#19エーデルヴァイスの真実
遅くなりました!シリアス回です!
十九話です、よろしくお願いします
「………ねぇ、クレア。ご主人を頼めるかしら」
疲労で倒れたレイン君を保健室に運んだ後、カフ君は避難させた人達を呼び戻しに行き、リオンさんはショックで隣の部屋で寝込んでいて、アレックス君は腰を抜かして戦闘前には逃げていた。
そして残った私とヴァイスちゃん。
ヴァイスちゃんが私にそう懇願してくる。
いつもならその可愛い表情に負けて二つ返事を返すが、今はそうはいかない。
彼女の言う『頼む』は今目の前で寝ているレイン君の面倒を見るのではなく、この先自分の代わりにレイン君を助けてと言う意味だからだ。
「…………何を『頼むのか』によるわね」
「…………」
静寂が保健室を包む。
ここで首を縦に振るわけにはいかない。
そう思っているとヴァイスちゃんが口を開く。
「アタシはね、悪魔は悪魔でも、ただの悪魔じゃないの」
その言葉を初めにヴァイスちゃんは語り始めた。
アタシは元々何の変哲もない悪魔だった。
今みたいに上級悪魔じゃなかったし、人の形を型どってもいなかった。
ある時、魔界に異変が起きたわ。
この現世で『ファントムシリーズ』と呼ばれる幻獣や精霊等を身に纏い、その恩恵を受ける道具が多数生産された。
その第四号機『悪魔の小手』の依代にアタシはなった。
完全なランダム召喚だったから、アタシが弱いとかは関係なかったの。
そして、道具のお陰でアタシは進化して、上級悪魔に。
最初はアタシも喜んだわ、これでようやく名を挙げられるって…
でも現実はそうではなかったわ。
『ファントムシリーズ』には1つの制約があった。
使用者は必ず5年で息絶える。
今まで何人もの使用者がアタシと『ファントムサモナー』を捨てて契約違反で殺されたわ。
そして50年前、アタシを最後に使った男がアタシをアンタ達がみたあの箱に封印されていたの。
「さっきガルガンチュアが甲冑に飲み込まれたのはこの『ファントムサモナー』の特殊能力、<ファントムイート>によるもの。相手の力を奪い、己の武器にするための力なの。」
私は絶句した。
ヴァイスちゃんが偶々召喚されたと言っていたのは嘘で、契約を自分で決めたように見えたのも嘘で、彼女は始めから全てを知っていた。
「じゃあ、初めてレイン君と会ったときに、5年後に死ぬっていう契約を交わしたのは………」
「偽善かもしれないけど、あれがアタシがご主人にあげられた選択肢」
ヴァイスちゃんは尻尾を垂れさせると、羽を羽ばたかせてふわふわと飛んでいく。
「アタシはご主人から離れるわ、その間、ケアをお願いね」
そういって窓から飛んでいくヴァイスちゃんの目にはうっすら涙が流れていた。
コメント、評価を頂けると作者が嬉しさでFIREします。
目指せ総合ポイント10!!