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悪魔使いの落第者  作者: Bros
第三章 白の陰謀と黒の愚策
73/201

#72 草原の上で

七十二話です、よろしくお願いします

爽やかな風が私の頬を撫でる。


屋敷から20分ほど走ったところにある草原だ。


小さい頃、私は此処に両親と共によく来ていた。


『おかあさま!ほら、冠ができましたよ!』


草原を歩くと昔の思い出が脳裏に蘇る。


『おとうさま!ことり!ことりですよ!』


この草原が壮大に感じたあの日。

この世界はどれだけ広いのだろうと此処に来る度に思っていたあの頃。


それがなんだか懐かしく思えて私は草原に座り込んだ。

暫く来ていなかったからか、誰も踏み入れないのだろうと予測できるほど草の丈が高かった。


「懐かしいわね」


あの頃感じていた感覚だ、今の自分では膝下までしか無いであろう草木が大きく感じたあの感覚。


「私は何を迷っていたのかしら…………」


草原から太陽を見上げると何だか青空の大きさに自分がちっぽけに感じてくる。


「私はセアリアス家の娘」


勿論この場には私しかいないが、だからこそ宣言する。


「泥臭く、汗まみれで、決して高貴ではない我が家とその当主…………」


お父様は何時だって汚れていた。

兵士たちと共に外壁の修理をしたり、病気の農家の代わりに田畑を耕したり、自分の領土の学生と修行に打ち込んだり………


私はそんな家の娘なんだ。


敵の威圧感なんて関係ない。

戦局は覆らせるもの。

ただ目指すのは戦いに勝つこと。

泥臭くても貪欲に勝利を望む。

負けたからといってそれをどうこう言う家柄だろうか?


「何度敗北しても…………何度危険な目にあっても………私は諦めない………1人の剣士として!」


その道はとんでもなく厳しい道かもしれない。


「私が望むのはただ1つの勝利だけ………」


大局的に勝てば、それは全ての勝利と言える。

私は目の前の敗北に縛られ過ぎた。

もっと前を見ないとこれから心が持たない。


私は草原に身を任せて、天に向かって手を伸ばす。

サンサンと照りつける太陽の光が指の間をすり抜けて私を照らす。


眩しい太陽を見ているとだんだん心が落ち着くのが分かる。

次第に心がぽかぽか暖かくなってこのまま寝てしまいそうな程肩の力が抜けている。


そうやって心を穏やかにして寝転がっていると、私に何と狼が近づいてきた。


その狼は私の近くに身を丸めるとすやすや眠りだした。


驚いた。

私はいつも動物に避けられている、だからレイン君に手懐ける事を頼んでいたけれど、向こうから歩みよってくれる事なんてここ数年なかった。


更に驚くことに狼だけではなく肉食、草食関係無く、私の元に動物が集まってくる。


そして、皆が皆身を寄せて眠り始めた。


「そっか私はこういう景色を見たかったのね」


私はそう呟くと起きて屋敷の方に歩き出す。

ゆっくりと目を開けた動物たちは送り出すかのように遠吠えをしていた。

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