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悪魔使いの落第者  作者: Bros
第二章学園祭
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#59 カガリの葛藤

五十九話です、よろしくお願いします!

「…………………」


カガリは真っ白な部屋に1人、ポツンと座っていた。

足を伸ばし、何もない天井を見上げている。


ここが彼女の生活するスペースだ。

最低限の物しか置いておらず、彼女がよく読む本すらない。

トイレ、風呂、台所、水飲み場以上だ。

窓もなければもちろんベランダもない。

ずっと明るく、夜になっても明るいのでうずくまるしかない。

ベットなんて物はない、毛布も枕も無い。

部屋の外に繋がる扉の下に大きめの隙間があり、そこから食事が入れられる。

パンとキャベツとササミ、これが彼女の食事だ。


娯楽なんて物はあるわけが無い。

故に彼女はすることがないから、いつも座り込んで、天井を眺めていた。


「………………」


しかし、今日はいつもとは様子が違う。

彼女は静かに泣いていた。

一粒ずつ涙を流していた。

思い浮かぶのはレインの顔。


自分が敵だと思ったときに動揺した彼の瞳。

自分の力が脅威だと感じたときの彼の動揺。


そして、笑いかけてくれた彼の笑顔。


カガリは生まれてからずっとこの施設で育ってきた。

そして、何人もの人をこの手で葬ってきた。

感情を作らないために人との会話を禁止されていた。


だから人と話すということに慣れていない。

カガリは話しかけられても答えるまでに時間が掛かるのであまり相手にされなかった。


喋りかけても答えない不気味な奴


それがカガリのクラスメイトからのイメージだ。

だからずっとクラスメイトと触れあってなかったし、向こうから近付いて来ることもなかった。


だけどあの日、勇気を出してレインに話し掛けた。

普段食べられないような美味しいものも食べさせてもらえた。

そして、しばらくの間。レインはよくカガリに話し掛けた。


カガリは少しずつ楽しいと思うようになった。

普通の人からすればただただ一緒に買い出しにいってそれからよく話すようになった。それだけだ。


でもカガリにはそれがとても新鮮だった。

誰にも触れあわなかったから、誰とも話さなかったから。


『か、カガリさん…………何を言って…………』


今も鮮明に浮かんでくる表情と声。


初めて知った、こんなにも胸が苦しいのは。

初めてだった、こんなにも涙が止まらないのは。


ぐちゃぐちゃになった思考がカガリを追い詰めていく。


今まで何とも思っていなかった人の悲しそうな声。

それが今では彼女を締め付ける鎖となった。


「ひぐ………ぐすっ………ぐすっ…………」


嗚咽が漏れる。

止めどめのない感情が溢れ出す。

彼女は人として成長してしまった。

殺戮兵器として退化してしまった。


どこに感情を向ければ良いか分からないからすすり泣くことしか出来ない。


暫く泣いていると突然扉が開いた。

開いた先には白衣を着た男と複数人の護衛がいる。


「今から強化手術を行う。来なさい」


白衣の男がそう言う。

拒否権はないのでカガリは抵抗せずに付いていく。


何もない廊下を歩いていき、人よりも少し大きいガラス管のようなものが並ぶところに着く。


「入れ」


命令されたカガリはその中に入る。


「アップデート開始」


抑揚の無い声が響く。


中に水のようなものが入っていく。

呼吸器を装着しているので息は出来る。


「対象に無用な記憶を確認、消去を開始」


「っ!うぁぁぁぁぁぁああっ!!」


カガリは強烈な頭痛が始まり、頭を手で抑える。


「うるさくて敵わん、出力を上げろ」


「了解、出力を上げます」


抑揚の無い声がまた響き、カガリの声が少し納まる。


「う、ぁ、ぁ、」


「フハハッ、成功だ」


白衣の男は顔を歪めて笑い、カガリを外に出す。


「No.07お前の標的は何だ?」


「カランコエ・レインです、マスター」


白衣の男はニヤリと笑う。


「これより行動を開始します。」


カガリの目は妖しく光っていた。

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