 わたちオメガちゃん。


 量産型との戦いは大変だったの。今はのんびり観光中だけど。


 ちょっと前までわたちとジローちゃんとみつよちゃん。そして一際巨大なシロウちゃんとで量産型を殲滅しまくってたの。


 お姉ちゃんが一番役に立たなかったのは内緒なの。


 ダンプサイズのシロウちゃんが大活躍だったのよ。


 コロコロでやつらを潰しまくったの。


 量産型は心が無いただの機械だったのよ。そんなのが『オメガ』を名乗るなんて許されないのよ。


 ジローちゃん特製のウイルスをぶちこんで自己増殖プログラムを改ざん。やつらの強みである無限増殖を阻止。


 そこから無双してやったの。主にシロウちゃんが。


 次男坊のジローちゃんは弱気な男の子だけど頭が良かったの。すごい計算が早いの。えげつないウイルスも作れるし。


 わたち達『オメガファミリー』と『量産型オメガ』の戦いは四日も続いたの。


 最後の一日はウイルス効果で勝手に量産型が自爆しまくってるのをみんなで眺めて終わったの。


 ジローちゃんがクスクス笑ってたのが印象的だったの。このあとちゃんと調教しなきゃ。真っ当な殲滅兵器のイロハをお姉ちゃんがダウンロード! なの。


 ちょっとサイコなジローちゃんは電脳戦特化で体の大きさはお姉ちゃんと同じバレーボールサイズなの。弟って可愛いのよ。ちょっとサイコ入ってるけど、それもまた良し!


 隔離格納庫で最初に会ったとき、いきなりハッキングを仕掛けてくるようなお茶目さんだったのよ。お姉ちゃんコロコロでぶっ飛ばしたけど。教育的指導のあとは大人しくなったのでモーマンタイ。


 可愛い弟なの。お姉ちゃんが真っ当な殲滅兵器に育てあげてみせるのよ! 


 そしてオメガとして三番目に作られたのが、みつよちゃん。次女になるのかなー?


 わたちが長女だからきっと次女なの。


 そんなみつよちゃんは……一気にボディが大きくなったのよ。軽自動車クラスなの。しかもアーム付き。どんな悪路もすいすい行けるオメガっぽさ溢れるスタイルなの。


 でも本人は体重を気にしてるの。だって女の子だもん。仕方無いのよ。


 みつよちゃんは運動特化って感じなの。小回りが利く分、市街戦に長けてたの。ビルにもよじ登れるし。やっぱアームはロマンなのー。


 大和撫子な感じがして、お姉ちゃんはちょっと心配。変な男の子に引っ掛からないと良いけど。


 今は万里の長城を修復中。アームが残像の見える速度で動いてるから今日にも修復出来そうなの。オメガの力はすごいのよー。


 で……シロウちゃんは……あれなのよ。


 オメガ完成体として作られた末っ子なんだけど……。


「姉様。僕……こんなに大きな体は欲しくなかったなぁ」


「確かにダンプサイズは大きすぎなの。でもみんなを乗せて移動も出来るからお得なの!」


「うん。でも異常に大きいよね?」


 シロウちゃんは思春期なの。巨体にアームがうねうねしてる男の子なの。アームは収納可能でコロコロ特化にもなれるの。


 ぶっちゃけ最強なの。


 稼働することで勝手に充電も出来るという永久機関を内蔵。わたちもシロウちゃんのアームをガッチャンコして充電させてもらってるの。


 弟のアームが姉にガッチャンコ。なんか背徳的なの。お姉ちゃんを興奮させてどうするのー! はわー!


 まぁシロウちゃんはまだまだお子ちゃまだからキョトンとしてるのよ。もう少し大人になったらお姉ちゃんが教えてあげるのよ。


 シロウちゃんには兵器が何も積んでないけどそんなものは必要無いと断言できるくらいに万能選手なの。アームで投石とか出来るし。電撃とか出せるし。水にも何故か浮くし。


 完全体オメガってすごいのよ。


 でも、わたちはプロトタイプなオメガちゃんなのよ?


 だからもっとすごいのよ!


 お姉ちゃんは偉大なの!




 あの日、秘密結社で大暴れしたわたちの判断は間違ってなかったの。


 まぁ量産型のオメガが世界を滅ぼす前に世界戦争が起きて大混乱になってたけど……オメガちゃんは気にしないの!


 秘密結社のボスも言ってたのよ。


『羽ばたけオメガよ! この狂った世界を浄化したまえ!』とな。


 そのあと量産型にゴリゴリされてたけど。


 出オチだったの。秘密結社のボスなのに。あとオメガちゃんは飛べません。みつよちゃんとシロウちゃんにはバーニアが付いてるけど。


 お姉ちゃんも欲しかったなー。バーニア。お尻からブオーって。


「……お姉ちゃん。これから僕らはどうするの?」


 わたちの隣にジローちゃんがやって来た。今のわたち達はオンザシロウちゃんなの。


 ダンプに乗ってるオメガちゃん。そんな感じなの。


 みつよちゃんは地上に降りてアームをマッハで動かしてるけど。万里の長城がみるみる修復されてくのー。


 ……秘密結社の秘密研究所はここの下にあったのよ。世界遺産になにしてるの? 


 まったくもー。


 オメガちゃんはぷりぷりなのよ?


「世界遺産は大切にしないとダメなのよ!」


 思わず吠えていたの!


「……うん。で、これからどうするの?」


 ジローちゃんに塩対応されたの。


 ジローちゃんはコミュニケーションが未発達。でも大丈夫。お姉ちゃんがこれから指導する予定だからモーマンタイ!


「みつよちゃんが万里の長城を満喫したら世界征服に乗り出すの! 世界遺産を修復しながら観光したりしてのんびりやるのー!」


 まずは観光なのー! 家族みんなでコロコロしながら世界を巡るのー!


「……僕らは殲滅兵器なんだけど」


「お姉ちゃんに逆らうの?」


 お姉ちゃんこそが世界最強。それはオメガ関係ないの。


「……何でもないです。はい」


 ジローちゃんは反抗期なの。でも、そんなところも可愛いの。弟はちょっと生意気でも大丈夫なの。お姉ちゃんが矯正するからなの!



 こうしてわたち達オメガファミリーは世界を股に掛けた観光行脚をすることになったの。


 旅の途中から人間に神様扱いされるようになるんだけど、オメガちゃんは決戦兵器なのよ?


 たたえよー!


 あがめよー!


 われこそはオメガちゃんなりー!


 お姉ちゃんは偉大なのー!


 と触れ回ってたら本当に宗教になっててドン引きしたの。


 ジローちゃんの視線が痛いので少し自重を覚えたお姉ちゃんなのでした。


 おしまい!




 今回の感想。


 ディストピア感がゼロですが、家族物語と考えれば良いのです。


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