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悪魔使いの落第者  作者: Bros
第五章 悲しみは誰のもの
201/201

#199 VSドラゴン!

お久しぶりです。

就活忙しくなってきました、泣きそうです

「ど、ドラゴン……?」


「えぇ、ドラゴン。間違いないわ。魔界から滅多に出ることはない種族だからニンゲンの間には浸透していないでしょうけどその昔、暴走したドラゴンの一族が魔界を燃やし、こっちの世界をも炎の海に変えてしまったと言われる伝説の『幻想』………。見た感じまだ幼い個体のようだけれど強力な事には変わりはな──」


その瞬間であった。

幾千度にも匹敵する灼熱の火球をドラゴンは吐き出した。その速度は人が球を投げた時の速度の何倍も速く、咄嗟にヴァイスは魔法障壁を張る。


「ご主人!伏せて!!」


「わわっ!!」


障壁と火球が衝突して激しく火花が散り、轟音がレイン達を包む。火球の威力はとてつもないもので障壁を破りながら爆発するとレイン達は弾き飛ばされ、先頭にあった馬車に激突する。

激突の衝撃と一連の混乱に驚いた馬車を引くアカウマ達が暴れだし、隊列は崩れ、混沌を極めていた現場はさらに荒れていく。


「ぐ……かはっ……こ、このままじゃ馬も騎士も……お、王女様も危ない……」


「無駄に喋るんじゃないわよ!今、回復魔法を……」


「ギャグゥアアアアアア!!」


「!!ご主人!!」


ドラゴンが馬車に追撃をかけ、ヴァイスは咄嗟にレインを庇おうとするが惜しくも間に合わず、レインに直撃する。


「ぐぁ………あ……!」


裂果に包まれたレインは朦朧とする意識の中で左手の甲に右手を置いた。


「装着……上級悪魔<エーデルヴァイス>…………召喚(サモン)………!」


召喚(サモン)!エーデルヴァイス!DEVILWARNING!!』


レインの変身がギリギリ間に合い、炎の渦を黒い嵐が切り裂く。そして黒い嵐は続く火球を弾き飛ばし、やがて嵐が晴れ、嵐の中から『ファントムサモナー』を身に纏ったレインが現れる。


「な、なんとか間に合った……」


『アンタ!怪我は!?』


「なんとかだいじょ……おわわ!」


レインは再び飛んできた火球をギリギリで避けた。休まず攻撃を仕掛けてくる辺りドラゴンはかなりの興奮状態だ。

レインは幾度となく飛んでくる火球を避けつつヴァイスに話しかける。


「このドラゴンは意志疎通できなさそうだけんど、ドラゴンは皆そうなの?」


『いえ、ドラゴンは比較的賢い『幻想』よ。悪魔には及ばないけどね。少なくともこっちの魔物やモストロなんかに比べたら圧倒的に賢いし、老齢のドラゴンなら念話での意志疎通も可能だわ』


念話とは魔力の波長をどちらか片方に合わせ、魔力に意思を乗せて会話する方法であり高度な魔法だ。

それができるということはそれだけ知能が高いことを意味する。


『ただこの個体は幼いから恐らく急に別世界にやってきて混乱しているのでしょうね、意志疎通もまだできる年ではないと思うわ』


「………そっか」


レインの落ち込むような声にヴァイスはムッとする。ヴァイスにはレインがどう考えていたのか分かったからだ。


『まさかドラゴンが会話できるなら戦いをやめるよう説得するつもりだったんじゃないでしょうね?それか興奮状態を抑えるために動くとか』


「……バレた?」


『当然よ、まぁ気持ちは分かるけどここでアンタがちんたらやってるとアンタの余命も短くなるし倒れている周辺の騎士も戦いに巻き込まれて死んでしまうわ。一気に片付けるわよ』


「うん……そうだよね。ごめん、ヴァイス。おいらちゃんと戦うよ……うん」


さらに気分が沈むレインにヴァイスは仕方ないといったようにため息をついた。


『…はぁ……ドラゴンは頭の角を折られると戦意喪失状態になる性質があるわ。角を折れるならアンタのやりたいようにしなさい。ただし4分、このタイムリミットまでに折れないなら周辺の被害も拡大するからドラゴンを殺すしかないわ。いいわね』


