#79 流れは突然速くなる
七十九話です、よろしくお願いします
おいら達は小屋を一通り掃除した後、荷物を纏めて駅のほうに歩き始めた。
そして、竹やぶに入ったときに何故かトリムーの死体が残っていたのでおいら達はそれを調べることにした。
「うーん、いつもなら灰になるはずなのに、ちょっと小さくなっただけで倒した時のまんまだねぇ」
「奇怪ね、アタシもこんな現象初めてだわ。」
何百年も昔からモストロと戦ってきたヴァイスがそういうのだから異常なのだろう。
「……あ☆何かあるよ!☆」
リオンさんがそう言って指をさす頭部の方においら達は集まる。
なんとトリムーの下顎の裏に何か結晶のようなものが刺さっていた。
「なんすかね、これ」
カフ君が引っこ抜こうとするけんど、びくともせず。
カフ君の手が赤くなっても一寸たりとも動かなかった。
「いってぇぇ!!」
なんだか今日は痛い思いをしてばかりのカフ君を尻目においらが右手で結晶を引き抜こうとする。
「あれ?抜けたよぉ?」
拍子抜けするほどあっさりと抜けた。
形は槍の先のように尖っていて透き通る様な青色だ。
おいら達が観察していると急に結晶が光出した。
「な、なにが起こってんだ!?」
皆が結晶の光に目を張った時、おいらの手の甲に付けてある『ファントムサモナー』が熱を持って光りだした
「あ、熱い……!!」
「先輩!?大丈夫ですか!?」
リオンさんが心配なのか近づいてくる………。
でもこれは何だか危険な気がする…………!
「ダメ!来ちゃダメ!ぐぅぅぁっ。これはっ!ううぅぅう。多分危険っだから!」
熱さに耐えながら必死に言葉を繋ぎ、リオンさんを遠ざける。
結晶の光はどんどん強くなっていき、暗くなりかけていた竹やぶがすっかり真っ昼間のように明るくなっていた。
それに比例するように『ファントムサモナー』の光と熱も強くなっていき、おいらの手が悲鳴を上げる。
「う、うぅぅぅぅぅぅう!!」
おいらは思わず膝をつき、右手を地面に寝かせる。
すると、手の熱で地面が溶けた。
相当な熱だ。
「?!が、ぁぁぁぁぁぁあ!」
「ご主人!!」
「な、何かが這い上がってくる………!」
何かがおいらの内側から上がってくる。
ぐちゃぐちゃで、黒くて、不規則な何かが。
おいらは気分が悪くなってきて、息が荒くなってくる。
おいらの体調が悪くなればなるほど結晶の光が強くなっていく。
「あ、あ、あ」
もう言葉も出ない。
苦しい、辛い、熱い。
おいらがその苦しさにもがいていると突然、おいらの右腕に黒い嵐が起きた。
『ファントムサモナー』を使うときのあの嵐だ。
そして、右腕だけが、黒い甲冑を纏う。
もちろん結晶はまだ光輝いている。
「………!ご主人!!」
何かに気づいたヴァイスがおいらの方に飛んできておいらの中に入っていく。
『ご主人!早く『ファントムイート』を使って!!』
「う………うん………っ!」
おいらは右手に左手を当てる。
かなりの熱くて痛いが今はそんな事を考えている状況ではない。
「召喚…………<上級悪魔>エーデルヴァイス………召喚……………!」
『召喚!エーデルヴァイス!DEVILWARNING!』
いつもと変わらない無機質な声が響き、黒い嵐がおいらを包み、やがて甲冑を身に纏ったおいらが現れる。
『『ファントムイート』!!!!』
ヴァイスの掛け声でおいらの甲冑が溶けるように剥がれて光輝く結晶を飲み込むと、元の甲冑に戻る。
そして、モゴモゴと動いた後落ち着くと武装が解除される。
辺りは元の暗めの竹やぶに戻った。
「アニキ!大丈夫ですかい!」
「大丈夫ですか!先輩!」
「う、うん、大丈夫………だよぉ」
おいらの気の抜けた返事に二人は胸を撫で下ろす。
「それにしてもあの光はなんだったんすかね?」
「おいらにも何がなんだか……」
「あたしぃ………見たことあるんだぁ………☆」
元の調子に戻ったリオンさんがそう言う。
「アレの名前は《覚醒石》って言うんだ☆」
覚醒石?
「覚醒石はあらゆる物体の活動を活性化させる石よ」
「ヴァイス、知ってるのぉ?」
「えぇ、名前と大まかな効果わね。でもリオンの方がよく知ってると思うわ。詳しい効果を教えてもらっても良いかしら?」
「うん☆ここでもなんだし、帰りの汽車で話すよ☆」
おいら達は駅まで戻ってきて多少の食料を買うと汽車に乗り込んだ。
「じゃあ説明するね☆」
リオンさんはそう言うと2つの石と色ペンを取り出した。
「まずこっちが元のモストロだとする☆」
そう言いながら1つの石に赤い印を付ける。
「そしてこっちが覚醒石だとする☆」
もう1つの石には青い印を付ける。
「じゃあカフ」
「呼び捨て!?」
「この2つの石をくっつけて1つの石にする為にはどうしたらいい?」
「……………?」
カフ君が頭を傾げる。
そして、暫く考えた後、頭から湯気が出始めてカフ君はダウンした。
「わ、わかりやせん…………」
「うん☆普通そうだよね☆」
確かに2つの石を1つにする方法が思い付かない。
「じゃあ、もしこの2つの石がバラバラだとします☆」
リオンさんは2つの石を掴むと魔法で粉々にする。
「じゃあカフ、これを1つにするにはどうしたらいい?☆」
「接着剤でくっ付ける」
「せいかーい☆」
リオンさんがカフ君にパチパチと拍手を送る。
「つまり覚醒石は対象の物体の一部を破壊して取り込む性質があるんだ☆」
怖!なにそれ怖い!
「そして、覚醒石にはその対象の力を増大させる能力があるんだ☆」
なるほど…………
「ということはあのトリムーにたまたま覚醒石が取りついて、宿主を変えようとした覚醒石がご主人の手を破壊して取り込もうとしたのかしら?」
「そうなるね☆」
「って事はあの竹やぶに覚醒石があるってことっすか?」
カフ君の問いにリオンさんが首を振る。
「ううん、覚醒石は人工でしか作れないよ☆」
「じゃあ自然にはないんすね」
「そう、人工で…………は………!」
リオンさんの表情が突然強ばる。
「リオンさん?」
「後輩くん、ヴァイスちゃん、カフ、よく聞いて」
真面目モードのリオンさんが強ばった表情のまま皆の名前を呼ぶ。
「覚醒石は人によって生み出すことしかできない……そしてそれをするにはトリムーに覚醒石を近づける人が要るの。」
「まさか!」
ヴァイスが気づいて声を上げたときに車内に乾いた拍手が聞こえる。
「ご明察だ、お嬢さん」
そこには魔女の牽引者のラディがいた。
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