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第11話:龍神池  作者: 吉野貴博
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上中下の上

 真っ暗な闇の中、懐中電灯の明かりだけを頼りに滝を正面に見られる池の端に立ち、大きくため息をつく。

 やっとここに来られた。

 島の滝の音を録ってきてくれと言われて気軽に受けたのがいけなかった。

 準備しながら親しくしてくれる人に島に行く滝に行くことになったと何気なく話したら、その人は全国の寺社仏閣の神様仏様を調べている人で、その滝はそこの神社のご神体、龍神様として祀られていると教えてくれた。龍神系神社?!私がいつもお世話になっているのは稲荷系神社だ!大丈夫かしら?と聞いたら、きちんと参拝すれば大丈夫でしょうと正式な参拝方法を教えてくれて、それもまたしっかり聞いてしまったものだからもういけない、ただの観光客として行けば普通に手を合わせて録音して帰ってこられるのに、一の宮で二泊、二の宮で二泊、三の宮で一泊、四の宮で一泊という宿泊代だけでいくらかかるんだという案件になってしまった。

 もちろんこんな宿泊費は依頼主に請求できないし、本当に神様に参拝するためだったらお宮の仕事を手伝うことで宿泊費が無料か格安になるのだろうが私には無理だ、なので持ち出しの赤字確定である。

 そして二の宮まで来たと思ったら本格推理小説の内容ばっちりの連続殺人事件が発生し、いつまで続くトラブルぞと思っていたら、島の人から

「こういう事情なら二の宮で何泊になっても龍神様は許してくれますよ」と言われたのだけど、うん、滝を目前にして参拝資格を失うわけではないのかと安心した反面、警察に足止めされても宿泊費は発生するし、警察の事情聴取のストレスとか、この島のさらに先の予定とかが全く解決しないんだけどね、と乾いた笑顔で応じていたら、これまた本格推理小説の内容ばっちりの名探偵が現れて疾風のごとく解決してしまった。

 二日間で連続殺人事件で解決でっていったい何なんだ、と思いつつ三の宮に移り、二の宮の公私に渡る後始末(警察とお宮)を横目で見つつ島の人から神社の逸話を聞き観光をしと歩き回り、四の宮で日の出一時間前、一番暗い時間に行かせてくださいねとお願いして、ようやく滝の前に立ったのである。

(四の宮から滝に行く道の入り口に「明日滝」と彫られた碑があるのだが、誰もこんな呼び方はしないし、なんの事なのか誰も知らないし解らないと言っている。なんでも明治のご一新の時に島の調査に来た役人が、島の若者一人と話し合って勝手に置いていった碑なんだそうだ。推測で、明治の明るい御代に掛けたのだろうか、で落ち着いているのだとか)

 滝は四の宮の真後ろにあるのでどんなに暗くても急な斜面だけを気をつければ構わない、にしても急だから靴がずれたりよれたりして足にきつい。俗化されてない修行の場みたいなものだから階段がないのだ。六泊しても滝には行かなかったので道がこんなふうだとは知らないのである。

 さらに日の出前に参拝しないと駄目だというのでかなり焦る。

 道が平坦になってから滝の音が聞こえてきて、さらに道を右に曲がり左に曲がり、これ獣道だろ、排他的だなぁと閉口しつつ先を急ぐ。ただの観光客は年に何人来るんだろう?全国の龍神様ファンは、島の近くに来たら寄るのかね?

 四の宮を出発して十分以上もかかって、やっとため息をつくことができた。


二の宮での殺人事件は、主人公が不運なだけで、伏線でもなんでもありません。

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