「分かった……ありがとうヴァイ……」


瞬間、ドラゴンが灼熱の炎を吐き地面を溶かしながらレインに迫る。レインは和やかな雰囲気を消して炎を睨み、ブレードの一閃で炎を消し飛ばした。

レインの背後から騎士達のおお、という声が聞こえ、吹き飛ばされたけど案外大丈夫そうだとレインは安心する。


「冷静になって見てると攻撃力はあんまりだねぇ、前に戦ったローズよりは何とかなりそうだよぉ」


『確かにパワーはローズには劣るわね。でもドラゴンの幼体は言わば伸び代しかない個体よ。油断すれば戦いの中で急速に成長する可能性もあるわ。気を付けなさい!』


「うん、そろそろ斬り込むよ!!」


レインは強く地面を蹴ると、背後の噴射口を起動させて地面を滑るように加速する。

ドラゴンはきっと戦いの経験が少ないのだろう、急加速したレインに目が追い付いていないのか、首をのそりと上げてレインの位置を把握しようと動くが、それが過ちであった。

レインはほぼ宙を滑る状態まで加速すると向かう先に足を出し、ドラゴンの股の間を縫うように滑りこむ。

そして腕のジェット噴射によって加速度を0にまで一気に落とし、その反動のままドラゴンの背中を切り裂いた。


「ゴァァァァァァァア!!」


現れた時とはうってかわってドラゴンの悲痛な叫びが木霊する。

だがレインもこれでドラゴンを止められるとは思っていない。現にその凄まじい再生力によってレインの付けた大きな裂け目は既に閉じ掛けていたからだ。


「背中じゃダメか…!」


『翼と足を崩すわよ!!』


ヴァイスの操作によって鎧に無数の噴射口を出現させ、ドラゴンの翼に向けて加速する。


「─ッダァッ!!!!」


レインの気迫の籠った声と共にドラゴンの翼の根元に傷が付き、その勢いそのままくるぶしの辺りを切り裂く。


またもやあがるドラゴンの叫び声にレインは心の中で謝りつつ、ドラゴンが崩れたことを確認するとその角を視覚に入れた。


(チャンスは一度しかない。まだ戦闘時間は1分しか経っていないけんど、さっきの攻撃のダメージがまだおいらの体の中に残っている……!全力を出せるのは一度しか、ない!!)


レインはドラゴンの角以外の視覚情報を頭から消し去り、ただその一点を見つめる。


「ふぅぅぅぅ…………!」


幼体であるからか角はほんの10センチもない、いつドラゴンが頭を動かすかも分からない。

だからこそレインは極限までに集中力を高めて眼に血管が浮き出るほどその一点に絞りこむ。


そして、一閃は解き放たれる。


「『ツインソードストライク』ッッ!!!!」


閃光のように飛び出したレインは音を置き去りにして空を駆け、ドラゴンの角にその刃を振り抜いた。


「ッ!!!ガァァァァァァ!!」


だが、それは叶わなかった。ドラゴンの再生が間に合い、レインの刃はドラゴンの角を捉えたものの、瞬時にその角は大きく成長し、レインのブレードは弾かれてしまった。


「なっ!!?」


『アンタ!!不味い、障壁よ!!!!』


驚くレインにヴァイスは咄嗟に魔法陣をいくつも現出させて、障壁を張る。


「ゥゥゥゥガァァァァァァアッ!!!」


だがドラゴンはお構いなしにその成長した角に魔力を込めてレインを貫かんと突進する。

角の魔力と障壁の魔力がぶつかり合った事によって稲妻のような青の魔力が周囲に飛び出し、周囲の馬車や岩を破壊していく。


「お前達!!姫様を守れ!!盾のあるやつは兎に角姫様を守れ!」


激しすぎる戦いの余波に騎士団は王女であるダーナを守るために大楯を持つ騎士が駆け寄り、飛び交う瓦礫や魔力からダーナを守る。


「れ、レイン様!!」


「王女様!飛びしてはなりません!!私の後ろに!」


激しい閃光に飲まれる恩人のレインの姿にダーナは飛び出しそうになるがここで王女に何かあればネリック王国が崩壊しかねない。

クレアはそんなダーナを引き留める。

ダーナは何か言いたそうにしたが自分の立場を理解しているようで素直に引き下がる。


「も、申し訳ございません…つい」


「王女様のお気持ちを分かります。ですが、ここはちゃんと見届けましょう。戦いの行く末を」


(私だって今すぐにでも助けに行きたい……でももしそれで私が王女様を放置して王女様に何かあれば……)


クレアは奥歯を噛み締め持っている鞘に力を込める。


「頑張って、レイン君!」



戦いの中心地ではもう1分が経とうと言うのにドラゴンとレインの衝突は続いていた。

もうありったけの噴射口とギリギリ限界まで引き出せる障壁を張っているがドラゴン側も必死なのは同じなようで一向に場は動かない。


「くっ……!ち、力が入らなくなってきたよぉ……!」


『堪えなさい!!ここで気を抜いたら終わりよ!!』


「わ、分かってるけんど……!」


愚痴を言っても別にドラゴンが攻撃を止めるわけではない、むしろ時間がかかって苛立ってきているのか魔力の流れはさらに暴れ始めている。


なんとか突進を受け流したいがこちらが力を緩めればレインが避ける前にその角がレインの足か腕を貫くだろう。

だからこそ正面から受けるしかないのだ。

そしてレインの耳にパリンとガラスの砕けた音が聞こえる。障壁が一層突破されたのだ。


「ま、また障壁が割れた…!」


『もう半分の3枚しか残ってないわ!アンタ!もう腹括るしかないわよ!!』


「は、腹を括るって?」


『ディアボロキャノンを撃ち込むしかないわ!それしかアンタも、王女達も助かる方法はないわ!』


「…………っ」


レインは一瞬迷った。

ローズの時もしかり、レインには敵であっても殺すことに躊躇することがある。

それは彼の優しさというところもある。幼少期にひもじい思いをして、もう過去の話であってもいじめられた経験もあった。彼が覚えていなくても両親が目の前で失われた記憶もどこかにあるのだろう。

だからその辛い思いを他人に味わわせたくない、それがレインが戦い、敵を殺すのではなく止めようとしてきていたことであった。


しかしそれは理由の一つでしかない。もう一つレインには敵を殺さないようにする理由があった。それは彼自身の心が傷つくことを恐れていたからだ。

意志疎通ができるものを殺す。それは殺す方にも少なからず精神的なダメージを与える。それが憎き相手であっても暴力の頂上たる殺すという行為を行っているのだから。

もちろん世の中には必要な殺しもある。動物を殺して食わねば人間は生きていけないし、植物だって人によればそうだろう。だが、それとこれとは別なのだ。

合理だけで心は動かない、会話のできる相手を殺すという事実は自分の敵であれば家畜を殺すことと同じ水準の理由はあってもその心の傷は何倍にも膨れ上がる。レインのような少年であれば尚更だ。


だから彼はラディに止めを刺そうとしなかった、ローズに止めを刺そうとしなかった。それは、自分が傷つくことが怖かったからだ。そんな自分勝手な考えに嫌気を覚えていてもどうしようもなく怖かったからだ。


「……分かったよ、ヴァイス」


だが彼には今護るべき人達がいる。

12の少年には難しい選択だが、レインはドラゴンを消し飛ばす覚悟を決めた。


「ディアボロ…………」


「ガァァァァァァア!!!」


レインの胸部に鎧が集まり、砲の様なものを形成するとそこに青白い魔力が集まっていく。

ドラゴンは何か予感したのかさらに魔力を放出するがもう遅かった。


「キャノンッッ!!!!」


そうして放たれた極大の光の柱はドラゴンを包み、そして辺りを光で包んだ

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